2007年09月12日

[第12話 沖縄、食] 喜舎場朝嗣さんが作るスッキリ弁当

 クイズ。沖縄県民はしょっちゅう食べているが、観光客が口にすることはほとんどない食べ物は何でしょう―。

 答は、昼食用の「400円弁当」。昼時になると、そこここにある弁当店はもちろん、小さな食料品店からスーパーまで、400円弁当が店先にズラリと並ぶ。市役所の駐車場や工場前などで、軽貨物車で出張販売しているケースも多い。

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 沖縄の400円弁当は、本土で見かける幕の内弁当とはだいぶ違う。入っているおかずのボリュームがものすごいのだ。典型的なのは、魚フライや鶏の照り焼き、とんかつといったメインがごはんの上に乗り、周囲のおかずスペースをゴーヤーチャンプルーや人参シリシリ、島菜イリチーが固め、さらに脇役として、ちくわのてんぷらなどが加わる。上の写真の弁当の場合、総重量は600gに上る。

 お腹一杯になる、どころではない。全部平らげると、頭がボーッとなり、しばらく動けなくなる。このボリューム、一体何キロカロリーになるのだろうか。数字を見るのが怖い感じだ。

 確かに、暑い地域では体力の消耗が激しいので、サトイモやコンニャクの小さな一切れが独立コンパートメントに鎮座しているような上品な幕の内弁当ではもの足りない。その意味では、てんこ盛りの沖縄のノセノセ400円弁当は理にかなっている。

 しかし、それも程度の問題。オフィスワーカーや中高年、女性の多くには明らかにカロリーオーバーだろう。それも毎日となると―。

 そう考えて、首里の弁当店「かつ屋」の喜舎場朝嗣さんは、7年前、沖縄では珍しいスッキリ系の400円弁当を作り始めた。「ごはんに乗った肉や魚の油がごはんの半分くらいまで染み込んでいるような」(喜舎場さん)ノセノセ弁当全盛の頃である。

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 油や化学調味料の量を減らし、揚げ物より煮物を増やした。ごはんの量もほどほどにした。なにしろ売価が400円の庶民派弁当だから、高価な素材は使えない。それでもできる範囲の工夫で、少しでも体にいい弁当を作りたかった、と喜舎場さんは話す。

 周囲が「量」を売りにしている中で、見劣りしない弁当にするには、おかずの種類を多くして、彩りもよくする必要があるから、どうしても手間はかかる。喜舎場さんの弁当は、ノセノセ弁当に比べてだいぶスッキリしている。もちろん、おかずたっぷりの沖縄弁当のよさは失っていない。これで540g。

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 「始めた頃は、こんな弁当は珍しかったですけど、最近は似たような弁当が出てきましたね」と喜舎場さん。

 もしノセノセ弁当のボリュームにまいっている人がいたら、喜舎場さんの弁当をお勧めしたい。十分満足できるが、しつこくないので毎日でも食べられそう。これなら食べ終わった後、すぐに動ける。

 かつ屋は首里城近く、バス停「首里支所前」の真ん前。那覇市首里当蔵町2-9-4。098-885-0388。土日休。

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2007年09月07日

[第11話 農] 子豚セリの心理戦

 養豚は、子豚を産ませて育てる繁殖と、子豚から肉豚を育てる肥育の2つの部門に分かれる。繁殖農家が育てた子豚を肥育農家に販売する場の一つが子豚セリ市。沖縄の中部では、月に2回、うるま市豊原の家畜セリ市場で開かれる。多くの養豚関係者が集まるセリは貴重な情報交換の場だ。

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 セリ当日。繁殖農家は子豚を運んできたら、セリ市場の豚房に20頭くらいずつ入れる。少しでも見栄えをよくしようと、セリが始まる直前まで水をかける人も。

 セリの開始は午後1時きっかり。写真右手のセリ人が値段を100円単位でどんどん上げていく。肥育農家の買い付け人は親指や人差し指を立て、自分が買う意思があることを示す。値が上がるにつれ、初めはたくさん上がっていた指が徐々に降ろされていく。

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 セリ上げるスピードが速いので、うっかり指を降ろしそびれると、予定外の高い買い物をするハメになる。指を立てる買い付け人はポーカーフェイスだが、内心はドキドキだ。

 「買い付けゼロというわけにはいかないし。ああ、もう1万4000円を超えてしまったあ...」

 実は、売り手も買い手も顔なじみなので、買い付けのやり方や性格まで含めて、お互いだいたい分かっている。「あの人が頑張り始めたら、勝ち目はない」「あの人がまだ買ってないから、後の方も高くなるな」。そんな読みを、口には一切出さないけれど、みんな内心でやっている。

 最後まで指を下ろさなかった人が落札者。お目当ての房を落とした人は、セリ終了後、ほっとした表情で豚房に自分のトラックをつけ、子豚を積み込んでいく。

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 心理的なかけひきが激しい火花を散らすエキサイティングな子豚セリ。だが、売り手、買い手とも、セリで子豚を売買する人は減りつつある。数年前までセリは月3回行われていたが、現在は月2回。かつては1回の上場頭数が400頭を超すことも珍しくなかったが、最近は200頭を切ることがある。

 いくつかの理由が考えられるが、深刻なのは餌代の高騰による小規模養豚農家の廃業だ。セリの主役は、売り手も買い手も小規模農家なのだが、その数が減ってきている。

 餌の原料は輸入のトウモロコシと大豆かすが中心なので、国際相場の影響をもろに受ける。一昨年くらいからトウモロコシも大豆も価格が急激に上昇し、この数年で餌代は1.5倍以上になった。餌代は生産費の6割強を占めるから、こんな状態では、体力のない小規模農家はとても経営を続けられない。大規模農場でも収益は悪化の一途をたどっている。今後も餌の原料価格が下がる気配はない。

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 万鐘島ぶたの場合は自給飼料が多いので、配合飼料100%の農家に比べれば価格高騰の影響は小さい。だが、原料の安定確保など、課題は多い。何しろ豚はあきれるほどよく食べる。あの激烈な食欲を毎日毎日満たしていくのは大変だ。

 ちょっとだけ食べてどんどん太ってくれたらいいのだが…。そうは問屋が卸さない。


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2007年09月02日

[第10話 食] 大城秀昭さんのなめらか島豆腐

 沖縄の豆腐は、水分が少なくしっかりしているから、水切りしなくても、ちぎってチャンプルーに入れられる。1丁が1kg近くあるのも特徴だ。

 その島豆腐。大メーカーのものから、個人のお店で作られているものまでいろいろあって、個性もさまざまだ。今回ご紹介する豊見城市座安の大城豆腐は、舌ざわりがなめらかで、味もまろやか。島豆腐の逸品といっていい。

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 島豆腐の舌ざわりは、ガサガサする感じのものが少なくない。チャンプルーで食べる時はさほど気にならないが、伝統行事用の揚げ豆腐を食べると、食感の違いがはっきり分かる。

 もう一つ、島豆腐の中には、釜で加熱する際の焦げた臭いが強いものがある。あの臭いがないと面白くない、という人もいるが、あまり臭いが強いと豆腐の味を損ねてしまう。

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 大城豆腐は、とてもなめらか。クリーミー、とまで言う人もいる。主人の大城秀昭さんは「作り方にはいろいろあるから」と控えめに話すだけだが、この豆腐は確かに違う。焦げた臭いも全くない。

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 地釜で豆乳を煮て、ニガリをうち、ゆし豆腐状になったものを型に入れる。型は5丁分だから、取り出したものを5つに切り分ければ出来上がり。そのままビニル袋に入れて熱い状態で出荷する。

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 大城豆腐は、同店で買えるほか、スーパー「ユニオン」の前島店(那覇市)でも売っている。大城豆腐店は豊見城市字座安289。098-850-7851。国道331号線(糸満街道)与根入口を海側に曲がり、与根郵便局を過ぎて間もなく右側。地元では「与根の豆腐」と呼ぶ人も多い。

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2007年08月28日

[第9話 沖縄] 宮城島の絶壁で作るぬちまーす

 沖縄はもはや「塩の産地」といっていいほど、数多くの銘柄塩が生産されている。その中でも1kg4000円の価格で他を大きく引き離しているのが「ぬちまーす」だ。

 ぬちまーすは、創業者の高安正勝さんが発明した常温瞬間空中結晶製塩法で海水から作られる。釜で煮詰める方式だと、マンガン、亜鉛、鉄などの微量ミネラル成分が最後まで水の方に残り、塩に取り込むのが難しい。高安さんの方式では約50度の空中に海水を噴霧する。ほぼ瞬間的に水分が蒸発し、できた塩がまるで雪のように床や壁に積もっていく。こうして、微量ミネラルをしっかり含んだ塩ができる、というわけだ。

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 ぬち、とは沖縄語で「いのち」、まーす、は「塩」を意味する。「微量ミネラルを含んだ塩は命の源。高い、と言う人もいるが、それだけの価値のあるものだと思っています」と高安さんは胸を張る。

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 10年前の創業以来、うるま市の一角にビニルハウスを建て、その中の高温を利用して製塩してきたが、このほど、沖縄本島東海岸にある宮城島の絶壁の上に新工場を建設した。付近の海は汚れが少なく、新工場では、足元から原料の海水を汲み上げられる。

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 新工場を高安さんは「ぬちうなー」と命名した。うなー、は「御庭」。いのちをはぐくむ特別の場、だ。高安さんは、工場を一般にも見学してもらえるようにした。製塩室の中には入れないが、内部に降り積もる「海の雪」を窓から見ることができる。

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 ぬちまーすを使った梅干しなどの加工品が買えるショップとレストランも備えた。見学者は、ビデオを見て塩について勉強したり、高安さん自身の話を聞ける日もある。

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 周囲はサトウキビ畑と絶景の青い海がどこまでも広がる。ほかには何もない。強い日差しの下で、まるで時が止まったような島の時空間を感じることができる。

 宮城島は、海中道路と橋で沖縄本島と陸続きになっているので、車で行ける。うるま市中心部から約30分。うるま市与那城宮城2768。098-983-1111。年中無休。工場見学は9:00〜17:30。レストランは11:30〜17:30。

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2007年08月23日

[第8話 食] 旧盆料理の主役、豚三枚肉煮付け

 沖縄の豚三枚肉料理と言えばラフテーがすっかり有名になっているが、実は沖縄県民はラフテーをそれほどひんぱんに食べているわけではない。むしろ県民がよく口にするのは「豚三枚肉の煮付け」。ラフテーも豚三枚肉を甘辛味で煮付けたものだが、「豚三枚肉の煮付け」はラフテーとは別物だ(下の写真は「豚三枚肉の煮付け」)。

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 ラフテーは皮付き三枚肉をトロトロになるまで煮込んだ宮廷料理。「箸で切れるくらい」の柔らかさになるまで数時間煮る。当然、歩留まりは悪くなるから、ぜいたくな料理と言える。

 これに対して「豚三枚肉の煮付け」は、旧盆、旧正月、法事などの時にほぼ必ず作られる庶民の伝統的な行事食。ラフテーより調理時間が短く、赤身はまだしっかりしており、歯ごたえがある。ごはんによく合う。重箱に詰める行事食なので、冷めてから食べても結構おいしい。

 沖縄を代表する料理研究家、松本嘉代子さんに、三枚肉煮付けを作るコツを聞いた。まず皮付き三枚肉を固まりのまま50分ほど下ゆでする。これでアクや余分な脂が抜け、皮も柔らかくなる。これを約8mmの幅に切る。

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 煮汁は醤油、砂糖、泡盛で作る。みりんは肉を堅くするので入れない。この煮汁の中で、下ゆでした肉を弱火で12、3分静かに煮ふくめる。仕上げに火を強めると、照りがつく。

 お盆や正月、法事の伝統行事の重箱に入るのは、三枚肉の煮付けのほか、昆布の煮付け、かまぼこ、天ぷら、揚げ豆腐、ごぼうの煮付け、こんにゃくの煮付けなど。旧盆に仏壇のある家を回ると、1人前の料理が小皿に盛りつけられて出されることが多い。

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 重箱の中身、つまり小皿の上は、どの行事でもほぼ同じ顔ぶれだ。行事の多い沖縄ではこれを年に3、4回は食べることになる。

 「行事食というのは本来そういうものなんです。でも、おいしければ子供たちも喜んで食べますよ。子供が伝統料理を食べないなどといわれますが、あれは大人が食べさせていないだけなんです」と松本さん。

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 確かに、同じものでも、おいしいものは毎回おいしい。行事のたびに行事料理に黙々とパクついている子供たちは必ずいる。

 中でも、適度な柔らかさと歯ごたえを備えた味くーたーの豚三枚肉煮付けは、やはり行事食の主役。ごちそう、である。

 ことしの旧盆は8月25日がウンケー(お迎え)で8月27日がウークイ(お送り)。家族が仏前に集まって重箱をお供えし、祖先の霊と向き合う沖縄最大の行事だ。各家とも入念に準備する。スーパーの折り込みチラシにもいよいよ力が入ってきた。

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 企業も役所も、この3日間ばかりは動きが超スローになる。観光は問題ないが、ビジネスのアポは入れない方がよさそうだ。あの世からのお客さんの相手で、県民はかなり忙しい。

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2007年08月20日

[第7話 沖縄] 万国津梁館、上質感の秘密

 沖縄を代表する現代建築を挙げるならば、まずは名護市の万国津梁館を推す。2000年の沖縄サミット首脳会合の会場になったから、というわけではない。万鐘と同名のよしみだから、でももちろんない。ここに入ると、他では得られない上質感と独特の心地よさに包まれるからだ。

 万国津梁館を設計したのは、地元の(株)国建の福田俊次常務をプロジェクトマネージャーとするチーム。福田さんにその秘密を聞いた。

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 「安波の集落の家並みなどに代表されるように、小さな建物が集まっているのが沖縄的な風景だと思うんです。威圧感のある巨大な構造物では、人間が空間をコントロールできません。そこで万国津梁館も大きな建物にせずに、分棟方式にしました」

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 もう一つ、福田さんが沖縄的だと考える建築のあり方が「内と外との融合」だ。沖縄の伝統家屋は壁らしい壁がない。障子や雨戸を閉めることはもちろんあるが、それを開け放てば、外の空気がそのまま家の中とつながる。万国津梁館も、そうした空間設計にして、内外一体の開放感をもたせた。

 建物内部の上質感を支えているのは、無垢の部厚い木材をたっぷり使っていること。木の肌合いが、心地よさのベースになっていることは間違いない。「内装のモチーフはアジアです。沖縄は環アジアの一角にあるので、アジアンリゾートのイメージで作りました」。カフェテラスがその好例だろう(下の写真)。

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 無垢材はインドネシアで加工することで、厳しい予算の制約を乗り越えた。内外一体にすれば、内部にも外の風が入ってくるので、内装に使う木材は一定の強度が必要になる。この無垢材はニアトウという木で、油分が多く、風にさらされても朽ちにくい。眼下に海が見渡せるオーシャンホールの内部にも無垢材が使われている。無垢材の濃い茶色とアイボリーホワイトとの取り合わせが万国津梁館の内装の基調だ(下の写真)。

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 ただし、万国津梁館はコテコテのアジアンリゾートではない。モチーフはアジアンだが、そこに日本的、沖縄的な抑制が働いている。だからこそわれわれには快適なのかもしれない。サミット主会場に使われたサミットホールにも、どこかそんな味わいがある(下の写真)。

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 万国津梁館は、サミット後も国際会議や各種イベント、結婚式などに使われているが、そうした催しがない時は一般に公開されている。借景の海も絶景。ぜひ一度訪れたいスポットだ。名護市字喜瀬1792。電話0980-53-3155。

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2007年08月15日

[第6話 食] 「ままや」の洗練された沖縄料理

 那覇かいわいで万鐘がお勧めする店は「ままや」から。久茂地川沿いにある電波堂ビルから1本入った奥にある、お酒がメインの店。酒の肴として登場する沖縄料理が独自性にあふれている。その洗練された味と美しい姿は第一級だ。

 ビールを頼むと、もの静かな店主の柳生さんが、きめ細かい泡をていねいに立てながらビールをグラスに注いでくれる。クリーミーな泡の感覚を楽しみながら肴の登場を待つ。

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 酒肴のトップバッターとして、第4話でお伝えしたニガナがタマネギとサラダになって出てきた。ニガナの苦みがタマネギの辛み、甘みとよく合う。この2つの個性の強い味を、厚みのあるドレッシングとゴマがうまくまとめてくれる。

 2番手はドゥル天。ターンムにしいたけ、豚肉などを混ぜてよく練った沖縄伝統料理のドゥルワカシーをまるめて油で揚げてある。表面のサクサク感と、中のねっとりしたドゥルワカシーとの対比が絶妙だ。泡盛によく合う。

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 ほろ酔い加減になってきたところに、焼きテビチが登場した。テビチ(豚足)を柔らかくなるまで加熱した後、外側を焼き上げて、カリっとした食感を出す。これにニンニクとネギの効いたタレをつけながら食べる。絶品。会話が止まる。おかわりしたかったが、既に品切れだった。

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 フーイリチーといえば、県民的おかず、といっていい。よくあるのは、フー以外に豆腐、豚肉、卵、野菜などが入っているチャンプルーだが、ここのはユニーク。何と、フーのみで作られている。揚げられているような口あたりが何ともおいしい。エスクニック風のトウガラシソースで食べる。

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 というわけで、「ままや」では、沖縄料理の定番がすべてひとひねりされて登場する。その仕上がりぶりは、まさに洗練された沖縄料理と呼ぶにふさわしい。泡盛がすすむ、すすむ。

 普通の沖縄料理にはちょいと飽きた、という人にお勧め。飲んで食べて4000円くらい。那覇市久茂地2-17-19。098-867-1350。17時30分から。日祝休だが、土、月が祝日の場合は連休。


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2007年08月05日

[第4話 農] ハツおばあのニガナ

 ゴーヤーよりにがい野菜がある。その名もニガナ。ウチナーグチではンジャナバー。葉野菜というより、野菜と薬草の中間くらいの存在だ。

 野生のニガナは海辺の岩っぽいところに自生している。栽培される場合は、家庭菜園の隅っこに5、6株、植えられていることが多い。

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 数は少ないが、プロの栽培農家もいる。スーパーなどに並んでいるニガナは、こうした農家が栽培したものだ。

 豊見城市の大城ハツさんもその一人。さすがのニガナも7、8月の直射日光には弱いらしく、ハツさんはネットをべたがけにして、遮光していた。

 ハツさんは、あまり手間をかけなくてもできるからニガナを始めた、という。「でも、収穫は1枚1枚だからね。年寄りの仕事さあ。若い人はやらんよ」

 ニガナは、葉を切りとって収穫すると、また次の葉が出てくる。そうやってずっと穫り続けられるが、夏の暑さなどで株が傷むらしく、ハツさんも2年に1回くらいは植え替えしているそうだ。日差しが落ち着いてくる秋ごろから、どんどん伸びてくるようになり、出荷量も増えるという。

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 「昔はね。海辺に生えているニガナの根っこをとってきて、酒に漬けてね。腹具合の悪い時に飲むこともあったよ」とハツさん。

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 栽培されたニガナは、海辺の野草ニガナよりも葉が大きく、柔らかい。細く切って豆腐とあえるのと、イカのスミ汁に入れるのが2大料理法。白あえは、豆腐がニガナの苦みを緩和してくれる。スミ汁では、うまみたっぷりの汁の中で、苦みがアクセントになる。最近はツナと合わせてサラダ風に仕立てた小鉢にもよくお目にかかる。

 いかにも体によさそう。いろいろな食べ方が工夫できそうだ。

 スーパーに売られているニガナでも、冷蔵庫に入れておけば3週間くらいは平気でもつ。沖縄では農連市場、公設市場のほか、サンエーなどのスーパーも置いていることが多い。

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2007年08月01日

[第3話 食] 繊細で優しい美里そば

 万鐘が自信をもってお勧めする隠れた名店のトップバッターは、沖縄市の美里そば。雑誌の沖縄そば特集などにはほとんど載っていないが、その味のよさでファンがじわじわ増えているようだ。

 シンプルで飾り気のない店構え。手入れの行き届いた清潔な店内は、店主の照屋エリ子さんの心遣いが感じられる。

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 メニューは、三枚肉の煮付けをのせた沖縄そば、ソーキの煮付けが入るソーキそばの定番2種に加え、軟骨ソーキをねっとりするまで煮込んだ軟骨ソーキ入りの軟骨そばがある。さらには店名を冠した美里そば。これが一番人気とのことなので、早速注文。

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 大ぶりのどんぶりに、三枚肉の煮付け、軟骨ソーキの煮付け、ゆし豆腐とねぎが載ったそばが登場した。ヨモギの葉が別添えでついている。汁が熱いうちにヨモギを入れて、しんなりさせながら、その香りを楽しむ。コーレーグスをかけると泡盛のいい香りが加わった。

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 まずゆし豆腐を一口。ゆし豆腐がそばの汁とこんなに相性がいいとは―。そばは細めで、のどごし最高だが、しっかりとコシがある。汁とよく絡んでうまい。中盤に入ると、めんが汁を吸って少し柔らかくなるが、これが汁とさらによく絡む。

 三枚肉の煮付け。そばにのせる三枚肉は、柔らかく煮てある方がそばや汁と一体になってうまいのだが、煮すぎると味も香りもなくなってしまう。美里そばの三枚肉は、ギリギリの柔らかさまで煮込んである。軟骨ソーキは、ゼリーのようにねっとりしていて、おいしい。

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 この汁は不思議な味だ。豚骨をじっくり煮込んでいるとのことだが、臭みは全くない。ほんのりと甘味を感じる、何とも優しい味だ。繊細な細めんとの相性がいい。コクは確かにあるのに、しつこさが全くないので、最後まで飲んでしまった。

 泡盛残波のCMでおなじみの民謡歌手げんちゃんこと前川守賢さん、ネーネーズをサポートしてきたミュージシャン嘉手苅聡さんも常連らしい。県道75号線、琉球銀行コザ十字路支店の駐車場のすぐそば。沖縄市美里744-1。電話098-937-4196。


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2007年07月30日

[第2話 沖縄] ぶれない安売り、丸中商会

 沖縄本島中部の人で知らない人はモグリ、といわれる金物屋がある。うるま市の丸中商会。たんなる金物屋ながら、何から何まで取りそろえ、徹底的に安く売る。それ以外の顧客サービスはほとんど何もないが、品ぞろえと安さで顧客を引きつけて離さない。

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 この店、まずは中に入るのに苦労する。県道に面していて交通量もかなりある中で、同店に入ろうとする車がいつも数台は路上に止まっているからだ。構内の駐車場がまたごちゃごちゃしている。運が悪いと、一番遠い駐車場に行くはめに。そこに止めたら、車を降りてから、猛暑の中で、だらだら坂を登って店まで戻らねばならない。

 店内はほとんど迷路。商品配置が分からない。一応の分類はされているが、独自の分類を頭に入れるまでが大変だ。

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 よくある日曜大工の郊外店なら、ある程度の売場面積を確保して、縦横に分かりやすくレイアウトするのだが、丸中商会は、小さな店から徐々に広げていったのか、売場は不定形だ。その店内の狭い通路を、作業服のおじさん、日曜大工のお父さん、家庭用品目当てのお母さんと、ラベラー片手の納入業者が、体を斜めにしながら行き交う。

 レジの行列も、どこに並んだらいいのかよく分からないが、沖縄流の「てーげー」(大概)で、みな適当に自己主張したり、譲り合ったりしている。レシートには品名が印刷されないので、手書きの領収書を頼むと、手慣れたレジの女性は、目にも止まらぬ早さで電卓を叩いて、検算してくれる。システムではなく、個人芸の世界だ。

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 店員は担当商品のことを実によく知っているが、その多くはぶっきらぼうな感じだ。例えば、これこれのボルトが欲しいんだが、と言うと、黙って該当の商品を棚から出してくる。

「もう少し短いのはないですか…」
「これが一番短いね」

 以上終わり。無愛想だが、言っている内容は確かで、回答がぶれることはないから信頼できる。彼らが「ない」と言うなら店のどこを探してもない。

 安いだけではない。ネジでも溶接棒でも1本から買える。店員に言えば、その数だけ袋に入れて値段をつけてくれる。1つ買いすれば単価は当然高くなるが、不要なものを買って無駄にするよりは安くすむ。

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 沖縄県民の平均所得は全国平均の75%。商売をするうえで、本土以上に「安さ」は重要だ。たとえ駐車場が不便でも、商品の配置が分かりにくくても、店員が多少無愛想でも、安くて品ぞろえが豊富なら、それが最大のサービスになる。丸中商会の経営方針にぶれはない。

 丸中商会は、実は、毎年発表される沖縄県の企業売上高ランキングの常連で、200位前後にしばしば顔を出す。既に「たんなる金物屋」ではないのである。

 かくして、丸中商会には、きょうも開店から閉店まで人が押し寄せ、混沌の世界を作り出す。だが、その混沌の中に、自然な人のふれあいがある。店員と客、客と客。実際、ごぶさた気味の知り合いに一番よく会う場所は丸中商会だ。

 「万鐘」名の領収書をもらおうとして、顔なじみのレジ女性に「鐘」の字を説明した時のこと。「読み方はバンショウだよ、バンショウ。覚えてね」と言ったら、後ろに並んでやりとりを聞いていた小柄なおばあがニコニコしながら言った。

「バンソウコウね?」

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