[第73話 食] 煮豆を味わう冷たいぜんざい[第75話 沖縄] お年寄りは宝

2008年09月03日

[第74話 食] ゆるぎない原点の極上コーヒー

 実にすっきりとして深い味のコーヒーである。沖縄市のくすのき通りにある「原点」。沖縄のコーヒー専門店の最高峰といっていいだろう。

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 「原点」は既に有名な店なので、万鐘本店では、当初、コーヒー以外の切り口で原点を紹介するつもりだった。実際、興味深い別の話題もある。だが、このコーヒーの味と香りをさしおいて、別の話から入るのは無理がある。やはり本筋のコーヒーの話からいくことにしよう。

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 マスターは外間也蔵さん。外間さんがいれるコーヒーは、強いが、なぜか全く抵抗なく入ってくる。「苦み」や「しびれ」をほとんど感じることなく、たっぷりとした旨味を堪能できる。酸味もさほど強くない。抜群のバランスの上に豊潤さが大きく開花している、そんなコーヒーだ。

 コーヒーをおいしく作るには、いれ方ももちろんあるが、豆の焙煎が重要だと外間さんは言う。「酸味なども、焼き方で決まります」。焙煎してから3日くらいまでは大丈夫だが、その後からは劣化が始まるらしい。もちろん、粉にひくのは飲む直前。

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 昔に比べて豆の質が落ちた、と外間さんは嘆く。農薬のかかったコーヒー豆はそういう味がするという。かつてはモカを使うことがしばしばあったが、最近はインドネシア産の豆が比較的いい、と話す。

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 原点には、細やかな神経が隅々にまで行き届いた空気が漂っている。もちろん、それはピリピリしたものではなく、あくまでも心地よい穏やかな緊張感だ。

 作りつけの棚には、水出しコーヒーの器具が整然と並び、真ん中に柱時計が。机などは濃い茶色で統一され、落ち着いた空間を形づくる。BGMはクラシック。もの静かな外間さん自身も、コーヒーについて尋ねれば、気さくにうんちくを傾けてくれる。

 空気、店の造り、色合い、音楽、人。それらすべてが、極上のコーヒーをさらにおいしくするバックグラウンドになっている。

 その原点が、創業30年目の来春、移転する。くすのき通りが拡張されるため、通り沿いの店舗は立ち退きを余儀なくされるのだ。見事だったくすのきも既に無惨に切られてしまった。

 「店は続けます」と外間さん。移転先はまだ決まっていないが、立ち退き後、間を置かずに移転先で開店できるようにするつもり、と言う。よかった。外間さんのいれる極上のコーヒーは、まだしばらく飲めるらしい。

 原点は、沖縄市仲宗根町1-10、098-938-4832。営業は8時から21時。日曜休。

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