2009年07月05日

[第124話 農、南] 気持ちよい緑陰つくる大木マンゴー

 沖縄産マンゴーといえば、夏ギフトの定番。濃厚な味と鮮烈な香りは、他の追随を許さない。ところで沖縄では、マンゴーはハウスの中で作られているので、普通の樹木の形をしたマンゴーを見かけることはあまりない。と思っていたら、万鐘の地元うるま市で、マンゴーの大木を発見した。

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 うるま市豊原の喜納兼俊さんがこのマンゴーの主。喜納さんは自宅の庭に緑陰を作ろうと、25年ほど前にマンゴーを植えた。マンゴーはすくすくと枝を広げ、庭に見事な緑陰をもたらした。もちろん、実もつく。

 果樹としてのマンゴーは、花が雨で落ちると実がならないので、沖縄では、雨よけハウスに入れるのが普通。ハウスの中で自然のままに伸ばしたらハウスの屋根を突き破ってしまうから、そうならないように剪定する。

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 剪定して、高くしないように、横へ横へと枝を広げていく。その結果、マンゴーの木は、ずんぐりむっくり、というよりも、ほとんどT字の上のバーを長くしたように、横に平べったく枝を広げることになる。これには、高い木にしてしまうと収穫が大変、という事情もある。

 だから、沖縄県民の中には、マンゴーとは、横に広がる形の木だと思っている人もいる。現に沖縄にはそんな形のマンゴーしかないのだから無理もない。

 だが、マンゴーは本来、剪定しないで放っておけば、上にすくすくと伸びて大木になる。喜納さんの庭のマンゴーの木がまさにそれ。

 雨をよけないと花が落ちるという理由で農家はマンゴーをハウスに入れているのだが、大木になった喜納さんのマンゴーは、雨よけしなくともたくさん実をつける。ウチナーグチで言う「ちゃーなり」(鈴なり)の状態だ。その理由は、品種が違うから。

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 喜納さんの庭のマンゴーは、ペリカンマンゴー。一方、沖縄で果実として生産されているのはアーウィン種がメインだ。喜納さんの話では、アーウィンの方が味や香りは優れていて、商品価値が高い。一方、ペリカンマンゴーは多少の雨に打たれてもちゃんと実がつく。

 果実マンゴーとしてはアーウィンに軍配が上がるが、緑陰づくりなど、樹木としてマンゴーをとらえる時には、ペリカンマンゴーなど、アーウィン以外の品種も捨てたものではない。

 世界中にはたくさんの種類のマンゴーがあり、それぞれの特性を生かして多彩に活用されている。フルーツとして食べるのはもちろんだが、例えばインドのマンゴーアチャーのように、青くて歯ごたえのあるマンゴーを塩漬けにした漬物などもあったりする。

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 写真は、アフリカのアンゴラ内陸部で見かけたマンゴー並木。ポルトガル植民地時代に植えられたものらしいが、見事な緑陰を作り出している。季節になればちゃんと実をつけ、地域の人々の貴重な食糧源になるが、それ以外の時季は、炎天下を歩く人々に緑陰の涼しさと美しい景観を提供している。

 沖縄でも、果実マンゴーだけでなく、もっと多彩なマンゴーの可能性に目を向けたら面白いことになるだろう。例えば、都市公園に500mくらいのマンゴー並木道を作り、地域の人々や観光客に緑陰を提供しながら、実りの季節になったら収穫イベントで大盤振る舞いする、とか。

 緑陰マンゴーの先駆者である喜納さんと、気持ちのよい緑陰で緑陰談義をしながら、そんなことを考えた。

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2009年06月28日

[第123話 食] 甘みチャンピオン、ナーベラー

 沖縄の夏野菜。一昨年はモウイ、昨年はウンチェーバーを取り上げた。今年はナーベラーでいってみよう。ナーベラーの甘みときたら。もし「野菜の甘みオリンピック」があったら、メダル獲得間違いなし。

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 ナーベラーはヘチマ。若い果実を食す。朝どりの新鮮なものは、白っぽく見える。表皮にびっしり生えている細かい毛がその正体。この毛はだんだん消えていき、店に並ぶ頃にはほとんど見られなくなる。

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 モウイ同様、ナーベラーも大手スーパーの流通からは半歩くらいはみ出した存在だ。スーパーにも売ってはいるが、キュウリやトマトのようにレギュラー扱いはされていない。ある時とない時がある。JA沖縄が運営する糸満などのファーマーズマーケットや、南城市大里の軽便駅かりゆし市のような、農家持ち込み型の店にはほぼ必ず置かれている。

 ナーベラーは皮をむき、中のふんわりと柔らかい果肉を、これまた柔らかい種ごとサクサクと1cmくらいの輪切りにする。まるでハンペンのよう。油をひいた鍋で軽くいため、そのままフタをして弱火にかける。

 5、6分すると水分が出て、ナーベラーが翡翠色に。ふにゃふにゃと柔らかくなったら、味噌とかつおぶしを少し入れ、数分煮ればナーベラーンブシーの出来上がり。豆腐を入れると、立派なおかずになる。

 肉を入れてももちろんおいしいが、ナーベラー、味噌、豆腐といった淡白なうま味の世界に肉の強い味が加わると、いくぶん突出した感じにはなる。

 フタをして蒸す際には、水を一切加えない。ナーベラーからかなりの水分が出てくるからだ。「水は一滴も入れないよー」というセリフを、おばあたーから何度聞いたことか。ただ、あまり長時間蒸し煮にすると、水が出過ぎて、みそ汁になってしまうので、ご注意を。その汁を飲むのがまたおいしいさぁ、という声もあるけれど。

 水溶き片栗粉を入れてとろみを少しつけると、食べるのにも盛りつけるのにも始末がいいので、お店ではそうやって出すところもある。

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 水が出る頃には、ナーベラー特有の甘みが最大限に引き出される。味噌しか入れないのに、まるで砂糖でも加えたんじゃないかと思うほどのしっかりした甘み―。もちろん、甘さの質は砂糖のそれとはだいぶ違うが。

 この自然の甘みを体験し、その虜になった人は、初夏になるとナーベラーを思って少しそわそわしたりする。

 ナーベラーは苦手、という人もいないではない。その理由は、ナーベラー特有の臭み。土臭いという人もいるし、カビ臭いという人もいる。ンブシーをみそ味でまとめるというのは、みその強い味でこの臭いを押さえ込む効果があるかもしれない。

 同様の臭みは、ビーツ(赤カブ)やツルムラサキにもある。ナーベラーの場合は個体差がかなりあるようで、ほとんど臭わないものも、時々ある。穫れたてならあまり臭わない、とか、完全有機栽培だと臭わない、と言われるが、真相は分からない。この臭みが好きという人もいるが、おそらくこれがなければナーベラー大好き人口は倍増するだろう。 

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 水を一滴も加えず、ナーベラーの水分とみそで作るナーベラーンブシーは、絵に描いたような健康食。沖縄の夏に力強く育つナーベラーはいかにも抗酸化力がありそうだし、みそは、リノレン酸エチルエステルの働きで、体内に毎日生まれているガン細胞を消してくれる。ただし、これは、ちゃんと天然熟成させたみそでないとダメらしい。 

 最後に、ンブシーを作る時の最重要ポイントを。それは、ナーベラーをたっぷり使うこと。水が出て縮まるので、小さめのものなら1人1本分は最低必要。好きな人は、1人で2本分くらいペロリと平らげてしまう。

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2009年06月21日

[第122話 食] 教科書に載せたい沖縄そば

 万鐘本店では、これまでに沖縄そば店をいくつか取り上げてきたが、どちらかと言えば個性派の店が多かった(第3話第30話第82話第108話)。今回は、これらとは対照的に、オーソドックスの極み、とも言うべき恩納村の「なかどまい」をご紹介。インパクトは強いが、何杯食べても飽きがこない。

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 なかどまいは、同じ場所で経営者が何回か変わってきたが、現在の店は當山忍さんが1年半前に始めたばかり。當山さんはもともと大のそば好き。あちこちの店を食べ歩きながら「自分で最もおいしいと思うそば、昔、食べておいしかったそばを作ろうと模索しました」と話す。

 まず汁は、豚骨とかつおだしをブレンドした汁。よくあるかつお主体の汁ではなく、豚骨がベースだ。深いコクがあるが、すっきりしていて、臭みや雑味はない。

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 汁の味つけは塩が主体でシンプルそのものだが、なにしろダシのコクが深いから、そばにからんで充分にうまみを発揮する。豚骨ベースのなせるわざ。言うまでもにないが、なかどまいの場合、豚骨は、弱火で、たぎらせることなく長時間じっくりと煮る。

 麺は、細麺と中太麺の中間くらいの太さ。少し縮れているので汁がよくからむ。小麦特有の、空気を少し含んだような優しい弾力のある麺。もちもち感を高める場合はでんぷんの配合を増やすが、ここの麺は小麦主体。

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 これは、ちょうどギョウザの皮が2種類あるのと似ている。1つはスーパーに置かれている薄手のもちもち感が強いタイプの皮。もう一つは、中華料理店で出てくる自家製ギョウザ皮。こちらは厚くて、わずかに空気を含んだような、ややパン生地っぽい食感がある。

 沖縄そばで言えば、昔風の沖縄そばには後者のタイプの麺が多い。なかどまいの麺もこれ。やんばる方面では、この手の麺を出す店が多いが、なかどまいの麺はよくあるやんばるの太麺よりは細く、スルスルと口に入っていく。

 三枚肉やソーキの煮方もオーソドックス。沖縄そばの具として最適の柔らかさといえそう。甘さのない汁とのコンビネーションが最高になるような甘さに、味付けをピタリと決めている。食べ始めは、シンプル塩味のアチコーコー汁と甘辛味の肉がきれいなコントラストをみせるが、食べ進むうちに肉の味が汁に移り、汁が少しずつ甘さを含むようになっていく。その変化が楽しい。ソーキはしっとり煮上がっており、三枚肉の脂落としは完璧だ。

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 汁、めん、肉。どれをとってもていねいな仕事の結果で、それぞれ並々ならぬ力があるが、まったく出しゃばらない。全体が絶妙のバランスを保ちながら、何食わぬ顔でググッと迫ってくる。まさにオーソドックスの極み―。

 沖縄そばビギナーに「沖縄そばって、こんな感じです」と勧めたいのはもちろんだが、あちこちを食べ歩いている沖縄そばジョーグーのみなさんにもぜひ試していただきたい。

 教科書に載せたい沖縄そば、という形容はどうかな、と。

 なかどまいは恩納村字仲泊754-3、098-965-7222。仲泊小学校の隣り。日曜定休。営業は11:00から16:00。

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2009年06月14日

[第121話 沖縄] 高級で親しみやすい琉球石灰岩

 落ち着いた象牙色の地に、サンゴなどが作り出す複雑な自然の模様―。琉球石灰岩は、伝統的石積みなどはもちろん、近代的ビルにもマッチする自然建材。今回はその琉球石灰岩の話題を。

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 琉球石灰岩については、第16話の那覇空港の記事で取り上げた。「高級感」と「親しみやすさ」という、一見矛盾する2つの性格が同居する自然素材の代表格。

 南城市にある株式会社武村石材建設で、琉球石灰岩の石材を製造する現場を見せてもらった。琉球石灰岩は沖縄各地にあるが、採掘権の問題などから、現在は主に糸満市で採掘されているとのこと。

 原石を板状の石材に切るのは、専用のダイヤモンドソー。ダイヤモンドを埋め込んだ刃が高速回転し、長さ1mほどの原石を4、5分で「スライス」する。水をかけて摩擦熱を冷やしながら切っていく。

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 こうして切られた板状の石材は、建物の外壁や内壁に貼られる。壁材はそれほど力はかからないので、厚さ3センチもあれば足りるが、敷石などに使う場合は割れやすいのでもっと厚いものを使う。

 表面仕上げは数種類ある。ダイヤ刃の丸ノコで切った平らな切り肌が基本。その孔を埋めてさらにつるつるに磨き上げた本磨き、逆に、細かいでこぼこをわざとつけたビシャンなど。

 表面の状態によって、光と陰がかもし出す石の表情が大きく変わる。表面がなめらかになるほど高級感が増し、逆に、でこぼこが大きいほど素朴さ、親しみやすさが増すと考えてよさそうだ。

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 琉球石灰岩は、有孔虫やサンゴの作り出す多数の孔(あな)が空いているため表面温度が上がりにくいという機能を持つ。炎天下に、例えば大理石や御影石を置いたら触れないくらいに熱くなるが、琉球石灰岩は多数の孔を通じて熱を逃がすため、それほど熱くならない。

 これが役に立つのは、日差しの強い沖縄ばかりではない。というのも、ヒートアイランド現象などによって、熱をどう逃がすか、遮るかは各地で大きな課題になっているからだ。

 琉球石灰岩のたくさんの孔を利用したのが地下ダム。地下に埋まっている琉球石灰岩層は、その無数の孔に大量の地下水を保っている。いわば、水を含んだ巨大なスポンジ。

 この性質を利用して、琉球石灰岩層の一部に止水壁を設け、層の中の水をせき止めて流出を抑え、それを農業用水として利用しようとするのが地下ダムだ。糸満や宮古島などでは既に完成、今は与勝半島で工事が進んでいる。

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 石材の話に戻ろう。写真は那覇市の国際通りにある飲食店。この店は琉球料理店で、琉球石灰岩をほぼ全面に貼っているが、貼り方によっては和食店やイタリアンレストランなどの演出にも使えるだろう。

 コンクリートの場合、コケやカビによる経年変化は素材を汚くするだけだが、琉球石灰岩の場合は、むしろ面白みが増す。屋外に使われている琉球石灰岩の中には次第に一部が黒ずんできて、建設当初とは違った趣きに。写真は首里の金城ダムの堤体の上部。

 近くで見ると汚れにしか見えなくても、離れて見ると「風合い」になる。もとの複雑な模様が黒ずむことでデフォルメされるからだろう。もとの模様がないコンクリートではこうはいかない。

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 もっとも、近代的なビルに貼られた琉球石灰岩壁材の場合は、あまり黒ずんでくると、ビルのその他の直線的な素材のタッチとかけ離れてしまう。これを防ぐためには、ケイ素樹脂などを含むコーディング剤を使う。例えば、那覇空港の場合は、琉球石灰岩にそうしたコーティングを施し、もとのアイボリー色を長く保つようにしている。

 ところで、有名な大理石、トラバーチンは、イタリアやスペインなどで産出するが、沖縄でも採掘される。沖縄産トラバーチンは、琉球石灰岩が熱変成したもの。高級感あふれる建材として国会議事堂などにも使われているという。ただ、最近は採掘量が減り、あまり流通していないらしい。

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 写真は、ホテルJALシティ那覇に使われている沖縄産トラバーチン。穏やかな縞模様が特徴だ。さすがに大理石ともなると、同じ自然素材であっても、高級感がぐぐっと前面に出てくるところが面白い。

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2009年06月07日

[第120話 食] 暑さを乗り切るタイのサラダ

 ことしの沖縄はカラ梅雨だが、雨が少なくても、夏に向かって気温はじわじわ上がっていく。暑い時には、酸っぱくて辛くて香りの強いものが一番。酸っぱくて辛くて香りが強い、と言えば、そう、タイ料理のサラダがあるじゃないか。

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 南城市玉城のタイ料理店「シャム」。バンコク出身の井上タノームワンさんが、ご主人の料理人井上康さんとともに、本格的で繊細なタイ料理を作り続けている人気店だ。

 1皿目は、エビの香草サラダ「クンプラー」(900円)。ゆでたエビとレタスが、ナンプラーとライムのドレッシングであえてある。ライムはレモンよりも一段と引き締まった酸味があり、香りも鋭い。

 これに、コリアンダー、ミント、エシャロット、青ネギといった、まさに香り立つ面々が加わる。さらに、爽快さをプラスする柑橘系の香りが2つ入って、皿はいよいよ香りワールドに。

 その一つはバイマックルー。コブミカンの葉だ。生のバイマックルーを糸のように細く切って散らしてある。柑橘特有の爽やかな香りが立ち、かすかな苦みが全体の味に奥行きを与える。

 もう一つの柑橘系は、レモングラス。茎の根元の白い部分は柔らかいので、細く刻めば生でサラダに入れられる。タノームワンさんは自分でレモングラスを栽培している。沖縄の気温なら、雨さえ降ればレモングラスはよく育つ。

 ヨーロッパのドレッシングは、酢の酸味に加えて、油の甘味と潤滑の力で、ガサガサした野菜をおいしくするわけだが、タイのドレッシングは油をほとんど使わない。魚醤であるナンプラーの深いコクとライムやレモン果汁の鮮烈な酸味、全体の味を丸くする少量の砂糖だけで味が見事にまとまり、野菜が十分おいしくなる。
 
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 2皿目は、細切り青パパイヤのサラダ「ソムタム」(650円)。第92話で紹介したように、沖縄では普通、青パパイヤは加熱して食べるが、ソムタムの青パパイヤは生で。

 ソムタムの味の組み立ては、1皿目のクンプラーとは違う。ベースはクンプラーとよく似たナンプラー+レモンだが、ソムタムではこれに生ニンニクのみじん切りがたっぷり入る。そこに刻んだ干しえびが。トッピングにもさくらえびが乗っているので、えびの香りはかなり強く、生ニンニクと互角の闘い。両横綱の陰で、刻んだピーナツがひっそりと自己主張している。爽快さが特徴のクンプラーと対照的に、ソムタムは濃厚な力強さが売り。

 主役のパパイヤは、味も香りもほとんどないが、繊維は強い。つまり「歯ごたえ担当」。ドレッシングの味が強いので、歯ごたえも強くないとバランスしない。青パパイヤには、脂肪燃焼機能のあるパパインが豊富に含まれているから、「ダイエット担当」でもある。


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 3皿目は、牛肉が入って食べ応え十分のおかずサラダ、「ヤム・ヌア」(900円)。ナンプラー+レモンの土台に、ミント、コリアンダー、ネギがのる。香りは、1皿目のクンプラーに近い。柑橘系の香草はないが、ミントがやや多めで、それが牛肉とトマトによく合う。脂気のない赤身の牛肉は、このナンプラーのドレッシングであえると、とてもおいしく感じられる。

 以上のサラダ3種は、シャムではディナーメニューだが、材料があれば昼時でも作ってくれる。事前に電話で予約注文しておけば確実だろう。どれも唐辛子がかなり効いているので、苦手な人は頼んで調節してもらうとよい。

 シャムは南城市玉城字富里136-1、098-948-3807。サラダだけでなく、カレーやパッタイ、トムヤムクンなど、タイ料理の定番メニューも豊富。南城市役所本庁舎のすぐ近く。月曜と第4日曜が定休。昼は11:30-14:30、夜は17:00-22:00の営業。

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2009年05月31日

[第119話 食] 超高級食材だった車麩

 麩と言えばフーチャンプルー。材料の車麩は、どこのスーパーでも見かけるおなじみの食品で、値段も手頃。ところで、この車麩、どうやって作るのか。沖縄市の大城製麩で、車麩づくりの現場を見せてもらった。

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 麩の原料は小麦粉。小麦粉には、でんぷんのほかに、タンパク質であるグルテンが豊富に含まれている。小麦粉に水を加えてかくはんしてからグルテンの沈殿を待ち、水に混ざったでんぷんを流す。この作業を繰り返して、より純粋なグルテンにしていく。

 ちょうど米を繰り返しといではヌカ成分を流すのに似ている。ただし、米の場合は、残るのがでんぷん。麩づくりはその逆で、流すのがでんぷんだ。「私のところはこれを14回やるんです」と大城さん。残るでんぷんが多いと、食感が悪くなるらしい。

 残ったグルテンは粘土色で、ねばりがものすごく強い(冒頭の写真)。これを数分練ってから、小分けする。小分けしたものを伸ばして棒に巻き付け、かまに入れて焼くこと約4分。グルテンは自分で膨らんで、おなじみの車麩が出来上がる。

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 簡単そうだが、実際には難しい点がいろいろある。例えば、生地を小分けしてから、棒に巻き付けるまでの時間。これが長すぎると、コシがどんどん弱くなる。気温も影響する。小分けする人と焼く人は、言葉も交わさず、全く別の作業をしているように見えるが、実はわずか4、5分の間合いを互いに意識しながら仕事をしているのだ。

 あるいは、麩を焼くかま。このかまは300度近い高温が保たれている特注品。パンやケーキは200度前後で焼くが、麩はそれよりもずっと高温で、短時間で焼く。電気オーブンでこの高温を作り出すのは難しい。大城さんのかまは灯油を燃やす。

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 パンなら酵母を生地に入れて膨らませるが、大城さんの麩は何も入れない。「グルテンは自然に膨らむんです」。グルテンの自然の性質をよく見極めて、時間と温度をしっかり管理して、最適の膨らみ具合を得なければならない。

 大城さんから興味深い話を聞いた。沖縄本島中部の製麩業者のほとんどは、戦後、首里から移転してきた。つまり、戦前まで、麩はかつての琉球王国の王府周辺だけで作られていた。麩は「王様の食べ物」だったのだ。

 よく考えてみれば、うなずける話。なにしろ、小麦粉の主成分である豊富なでんぷんを捨て、わずかなタンパク質だけを取り出すのだ。

 琉球王国がいくら繁栄を謳歌した時代があったとはいえ、生産力の低い昔、庶民はその日その日のカロリーを確保するのがやっとだったはず。その貴重なカロリー源のでんぷんを「捨てる」という食品加工技術が発達したのは、さすがに王府周辺だけだったのではないか。もちろん、かつて、でんぷんは「捨てられた」のではなく、「分けられて」別に利用されたに違いないが。

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 3本180円。今や、大衆食材の代表選手となった車麩には、実はそんな栄光の歴史があったのだ。その栄光ぶりは、今も、車麩の高い栄養価にはっきり刻印されている。というのも、車麩は、タンパク質がなんと40%を超す。これほど高タンパクの食品は、めったにあるものではない。

 そう考えると、フーチャンプルーが、なんだか神々しいまでにありがたいものに思えてきた。

 大城さんの車麩はスーパーかねひで各店で買える。万鐘本店でも、第4話のままやの記事で、麩だけで作るちょっと変わったフーイリチーを紹介したことがあった。

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2009年05月25日

[第118話 食] タコライスじゃない、たこめし

 「タコライスにタコは入ってないの?」 観光客から何度か聞かれた。タコライスはタコスの応用だからタコとは関係ないんです―。そんな会話を何度か交わしているうちに、「たこめし」ののぼりがはためいているのをたまたま万鐘の地元うるま市で見かけた。こちらはタコ入りらしい。おー、ほんとにタコ入りのごはんがあるじゃないか。早速、たこめしに挑戦した。

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 うるま市の与勝半島と平安座島を結ぶ海中道路の話は第46話で紹介したが、「たこめし」ののぼりが風にゆれていたのは、その海中道路の入り口。お店の名前は、たこ焼き食堂ハリセンボン。

 たこめしは、沖縄の沿岸で獲れる島ダコを使った炊き込みごはんだった。島だこを使うので、正確には「島だこめし」(500円)。ごはんの上にちゃんとタコがのっている。タコをゆでた汁でごはんを炊くので、ごはんは薄い色に染まっていて、ほんのりとタコの香りがする。うまい。もちろん温かいのがおいしいが、お弁当にして冷めても十分いけるんじゃないかと思える味わいだ。

 タコライスは、メキシコ料理のタコスのトルティーヤに包まれている中身をごはんの上に乗せた沖縄発の創作料理。スパイスのきいたピリカラひき肉と刻んだレタス、チーズなどがごはんの上にのっている。偶然だが、ハリセンボンのすぐ隣りには、元祖タコライスのお店があるので、期せずして「タコライスvsたこめし」の図になっている。

 ハリセンボンは、大阪出身の漆師(うるし)康治さんと、海中道路を渡った平安座島出身の美幸さん夫妻が切り盛りしている。たこ焼きがメインだが、「ごはんものが欲しい」というお客さんの声に応えて、タコにこだわる漆師さんが島ダコを使った島だこめしを始めた。

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 メインメニューのたこ焼きも魅力。「普通の上等」をうたう普通のたこ焼き(350円)は、ソースの甘さと柔らかい生地が渾然一体となって口の中に広がり、そこに歯ごたえのあるタコが加わって、絶妙のバランス。はふはふ言いながら、あっという間に平らげてしまう。

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 創作たこ焼きもいろいろあって楽しい。例えば「もずくねぎポン酢たこ焼き」(450円)。たこ焼きの中に地元産のもずくが入っている。

 沖縄の特産品であるもずくを活用した料理はいろいろ提案されているが、やはりもずくはとろりとした柔らかな食感が命。残念ながら、もずく創作料理の多くが、もずくのこの食感を生かしきれていない。例えば、もずくの天ぷらなどもおいしいけれど、「あー、もずくを食べているなあ」という実感は湧かない。

 このもずくたこ焼きはそれらとは全く違う。たこ焼きのとろーり柔らかな生地ともずくのとろーり食感とがぴったりと合い、もずく本来のおいしさがちゃんと生かされているのだ。ねぎポン酢の甘くないタレも、もずくを見事に引き立てる。

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 「もずくに下味がつけてあるんですが、初めの頃は、その水分がたこ焼き生地に入るためにうまく焼けなかったりしたこともありました」と漆師さん。どんな新製品にも開発の苦労があるが、もずくたこ焼きもそう。

 もずくはこの界隈でもたくさん生産されている。地産地消を口で言うのは簡単だが、地で穫れたものをとり入れても、それによってさらにおいしくならなければ意味がない。もずくたこ焼きは、まさにもずくが入ったことで誕生した新しいおいしさだ。とろーり同士のハーモニーは、あつあつでないと最高潮に達しないので、持ち帰るよりも、作りたてをお店で食べるのがお勧め。

 ハリセンボンは海中道路の入口にあるので、海中道路を通って平安座島や浜比嘉島、宮城島、伊計島に行く人々が立ち寄るが、その一方で、地元の子供たちにも大人気。部活帰りの中学生などが、タコせんべいにたこ焼きをはさんだサンド・デ・タコヤキ(100円)などにパクついている。地域の風景に溶け込んだマチヤーグワー(お店)だ。

 ハリセンボンは、うるま市与那城屋慶名405-3、090-9406-6415。月曜定休。HPはこちら。島だこめしは数量限定品なので、売り切れることもしばしば。確実に食べたければ電話で予約を。

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2009年05月19日

[第117話 農] トーナチンが実をつけた

 モロコシという穀物がある。トウモロコシではない。トウのつかないモロコシ。沖縄ではトーナチンと呼ぶ。かつては沖縄各地で栽培されていたが、今では離島など一部で作られるだけになってしまった。南城市の奥武島で、実をつけ始めたトーナチンを見た。

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 トーナチンは、イネ科の穀物。トウモロコシを細くしたような茎と葉で、穂は初めは葉に包まれているが、やがてそこから飛び出し、ススキのように一番上のところで赤茶色の丸い実を膨らませる。英語名はソルガム、中国ではコウリャン、日本ではタカキビと呼ばれることも。

 トーナチンは世界中で作られている。例えば、南部アフリカ各地では、脱穀した後に製粉し、固練りにして食べる。固練りはもち、ごはん、おかゆを足して3で割ったような食感。皮の色が出るので、固練りも茶色と紫色の間のような色になる。穀類特有の味と香りが魅力だ。

 全粒粉で食べるから、栄養豊富。例えば、玄米と比べると、トーナチンのスーパー穀物ぶりがよく分かる。タンパク質は玄米6.8gに対してトーナチンはなんと10.3g、ビタミンB2は玄米0.04mgに対してトーナチン0.1mg。食物繊維も3gに対して9.7gだ。

 南部アフリカの一部では、伝統的主食であるトーナチンの固練りが、トウモロコシの真っ白な固練りにとって代わられた。トウモロコシの固練りはクセがないので、ちょうど白いごはんのように、おかずとよく合う。社会が豊かになり、野菜や肉、卵を食べる機会が増えると、「銀しゃりにおかず」ならぬ「白いトウモロコシ固練りにおかず」の食事が好まれる、ということかもしれない。

 確かに、トーナチンの固練りはそれ自体にしっかりした味がある。トーナチンの味は、タンパク質やビタミンなどの「栄養の味」。ぬか成分がたっぷり残っている玄米の味を思い浮かべればいい。玄米はおいしいが、何にでも合うというわけではないところが、トーナチンと似ている。しかもトーナチンは玄米よりもっと栄養豊富で味が濃い。

 沖縄ではトーナチンを粉にひいて、モチ粉に混ぜ、ムーチーを作って食べる。トーナチンを入れると、ムーチーに独特の味がつく。少しざらざらした食感になるが、それがまたいいという人が多い。旧暦12月のムーチーの季節になると、スーパーにトーナチンの粉が出回る。ただし、沖縄県産ではなく、海外からの輸入ものがほとんど。

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 奥武島で聞いた話では、トーナチンは脱穀した後、水に数時間つけてアクぬきしてから乾燥させる。粉にひくのは、昔は石臼だったが、今は製粉機。

 実は、このトーナチン、必ずしも粉にしなくてよい。「トーナチンを水につけて柔らかくすれば、ミキサーでも大丈夫ですよ」。奥武島のあるおばあが話してくれた。言われてみれば、かつて、石臼で穀類や豆をひく時にも、水につけて柔らかくしたものをひいて、ドロドロの液状にしていた。いわゆるシトギ。

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 ところで、トウモロコシは登熟しても実が覆われているからいいが、トーナチンのように、株のてっぺんにむき出しの実をつけるタイプの穀類は鳥にやられる。さあ、明日にでもいよいよ収穫するか、というその前日に鳥はいずこからかやってきて、食べごろの実をきれいに平らげてしまう。熟していない実は決して食べない。

 いったいどんなセンサーがついているのか知らないが、鳥たちの正確な判断力にはただただ脱帽するしかない。奥武島でも、丸々とした実をつけた穂だけが選ばれ、袋がけされていた。

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2009年05月13日

[第116話 沖縄] 浜比嘉島「大人の」リゾート

 沖縄本島東海岸に浮かぶ浜比嘉島(はまひがじま)。平安座島から橋がかかるこの小さな島の東端に、とびきりの大人向けリゾートホテルがある。地元出身のスタッフとリピーター客、コンセプトによく合った内外装が作り出す静かな癒しの時空間をご紹介。

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 ホテル浜比嘉島リゾート。20年以上前からあるホテルだが、昨年4月にリニューアルした。外装には要所要所に琉球石灰岩をあしらって、高級感と親しみやすさという、正反対の効果を同時に実現。自然素材が持つこの不思議な力については、第16話の那覇空港の話でも取り上げた。次の写真の上は、琉球石灰岩が貼られた正面階段。

 小さなところにも自然の素材が上手に使われている。例えば客室の場所を伝える廊下の掲示は、ガラスに文字を乗せて、そのバックに木製の板を入れた。各室前の室番号は、10cm四方の琉球ガラスの板に文字が乗せてある。

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 内装は、アジアンリゾート風味の昭和モダン、とでも言おうか。白とこげ茶、ベージュを基調に、ところどころに赤っぽいハイライトをあしらったアジアンリゾート風の色調を使いながら、こげ茶で装飾性の少ない直線的な家具類を置くことで昭和モダン風の味わいを出している。

 だから、曲線の多いヨーロピアンとも、東南アジアのコテコテのアジアンリゾートとも一線を画す。一言で言えば、控えめ、抑えめの華やかさ、豪華さ。第7話で紹介した万国津梁館と共通するデザインコンセプトかもしれない。もちろん、浜比嘉島リゾートも、例えばシャワールームの感じに見られるように、リゾートらしい豪華さはちゃんと備えている。

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 「大人の―」とは、そんな控えめのリゾート感覚を心地よく受け止めるのが、ある程度の人生経験を持つ年齢層に多いはずだから。若者は、どちらかと言えば、もっと冒険的で刺激的で、作り込んだ面白さにひかれるだろう。

 支配人の中野優子さんによると、地域の自然や社会にとけ込むリゾート、というのが、このホテルのコンセプトの一つ。リゾート開発には、地域と関係ない施設をドカンと作るアプローチもあり、沖縄ではリゾートの主舞台である西海岸にそうした施設が多い。だが、このホテルは違う。

 例えば、浜比嘉島リゾートは、24、5人のスタッフの大半が地元出身。中野さん自身も、海中道路を渡ったうるま市与那城屋慶名の出身で、配膳スタッフから始めて、ずっとこのホテルで勤めてきた。リニューアル後に支配人に昇格したという文字通りの生え抜きだ。そんなスタッフが醸し出す等身大の雰囲気のよさが分かるには、多少の人生経験がいるかもしれない。

 西海岸のリゾートホテルは大型や高層の建物が普通で、観光バスでやってくる数多くの団体客が宿泊する。これに対して、浜比嘉島リゾートの顧客の中心は、個人のリピーター客。「お子さんが3歳の頃から毎年いらっしゃるご家族がありまして、その子がことし小学3年生になったんですよ。スタッフとも顔なじみです」。中野さんが目を輝かせて楽しそうに語る。

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 北谷や恩納村などの西海岸がサンセットから夜ふけまで若者が遊ぶところとするならば、東の浜比嘉島リゾートは早起きの大人たちがサンライズで朝の光とすがすがしい空気を楽しむ場所といえるかもしれない。事実、中野さんの話では、夜10時ともなれば客室の多くは静かになるという。部屋の多くが東向きのオーシャンビューになっているので、朝、宿泊客はカーテンを開けて、青い海の上に昇る朝日を楽しむ。

 うれしいのは、宿泊料も抑えめなこと。西海岸のリゾートより安い。しかも3連泊以上するとさらに2割引きになる(ハイシーズンを除く)。部屋の広さはスタンダードルームが24平米。

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 最後になったが、海の青さは、橋がかかったとはいえ、やはり島なので格別だ。写真は浜比嘉島側から見た平安座の漁港だが、浜比嘉島の周囲の海も同じくエメラルドグリーン。ガラスを溶かしたような、透明感あふれる海の色は、何度見ても飽きない。

 ホテル浜比嘉島リゾートは、うるま市勝連比嘉202、098-977-8088。HPはこちら

bansyold at 14:56|Permalinkclip!沖縄 

2009年05月07日

[第115話 食] 1100円のお値打ちステーキ

 沖縄はステーキが有名。米軍統治時代のなごりと言われるが、沖縄県民の肉好きがそれをガッチリ下支えしているとの説もある。そんな地元民御用達洋食店の代表格が沖縄市の「ハイウェイドライブイン」。いつも地元客でごった返している。中でも、1100円のスペシャルステーキはお値打ちだ。

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 「沖縄 ステーキ」でネット検索すると、那覇を中心にいろいろなステーキ専門店が出てくる。かつて米軍Aサインレストランだった店、ステーキだけでなく伊勢エビなどの高級海鮮グリルを出す店など、さまざまだ。

 古くからあるステーキ専門店でも、1980年代の前半くらいまでは、1000円前後でステーキが食べられた。当時、本土から沖縄旅行に来た人の中にはそれをお目当てにする人もかなりいた。だが、現在、1000円でステーキを出す店はさすがにほとんどない。「安い」ということにそれほど重きを置かなくなってきたのだろう。例えば、1953年創業の有名店、那覇市のジャッキーステーキハウスでも、一番割安のニューヨークステーキSが1400円。

 ハイウェイドライブインは、本土復帰の前後にオープンしたというから既に創業30年以上。コザという場所柄、かつては米軍人のお客も多かっただろうが、今や地元民が圧倒的だ。

 この店は、昼となく夜となく、常にお客がたくさんいる。家族連れ、若いカップル、作業服姿のおじさんたち。カウンターごしのオープンキッチンの中には料理人やアシスタントの女性が4、5人いて、ハンバーグを焼いたり、とんかつを揚げたりして、忙しそうに動き回っている。それほど広くもないキッチンにあんなにたくさんスタッフがいるのかな、と思うかもしれないが、客の回転がいいから、2人やそこいらでは追いつかないのだ。

 ステーキ専門店ではない。メニューの中心はランチ。ランチとは言っても、「洋定食」くらいの意味で、昼時だけでなく、夜でも食べられる。オムレツ、とんかつ、ハンバーグ、スパゲティといった懐かしの洋おかずとごはん、スープがセットになっている。

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 ランチでも先にスープが出てきたり、アイスティーがおかわり自由だったり、ハンバーグがハンバーガーにする肉っぽいタイプだったりする。このあたりがアメリカン。八宝菜風の中華メニューを「チャプスイ」と呼ぶところもアメリカンの趣きが漂う。チャンプルーなどのオキナワンメニューも豊富。

 さて、本題のスペシャルステーキにいこう。初めてオーダーした時は「1100円はちょっと安すぎないか」「靴底のような、味がなくて固いだけの肉かも」と、待っている間に一抹の不安がよぎった。いくぶん緊張気味でテーブルに座っていたが、やや粉っぽいスープとサラダに続いて登場したのは、まさに血のしたたるおいしそうなステーキだった。鉄板の上で肉汁がジュワジュワといい音を奏でている(冒頭の写真)。

 「とろけるような」という形容は当たらないが、バサバサ肉では全くない。適度な噛み応えと柔らかさがともにあり、しかもジューシー。これで1100円なら文句を言う人はいないだろう。味はほとんどついていないので、好みで塩、コショウ、しょうゆ、ソース類をかけて食べる。

 ふと周囲を見回してみると、ランチを食べている人が多い中で、ナイフでステーキを一口大に切りながら、せっせと口に運ぶ向きもバラバラと見えた。ランチが500-800円ほどなのに比べれば1100円は割高かもしれないが、ちょっと奮発すれば手の届くところに、このスペシャルステーキはある。

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 名前の「ハイウェイドライブイン」も70年代風のレトロな響き。ただ、実際は、ハイウェイ沿いではなく、一般県道75号線沿い。ドライブインと言えば、駐車場が広々していて、というイメージだが、これもそうではなく、県道沿いのやや古びた普通の建物なので、想像をたくましくして初めて訪れた人は戸惑うかも。車は裏手の小さな駐車場にとめられる。

 ハイウェイドライブインは、沖縄市美里1266、098-937-8448。営業時間は11:00-26:00。年末年始と旧盆を除いて無休。

bansyold at 07:32|PermalinkTrackBack(0)clip!  | 沖縄