[第86話 沖縄] 高良輝幸さんの竪琴あやはべる[第88話 食] じーまーみ豆腐の決定版

2008年11月20日

[第87話 食] 香り立つグルクンかまぼこ

 沖縄でかまぼこといえば、お盆などの行事につきものの紅白かまぼこか、卵入りのカステラかまぼこということになるかもしれない。だが、今回はそのいずれでもなく、グルクンで作られた香り高いかまぼこを紹介しよう。

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 四方を海に囲まれた沖縄は海の幸に恵まれているが、昔は冷蔵、冷凍の技術がなかったため、魚がたくさん獲れても保存できなかった。でも、かまぼこにすれば生のままより日持ちする。自家製のかまぼこの多くは、蒸してから油で揚げられていた。蒸しただけよりもさらに日持ちするからだ。

 なめらかで歯ごたえのよいすり身にするため、伝統的には、臼と杵で魚の身をついて、すり身を作っていた。材料は身近に獲れる魚。グルクンはその代表格だったといっていい。

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 グルクンは沖縄県の県魚になるほど身近な魚だったが、今は昔ほどは穫れず、価格もそれほど安くない。でもグルクンは今でも人気。居酒屋でグルクンの唐揚げを置いていない店はない。

 しかし、グルクンかまぼことなると話は別だ。今はほとんど手に入らない。グルクンは骨が多いので、これをきれいに取り除いてすり身にするのに手間がかかる。しかも、グルクン自体が昔ほどたくさん穫れない。かつて漁村の家庭で盛んに作られていたグルクンかまぼこは、もはや「幻のかまぼこ」になりつつある。

 那覇・開南の大平通り商店街に、そのグルクンかまぼこが出ていた。作っているのは、久米島出身の照屋ミツさん。かつて、照屋さんは、久米島でたくさん獲れたグルクンをかまぼこにしていた時代を知っている。今は那覇で、グルクンかまぼこを手作りしているという。やはり小骨をとるのに手間がかかるので、1日30本ほどしか作れない。

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 このグルクンかまぼこ、普通のかまぼこにはない、すばらしい香りが立つ。照屋さんの店のケースのふたが開くだけで、食欲をそそる豊潤な香りがあたりに漂う。それはもちろんグルクンの香りで、青魚の香りとも、白身魚の香りとも違う独特の芳香だ。照屋さんのグルクンかまぼこは「皮入り」と「皮なし」があり、「皮入り」の方が香りが強い。

 歯ごたえはシコシコもっちり。シコシコはグルクンのすり身から出るが、独特のもっちり感は、少し加えるつなぎのタピオカから。タピオカはキャッサバとも呼ばれ、地下にできるイモが世界中で食べられている。沖縄でもかつてはよく栽培されていた身近なでんぷん。これがグルクンのすり身と合わさると、なんともいえないもっちり感が出る。

 高い香りを楽しみ、シコシコもっちりの食感を楽しみ、そして深い味を楽しむ―。切って食べるよりもちぎって食べる方が、おいしく感じられるらしい。昔からそう言われてきた、という。軽くあぶって表面をパリパリにしてもおいしい。大根おろし、シークワサーともよく合う。

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 沖縄の昔のくらしを思い浮かべながら、手間ひまかけて作られた香り高いグルクンかまぼこで泡盛を一杯やれば、日頃の疲れも吹き飛ぶ、というもの。

 照屋さんのグルクンかまぼこの店は、大平通りを開南側から入り、20mほど行った右側にある。午後2時くらいに開店し、売り切れじまい。1本550円。4、5人で食べてちょうどいいくらいの、たっぷりとした大きさだ。手間ひまかけて、しかもこの大きさで550円は安い。

 グルクンかまぼこは、買ったその日のうちが一番おいしい。冷蔵庫に入れておけば数日は問題ないが、香りと食感がどうしても落ちていくので、その日のうちに食べることをお薦めする。

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