2010年01月

2010年01月31日

[第154話 農、食] 伝統製法の加熱塩蔵ひじき 

 ひじきと言えば乾物。カラカラに干して保存されたものがほとんどだが、沖縄では加熱塩蔵して保存する生活技術が昔からあった。恩納村の上原安房さんは、今もその方法で天然ひじきを加工・販売している。

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 上原さんのひじきが詰まったビニール袋の口を開くと、えもいわれぬ磯の強い香りがプーンと立ち上る。このひじき、まるで佃煮のように黒光りしている。ところどころに塩の結晶が。

 加熱塩蔵するのは、暑い沖縄の常温下で1年以上腐敗させないようにするため。上原さんは、採取したひじきを4台の大鍋で煮る。「5時間炊くんですよ」と上原さん。

 大鍋の下からごろごろと松の薪が顔を出している。薪なら1000度以上の温度にすることもできるが、ガスで同じことをやったら経費がかさんで引き合わないという。松は、近年のマツクイムシの被害であちこちに倒れているから、薪の調達に困ることはない。

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 なぜ5時間も? 一つは海水の水分をしっかり飛ばすため。いま一つは、5時間加熱することで、ひじきを柔らかくするためだ。上原さんのひじきは、15分ほど水で塩抜きした後は、再加熱しなくても、そのまま和えものにしたり、サラダに入れて食べられる。

 上原さんのひじきが黒光りしてまるで佃煮のようだ、と初めに思ったのも、あながちハズレではないのかもしれない。佃煮のように味付けしているわけではないが、塩とともに5時間煮込んであるのだから、見た感じが佃煮のようになっているのはむしろ当然なのだ。

 それにしても、保存するためだけではなく、ちょっと塩抜きしさえすればすぐに食べられるようになっているところが、この伝統技術のミソ。

 小泉武夫教授は、かつおぶしについて、質のよいダシが短時間でとれるよう、あらかじめ手間ひまかけて加工されたものであることに着目している。たんに保存性を高めるだけでなく、使う時にサッと使えるように加工してあるという意味では、この加熱塩蔵ひじきも全く同じ発想といえるだろう。

 沖縄の海岸で天然ひじきが採れるのは1月から4月くらいまで。上原さんは恩納村からうるま市などの海岸まで遠征して、天然のひじきを採取している。干潮時に岩場に残っているひじきを集めていく。「3月3日までは、昼の干潮だと完全に潮が引かないので、夜中の干潮時を狙うんです」。家族総出で夜中に出かけていき、最干潮時の前後2時間で一気に採取するという。
 
 塩蔵の状態では黒光りしている上原さんのひじきも、約15分、水につけて塩抜きすると、元の姿に近い色や形に戻る。その後は、煮付けでも、サラダでもOK。沖縄では、野菜ちゃんぷるーなどのいためものにもよく入れる。

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 塩抜きの時間を少し短くすると、うっすら塩気と磯の香りの残った状態が得られる。これに酢を少したらして、そのまま食べるとなかなかうまい。磯の香りが楽しめる。もの足りなければ、酢醤油やフレンチドレッシングをちょいと足してもいい。乾物のひじきには乾物特有のクセが少しあるが、加熱塩蔵のひじきにはそれがなく、薄い味付けでも食べられる。

 ひじきはカルシウム、鉄分、食物繊維の宝庫。カルシウムは牛乳の13倍、鉄分はホウレンソウの15倍、食物繊維はゴボウの5倍などと言われる。クセのない味なので、それこそサラダや和えものにしてどんどん食べたいヘルシー食品だ。

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 上原さんの天然ひじきは、恩納村のおんなの駅「なかゆくい」や、JAファーマーズマーケット「ちゃんぷるー市場」などで売っている。300g入り300円。「なかゆくい」は恩納村字仲泊1656-9、098-964-1188。「ちゃんぷるー市場」は沖縄市登川2699、098-894-2215。

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2010年01月24日

[第153話 食、沖縄] 黒糖たっぷりタンナファクルー

 今回はタンナファクルー。沖縄を代表するお菓子である。ちんすこうが高級な沖縄伝統菓子だとすれば、タンナファクルーはふだんのおやつ。素朴な味わいの中に純正さがドンと鎮座しているお菓子、とでも言おうか。タンナファクルーの元祖、那覇市の丸玉製菓を訪ねた。

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 タンナファクルーは、「タンナファ」+「クルー」。タンナファは玉那覇(たまなは)、クルーは黒。そのままつなげればタンナファクルー=玉那覇黒ということになる。

 これは、丸玉製菓の創業者にしてタンナファクルーを考案した玉那覇二郎が色黒だったことからついたニックネーム。「色黒の玉那覇さん」がそのままお菓子の名になった。玉那覇二郎は、丸玉製菓の現在の大田靖社長の母方の曾祖父にあたる。大田社長は3代目。

 タンナファクルーは現在、沖縄県内の複数のメーカーが作っているが、丸玉製菓のタンナファクルーは、しっとりした粘りのある食感と黒糖の深い味わいで、他を一歩リードする。

 乾き気味のパンのような食感かなと思いながら、パクリと噛む。歯がムニュっと入りこみ、意外な粘りがあることに気づく。口の中では、噛むにつれ、実になめらかな、きめ細かい半液状になっていく。このきめ細かい感じが好き、という人が多い。そうこうしているうちに黒糖の芳醇な味が口いっぱいに広がり、香りが鼻にぬけていく。

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 他社のタンナファクルーと丸玉製菓のタンナファクルーは何が違うのだろう。手がかりを求めて原材料欄を見ると「純黒糖、小麦粉、鶏卵、ふくらし粉」とある。えっ? 

 原材料欄の表記は、たくさん入れる順序で書くのが決まりになっている。つまり、タンナファクルーには、小麦粉よりも純黒糖の方がたくさん入っているということ。もちろん食べて感じる甘さは、ちょうどよい甘さである。

 他社のタンナファクルーの原材料欄を見たところ、「小麦粉、純黒糖・・・」の順序になっているものがほとんどだった。純黒糖をたっぷり使うこと。どうやらこれが玉那覇二郎直伝の味の秘密らしい。丸玉製菓では、伊平屋島産の純黒糖を使っている。

 似た例がないか、探してみた。パンっぽい食品で水気が少ないものということで、甘食のレシピを検索したら、だいたい小麦粉2に砂糖1の割合だった。パウンドケーキはその名の通り、小麦粉、バター、卵、砂糖を1パウンド(ポンド)ずつ使って作るので、小麦粉と砂糖は同量だ。せいぜいここまで。

 確かに、丸玉製菓のタンナファクルーは、袋を持った時に、不思議な重さを感じる。それほど水分があるとも思われないのに、なぜ? この重さは、水分のせいではなく、黒糖がたっぷり入っているからにほかならない。砂糖は重い。比重が水の1.6倍くらいある。

 大田社長によると、タンナファクルーの食感に大きな影響を与えるのはこね方と湿度。冬場は湿気が入りやすく、入り過ぎると甘さが感じられなくなる。逆に、湿気が不足すればパサパサするから、これも具合が悪い。その日の気象条件をにらみながら、ちょうどよい加減を目指して、こねていく。

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 生地のこね作業は、ほとんど大田社長が一人でやっている。もちろん従業員も手伝うが、こね作業だけはなかなか人に任せられないという。他のメーカーの中には生地のこね作業を機械化している会社も多いようだが、丸玉製菓は先代の作り方を大田社長がそのまま引き継ぎ、こねはすべて手作業でこなす。

 大田社長は、祖父から事業を引き継いだ。祖父は頑固な職人気質。配合やこね方を教えてくれるようなことは一切なかったから、見よう見まねを繰り返して、元祖タンナファクルーの作り方を身につけていった。「最初のうちは失敗の連続でした」と大田社長は振り返る。

 丸玉製菓は「創業100年余り」。正確な創業年は分からない。あらゆる資料は沖縄戦で焼失した。

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 丸玉製菓のタンナファクルーは、県内では那覇市内の直営店をはじめ、サンエーなど一部のスーパーにも置かれている。県外ではわしたショップで買える。通販で扱うショップもいくつかあるので検索を。丸玉製菓の直営店は、那覇市牧志1-3-35、098-867-2567。国際通りの中央にあるむつみ橋から沖映通りを150mほど行った左手にある小さな店。

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2010年01月17日

[第152話 農] 横に増えていくショウガ

 ショウガが実りの季節を迎えている。ショウガは、インドからマレー半島にかけての熱帯アジア原産で、25〜30℃が生育適温。沖縄にもってこいの作物といえる。名護の屋我地島でショウガ栽培に取り組む玉城康成さんの畑を見せてもらった。

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 屋我地島は、名護の羽地内海に浮かぶ島。現在は本島と橋でつながっている。玉城さんは5年前、左官の仕事を辞めて、専業農家に。父や弟と一緒に、地元でゴーヤー、インゲン、キュウリなどの栽培に取り組んでいる。

 ショウガは昨年、初めて植えた。知人から勧められたのがきっかけだった。沖縄では3月植えの11月収穫開始の作型が普通。

 「種にするショウガは、もったいないもったいないして小さいのを植えると、育ちが悪く、収穫も減ります。大きいのを収穫したければ、大きい種を植えないと」と玉城さん。種にするショウガは100gは必要、という。

 冒頭の写真は1株の実りだが、一番下にあるのが種球。例えばジャガイモの場合なら、子が実った後、種イモは枯れていくが、ショウガについては、種球がほぼそのまま残る。

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 種ショウガは、収穫してから3月に植えるまでは冷蔵庫で保存する。13度以下にしておかないと、すぐ芽を出してしまうからだ。1月、2月といえば沖縄でも一番寒い時期だが、13度を上回るのは普通のこと。

 玉城さんの話では、しっかり育ったショウガは1株から1kgくらい収穫できる。同じショウガ科のウッチンは根が下へ下へと膨らんでいくが、ショウガは横へ横へと増えていく。

 ショウガは連作すると収量が大きく減るので、3年で1作くらいの間隔で輪作していく。栽培中に、困った菌が土の中で増えるらしい。葉につく虫の方はどうか。「強い臭いがあるから大丈夫じゃないかと思っていたら、ヨトウムシにやられて。しばらく放っておいたら、やはり生育が悪くなりました」と玉城さん。

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 粘りの強い土なので、有機質をたくさん入れて、よほど水もちと水はけをよくしないといけない。沖縄の土づくりは簡単ではない。同じ名護の金城利信さん、美代子さんの土づくりを第18回で紹介したが、玉城さんも金城夫妻の土づくりを参考にしているという。

 沖縄のショウガの本格的生産はこれからだが、「ショウガ科」となれば、おなじみのメンバーがいる。

 まずサンニン(月桃)。サンニンの葉は、香りがよく、殺菌効果もある。ムーチーをはさむのに使われる(第36話)。前述のとおり、ウッチンもショウガ科。英語ではターメリック。カレーの黄色、と言えば、知らない人はいない。肝臓によい。沖縄各地で生産されている。

 最近は、ミョウガも栽培されているが、これもショウガ科。ショウガもウッチンもミョウガも、草や葉の感じがとてもよく似ている。サンニンの葉はショウガより大きいが、遠目に見た時の草の形はやはり似ている。

 さらに南に行くと、インドネシアやマレーシアでは、英語でジンジャーバッド、直訳すれば「ショウガのつぼみ」をいろいろな料理に使う。これは、トーチジンジャーという、真っ赤な花をつけるショウガの仲間の芽で、外観はミョウガにそっくり。

 ショウガ原産地の一つとされるインドでは、もちろんショウガをよく使う。まずカレー類にはたっぷり入れる。ニンニクも大量に使うが、ショウガをたくさん入れないと、インドカレーっぽい感じにならない。チャイと呼ばれる、ショウガが効いたミルクティーもポピュラー。

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 現在のショウガ大国は中国で、世界一の生産量を誇る。ショウガが中華料理に不可欠の存在であることは説明するまでもないだろう。ショウガは香辛料であると同時に漢方薬でもある。検索するとたくさんの効能が出てくる。

 沖縄料理では、第150話で紹介した中身汁やヒージャー汁(ヤギ汁)の吸い口によく使われる。

 ショウガの香りを強調する場合は、皮ごとおろすのがコツ。皮についた土をよく洗い、古くひからびたような部分があれば取り除き、あとは皮をむかずにそのままおろす。皮をむいてからおろしたものと比べると、香りの違いは歴然としている。

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2010年01月10日

[第151話 沖縄] おしゃれなコンクリ家

 沖縄の住宅といえば、時間が経過してくたびれた感じの鉄筋コンクリート造りが圧倒的に多い。特に農村部はそう。そんな中で「おしゃれな家」をうたったフルパッケージのコンクリート住宅が沖縄市の建設会社から売り出された。沖縄の景観づくりの一助にもなりそうな新しい動きをお伝えしよう。

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 沖縄の民家と言えば、赤瓦の木造家屋をイメージする向きが多いかもしれないが、それは昔の話。いま、実際に住宅地の景観を作り出しているのは、いささかくたびれた感じの鉄筋コンクリート造の「コンクリ家(やー)」群だ。沖縄の民家はほとんどこれ、と言っても過言ではない。

 戦後、台風に強く、安価な家として、コンクリ家は沖縄県民の強い支持を得た。ただ、貧しい時代だったこともあり、意匠は二の次のコンクリ家が次々と建てられた。時が経ち、強い日差しと風雨にさらされるコンクリ壁面は、黒いカビやコケ類で汚れがさらに増した。

 「みてくれ」という突き放した言い方があるように、外見はオマケのようにとらえられがちだが、まち全体の景観を決めるのは実はその外見。家の外見がくたびれていれば、くたびれた景観にしかならない。その意味で、外見にこだわったパッケージ住宅は、施主が満足するだけでなく、美しい景観づくりに貢献する。

 沖縄でいま、美しい景観づくりがクローズアップされていることは、万鐘本店第143話でお伝えした通り。先駆的な例として第55話では色調を統一した分譲住宅のケースを紹介した。

 「おしゃれな家」をキャッチフレーズにしたフルパッケージ住宅は、株式会社丸山建設が売り出した「アジアン」。その名の通り、アジアンリゾートのイメージを採用している。

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 万鐘本店第7話で紹介した万国津梁館や第116話の浜比嘉島ビーチリゾートの意匠はいずれも「控えめのアジアン」だったが、丸山建設のアジアンもそれらと似ている。キャッチフレーズは「シンプルモダン+アジアンテイスト」。

 「僕が個人的にシンプルなデザインが好きということもあるかもしれませんが」とプロデューサー役の金城悟・丸山建設社長は笑う。アジアンは、建築家赤嶺しげたか氏と丸山建設とのコラボレーションで生み出された。

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 壁はうっすらクリーム色や緑色を帯びた白が基調。アクセントに濃い茶色の木材を使う。例えば窓枠や玄関の柱などに濃い茶色で塗装された木材が使われ、控えめのアジアン風味を醸し出す。デッキテラスも同じ色調。これは沖縄で「雨端(あまはじ)」と呼ばれる内外一体になった接客の場の役割を果たしている。

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 外壁などにもっと木をたくさん使えば、さらにアジアン風味は増すだろうが、強い陽光と海風が注ぐ沖縄では、外にさらされた木部の傷みが激しい。美観を維持しようとすれば、メンテナンスの手間と経費がかさむ。建て主の10年後、15年後の負担を視野に入れて、初めから木部の使用を抑え気味にしているわけだ。

 意匠にこだわった住宅は高いというイメージがあるが、このアジアンは、逆に、価格を抑える工夫がなされている。例えばー

 一般に、沖縄の住宅設計は、高温多湿の気候をふまえ、床を高くすることで地面からの湿気を防ごうとする。しかし、床が高くなれば、その分、天井が上がり、結果的に、壁も高くなる。例えば、壁が30cm高くなれば、その分の材料費がかさみ、建設コストがよけいにかかることになる。

 アジアンは、床を高くしない。床の下には遮水シートを貼って、湿気が上がってくるのを防止する。こうすれば、壁を低くすることができ、その分の原材料費をかけずにすむ。

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 アジアンは「高くない」というだけでなく、建設費が初めから明示されているのが特徴。「坪45万円」などとうたいながら、実際はあれやこれやの装備や設備名目で追加料金をとる業者がいる中で、アジアンは「明朗会計」で売る。

 明朗会計の仕組みはこうだ。まず「標準仕様」が決められている。例えば、装備群は、カウンター付食器棚、洗面化粧台、システムキッチン、レンジフード、照明器具、カーテン、テレビアンテナ、デッキテラス(15.2平米まで)などがつく。給水は厨房、浴室、洗面所、トイレ、洗濯機前、外部2カ所の計7カ所。仕上げについては、ホール・廊下の床は木質フロア材、壁は石膏ボード下地クロス貼、といった具合だ。そして、この標準仕様に基づいた価格が、面積ごとの一覧表の形で明示される。

 例えば、30.25坪なら坪58万3018円、35.09坪では坪55万7740円。この金額には、消費税、設計料、防蟻工事費から、標準仕様の装備・設備代まですべて含まれている。施主は、そこから不要なものを引き算して価格を下げていく仕組み。確かにこの方式なら、たし算の果てに価格が膨らんで予算オーバー、というようなことはなさそうだ(金額はいずれも平成21年3月28日現在)。

 設計は完全な自由設計。あらかじめ決められたいくつかのプランから選ぶ方式ではなく、施主が好きな間取りを作っていく。

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 ところで、景観というものはなかなか難しい。現在の沖縄の住宅地のように、まるで統一感がないのも美しくないが、さりとて、色彩や形の規制をやりすぎると、わざとらしくなり、町がまるで映画のセットのようになってしまう。基準は必要だが、それにはある程度の「幅」をもたせないといけない。

 沖縄のまち並みの基本的な色調は、第55話で紹介した例に見られるように、あるいは現在、那覇市が首里の景観づくりでやっているように「白かクリーム色の壁面に、屋根は赤がわら色の赤」でいいと思うが、そこには多少の「幅」があった方がいい。

 アジアンの「白にこげ茶」の色彩は、赤瓦の赤をアクセントにする沖縄の伝統的な色彩の中に入っても、ちょうどよい「幅」になりそうな気がする。アジアンデザインのふるさと、東南アジア各地では、沖縄と同様の赤土を焼いた赤瓦がしばしば使われている。アジアンデザインと赤瓦色の相性がいいことは、いわば実証ずみなのだ。

 丸山建設は、沖縄市登川2671-1、098-938-2458。

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2010年01月03日

[第150話 食、沖縄] 透明な中身汁で祝う新春

 新年おめでとうございます。ことし1年が素晴らしい年でありますように。万鐘本店のコトはじめは、新春を祝う中身汁の話題で。

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 中身汁(なかみじる)は、お祝いの席や法事の際に出されるおつゆ。正月だけではなく、お盆や清明祭の時にも欠かせない。かつおとダシ骨(豚)でとった透明感のある汁の中に、中身(なかみ)と呼ばれる豚のモツ、干しシイタケ、こんにゃくが入っている。豚の赤身肉が入ることもある。吸い口はおろし生姜。

 少し大げさかもしれないが、中身汁は琉球料理を象徴する料理といえるかもしれない。まず、静かに煮出した澄んだ豚だしの土台にかつおぶしの味と香りがのった汁であること。「豚だし+かつおだし」は、豚臭さがなく、かつおのいい香りがして、しかも味くーたー。沖縄が最も得意とする汁だ。沖縄そばの汁の多くもこれ(例えば第122話第133話

 今ひとつは、汁の実が、県民食ともいえる豚の、しかも内臓であること。モツを、とことん手間ひまかけて下処理し、脂気や臭みほとんどゼロにしてしまう。なまぐさものの極みであるかのようなモツを、あたかも精進料理のごとく仕上げるのがミソ。

 中国でもフランスでも、豚食文化の花咲く地域では驚くほど多彩な内臓料理が作られているが、中身汁ほど繊細な感覚のモツ料理はちょっとないのではないか。

 中身は、大腸、小腸、胃の3種類からなる(写真、左から)。中身汁の実になった時、大腸と小腸はふわふわの食感、胃はしっかりした歯ごたえがある。色は大腸と胃は白く、小腸は少し黒ずんでいる。

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 中身汁を上手に作るには、豚の中身をきれいに洗うことが最も重要。腸の内側には脂分がこびりついているので、それらを完璧に落とさねばならない。少しでも臭みや脂気が残ると、中身汁の透明で繊細な味わいが損なわれるからだ。脂を落とすには、かなりの手間がかかる。

 東京の居酒屋で出てくるモツ煮込みは、この脂分をそのまま味わう料理だが、沖縄の中身汁は脂分をゼロにする。

 伝統的な中身の洗い方は、小麦粉と酢を混ぜたものをまぶして、何度ももんで、脂分を落としていく。洗い終えた中身は、さらにお湯で3回くらいゆでこぼし、臭みを完全に抜く。

 かつて、各家庭で豚をつぶしていた1960年頃までは、こうした中身の処理も各家庭でやっていた。中身を店で買って用意するようになった現在でも、家庭に持ち帰った後に小麦粉と酢で洗い直す人が少なくない。どの販売業者も、ある程度は中身を洗って売っているが、完全な状態ではないためだ。「これをやると腰が痛くなるよ」。あるおばあが言っていた。

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 沖縄本島南部の糸満市で、豚肉と中身を販売しているいなみね精肉店の大城武さんに話を聞いた。大城さんの店では、手作業で大きな脂や膜を切りとったりはがしたりした後、専用の2台の洗濯機で洗う。伝統的なやり方と同じように、小麦粉と酢を入れてぐるぐる回す。「きれいにするのに、だいたい5時間くらい回します」と大城さん。手でもむのに比べれば時間は確かにかかるだろうとは思うが、それにしても5時間とは。

 豚のモツを、透明な中身汁の実にするコツがあるとすれば、それはこうした「手間ひまを惜しまない」ことにつきる。

 大城さんの中身のようにほぼ完全にきれいになったものならば、家で洗い直しすることなく、1回ゆでこぼす程度で使える。大城さんの店の徹底した洗いぶりを知る客は、糸満から遠く離れた中部からもわざわざ買いにくるという。

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 初めに書いたように、中身汁のダシは、豚骨とかつおぶしでとるのが基本。かつおダシだけで作る家もあるが、豚ダシが入ると、やはりコクが増す。その豚ダシを豚骨からとる際には、火加減に気を配る。火が強すぎると汁が白濁して臭みが出てしまうし、弱すぎても骨からうまみが十分に引き出せない。

 かつおぶしもたっぷり使う。第77話で書いたように沖縄のかつおぶしは裸節だが、それをドカンと入れないと、コクが出ない。さらに味くーたーにするために、鶏がらダシや昆布ダシを加える家もある。

 沖縄の行事食は、正月も清明祭も盆も、あるいは法事でも基本的に同じ。ごちそうのレギュラーメンバーの中にはあまり人気のないものもあるが、中身汁だけは「必ずおかわりする」という話を、若い人や子供たちからよく聞く。小さい汁碗ではおかわりが面倒なので、沖縄そばを盛りつけるような大きなどんぶりで食べる人も。

 というわけで、中身汁は、理屈抜きにおいしい。これほどおいしいのだから、何かで火がつけば、たちまち全国区になる可能性あり。ただ、中身汁は手間ひまかけて初めておいしくなる料理。筋金入りのスローフードであることは、おそらく変わりようがない。

 いなみね精肉店は、糸満市字糸満989-82、 098-994-0082。糸満市公設市場の一角にある。

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