2008年10月

2008年10月27日

[第83話 沖縄] 与那国の土で作る急須

 急須を使う時には全く意識しないが、急須を「作る」となると、複雑なつくりで難しそう。そんな急須を日本最西端の与那国島で手がけている陶芸家がいる。山口和昇さん、京子さん夫妻。与那国の土に助けられて、「用の美」の極みともいえる急須を高い技術で作り続ける。

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 一説によると、急須を手がける作家は、日本全体でも10人いるかいないか。ことほどさように、急須は難しい。例えば、持ち手。この取り付け角度は、注ぎ口から直角ではダメ。少し内側に、注ぎ口との間が80度くらいの角度でついていないと、注ぐ時にうまくいかない。もし直角についていたら、注ぐ際にひじが張ってしまう。上下方向の角度も微妙なものがある。

 注ぎ口のキレが悪ければ使えないし、ふたもちゃんと噛み合わないと困る。ふたは焼いている間に縮まるから、その分を計算に入れて、気持ち大きめにしておく。

 茶葉が通ってしまわないように、注ぎ口の内側に小さな穴をたくさん開けるのも根気がいる。「年をとってくると、こういう作業がだんだん下手になってくるんですよ」と山口さんは笑う。たしかに、この細かい穴を一つひとつきれいに手で開けるのは相当の集中力がいりそうだ。

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 もっと骨太な問題がある。急須のように、小ぶりで複雑な構造の陶器は、全体に薄くしなければならない。薄くすれば、当然、壊れやすくなる。山口さんの場合、与那国の土の質が、そこを助けている。与那国の土は油分が多く、粘りが強いからだ。粘りの強い与那国の土だからこそ薄い急須を作ることができる。

 与那国の土にひかれて与那国に住んだ、というわけではない。27年前、「気に入って」住んだ土地に、たまたま素晴らしい土があり、その特徴を生かして急須を作り始めた。身近に産出するものを活かすという意味で、まさに地産地消を地でいっているのが山口さんの急須づくりといえそうだ。

 山口さんの急須は炭化急須。炭化という焼締めの技法が、さまざまな表情を作り出す。急須は、さやと呼ばれる磁器の箱に入れた状態で、窯の中で焼く。その際、さやの中の急須の周りに炭やもみがらを入れておくと、焼いている間にそれらが燃焼して表面にさまざまな色の変化がつく。

 さやのふたを少し開けておくと、空気が入って焼き色が全く変わる。同じ土なのに、閉じて焼けば黒、すき間を開けて焼けば土色に。下の写真の急須はその例で、いずれも同じ土で作られている。

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 形はきわめて端正。その繊細なフォルムに、抑制のきいた焼締めのトーンがよくマッチする。荒々しいタッチの焼締めの対極にある焼締め、とも言えそうだ。

 山口さんの作品は、釉薬をかけない焼締めが中心だが、白い粉引も少し作る。「釉薬もいろいろやりましたが、最後は、灰と長石だけの最もシンプルな釉薬に行き着きました」と山口さん。

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 急須や酒杯などの生活雑器を作るが、一度に大量には焼かない。その結果、さまざまな作品が少しずつ出来上がる。現在は主に石垣島や沖縄本島など、沖縄県内に卸している。

 那覇市内の割烹で、棚に置かれていた急須を見た時、「えらく、いい急須だなあ」と思った。店の人に頼んで棚から下ろしてもらい、手元でよく見ると、自分のハンコが押されていた。パッと見ては気づかなかったが、強く引き寄せられるものがあった。手塩にかけた作品は、すべて山口さんの分身ということなのだろう。

 山口さんの窯は、与那国町字与那国3119、0980-87-2072。

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2008年10月21日

[第82話 食] 見事なバランスの塩味豚だしそば

 10月17日の沖縄そばの日にちなんだ話題は、浦添市にある高江洲そばでいこう。ゆし豆腐がのった豆腐そばが名物で、淡白なゆし豆腐と透明な豚だしスープが実によく合う。その仲をとりもつのが、とろりとするまで煮込んだ軟骨ソーキだ。キーワードは塩味。

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 高江洲そばは地元の人々がたくさん訪れる人気店。昼時ともなれば、多少の行列は覚悟しなければならない。行列嫌いの沖縄県民も、高江洲そばの前では、おとなしく順番を待っている。待たされている人に対する店員の応対はていねいで気持ちよい。

 豆腐そばを注文すると、小さめのどんぶりにたっぷり盛りつけられたそばが登場した。めんは平めんで、それほど強いコシはなく、素直な食感。縮れているので、スープがよく絡んでおいしい。

 そのスープは、豚だしが軸。こっくりと深みがあるが、ドロッとしたような豚骨スープではない。透明でさらさら。深いコクを感じるのは、静かに煮込んでとった豚だしに、昆布だしやかつおだしが合わさっているからか。

 このスープにゆし豆腐がのると何が起きるか。ちょっとドキドキする。豆腐は自己主張があまり強くないので、豚だしスープに入れたら負けてしまうのではないか―。

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 さにあらず。塩味豚だしスープの中で豆腐の味がかえって強調されている。うまい。これは豆腐の底力もあるが、塩味スープが豆腐によくマッチするように上手に作られていることが大きい。

 第3話で紹介した美里そばにもゆし豆腐がのっていて、あれもすばらしくおいしい。美里そばのスープは醤油やかつおの風味もきいていて、それが豆腐の淡白な味とコントラストを見せながら、豆腐をうまく浮かび上がらせていた。高江洲そばはスープが塩味で、ほとんど目立たず、完全にわき役として豆腐を下からひき立てている。

 次は肉。多くの沖縄そば店では、具の肉の味付けはしょうゆと砂糖の甘辛味だが、ここのはなんと塩味。肉は軟骨ソーキで、軟骨がトロリとするまでじっくり煮込んである。この塩味軟骨ソーキが、また不思議なほど、ゆし豆腐と合う。しょうゆ味でなく塩味であることと、豆腐に近いくらいに柔らかな食感であることが決め手とみた。これまた実にうまい。

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 高江洲そばを食べると「バランス」という言葉を思い出す。軟骨ソーキにしても、ゆし豆腐にしても、スープにしても、平めんにしても、一つひとつは、びっくりするような感じではない。肩の力が抜けた、なんとも温和なたたずまい。なのに、それらが一つのどんぶりに納まって、一杯の豆腐そばになったとたんに、何やら妙においしい世界が立ち上がる。作り手の中に「この味」というイメージがしっかりあるからだろう。

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 お母さんが豚骨をじっくり煮込んで作る手づくりそばのイメージ。コシの強い麺や、カツオの強い香りを期待する人には向かないかもしれないが、透明な豚だしのうまみとそれに絡むそばや具のバランスを堪能するには最適だろう。

 むしろ、こういうそばこそが、家庭で作られてきた沖縄そばの味なのではないかと思える。豚だしというと、豚骨ラーメンの白濁スープを思い浮かべる人も多いかもしれないが、沖縄の豚だしは透明でサラサラが普通。高江洲そばのスープはまさにこれだ。

 とはいえ、このそばの味の深さは、マネしようとしても簡単にはできそうにない。スープ、肉、そして何よりもどんぶり全体が持つこのインパクトと見事なバランスは、やはり長い間、毎日、神経を研ぎすませて沖縄そばを作り続けてきたプロだからできること。とことん優しいけれど、人を行列に並ばせるだけの強い力が、どんぶりの中にあふれている。

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 高江洲そばは浦添市伊祖3-36-22、098-878-4201。日曜休。場所はパイプライン通りの伊祖付近なのだが、パイプラインから少し西に入った住宅街の中にあるので、分かりにくい。パイプラインを那覇から宜野湾向けに走って伊祖に入ったら、左手に「高江洲そば駐車場」と書かれたビル1階のゲタばき駐車場が見える。その手前を左折して20mほど坂を登り、右折すると店がある。駐車場は周囲の数カ所に分かれている。

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2008年10月15日

[第81話 食、沖縄] 沖縄の天ぷらは粉もんだった

 粉もん、という言葉が関西にある。発音はコナモン。タコ焼きやお好み焼きのような、小麦粉で作る食べ物全般を指す。

 沖縄の粉もんの代表選手は何だろう。万鐘の答は、天ぷら。湯ぶねから出た時に思いついた新説なので、異論も出そうだが、新説が世間で評価されるには35年くらいかかるもの。まずは、天ぷら粉もん説の決定的証拠をごらんにいれよう。

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 この特大天ぷらは、沖縄本島南部の奥武島(おうじま)にあるテルちゃん鮮魚店の「海ぶとう天ぷら」。プチプチした海藻の海ぶどうと干しえびが入っている。すっかりおなじみになったモズク天ぷらの兄弟分といえそうだ。

 海ぶどう天ぷらにしても、モズク天ぷらにしても、材料とコロモが渾然一体となっているかき揚げタイプ。そこで深刻な問題になるのは、材料とコロモ、いったいどちらがメインなのか、ということだ。

 東京の人は言うだろう。天ぷらのコロモがメインでどうする、コロモがメインのかき揚げがあったら、それは「ケチでまずいかき揚げ」に決まっとる、と。

 沖縄は違う。沖縄の天ぷらにおけるコロモのおいしさは、材料のおいしさと同等か、ヘタをするとそれ以上なのだ。

 現にテルちゃん鮮魚店の海ぶどう天ぷらにしても、材料の海ぶどうや干しえびはオマケみたいなもので、圧倒的な存在感を見せるのはコロモ。というより、これはもはやコロモではなく「小麦粉で作られた生地本体」と言うべきだろう。

 揚げたてを食べると、外側はサクサク、カリカリしていて、中もべたついていない。ほんのり海ぶどうと干しえびの香りがするいわば「揚げお好み焼き」。これを粉もんと言わずして何と言う、ということなのである。

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 かき揚げタイプではなく、中心に確固たる材料が置かれている天ぷらにしても、沖縄の天ぷらは、コロモの存在が非常に大きい。魚天ぷらしかり、イカ天ぷらしかり。沖縄の天ぷらはコロモがあまり薄かったらそれらしくない。

 沖縄の天ぷらは、ごはんのおかずではない。したがって、普通の食堂に行っても、天ぷら定食は存在しない。ではいったい何者かと言うと、本来、天ぷらは行事食の定番のごちそうである。豊かな現代では、それが一皮むけて、日常のおやつになっている。厚いコロモにはしっかり味がついているので、そのまま食べておいしい。

 町には、あちこちに持ち帰り用の天ぷら屋があって、魚天ぷら、イカ天ぷらを両巨頭とし、野菜天ぷらやイモ天ぷらなどが脇をしっかり固めて、おやつシーンの中心的位置を占めている。

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 天ぷら屋は、申し合わせたように黄色っぽい店が多い。つまり、天ぷらは、理屈とか、色気とか、風情とか、体面とか、そういうものをすべて取り払った、身もふたもない世界にデンと存在しているのだ。そのためには、コロモの薄い上品っぽい天ぷらではかえっておかしい。やはり沖縄の天ぷらは、粉もんでないといけない。

 ある日、職場で。だれかが「はーい、天ぷら買ってきたよー。アチコーコー」なんて言いながら、油がちょっとしみた紙袋をポンと置いたら―。メタボが気になる中高年も、ウエストを気にする若い女性も、思わずサッと腰を浮かせて、いい香りのする紙袋の前に踊りながら集まってしまう。おやつの中心には粉もんの天ぷらあり、なのである。

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 テルちゃん鮮魚店は南城市玉城奥武島41、098-948-7920。橋を渡って奥武島に入ったらすぐ左折して100mほど行くと右手にある。天ぷらもおいしいが、店名の通り、鮮魚が本業。小さな店構えながら、刺身が最高のアカジンミーバイからタマン、マクブまで、近海で獲れる新鮮な魚を取り揃えている。夏の間は、奥武島名物、トビイカの一夜干しも人気。

  

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2008年10月09日

[第80話 食] 火腿―ドライ発酵型豚加工品の極み

 第53話で東京・池尻大橋のイタリアンレストラン「パーレンテッシ」の中野秀昭シェフが万鐘島ぶたで天然熟成生ハムを作った話を紹介したが、今回は、豚肉発酵食品の東の横綱、中国の火腿(ホートイ)について。

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 中国ハムとも呼ばれる火腿は、見た目は、モモ1本を丸ごと使うヨーロッパの伝統的な生ハムにそっくりだ。写真は香港・上環の乾物店で見つけた火腿。広東料理のメッカ、香港では、火腿は欠かせない食材である。

 この店主は、品質が優れていることを示すのに「まずは香りをかいで下さい」と火腿の小片を鼻先に持ってきた。チーズのような、強い発酵の香り。味噌のような香りも含まれている。「すばらしいでしょう」。店主は誇らしげな顔を見せた。

 中野シェフの作った天然熟成の生ハムも、チーズのような発酵の香りがしたが、火腿は同様の香りがさらに強烈だ。目隠しして、その姿を見せることなく、香りだけをかいでもらって「何でしょう」と問えば、10人中8人は「チーズ。それもかなり発酵したもの」と答えるに違いない。残り2人は「味噌とチーズを混ぜたもの」と答え、「肉」と言う人はだれもいない―。そんな香りだ。

 浙江省の金華豚で作られる金華火腿が最高級と言われるが、雲南省・宣威の宣威火腿など、中国各地にさまざまな火腿がある。

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 火腿をごく薄く切ってそのまま食べたら、最高の酒肴になる。発酵のうまみはとことん深くて強いが、食べ飽きることがなく、飲んでは食べ、食べては飲みと、際限なく手が伸びてしまう。ふと気がつけば、酩酊状態。

 料理では、煮物の味つけに加えたり、高級なスープをとるのに使われる。火腿とその他の肉などでとる透明な上湯(しゃんたん)がその代表。試みに火腿だけでスープをとってみると、酸味と塩気を伴ったうまみの強いだしがとれる。この酸味こそ、火腿がよく乳酸発酵していることを示すのではないだろうか。

 火腿は、塩漬けし、乾燥させ、熟成させる過程で、カビを生やす。カビといえば、日本のかつおぶしのお家芸。万鐘本店第77話で、かびつけしない裸節を好む沖縄のことを書いたが、日本のかつおぶしの多くは、カビつけして枯れ節として出荷される。

 火腿の場合もかつおぶしの場合も、カビは、肉の中に残る水分を吸収してさらに乾燥を進めるとともに、タンパク質をうまみの素であるアミノ酸に変え、併せて脂肪を分解するという。

 発酵食品の権威、東京農大の小泉武夫教授らの研究によると、火腿の水分は23.9%。カビの正体はアスペルギウス属とペニシリウム属だそうだ。前者が主にタンパク質、後者が主に脂質を分解する酵素を出しているという(和久、角田、進藤、小泉「中国の金華火腿に関する研究」 第1報、第2報を参照)。

 そう言えば、脂の乗ったかつおでたたきを作る時、ほんの表面を焙るだけなのにジュワジュワと脂がしたたり落ちて、煙が立ち上る。それくらいたっぷり含まれているかつおの脂も、カビの手にかかるときれいに分解されてしまうということか。その結果、かつおぶしを湯に入れても、脂が浮くようなことはない。

 ヨーロッパの生ハムでも、熟成の途中で、湿気の多い特別の部屋に置いてカビを生やしているものがある。カビの果たす役割の大きさと、それを洋の東西で、まるで申し合わせたようにちゃんと活用してきた人間の知恵には驚くほかない。

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 火腿の名前は、水分が抜けて熟成した身が炎のような赤い色になるところから来ている。上等のかつおぶしも、透明感のある赤い色。こうしてみてくると、カビの働きといい、色といい、火腿は「豚で作ったかつおぶし」と言えなくもない。もちろん、火腿とかつおぶしは味も香りも全く違うが。

 火腿を作るには、初期の段階で、塩分に守られながらも、やはり大陸性の乾燥気候の下で自然に水分が飛んでいくことが必須条件だろう。例えば、宣威火腿は、沖縄よりも緯度の低い、中国最南西部の雲南省で作られている。と聞けば、どんな暑いところかと想像してしまうが、実は、宣威市は雲南高原の東北部にあり、年平均気温は13.4℃にすぎない。特に冬から春にかけてはよく乾燥しているという。

 逆に、海風に吹かれまくって、ひたすら湿気が多くて暑い沖縄。季節や場所をよほど選んだとしても、自然の中で、肉を腐らせずに乾燥させるのは難しいだろう。だから沖縄では、ウェット発酵型のスーチカー(塩漬け豚肉)は発達したが、ドライ発酵型の火腿のような豚肉発酵食品は生まれなかったのである。

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2008年10月03日

[第79話 沖縄] 氷のような透明感 琉球ガラス

 沖縄のみやげ品店には必ずといっていいほど置かれている琉球ガラス。厚みと柔らかなタッチが特徴だ。今回は、琉球ガラスの掘り出し物を見つける穴場をご紹介。

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 那覇の奥原硝子製造所は歴史の古いガラス工房。ここのギャラリーが面白い。ギャラリーといっても、大量の作品が無造作に山積みされている状態で、重ねて置かれているコップの表面にはホコリも。通路にも出荷用の段ボール箱がたくさん積まれている。それもそのはず、ここは、飲食店での利用など、卸しで買い付ける人が主に訪れる場所で、一般客はあまり来ない。

 だが、こうした中から、少し時間をかけて、面白い調子のものを掘り出すのは楽しい。もちろん個人が訪れてじっくり選んだり、買ったりすることはいくらでもできる。

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 琉球ガラスは、もともと米軍占領下でコーラの空き瓶などを利用して作られたコップなどに端を発するとされる。だが、技巧の発達とともに、リサイクルガラスではなく、硅砂などのガラス原料から作られる作品も増えてきた。そんな中で奥原硝子は一貫してリサイクルガラスを中心に製造している。

 「ガラス原料よりも、リサイクルガラスで作ったものの方が透明感があるんです」と話すのは、奥原硝子営業担当の宮城和六さん。宮城さんによると、その透明感は「氷のような透明感」だという。

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 改めて普通のガラスコップと比べてみた。確かに、リサイクルガラスで作られたコップの方が透明感がある。普通のコップは、やや白い感じがする。加えて、琉球ガラスは厚みがあるので、それが「氷のような」透明感に感じられるのかもしれない。

 厚めになるのは、リサイクルガラスは膨張率が低く、膨らませる際にあまり伸びないから。ある程度の厚さまでで膨らませるのを止めないと、風船が割れるのと同じように、壊れてしまう。

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 ただし、赤色のものは、赤い部分の膨張率が高いので、それに合わせて全体を膨張率の高いガラス原料で作るのだそうだ。赤い部分の原材料費が他の色に比べて高いため、作品全体も高めになる。

 切子のような硬質で鋭利な芸術性はないが、まるで焼き物のようなゆがみを含んだ形の面白さ、大らかさを感じさせる厚めの風合い、そして、宮城さんの言う氷のような透明感が琉球ガラスの魅力だ。もちろん、一つひとつが手作り。だからこそ、数多くの作品の中から、自分がピンとくる掘り出し物を選ぶのが楽しみになる。

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 奥原硝子製造所ギャラリーは那覇市与儀1丁目26-11-1F、098-832-4346。国道330号ひめゆり通りの与儀公園を寄宮方面に曲がり、沖縄セントラル病院の前を過ぎて次の細い路地を右折する。すずらん食堂の隣り。ギャラリーの営業時間は特に決まっていないが、午後2時から6時までは開いていることが多い。もしギャラリーに人がいなければ、隣りのすずらん食堂で聞けば教えてくれる。



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