2009年04月

2009年04月25日

[第113話 食] ジミー「ハンス・ミラー」の極上洋菓子

 ジミーといえば、沖縄で最もポピュラーな洋菓子屋さん。パン類や輸入食品も充実しているが、「安くておいしいケーキ」はジミーの看板といっていい。そのジミーに、とっておきの洋焼き菓子とクッキーがある。「ハンス・ミラー」ブランドの製品群だ。

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 ジミーは、現相談役の稲嶺盛保さんが1956年に創業。輸入雑貨店からスタートしたが、やがて自店でパンを焼き始めた。米軍占領下の貧しい時代。パンを焼く芳香は、豊かさを求めていた人々をとりこにし、ジミーベーカリーはたちまち評判の店になった。

 稲嶺さんは、創業以前に米軍基地で働いていた頃から培ったハワイとのつながりを生かし、アメリカンのケーキやクッキーの製造技術を導入。日本人の口に合うように独自にアレンジしながら、パウンドケーキ、バナナケーキなどのヒット商品を生み出した。その結果、沖縄でケーキといえばジミー、と言われる存在に。

 ジミーは、ハワイだけではなく、ヨーロッパからも専門家をたびたび招へいして、ケーキやクッキー、パン類の商品開発、品質向上を図ってきた。その中で1995年から4年間、沖縄に滞在して焼き菓子やクッキーの指導をしたのが、スイス出身のハンス・ミラーさんだった。

 ミラーさんは家族とともに沖縄に赴任し、毎日、自転車でジミーに通勤した。ミラーさんの薫陶を受けた1人、ベーカリー製造部の前原信一郎課長は「やさしい人でしたね」と述懐する。

 前原さんによると、それ以前にジミーで確立していたアメリカンの製造技術に比べて、ミラーさんの技術はヨーロッパ流の細かい職人的な手仕事の色彩が強かったという。ジミーの製品に独自の繊細さをもたらしたのがミラーさんだったと言えるかもしれない。

 そのミラーさんが伝えたレシピのいくつかが、ハンス・ミラーという本人の名前をそのままとったブランドになった。


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 まずは、焼き菓子のエンガディーナ。ミラーさんの故郷スイスの伝統菓子で、クッキー生地の間にクルミとキャラメルがたっぷりはさまれている。複雑でリッチな味わい。クッキー生地がしっとりしていて、クルミあんによくなじむ。6cm四方ほどの大きさ。


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 ブラウニーもおいしい。ブラウニーはアメリカの国民的スイーツだが、スイス出身の職人の手にかかると、ちゃんとヨーロピアンのお菓子になるから不思議。つまりチョコレートの味はどこまでも深く、シナモンやくるみの豊潤な香りが鼻にぬける。ガトーショコラの深さとブラウニーの軽さとが融合したような味わい。このほか、焼き菓子は、ウインザーケーキやチーズガレットなどもあり、1つ120円から160円ほど。


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 クッキーは、マーガリンではなくバターを使っているので、味、香りとも実に軽やか、爽やか。いくらでも食べてしまう。写真右がパルメザンチーズ、左はピスタチオノア。ほかに、ショコラアマンドとチョコチップの2種類がある。シンプルな缶に入っていて、1缶200g入り、840円。

 ジミーの洋菓子は全般に安い。定番で一番人気のチーズケーキやチョコバターケーキなどは、丸いホールケーキで1500円前後。パウンドケーキやクッキー類も手頃な価格だ。「相談役(創業者の稲嶺盛保さん)は、多くの人にデザートを気軽に食べてほしいと考えて求めやすい価格にしたのだと思います」と菓子部門を統括する稲嶺文子専務が話す。

 その中では「ハンス・ミラー」ブランド製品は若干高い。しかし、それだけの価値はあるし、他社も含めた洋菓子全体の中では決して高い部類に入らないだろう。包装もシンプル。むやみに包装に金をかけた洋菓子が目立つ中で、質実な印象だ。

 沖縄が誇る菓子と言えば、ちんすこうこんぺん、ナントゥー(第111話)などの伝統菓子や紅イモのお菓子を思い浮かべる人が多いだろうが、そればかりではない。ハンス・ミラーもその一つ。「5度目の沖縄」のおみやげには最適だ。

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 ジミーは、大山店や那覇店など、県内各地に店舗がある。赤れんがの建物とオレンジ色のJimmyロゴが目印。大山店は国道58号線沿い、宜野湾市大山2-22-5、098-897-3118。那覇店は新都心の近く、那覇市銘苅3-8-5、098-861-1110。そのほかの店舗など詳しいことは同社HPで。

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2009年04月19日

[第112話 沖縄] ジュンク堂は潜在需要を掘り起こすか

 豊富な品揃えで人気のジュンク堂書店が那覇に出店する。それも東京、札幌、福岡の各店に次ぐ1500坪の売り場面積。その背景には、今は眠っている沖縄の潜在的な書籍需要があるようだ。開店目前の同店を訪ねた。

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 ジュンク堂は全国で38店舗を展開。東京・池袋本店の2000坪を筆頭に、大都市部では、いずれもその地域で1、2を争う売り場面積を確保し、各分野の専門書を含めた豊富な品揃えで顧客を引きつけている。

 ジュンク堂那覇店が入居するのは、那覇の国際通りの中央部にあるむつみ橋から沖映通りを北に入ったビル。かつてダイナハと呼ばれたダイエー那覇店が入っていた建物で、ダイエー撤退後は、長い間、空き状態だった。

 沖縄の人口は138万人、那覇が31万人。人口増加率は全国の中でも高いとはいえ、はたして1500坪の書店を必要とするほどの市場といえるかどうか、ちょっと心配になる。しかも、沖縄の1人あたり書籍購買率は全国で最低クラス。これでは「1500坪」は宙に浮いてしまうのではないか―。

 ジュンク堂那覇店の森本浩平店長にその疑問をぶつけてみたら、興味深いエピソードを披露してくれた。森本さんによると、最低クラスの購買率の中で、例えば岩波書店の本に関しては九州・沖縄で販売数1位。月刊雑誌「文藝春秋」の人口1人当たりの販売数は、都道府県別で堂々全国1位なのだという。

 沖縄が全国で1位とか最下位とかいう項目はたくさんあるので、今さら驚くことはないのかもしれないが、このエピソードは面白い。一般的な書籍の購買率は低いにもかかわらず特定の本は売れる、というのだ。

 岩波書店や文藝春秋が出すものといえば、「流行」とか「売れ筋」より、独自の価値観に基づいた本、ややカタい本が思い浮かぶ。森本さんはこれを「ふみ込んだ本」と表現する。こうした「ふみ込んだ」本は、爆発的に売れることはあまりないから、売り場の小さな書店では十分に取りそろえることが難しい。

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 書籍や出版をめぐる沖縄の事情でもう一つ興味深いのは、県内の出版業者が150社に上ること。1人でやっているような小さな業者も含めての話ではあるが、これは東京に次いで多い。県内で出版される本は全国のトレンドとはほとんど重ならない独自の内容が多いが、「活字」「出版」が身近な営みであることは、どうやら間違いなさそうだ。郷土誌の出版なども非常に盛ん。

 ジュンク堂那覇店でも、地元で出版されている「沖縄本コーナー」はスペースをたっぷりとっている。さらに、同社の全国ネットワークを活用して、沖縄で出版された本を全国で販売することも視野に入れているという。

 活字をめぐるこうした沖縄の文化が今も健在だとすれば、1500坪のジュンク堂那覇店の豊富な品揃えは、「ふみ込んだ本」を求める沖縄の潜在的なニーズを刺激し、掘り起こす可能性が大いにある、ということになる。

 開店を知らせる同店の新聞広告には「図書館よりもっと図書館」とあった。これまで眠っていた書籍ニーズが呼び覚まされれば、ジュンク堂那覇店は沖縄の新名所の一つになるに違いない。

 4月24日の開店まで1週間弱。既に書棚にはたくさんの本が並べられ、地元採用された新人店員への研修指導が活発に行われていた。

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 ジュンク堂書店那覇店は那覇市牧志1丁目19-29。営業時間は10:00-21:00。1階は文芸書、雑誌、文庫本、実用書、2階は各分野の専門書、3階は芸術、語学、児童書、洋書、コミック。盛りだくさんのオープニングイベントが企画されている。詳細はジュンク堂書店のHPで


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2009年04月13日

[第111話 食、沖縄] ナントゥーの味を支える味噌のコク 

 今回の話題は、第36話で紹介したムーチーの「親戚筋」にあたるナントゥー。ナントゥーは、味噌のコクをベースに、しょうがやコショウの香りを効かせた個性豊かなもち菓子。一度食べたらやみつきになる。

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 ナントゥーは、ムーチーと同様、ついたモチではなく、モチ米粉を蒸したもの。表面には白ごまやピーナツがあしらわれ、裏にはサンニンの葉が貼り付いていて、ほんのりとサンニンの香りがする。適当な大きさに切り分けて、サンニンの葉をはがして食べる。

 ナントゥーは、もともと旧正月に各家庭で作られていたが、今は旧正月以外でも店で売られている。だいたいどのスーパーでも、第60話で取り上げたこんぺんなどとともに伝統菓子コーナーに置かれている。原材料は、もち米、砂糖、みそが基本。これにしょうがやヒハツまたはコショウが加わる。

 ヒハツは八重山で作られる香辛料で、ヒハーツ、ピパーチ、フィファーチなど、地域によって発音はさまざま。和名はナガコショウ、英語はロングペッパー。普通のコショウの持つスーッとした香りにナツメグのような甘味を加えた香り、とでも言おうか。ただ、売られているナントゥーの多くはショウガが使われ、ヒハツ入りはあまり見かけない。

 みその深い味が、ナントゥーのうまさを作り出しているのは明らか。みそはうまみ成分のアミノ酸が豊富で、甘味と合わせると独特の味になる。そこに香辛料としてヒハツやコショウ、しょうがの爽快な香りがのり、穏やかな辛みが全体を引き締める。

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 ナントゥーのもう一つの魅力は、その柔らかさ。べったりとして扱いかねるくらい柔らかくのびるのが身上だ。「適当な大きさに切り分けて」と初めの方で簡単に書いたが、実際にやってみると、粘りが強くて簡単には切れない。食べる時もそう。皿やフォークにベッタリくっついてしまうので、格好よく上品に食べようとすると往生する。でも、それくらい柔らかくないとナントゥーらしくない。

 ところが、ところが―。宜野湾市でナントゥーなどのもち類を製造しているオナガ食品の翁長謙さんによれば、昔のナントゥーはもっと固かったらしい。固くするには水分を減らし、こね方も強くする。「もし今、昔風の固いのを出したら、古くなっていると思われてしまうでしょうね」と翁長さんは笑う。時代とともに、人々の好みも変わっていくのだろう。

 もちろん、今風にいくら柔らかく作ったナントゥーでも、時間が経てば自然に固くなる。ナントゥー好きの中には、少し固くなったのを焼いて食べるのが最高、とおっしゃる向きも。

 ある業界関係者によると、柔らかナントゥー全盛の昨今は、なんと、もちを固くしないための専用の添加剤があるのだそうだ。これを使うと柔らかさを保つだけでなく、賞味期限も大幅に延びるらしい。大量生産・長期流通のもち類にはだいたい使われているという。この添加剤、手につくと皮がむけてしまうとのこと。濃度の問題もあるのだろうが、そういう話を聞くと、やはり口に入れるものだからちょっとなあ、と腰がひける。

 ナントゥーを買う時は、原材料欄をしっかり読んだ方がよさそうだ。「もち粉、みそ、砂糖、しょうが、コショウ、ごま」などの知った顔ぶれなら大丈夫。ヒハツやピーナツももちろん問題ない。こういう無添加品は日持ちが悪いので、買ったらあまり日を置かずに食べてしまおう。「固くなったやつを焼いて―」をどうしてもやりたい人は、冷蔵庫に入れればすぐ固くなる(逆に、柔らか好きの人は冷蔵は厳禁)。

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 ところで、みそ味のお菓子は、沖縄以外にもいろいろある。みそ仕立てのナス餡が入ったおやきとか、ゆずの香り豊かなゆべしとか。みそパンという、水分の少ないパンのようなものもあった。みそはコクがあるだけではなく、発酵香やわずかな渋みが全体を複雑で奥行きのある「大人の味」にする効果も期待できる。

 しょうゆはもはや世界中どこに行っても手に入る調味料になったが、アメリカなどで日本料理を教える機会が多い東京・日本橋の日本料理店「ゆかり」三代目、野永喜三夫さんに聞いた話では、感度の高い欧米のシェフの中には既にみそを使いこなす人がいるという。

 フレンチのデザートにみそが使われるようになる日も、そう遠くないかもしれない。コショウやしょうがという彼らにおなじみの素材と「みそ+砂糖」が抜群の組み合わせであることは、ナントゥーが既に証明している。

 ナントゥーは沖縄県内のスーパーならだいたいどこでも置いている。毎日大量に出るものではないので、1軒のぞいて品切れなら別の店をトライすべし。那覇・国際通りから南方向にのびる各市場街や、さらにその奥の農連市場周辺にはもち菓子店がいくつかある。

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2009年04月07日

[第110話 食] マンビカーの絶品魚フライ

 魚フライという、特に珍しくもない食べ物が今回のテーマ。その主役はマンビカー。マンビカーにパン粉のコロモをつけて揚げた魚フライは絶品だ。

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 魚フライといえば、何やら氏素性の分からない魚の切り身がパン粉に包まれて揚げられている姿が脳裏に浮かぶ。お昼の400円弁当の常連。ごはんの上に鎮座している魚フライはころもがふやけていたりするので、あまり上等のイメージではないかも。

 しかし魚フライが好きという人は少なくない。同じフライでもカキフライやトンカツとなると、ちょっと身構えるかもしれないが、魚フライならば、肩の力を抜いて、ふるさとに帰ったような安心感の中で何気なくパクパクと食べてしまう。

 魚フライにしておいしい魚は―。沖縄ではマンビカーを推す。標準語ではシイラ。調べてみると、関東などではシイラはほとんど食べられていないらしい。本土では日本海側の島根あたりが主な消費地のようだ。沖縄ではよく食べる。

 マンビカーは大きい。沖縄市漁協併設の鮮魚店パヤオでは、マグロ類といっしょにごろごろとプラ舟に入れて売られていた。体長1m近い圧倒的な存在感。プラ舟の前を通りかかった客が「おっ」と小さな感嘆の声を上げて足を止める。

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 見ての通り、マンビカーはちょっと異様な感じの顔だち。人で言えば、おでこから上の部分が大きくて、目がずいぶん下の方についている。マグロがコロコロとはちきれんばかりの体つきをしているのに比べると、マンビカーは全体に薄べったく、スリムだ。

 この日のパヤオでの価格は、丸のままの状態で1kg420円。価格が手頃なこともあってか、大きな一尾をおろしてもらおうとする客が2組続けて現われた。

 初めの主婦は「とてもおいしいですよ。魚フライにします。パン粉のコロモをつけて」。次の初老の男性は「天ぷらとか、フライとか。バター焼きもいいね」。2人とも、よく買っているらしい。次の写真はおろした状態のマンビカー。生を見た感じはハマチのような色をしているが、よく見れば脂肪分は少なく、透明感がある。やはり白身魚。薄べったい魚ではあるが、なにしろ大きいので、食べでは充分にありそうだ。

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 マンビカーの魚フライは、パサパサせずにしっとりしていて、同時にほどほどの歯ごたえがある。厚くしすぎると衣とバランスがとれないので、1cmから1.5cmくらいの厚さに切り、パン粉をつけて揚げる。適度な柔らかさと噛みごたえ。口触りと口の中に広がるうまみが、衣のサクサク感と渾然一体となって実においしい。

 マンビカーの魚フライを出す店でお勧めするのは北谷漁協女性部が経営する「お魚屋」。ここのマンビカーフライは、外はサクサク、中はしっとり。バランスがいいのだろう、どんどん箸がのびる。冒頭のアップ写真もここの作品。女性部は海人の奥さんや娘がメンバーで、魚フライのほかに、バター焼きやまーす煮(塩味の煮付け)なども出している。

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 お魚屋は北谷町字港4番、098-926-2466、水曜定休。パヤオは沖縄市泡瀬1-11-34 泡瀬漁港内、098-938-5811。


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2009年04月01日

[第109話 沖縄] 落ち着きと緑を楽しむ奥の里

 沖縄本島北部東側の最北に位置する国頭村の奥。北部も含めて、ひなびた場所が本当に少なくなってしまった沖縄で、今もしっとりとした落ち着きと静けさを感じることができる貴重な集落だ。外部の者が気軽に泊れる「奥やんばるの里」を紹介しよう。

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 奥は、国道58号線をひたすら北上して沖縄本島北端の辺戸岬を過ぎ、道が東進した後に南下を始めて最初に入る集落。北端をさらに過ぎた先、というその位置が、「奥」の名をリアルなものにしている。その南の楚洲、安田、安波などの集落が東海岸の道路を南から攻め上る位置にあることを考えると、事実上、奥が「一番奥」のイメージになるのかもしれない。

 奥集落は約80世帯。人々は昔ながらの集落の共同性を大切にしながら、農業を中心に静かに暮らす。特産品はお茶。一番茶の半分以上は静岡に販売され、静岡茶の一部になっているという。

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 奥やんばるの里は、奥集落が管理運営にあたっている。伝統的な民家の間取りを再現した赤瓦の一軒家が6棟。建材は現在のものなので、古民家の再現とは違うが、間取りは「一番座」「二番座」といった伝統的な沖縄式だ。

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 キャンプ場のバンガローならば、寝具も炊事道具も自分で持ち込まねばならないが、ここは寝具はもちろん、鍋からおたままでの各種炊事道具、皿や茶碗などの食器類がすべて用意されている。炊飯器や電子レンジ、冷蔵庫もある。持っていくのは食材と調味料類だけですむ。家族やグループで好きな食材を持ち込み、それを調理しながらワイワイやるのには最適。伝統的な間取りの横に、バーベキューができるテラスもついている。

 奥やんばるの里の6棟は、ニシミ岳とウニシ岳のふもとに、奥川に面して立ち並ぶ。奥川の水で遊ぶこともできるし、森の中を通る750mの「奥の細道」を歩くのも楽しい。ただ、これらはいわゆるアウトドアのイメージとは違う。

 むしろ、奥に来て最も印象づけられるのは、その落ち着きと静けさだ。奥川の両側にそびえ立つ緑濃い山肌をゆっくりとながめ、集落内をぶらぶらしながら行き会う人々と短い会話を交わし、共同店に足を踏み入れて朝の小さな活気を感じる時に、ここへ来てよかったなとしみじみ思う、そんなところだ。写真は共同店の朝の風景。

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 沖縄の旅は、晴れていないと海の色がきれいに見えないし、面白くない。確かにそうなのだが、雨まじりの日に奥に来ると、こうした感覚は少し変わるかもしれない。濃い緑が朝もやにかすむ風景は十分に美しいし、水気を含んだ森の緑は香りをさらに増して魅力的だ。

 離島は別だが、沖縄本島内でこれだけの緑と静かなたたずまいが楽しめる場所は、そうはない。那覇からだと、名護まで高速道路を使っても2時間以上かかる距離だが、わざわざ出かける価値は間違いなくある。

 奥やんばるの里が完成したのは平成13年。初めの数年は宿泊客が少なかったが、じわりじわりと増えてきた。事務の島袋あけみさんの話では、学校が休みの時期などは予約がすぐに埋まるようになったという。奥やんばるの里は、もはや穴場とは呼べなくなりつつあるのかもしれない。

 奥やんばるの里は国頭村字奥1280-1、0980-50-4141。料金は部屋単位で、広さによって違う。一番広い定員8人のニシミは1泊2万5000円、定員5人のウニシは1万5000円、定員3人のシーバは1万円。予約は2カ月前から受け付ける。奥やんばるの里のHPはこちら。

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