2009年03月

2009年03月26日

[第108話 食] てだこそばの噛みごたえある麺

 浦添にはおいしい沖縄そば店が多いような気がする。万鐘本店でも第82話で高江洲そばを紹介した。今回は、同じ浦添市のてだこそば。個性的な自家製麺が魅力の店だ。

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 人気のある沖縄そばの麺にはいくつかのタイプがある。一つは、のどごしのよい細めん。亀浜製麺所が作る麺がその代表だろう。細くて薄いがコシがあり、汁によくからむ。なめらかで、スルスルと口に入っていく。「宮古そば」と呼ばれる麺がこのタイプ。こうした麺の作り方と亀浜製麺所の話は第45話で紹介した。

 これと正反対なのが「やんばるそば」と呼ばれる太い麺。手打ち風で凸凹しており、ちょっとごつごつした食感で、噛みごたえがある。確かに北部のそばの有名店はこのタイプの麺を出す店が多い。大東そばも同系統。

 てだこそばの麺は、なめらか細めんでないことは確か。噛みごたえ十分という意味で、やんばる手打ちそばの系統といえそうだ。しかし―。

 よくあるやんばる手打ちそばの場合は、太いうえに太さにかなりの凸凹があるので、細めんのようにスルスルと吸い上げるのは難しい。というより、やんばる手打ちそばは太くてボリュームがあるので、ひと箸で持ち上げた全量を1回では口に納めきれない。短い長さで噛み切ってはモグモグして飲み下し、またすぐに噛み切ってはモグモグして飲み下し、といった具合に、断続的に食べ進むことになる。

 てだこそばの麺は、やんばる手打ちそば風の凸凹のある固めの麺ではありながら、太さをその半分くらいに抑えているので、スルスルと食べることができるのだ。何気なく食べ始めると、細めんなのかなと思うほどの口あたり。しかし麺が舌に触れ、奥歯で噛む段になると、それが細めんでないことはすぐに分かる。

 てだこそばの麺は、あまりスルスルと一気にたくさん口に入れてしまわない方がいい。適量入れては、モグモグとよく噛んで、その歯ごたえをじっくり楽しむのが正解だろう。

 細めんの沖縄そばは、熱い汁に入れて時間が経つとどうしてもコシが弱くなってしまうが、てだこそばの麺は、相当に熱い汁に浸っていても長時間にわたって噛みごたえが持続する。

 汁や具も、この麺が生きるように工夫されている。代表メニューの、三枚肉がのった沖縄そば。汁は白濁した豚骨スープで、麺によくからむ。強い麺なので、それに負けないだけの強さをもった汁にしてある。三枚肉の煮方も同様。とろけるまで柔らかくしてしまうと麺と釣り合わなくなるからだろう、柔らかいけれどもある程度の歯ごたえを残していて、うまい。

 てだこそばのソーキそばには軟骨ソーキがのっている。軟骨ソーキは、普通のあばら肉のソーキとは違うが、要は、普通のソーキの骨の部分を軟骨に置き換えたものを思い浮かべればいい。軟骨にとろり感が出るまでじっくり煮たものは、軟骨の部分も含めてすべて食べられる。てだこそばの軟骨もとろりとしていておいしい。とろり軟骨と白濁スープとの相性のよさは、高江洲そばの巻でも指摘した。

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 タコス風の豆腐そばといった変わりそばメニューもいろいろあるが、まずは、三枚肉のせ沖縄そばとソーキそばをお試しあれ。麺の噛みごたえを求める向きには最高のそば。好みに合わせて、麺を柔らかめにゆでてもらうこともできる。

 てだこそばは浦添市仲間1-2-2 コーポ西原101、098-875-5952、月曜休。

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2009年03月20日

[第107話 食、沖縄] ターンム料理いろいろ

 ターンムと言えば、盆や正月などのめでたい席に必ず出される島のイモ。さまざまなターンムの食べ方を、ターンムの産地、金武町にあるカフェレストラン「長楽」にナビゲートしてもらおう。

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 ターンムは、漢字で書けば田芋。その名の通り、田んぼで栽培するイモだ。ただし、水があればいいというものではなく、その水が流れていないとうまく育たないデリケートなイモ。子イモが増えるのを子孫繁栄になぞらえた縁起物として、めでたい行事で食される。県内の主産地は金武町と宜野湾市。

 ターンムは、すーっと伸びた茎にハート型の大きな葉がついている。つまり、ジャガイモ、サツマイモ、ヤム、タロの世界4大イモの中では、タロの仲間。本土ではサトイモやヤツガシラが同じ仲間だ。沖縄には、ターンムとよく似ているが、水気のない畑で作られるチンヌクというタロ系のイモも別にある。

 さて、そのターンムの食べ方だが、長楽には、「田いも膳」というターンムづくしの定食がある。代表的なターンム料理はほぼこの中に含まれているので、この田いも膳を、一皿一皿見ていくことにしよう。

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 まずドゥルワカシー。ターンムを煮崩し、豚肉や椎茸などと合わせてよく練ったものだ。ねっとりと粘りの強いターンムの食感とうまみのある具材の取り合わせが面白い。こういう豚味、だし味で、かつこの食感という食べ物は、ほかにはあまりないのではないか。

 ドゥルワカシーをまるめて油で揚げたのがドゥル天。まるめて揚げる、と言えば簡単に聞こえるかもしれないが、ドゥルワカシーそのままでは水分が多すぎて、うまく揚げられない。水分を調整し、ターンムの茎のムジを加えて初めてドゥル天の生地になる。

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 ディンガクはターンムを煮崩して砂糖を加えたもの。本土の正月料理で出てくるきんとんのような感じの箸休めだが、ディンガクの方がきんとんよりも粘りが強い。これは作るのが割に簡単なので、家庭でよく作られる。

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 から揚げも家庭でよく作られる。ターンムを素揚げし、砂糖醤油にくぐらせたもの。ただし、揚げる時にコツがある。「素揚げの際には200度以上で揚げます」とプロのこつを話すのは長楽の豊川善規シェフ。高温で揚げれば表面がせんべいのようになり、砂糖醤油にくぐらせた後でもカリっとした食感になる。

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 最後になったが、2枚目の田いも膳の全体写真でごはんの横にドンとすわっているのがムジ汁。ムジはターンムの茎。長楽のムジ汁は白みそ仕立て。ムジ汁については万鐘本店第58話で那覇・栄町市場内のムジ汁専門店を紹介したことがある。長楽の田いも膳には、そのムジをゆがいて酢味噌をかけたものと、ムジの肉巻きも小鉢でつく。いずれもムジのシャクシャクした感じが楽しい。

 田いも膳は以上だが、長楽にはもう一つ、ターンムを生かしたメニューがある。田いも饅頭がそれ。ディンガクをさらにつやよく練り上げたようなターンム餡が中華まんじゅう風のソフトな饅頭生地に包まれている。冷めてもおいしいが、電子レンジで少し温めると、餡の香りが強調されておいしい。

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 長楽は、金武町字金武245、098-968-7666、火曜定休。HPはこちら。 

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2009年03月14日

[第106話 沖縄] 現代によみがえる六諭衍義

 六諭衍義、という古い本がある。「りくゆえんぎ」と読む。近世琉球の傑出した政治家で教育者の程順則が、中国から持ち帰った道徳の本。やがて日本各地にも広まり、江戸時代から明治期の日本の道徳教育に大きな影響を与えた。

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 那覇市久米―。1392年、中国福建省からやってきた人々が住み着いた場所として知られる。当時の琉球王国は明の朝貢貿易の一翼を担っていたが、そのために必要な諸技術や中国語での文書作成ノウハウをもたらしたのがこの「久米三十六姓」と呼ばれる人々だった。彼らは琉球に根付き、一族からは後に琉球王朝の高官を務めるような優れた人材が出た。

 その中でもとりわけ有名なのが、1663年に久米で生まれた程順則。病死した父の跡を継ぎ、弱冠15歳で古波蔵村の村長になった。その後、中国に留学。生涯で計4回にわたって中国に赴き、そこで学んだ新しい知識や技術を琉球に伝えた。

 六諭衍義は明末清初に書かれた書物で、儒教の考え方に基づいて、人のとるべき道を諭している。程順則は、4回目の中国行きの際、かねてから道徳書として優れていると考えていた六諭衍義を福州で自費印刷し、版木ともども琉球に持ち帰って広めた。

 やがて、六諭衍義は、薩摩の島津氏を通じて江戸幕府に献上され、時の将軍徳川吉宗の目に止まる。吉宗はその内容に心を動かされ、儒学者の室鳩巣に和訳させた。六諭衍義は、その後、日本の道徳教育書のロングセラーになり、江戸中期から明治44年に至るまで、数多くの版元から繰り返し出版された。戦前の日本の道徳教育に与えた影響は計り知れない。

 六諭衍義は、次の6つの教えを説く。

(1)孝順父母―父母に孝行し、いいつけを守りなさい
(2)尊敬長上―年上の人を尊敬しなさい
(3)和睦郷里―郷里と和睦しなさい
(4)教訓子弟―子弟を教え導きなさい
(5)各安生理―自分の運命に従いなさい
(6)毋作非為―悪いことをしてはいけない

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 こうした儒教的な教えは、古くさいイメージを持たれるかもしれないが、実際に読んでみると、現代にも通じる含蓄がちゃんとあって興味深い。例えば(5)の「各安生理―おのおの生理に安んぜよ」。表面的には、封建的な身分社会の中で、それぞれの身分の枠組みの中で一生懸命に生きろ、と言っているようだが、その含意はもう少し深いところにありそうだ。

 というのも、今は身分制こそないが、人それぞれの個性や先天的な得意、不得意ははっきりあるし、育つ環境も決して自由に選べない。その意味で、現代人もそれぞれの「運命」を背負っている。そうした己の運命をよく知らなければ自分の可能性を花開かせることはできない。「自分の運命を知る」という言い方は、今ははやらないかもしれないが、自己実現のためには決定的に重要だ。

 儒教的な教えを100%受け入れることは難しいにしても、六諭衍義の教えの中に潜む普遍的な意味が、現代の問題を鋭く突いていると思えるところもある。その意味で、いま六諭衍義を読むことはエキサイティングな体験だ。

 沖縄では「孝順父母」の考え方は、今も広く根づいているといわれる。例えば、小学生からお年寄りまでだれでも知っている「でぃんさぐぬ花」の1番の歌詞は「てぃんさぐの花は爪先に染めて 親の言うことは心に染めなさい」。結婚式の披露宴では、新郎新婦と並んで両親がひな壇に座る。こうした考え方の定着に六諭衍義が一役買った可能性は高い。もっとも、現代のモラルの低下ぶりを嘆くお年寄りは少なくないが。

 久米三十六姓の末裔たちは、「久米崇聖会」という団体に集い、孔子廟と関連施設を管理しながら、久米三十六姓の人々が残した事蹟を研究したり、広めたりする活動をしている。六諭衍義については、現代にも通じる教えを子供たちに伝えたいと、マンガと文章で語る「小中学生のための現代版六諭衍義大義」を発刊した(冒頭と2枚目の写真右)。

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 孔子廟の中心に位置するのが大成殿(上の写真)。一族の人なのか、供え物をたくさん持参して、熱心に祈りを捧げる姿が見られた。

 むろん、久米三十六姓の子孫たちが特に四書五経に通じているというわけではない。「会員の中でも論語を読んでいるような人は残念ながら少ないですね」と話すのは、久米崇聖会事務局長の東恩納正さん。だからこそ、ともに学ぶスタンスで、関連の本を出したり、中国文学専門家を招いて論語の講演会を催したりしているのだろう。

 中国福建省と琉球、日本の地理的な関係は、万鐘本店第22話で紹介した南北逆さ地図の東シナ海拡大図を改めてご覧いただきたい。琉球から福建まで、実にきれいな弧を描いているのがよく分かる。福建と琉球が交流したのは、こうした地理的必然が前提にあったことは間違いなさそうだ。

 孔子廟は那覇市若狭1-25-1、098-868-8598。久米崇聖会のHPはこちら。「小中学生のための現代版六諭衍義大義」は同会で1部630円で販売している。

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2009年03月08日

[第105話 食] じーまーみ粉入りの三月菓子

 3月3日は、潮干狩りなどをしながら浜で遊ぶ「浜下り(ハマウリ)」の光景が沖縄各地で見られる。浜下りに持っていくのが三月菓子。今回はその三月菓子と浜下りにまつわる民話の話題をお届けしよう。ただし、この「3月3日」は旧暦。ことしの新暦では3月29日が旧3月3日にあたるので、実際はまだ少し先だが、「伝統行事に臨む予習」ということで。

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 三月菓子は、サーターアンダギーを四角くした感じの揚げ菓子。サンガツガシではなくサンガチグヮーシが沖式発音。各家庭で作られるが、専門店もある。個性的な三月菓子で知られるのが豊見城市の「とよみテンプラ店」。固定ファンをがっちりつかんでいる。

 店主の米須富子さんによると、三月菓子の生地は、小麦粉、卵、砂糖がベースになるところはサーターアンダギーと同じだが、水分が違う。サーターアンダギーの生地は柔らかいので、手に油をつけてそっと丸めないと、べたべたした生地が手にくっついてしまう。

 これに対して三月菓子の生地は水分が少なく、平らにのして包丁で四角く切って形を作る。「生地の水気は、その日の湿気などによって加減しますよ」と米須さん。サーターアンダギーと同様に、三月菓子にもふくらし粉が少し入るが、水気が少ない分だけ揚げあがりはしっかりと固くなる。

 米須さんの三月菓子づくり歴は長い。かつては大規模に生産し、大手のスーパーに納めていたこともあるという。今はほとんど1人で、毎朝4時から手づくりし、自分の店頭で販売する。その個性的な味を知るたくさんのファンが買っていく。

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 米須さんの三月菓子がよくある三月菓子と違うのは、生地にじーまーみ(ピーナツ)の粉が練り込んであること。その結果、味と香りが濃厚になる。「うちの三月菓子を食べ慣れた方がよそのを食べると、少しモノ足りないような感じを受けるみたい」と米須さんは言う。

 確かに濃厚だ。口に含むとじーまーみの香りが鼻をくすぐり、しっかりと固い生地をかむと、タンパク質豊富な豆特有の濃厚な味が広がっていく。きな粉の豊かな味わいにも似ている。じーまーみもダイズも、栄養たっぷりの豆だからだろう。

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 豆は、要するに種(たね)なので、植物が芽を出す際、つまり生命が再生する時に必要な栄養がすべて入っている。だから、とにかく栄養豊富。ちょっと大げさに言えば、人類は古今東西、そんな豆から高い栄養を得ることで生き延びてきた。世界各地の伝統食の基本形はどれもハンで押したように「穀類+豆」だ。

 豆を粉にひくのは、今の日本ではきな粉くらいかもしれないが、例えば、豆食大国インドでは、豆の粉を練った生地を丸めて揚げたものを煮込んでベジタリアンカレーを作ったりする。

 浜下りは「女性の休日」「潮干狩り」。のどかなイメージが定着しているが、もともとは浜辺の白砂で身を清める意味があったという。その起こりになったとも言われる民話は、ある姫が、美男に化けた蛇の汚れを浜の白砂で落としたというもの。全国の民話を集めた「スーちゃんの妖怪通信」に、読谷村に伝わるこの口承民話が採録されているので、ジャンプして一読を。ストーリーもだが、言葉づかいが最高に面白い。

 もう一つ、スーちゃんの妖怪通信には、この話にそっくりの鳥取に伝わる民話というのも載っているので、ぜひ読み比べていただきたい。あきれるほどよく似ていて、ちょっとびっくりする。なぜ鳥取と沖縄なのか全く分からないが、古い時代には、鳥取と沖縄の間に、人やモノがひんぱんに行き来する航路があったのかもしれない。

 とよみテンプラ店は、豊見城市字高安605-1、098-850-7787。

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2009年03月02日

[第104話 食、南] 窯焼きのものすごい遠赤パワー

 タンドールで焼いたナンのおいしさはひとしお。表面はカリッと、中はしっとり仕上がるからだ。タンドールの内側に貼付けたナン生地はみるみるうちに火が通る。写真は沖縄市のプラザハウスにあるインド料理店クリシュナ。

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 タンドールの中で鶏を焼いたのがタンドリーチキン。これも中がジューシーに仕上がるのでおいしい。その秘密は、熾きで加熱されたタンドールの分厚い壁が放つ遠赤外線にある。タンドールの素材は、粘土にワラを混ぜたものなど。

 窯の形はタンドールとは違うが、ピザを焼く窯も同じ原理だ。インターネットで調べてみると、窯焼きのおいしさが忘れられずに、自分で窯を作ってしまう人もいるらしい。石を組んで作る窯のキットなども売られている。

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 写真の窯を作ったのは、第86話で紹介した竪琴「あやはべる」の製作者、高良輝幸さん。内部に熾きを入れ窯をよく加熱してから、ピザなどを焼く。生のピザを入れて10秒もすると、表面のチーズが溶けてふつふつ言い出す。1分ほどできつね色に。

 高良さんの窯の素材は、沖縄の赤瓦などを作るのと同じ赤土の粘土。これにワラを混ぜて耐火性を高めている。土が2層になっていて、間に空気の断熱層がある。内側の層を作ってから、空き缶を立て、その上に外側の層を乗せるのだ。表面は、防水のために漆喰を塗った。

 窯では、「余熱」もさることながら、高温に熱せられた窯自体が放つ遠赤外線が食材を加熱する。遠赤外線の周波数はピザなど食材の分子の振動とほぼ同じ。このため、遠赤外線は食材に吸収されやすく、食材の分子の振動を活発にして発熱させる。こうした遠赤加熱の方が、熱風などによる加熱よりも加熱効率が圧倒的に高いのだそうだ。その違いは、ゼロがいくつも違うほど違うらしい。

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 だから、ナンやピザのように薄い材料のみならず、焼きリンゴやバゲットパンなども短時間で焼ける。むろんピザに比べれば時間はかかるが、それでも高良さんの窯では10ー15分といったところ。もしオーブンのような加熱だったら、こんな短時間で焼き上がることはないし、急いで火を強くしようものならたちまちこげてしまうだろう。

 こうした土や石の窯は世界各地に見られる。例えば、下の写真は南アフリカ共和国の農村で見かけた伝統的な窯。彼女たちは、この中にパン生地を入れてパンを焼く。

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 作り方はこうだ。まず、後に空洞部分になる真ん中のところに草や小枝で小さな山を作る。その上に土と牛糞を混ぜたものを塗っていく。いったん塗ってから、よく乾かし、さらにその上にまた塗る。こうして層を3つ、4つ作ったら、最初の草と小枝の部分を燃やして空洞を空け、出来上がり。使い方は高良さんの窯と同じ。薪を入れて燃やし、窯をよく熱した後、パン生地を入れて焼き上がりを待つ。

 牛糞は、日本のそれとは全く違う。今の日本の牛は濃厚飼料を与えられているので、牛糞には高栄養の成分がたくさん含まれているし、臭いもきつい。南アフリカの牛は放牧100%。こうした牛糞を割ってみると、緑色の残る草の繊維がびっしり詰まっているのが分かる。ほとんど無臭。タンドールや高良さんの窯の「粘土+ワラ」と似た効果が得られそうだ。

 クリシュナは沖縄県沖縄市久保田3-1-12 プラザハウス3階、098-931-0885。

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