2009年12月
2009年12月27日
[第149話 食] ままやでトガリエビスを
ことしの大トリは、万鐘本店第6話でお伝えした那覇の「ままや」。万鐘本店初の再掲である。ままやは、久茂地から松山の古い民家に場所を移し、雰囲気も料理も、ますます磨きがかかってきた。大人が那覇の夜を過ごすならイチオシの名店。今回は、沖縄県民にもあまり知られていない幻の魚トガリエビスを中心にお伝えしよう。
ままやは、柳生徹夫さん、郁子さん夫妻が切り盛りする店。郁子さんが洗練された琉球料理を作る。カウンターでは、徹夫さんが静かにビールをグラスに注ぎ、客と会話をする。食器、酒器もすばらしい。
移転先の古い民家とは、実は、那覇生まれの徹夫さん自身が育った思い出深い家。ご両親が他界した後、空き家となった実家の建物に手を入れて店にした。屋根裏の板1枚1枚に、あるいは昔なつかしい正方形の窓のさんに、年月にしか出せない深い味わいがにじみ出ている。まさに大人の空間。
さて料理。今回は、トガリエビスの煮付けから。赤い色をしたイットウダイ科の魚で、白身に脂がのっていて非常においしい。繊維の適当な食感と柔らかさが絶妙。今回は甘辛の煮付けにしてもらったが、まーす煮にしても塩焼きにしてもいけるとのこと。
このトガリエビス、魚屋に行ってもあまり見かけない。漁獲量が少ないのに加え、あまりにおいしいので、たまに獲れてもウミンチュ(漁師)が自分で食べてしまうのだそうだ。
ままやには、トガリエビスが入荷すると業者からすぐ連絡が入る。那覇の店でトガリエビスを食べられる確率が最も高いのはままや、と常連客の1人。とはいえ、毎日というわけにはいかないので、もしトガリエビス目当てに行くなら、事前に問い合わせた方がいい。
トガリエビスはインド洋や太平洋の珊瑚礁の岩場にいる。口が尖っていて形はユニークだが、色はとてもきれいだ。沖縄方言ではアカイユ(赤い魚)。
八重山では、このトガリエビスのことを、なんと「浜崎の奥さん」と呼ぶらしい。語源は定かではないが、八重山ではこれで通じると書かれたブログがいくつかあるから、恐らくそうなのだろう。八重山に行ったら、魚屋で「浜崎の奥さん、ありますか」と尋ねてみたい。
さて、ままやといえば、ニガナのサラダを取り上げないわけにはいかない。第6話でも一番に紹介したが、相変わらず絶品なので、再掲する。1mm幅に細切りにしたニガナをさらし玉ねぎと合わせ、歯ごたえのアクセントにするソバ茶と香りづけのゴマをパラパラとふる。ニガナの苦みと食感、玉ネギの味がよくマッチしている。体にいいこと間違いなし。
つき出しで登場したクーブイリチャー。写真がアップになりすぎているが、実物の昆布は1、2mm幅に細くきれいに切ってある。よくあるクーブイリチャーの半分以下。同時に、普通のクーブイリチャーより、昆布を蒸し煮する時間が短めなのだろう、ほどよい歯ごたえが残されている。この歯ごたえを「ほどよい」と感じるために必要な細さが、この1、2mmの細さなのだ。計算されたバランスの中に、郁子さんのセンスが光る。
クブシミのチキアギをいただいた。クブシミは、和語でコブシメという大きなイカ。これをすり身にして、人参を混ぜ、油で揚げてある。あつあつをほおばると、口の中にクブシミのうまみが広がる。しょうが醤油をつけると、さらに立体的な味に。郁子さんは八重山出身。八重山ではクブシミをすり身にしてよく食べるという。沖縄本島ではほとんど見ないチキアギだ。
第6話で既に紹介したカリカリねっとりの焼きテビチ、麩と卵だけで作る一風変わったフーイリチャー、ドゥルワカシを揚げたドゥル天なども、相変わらず非常においしい。豆腐窯はまだ報告していなかったが、豆腐窯には珍しいほどのフレッシュな香りが鼻に抜ける逸品。
新しいままやは、那覇で最も有名な寺である大典寺の正門に向かって右の道を進むとすぐ右側にある。那覇市松山1-8-5、098-867-1350。毎週水曜と最終週の火曜が休み。電話予約をお勧めする。
上のマークをクリックすると、万鐘本店のランキングがアップ。応援クリック、お願いします。
ままやは、柳生徹夫さん、郁子さん夫妻が切り盛りする店。郁子さんが洗練された琉球料理を作る。カウンターでは、徹夫さんが静かにビールをグラスに注ぎ、客と会話をする。食器、酒器もすばらしい。
移転先の古い民家とは、実は、那覇生まれの徹夫さん自身が育った思い出深い家。ご両親が他界した後、空き家となった実家の建物に手を入れて店にした。屋根裏の板1枚1枚に、あるいは昔なつかしい正方形の窓のさんに、年月にしか出せない深い味わいがにじみ出ている。まさに大人の空間。
さて料理。今回は、トガリエビスの煮付けから。赤い色をしたイットウダイ科の魚で、白身に脂がのっていて非常においしい。繊維の適当な食感と柔らかさが絶妙。今回は甘辛の煮付けにしてもらったが、まーす煮にしても塩焼きにしてもいけるとのこと。
このトガリエビス、魚屋に行ってもあまり見かけない。漁獲量が少ないのに加え、あまりにおいしいので、たまに獲れてもウミンチュ(漁師)が自分で食べてしまうのだそうだ。
ままやには、トガリエビスが入荷すると業者からすぐ連絡が入る。那覇の店でトガリエビスを食べられる確率が最も高いのはままや、と常連客の1人。とはいえ、毎日というわけにはいかないので、もしトガリエビス目当てに行くなら、事前に問い合わせた方がいい。
トガリエビスはインド洋や太平洋の珊瑚礁の岩場にいる。口が尖っていて形はユニークだが、色はとてもきれいだ。沖縄方言ではアカイユ(赤い魚)。
八重山では、このトガリエビスのことを、なんと「浜崎の奥さん」と呼ぶらしい。語源は定かではないが、八重山ではこれで通じると書かれたブログがいくつかあるから、恐らくそうなのだろう。八重山に行ったら、魚屋で「浜崎の奥さん、ありますか」と尋ねてみたい。
さて、ままやといえば、ニガナのサラダを取り上げないわけにはいかない。第6話でも一番に紹介したが、相変わらず絶品なので、再掲する。1mm幅に細切りにしたニガナをさらし玉ねぎと合わせ、歯ごたえのアクセントにするソバ茶と香りづけのゴマをパラパラとふる。ニガナの苦みと食感、玉ネギの味がよくマッチしている。体にいいこと間違いなし。
つき出しで登場したクーブイリチャー。写真がアップになりすぎているが、実物の昆布は1、2mm幅に細くきれいに切ってある。よくあるクーブイリチャーの半分以下。同時に、普通のクーブイリチャーより、昆布を蒸し煮する時間が短めなのだろう、ほどよい歯ごたえが残されている。この歯ごたえを「ほどよい」と感じるために必要な細さが、この1、2mmの細さなのだ。計算されたバランスの中に、郁子さんのセンスが光る。
クブシミのチキアギをいただいた。クブシミは、和語でコブシメという大きなイカ。これをすり身にして、人参を混ぜ、油で揚げてある。あつあつをほおばると、口の中にクブシミのうまみが広がる。しょうが醤油をつけると、さらに立体的な味に。郁子さんは八重山出身。八重山ではクブシミをすり身にしてよく食べるという。沖縄本島ではほとんど見ないチキアギだ。
第6話で既に紹介したカリカリねっとりの焼きテビチ、麩と卵だけで作る一風変わったフーイリチャー、ドゥルワカシを揚げたドゥル天なども、相変わらず非常においしい。豆腐窯はまだ報告していなかったが、豆腐窯には珍しいほどのフレッシュな香りが鼻に抜ける逸品。
新しいままやは、那覇で最も有名な寺である大典寺の正門に向かって右の道を進むとすぐ右側にある。那覇市松山1-8-5、098-867-1350。毎週水曜と最終週の火曜が休み。電話予約をお勧めする。
上のマークをクリックすると、万鐘本店のランキングがアップ。応援クリック、お願いします。
2009年12月20日
[第148話 食] 手打ち風の麺に透明で深い汁
万鐘の沖縄そば遍歴もだいぶ数を重ねてきたが、県内にはまだまだ魅力的なそば屋がある。そばじょーぐーとしては、まったく手を休めるゆとりもない。今回は、食べ応え十分の昔風そばと透明感あふれる汁とが見事なコンビネーションをみせる那覇のきくやをご紹介。
きくやは那覇の小禄の住宅街にあって、外見は普通の家のよう。中に入ると、店主の照屋健一さんとスタッフが人なつこい笑顔で迎えてくれる。開店から5年。このところ、そばじょーぐー達の間でウワサになることが多い注目店の一つだ。
きくやのそばの特徴は、まずはその麺。凹凸のある手打ち風の麺は、食べ応え十分。小さな製麺所に特別注文して作ってもらっている。つるつるののどごしを楽しむ細麺とは全く違うタイプ。これまで万鐘本店で紹介した沖縄そば店は、どちらかといえば、厚さが均一の細麺、平麺の店が多かったかもしれない。第3話の美里そば然り、第122話のなかどまい然り。
手打ち風という意味では、きくやの麺は、第108話で紹介した浦添のてだこそばの麺に似ている。が、きくやの麺はてだこそばの麺ほど固くないし、太さも太め。「昔風の沖縄そば」と形容した理由はそこにある。こうした厚めの麺は、口の中でゆっくりとモグモグしながら味わう。やんばるのそば店でよく出てくる麺に近い。
汁。ここまで透明感があるのにここまで深いコクのある汁、というのは、なかなかない。手打ち風のボコボコ感のある麺の強さに負けないようにするには、こってりタイプの強い汁にする手もあるが、きくやの汁はあくまで透明だ。透明なのに深いコクがあるから、この麺と最高のコンビネーションをみせる。雑味がないのにとことん深い九州のアゴだしを思い出す。
肉の煮方は、柔らかめで麺によくなじむが、ぎりぎりの歯ごたえはちゃんと残してある。しかも、三枚肉のスライスはよくある沖縄そばの三枚肉より大ぶりで厚めに切ってあるので、食べ応え十分。麺の食べ応えとよくマッチする。
というわけで、どんぶりの中は見事な昔風沖縄そばの世界。正確に言えば、リッチな昔風、である。それだけでも十分に楽しめるが、きくやがおいしいのは、どんぶりの中だけではない。周りの「おまけ」もおいしい。
その筆頭格が小皿にのったジージキ(地漬け)。大根のジージキは、沖縄では塩を使わず、砂糖や黒糖と酢で漬けることが多いので、バランスが悪いと妙に酸っぱかったり、甘すぎたりする。きくやのジージキは、ひたすらさわやか。調味料の加減と漬け具合が絶妙なのだ。うっちん入りなのは、黄色の色をつけるためだけではなく、うっちんならではの渋みで全体をやんわり引き締める効果もありそう。
失礼とは思ったが、そばのヒミツをうかがう前にジージキのヒミツを尋ねたら、照屋さんは言った。「いや、これは80のおばあが漬けているもので、どうやって作っているかは私も知らないんですよ」。うーむ、おばあの手作りか。これはもはや商品ではない。ただただ、ありがたい食べものと言うほかない。
食後に出てくる黒糖ぜんざいの小鉢もなかなか。こっくり甘いぜんざいは、そばで塩味になっている口の中をまるーくしてくれる。沖縄のぜんざいについては第73話でお伝えした。
最後に、きくやのすべてをおいしくしているもう一つのことを。店のみなさんの人なつこい雰囲気がそれだ。照屋さんはじめ、スタッフがみなニコニコしていて自然体。気さくに話しかけてくれるので、とても気持ちよく食事ができる。
きくやは場所がちょっと分かりづらい。ツタヤ小禄店の裏手にあるのだが、うまく見つからなければ電話を。沖縄県那覇市田原1-6-2、098-857-0565。木曜定休。
上のマークをクリックすると、万鐘本店のランキングがアップ。応援クリック、お願いします。
きくやは那覇の小禄の住宅街にあって、外見は普通の家のよう。中に入ると、店主の照屋健一さんとスタッフが人なつこい笑顔で迎えてくれる。開店から5年。このところ、そばじょーぐー達の間でウワサになることが多い注目店の一つだ。
きくやのそばの特徴は、まずはその麺。凹凸のある手打ち風の麺は、食べ応え十分。小さな製麺所に特別注文して作ってもらっている。つるつるののどごしを楽しむ細麺とは全く違うタイプ。これまで万鐘本店で紹介した沖縄そば店は、どちらかといえば、厚さが均一の細麺、平麺の店が多かったかもしれない。第3話の美里そば然り、第122話のなかどまい然り。
手打ち風という意味では、きくやの麺は、第108話で紹介した浦添のてだこそばの麺に似ている。が、きくやの麺はてだこそばの麺ほど固くないし、太さも太め。「昔風の沖縄そば」と形容した理由はそこにある。こうした厚めの麺は、口の中でゆっくりとモグモグしながら味わう。やんばるのそば店でよく出てくる麺に近い。
汁。ここまで透明感があるのにここまで深いコクのある汁、というのは、なかなかない。手打ち風のボコボコ感のある麺の強さに負けないようにするには、こってりタイプの強い汁にする手もあるが、きくやの汁はあくまで透明だ。透明なのに深いコクがあるから、この麺と最高のコンビネーションをみせる。雑味がないのにとことん深い九州のアゴだしを思い出す。
肉の煮方は、柔らかめで麺によくなじむが、ぎりぎりの歯ごたえはちゃんと残してある。しかも、三枚肉のスライスはよくある沖縄そばの三枚肉より大ぶりで厚めに切ってあるので、食べ応え十分。麺の食べ応えとよくマッチする。
というわけで、どんぶりの中は見事な昔風沖縄そばの世界。正確に言えば、リッチな昔風、である。それだけでも十分に楽しめるが、きくやがおいしいのは、どんぶりの中だけではない。周りの「おまけ」もおいしい。
その筆頭格が小皿にのったジージキ(地漬け)。大根のジージキは、沖縄では塩を使わず、砂糖や黒糖と酢で漬けることが多いので、バランスが悪いと妙に酸っぱかったり、甘すぎたりする。きくやのジージキは、ひたすらさわやか。調味料の加減と漬け具合が絶妙なのだ。うっちん入りなのは、黄色の色をつけるためだけではなく、うっちんならではの渋みで全体をやんわり引き締める効果もありそう。
失礼とは思ったが、そばのヒミツをうかがう前にジージキのヒミツを尋ねたら、照屋さんは言った。「いや、これは80のおばあが漬けているもので、どうやって作っているかは私も知らないんですよ」。うーむ、おばあの手作りか。これはもはや商品ではない。ただただ、ありがたい食べものと言うほかない。
食後に出てくる黒糖ぜんざいの小鉢もなかなか。こっくり甘いぜんざいは、そばで塩味になっている口の中をまるーくしてくれる。沖縄のぜんざいについては第73話でお伝えした。
最後に、きくやのすべてをおいしくしているもう一つのことを。店のみなさんの人なつこい雰囲気がそれだ。照屋さんはじめ、スタッフがみなニコニコしていて自然体。気さくに話しかけてくれるので、とても気持ちよく食事ができる。
きくやは場所がちょっと分かりづらい。ツタヤ小禄店の裏手にあるのだが、うまく見つからなければ電話を。沖縄県那覇市田原1-6-2、098-857-0565。木曜定休。
上のマークをクリックすると、万鐘本店のランキングがアップ。応援クリック、お願いします。
2009年12月13日
[第147話 食] 濃厚ドリンクで楽しむグアバ
「ただいまー」と外から帰った時、家にグアバがあると、玄関を入ったとたんにすぐ分かる。それほど、グアバの香りは強い。
「となりのおじいからもらったからねー、はい、バンシルー」と、スーパーの袋に無造作に入れられたグアバのお裾分け。グアバが手に入る経緯は、だいたいこんな感じだ。庭などによく植えられているが、スーパーではまず売っていない。バンシルーは、グアバの沖縄語。
こうして10個とか15個とかをもらうと、グアバは、しばらくの間、座卓の上とか台所あたりに鎮座することになる。その間、強烈な香りが家じゅうを満たす。
グアバは、あっという間に家人が食べてなくなる、という結果にはあまりならない。一つには、グアバには甘味が弱い実がしばしばあるので、そういうのをもらっても、香りは最高だが、今ひとつ手が伸びないことになる。
もう一つの理由は、固い種の存在。グアバのねっとりした実の中には、小さくて固い種がたくさん埋まっている。これを口の中でよけながら果肉だけを食べるのは、多少の技術と忍耐力がいる。
一気に食べる、という感じにならないのが辛いところ。パッションフルーツの種ならパリパリ食べることもできないわけではないが、グアバの種は固いので、かみ砕くのは難しい。出すのが面倒なら、そのまま飲み込むしかない。
種と闘うことなく、グアバを一気に味わいたい、というグアバファンのみなさん、50ー60%果汁ドリンクというのはいかがでしょう。
50%、60%果汁入りのグアバドリンクはいくつかあるが、今回は、沖縄キーコーヒー株式会社の50%果汁のグアバドリンクを紹介しよう。
この缶入りグアバドリンク、どこにでも置かれていそうな顔をしているが、実は完全なレアもの。普通のスーパーにはまずないし、自動販売機にも入っていない。親しみやすいデザインながら、業務用として作られているからだ。リゾートホテルのレストランや喫茶店などで、中身だけが使われている。
同社は、10年ほど前から30%果汁の製品を作ってホテルやレストランに卸していた。だが「もっと高い品質のものを、という声がお客様から寄せられ、50%果汁を作ることにしたんです」と同社の下里勇治さんは話す。
50%果汁となると、水分が少ないグアバの場合は、どうしても粘りが強くなる。その結果、缶に充填する管が詰まってしまうなど、製造工程の見直しが必要になったというエピソードも。
この製品で使用されているグアバ果実は、沖縄産ではなく、お隣りの台湾産。庭木としては沖縄でもたくさん植えられているのだから、甘味の強い品種を選んで植えれば立派な果樹園ができるだろう。
だが、加工用でいくなら、よほどの規模をやらないと引き合わない。利益率の高い生食用としては、種の問題などがネックになって、市場性に疑問符がついているのではないか。というわけで、まとまった量のグアバを加工して、そこそこの価格で提供しようと思えば、当面はお隣のグアバを活用するしかなさそうだ。
この50%果汁ドリング、1本単位で買えるのは、名護市許田の道の駅。中央付近の売店にさりげなく置かれている。1本140円。恩納村のおんなの駅にもあるらしいが、この2カ所以外には、ほとんど置かれていない。30本入りの1箱単位ならば、キーコーヒーから通販で買える。
上のマークをクリックすると、万鐘本店のランキングがアップ。応援クリック、お願いします。
「となりのおじいからもらったからねー、はい、バンシルー」と、スーパーの袋に無造作に入れられたグアバのお裾分け。グアバが手に入る経緯は、だいたいこんな感じだ。庭などによく植えられているが、スーパーではまず売っていない。バンシルーは、グアバの沖縄語。
こうして10個とか15個とかをもらうと、グアバは、しばらくの間、座卓の上とか台所あたりに鎮座することになる。その間、強烈な香りが家じゅうを満たす。
グアバは、あっという間に家人が食べてなくなる、という結果にはあまりならない。一つには、グアバには甘味が弱い実がしばしばあるので、そういうのをもらっても、香りは最高だが、今ひとつ手が伸びないことになる。
もう一つの理由は、固い種の存在。グアバのねっとりした実の中には、小さくて固い種がたくさん埋まっている。これを口の中でよけながら果肉だけを食べるのは、多少の技術と忍耐力がいる。
一気に食べる、という感じにならないのが辛いところ。パッションフルーツの種ならパリパリ食べることもできないわけではないが、グアバの種は固いので、かみ砕くのは難しい。出すのが面倒なら、そのまま飲み込むしかない。
種と闘うことなく、グアバを一気に味わいたい、というグアバファンのみなさん、50ー60%果汁ドリンクというのはいかがでしょう。
50%、60%果汁入りのグアバドリンクはいくつかあるが、今回は、沖縄キーコーヒー株式会社の50%果汁のグアバドリンクを紹介しよう。
この缶入りグアバドリンク、どこにでも置かれていそうな顔をしているが、実は完全なレアもの。普通のスーパーにはまずないし、自動販売機にも入っていない。親しみやすいデザインながら、業務用として作られているからだ。リゾートホテルのレストランや喫茶店などで、中身だけが使われている。
同社は、10年ほど前から30%果汁の製品を作ってホテルやレストランに卸していた。だが「もっと高い品質のものを、という声がお客様から寄せられ、50%果汁を作ることにしたんです」と同社の下里勇治さんは話す。
50%果汁となると、水分が少ないグアバの場合は、どうしても粘りが強くなる。その結果、缶に充填する管が詰まってしまうなど、製造工程の見直しが必要になったというエピソードも。
この製品で使用されているグアバ果実は、沖縄産ではなく、お隣りの台湾産。庭木としては沖縄でもたくさん植えられているのだから、甘味の強い品種を選んで植えれば立派な果樹園ができるだろう。
だが、加工用でいくなら、よほどの規模をやらないと引き合わない。利益率の高い生食用としては、種の問題などがネックになって、市場性に疑問符がついているのではないか。というわけで、まとまった量のグアバを加工して、そこそこの価格で提供しようと思えば、当面はお隣のグアバを活用するしかなさそうだ。
この50%果汁ドリング、1本単位で買えるのは、名護市許田の道の駅。中央付近の売店にさりげなく置かれている。1本140円。恩納村のおんなの駅にもあるらしいが、この2カ所以外には、ほとんど置かれていない。30本入りの1箱単位ならば、キーコーヒーから通販で買える。
上のマークをクリックすると、万鐘本店のランキングがアップ。応援クリック、お願いします。
2009年12月06日
[第146話 食] 島野菜を和の天ぷらにしてみた
沖縄の島野菜はどれも個性派。抗酸化力が強くて体にいいが、香りや苦みといったクセが少しある。それがいいという人もいるが、苦手な人も。そんな島野菜を和風うす衣のサクサク天ぷらにしたら、マイルドになって食べやすいのでは―。万鐘の厨房で実験してみた。写真はフーチバー(ヨモギ)の天ぷら。
ヒントになったのは、本土の農村で食べられている山菜の天ぷら。山菜の多くも普通の野菜より強い香りや苦みなどがあるが、天ぷらにすると、それが緩和されるようだ。
今回、沖縄島野菜は、フーチバーとイーチョバーに登場してもらうことにした。
フーチバーは、ジューシーやヒージャー(ヤギ)汁に入れて食べる。フーチバージューシー(炊き込みごはん)は万鐘本店第127話で那覇のおきなを紹介した。最近は、沖縄そばにフーチバーを入れて出す店が増えてきた。例えば第3話で紹介した沖縄市の美里そばがそうだし、第30話の那覇の若狭パーラーもそうだ。
フーチバーは、生でかじったらよく分かるが、独特の鮮烈な香りと、苦みがかなりある。効能については「よもぎ」で検索すると山のように出てくる。
さて、天ぷら。衣は粘りが出ないように冷たい水で溶いて、少なめにつけた。油の温度は低め。シソの葉を揚げる時の要領で、中低温で揚げていく。1分ほど揚げ、衣の水分が充分に抜けて揚げ音がシュワシュワ音からピチピチ音に変わったら、緑の色があせないうちに引き上げる。
天つゆにつけて食べてみた。いける。ヨモギの香りや苦みはもちろん健在だが、なんとも食べやすい感じに変わっている。カリカリサクサクの衣の食感もいいので、これなら子供でも食べられそう。
次はイーチョバー(フェンネル)。ごらんのように細い葉だ。沖縄ではボロボロジューシー(おじや)にしたり、ヒラヤチーや沖縄式天ぷらに入れたりする。
これを揚げる時は、フーチバーの時よりもさらに油の温度を下げないといけない。葉が細いので、油が熱いと衣の水分が抜ける前に葉が茶色になってしまう。
衣につけると、筆が墨を吸い込むようにたっぷりついてしまうから、よけいな衣を箸でしごき落とす。低温の油に入れると、パッと葉が開く。そのままじっと衣の水分が抜けるまで30-40秒待って、少し火を強めてすぐ引き上げる。あきれるほど繊細な天ぷらの出来上がり。
イーチョバーの生葉はフーチバーほど強烈ではないが、独特のさわやかな香りがある。和風天ぷらにすると、これがいい感じに弱まって、いくらでも食べられる。やはり天つゆによく合う。
フーチバー、イーチョバーのほかに、ハンダマもおいしい。色もきれい。ハンダマの天ぷらは第135話のクルマエビ天丼の中に入っていた。
島野菜は、第81話で掲載したような沖式の天ぷらにしてももちろんいいが、沖式天ぷらだと衣が厚いため油の高温が島野菜に直接届かず、クセをマイルドにする作用がいくぶん弱くなるようだ。
島野菜は、スーパーに売ってるものと、売っていないものがある。フーチバー、ハンダマははよく見かけるが、イーチョバーはほとんど見ない。島野菜は、スーパーよりもむしろ、島バナナの第142話で紹介した農家直販市が一番簡単に手に入る。那覇の公設市場周辺でも売られている。真夏よりも、涼しい今の時期がおいしいので、お試しを。
クセと言えば、既に全国区になった島野菜ゴーヤーのことを忘れてはいけない。季節はずれではあるが、ゴーヤーも天ぷらにすると苦みがマイルドになって食べやすい。夏になったら、ぜひどうぞ。
上のマークをクリックすると、万鐘本店のランキングがアップ。応援クリック、お願いします。
ヒントになったのは、本土の農村で食べられている山菜の天ぷら。山菜の多くも普通の野菜より強い香りや苦みなどがあるが、天ぷらにすると、それが緩和されるようだ。
今回、沖縄島野菜は、フーチバーとイーチョバーに登場してもらうことにした。
フーチバーは、ジューシーやヒージャー(ヤギ)汁に入れて食べる。フーチバージューシー(炊き込みごはん)は万鐘本店第127話で那覇のおきなを紹介した。最近は、沖縄そばにフーチバーを入れて出す店が増えてきた。例えば第3話で紹介した沖縄市の美里そばがそうだし、第30話の那覇の若狭パーラーもそうだ。
フーチバーは、生でかじったらよく分かるが、独特の鮮烈な香りと、苦みがかなりある。効能については「よもぎ」で検索すると山のように出てくる。
さて、天ぷら。衣は粘りが出ないように冷たい水で溶いて、少なめにつけた。油の温度は低め。シソの葉を揚げる時の要領で、中低温で揚げていく。1分ほど揚げ、衣の水分が充分に抜けて揚げ音がシュワシュワ音からピチピチ音に変わったら、緑の色があせないうちに引き上げる。
天つゆにつけて食べてみた。いける。ヨモギの香りや苦みはもちろん健在だが、なんとも食べやすい感じに変わっている。カリカリサクサクの衣の食感もいいので、これなら子供でも食べられそう。
次はイーチョバー(フェンネル)。ごらんのように細い葉だ。沖縄ではボロボロジューシー(おじや)にしたり、ヒラヤチーや沖縄式天ぷらに入れたりする。
これを揚げる時は、フーチバーの時よりもさらに油の温度を下げないといけない。葉が細いので、油が熱いと衣の水分が抜ける前に葉が茶色になってしまう。
衣につけると、筆が墨を吸い込むようにたっぷりついてしまうから、よけいな衣を箸でしごき落とす。低温の油に入れると、パッと葉が開く。そのままじっと衣の水分が抜けるまで30-40秒待って、少し火を強めてすぐ引き上げる。あきれるほど繊細な天ぷらの出来上がり。
イーチョバーの生葉はフーチバーほど強烈ではないが、独特のさわやかな香りがある。和風天ぷらにすると、これがいい感じに弱まって、いくらでも食べられる。やはり天つゆによく合う。
フーチバー、イーチョバーのほかに、ハンダマもおいしい。色もきれい。ハンダマの天ぷらは第135話のクルマエビ天丼の中に入っていた。
島野菜は、第81話で掲載したような沖式の天ぷらにしてももちろんいいが、沖式天ぷらだと衣が厚いため油の高温が島野菜に直接届かず、クセをマイルドにする作用がいくぶん弱くなるようだ。
島野菜は、スーパーに売ってるものと、売っていないものがある。フーチバー、ハンダマははよく見かけるが、イーチョバーはほとんど見ない。島野菜は、スーパーよりもむしろ、島バナナの第142話で紹介した農家直販市が一番簡単に手に入る。那覇の公設市場周辺でも売られている。真夏よりも、涼しい今の時期がおいしいので、お試しを。
クセと言えば、既に全国区になった島野菜ゴーヤーのことを忘れてはいけない。季節はずれではあるが、ゴーヤーも天ぷらにすると苦みがマイルドになって食べやすい。夏になったら、ぜひどうぞ。
上のマークをクリックすると、万鐘本店のランキングがアップ。応援クリック、お願いします。