2012年03月

2012年03月11日

厳選の品揃えはまだまだ

沖縄を創る人 第35回
 ジュンク堂書店那覇店店長 森本浩平さん(下)


 全国的にみても好成績を上げているジュンク堂書店那覇店。向かうところ敵なし、と思いきや、森本浩平店長の口からは「品そろえはまだまだ」という意外な言葉が飛び出した。

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 1500坪の巨大なスペースに、平台ほとんどなしで、縦型書架に足下までびっしりの本。それ以上の品揃えと言われても、ちょっと想像がつかないがー。

 「厳選、という意味で、まだまだなんです」

 どんなにジュンク堂の売場が大きく、置かれている書籍点数が多いといっても、出版されている本全体からみれば一部にすぎない。店には、毎月、6000冊から8000冊もの本が入ってくる。そこには「置くべき本を厳選する作業」が必然的に伴う。

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 「ある分野の専門書の書架に、ある先生の本が置かれているとします。その分野の品揃えのプロなら、この先生の弟子筋に当たる別の先生の本が近くに置かれていなければならない、と考えます」

 その専門分野と関係ない人には全く理解できないだろうが、特定のニーズを持った顧客ならば、確かにそのくらいの知識はあるかもしれない。

 「ジュンク堂の場合、本土ですと、全13分野にそれぞれ品揃えのリーダーがいて、各店を巡回しながら品揃えをチェックし、店の担当者にアドバイスしています」

 各分野のリーダーになる人というのは、その分野について圧倒的な知識を備えている経験20ー30年のベテラン。ある分野のリーダーは、個人でもその分野の本の収集に余念がなく、自宅では置き場所が足りなくなったため、新たにマンションの一室を借りて本を置く専用の部屋を確保しているという。

 残念ながら沖縄は本土から離れているため、そのようなリーダーたちがひんぱんには巡回できないから、那覇店のスタッフが自分で品揃えをしていかねばならない。森本さんが「まだまだ」と言ったのは、そういう最高水準の品揃えから見ればまだ十分とはいえない、という意味だったのだ。大型書店の世界は奥が深い。

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 森本さんは「本はすべてを解決してくれる手段」だという。神戸に勤務していた時のこと。電車に乗っていた若い男性2人がこんな会話をしていた。

 「きょうは何しよう」
 「どうしようか」
 「とりあえず、ジュンク堂に行こか」

 森本さんが言う。「この『とりあえず』というところですよね。本を読めば問題や迷いが解決するかもしれない、と多くの人が期待しているわけです」

 森本さん自身は、1999年大阪本店の立ち上げ時にジュンク堂に入社、翌2000年、23歳の時に神戸住吉店の店長、2005年に梅田ヒルトンプラザ店オープン時の店長を経験した。

 沖縄にはジュンク堂クラスの大型書店がなかったため、大型書店にとって意味のあるような書籍の売上データがほとんどなかった。つまり、沖縄に出店して果たしてうまくいくかどうか、データの裏付けはなかった。

 しかし、当時の社長は、神戸の孤児を沖縄に連れて行くボランティアなどで沖縄をしばしば訪れており、その間に、沖縄の書籍文化の深さを実感していたのではないか、と森本さんは言う。那覇店出店は社長プロジェクトだった。

 普通の大手の書店がデータのない場所に出店することは、まず考えられないという。

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 「社長は、地域の人が困っているかどうかで出店を決めていました」

 困っている地域にはニーズがある。つまり、本に親しむ沖縄の文化の深さを肌で感じていた社長は、それまでの沖縄の書籍の品ぞろえでは県民が困っているはずと考えた、というわけだ。

 その読みは見事にあたったというほかない。

 [森本浩平さんとつながる] ジュンク堂書店那覇店のHPはこちら。イベントのお知らせもある。沖縄の出版事情については沖縄県産本ネットワークのHPにいろいろ情報がある。例えば、「新刊案内」をクリックすると、あまり情報は新しくないものの、沖縄で出版されている本の多彩なラインナップがよく分かる。秋田で出版社を主宰する安倍甲さんの沖縄出版事情レポートも面白い。

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2012年03月04日

多様な書籍ニーズに応え、業績好調

沖縄を創る人 第34回
 ジュンク堂書店那覇店店長 森本浩平さん(上)


 ジュンク堂書店の那覇店が開店してから、今春で3年になる。鳴りもの入りでスタートした沖縄初の超大型書店。丸3年近くが経った今、業績はどうだろうか。店長の森本浩平さんを訪ねた。

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 万鐘本店で開店前のジュンク堂那覇店をレポートしたのは2009年4月19日だった。あの時は、まだ書架の間に段ボール箱が山積みになっていて、開店直前の緊迫感が伝わってきた。今はすっかり落ち着き、だれもが知る那覇の立ち寄りスポットの一つになっている。さて、成績は?

 「おかげさまで、たいへん順調です」

 森本さんの説明によると、損益ギリギリの売上のなんと2倍近い売上額を、どの月もコンスタントに続けている。学習参考書や医学書などが特によく売れている。部門によっては、40店以上ある全国のジュンク堂各店の中で2位を記録した月もあるという。

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 逆に、売上がそれほどでもないのは文芸書や文庫部門。文庫で言えば、他のジュンク堂では10%前後のシェアを持っていることが多いが、那覇店は7%ほど。沖縄県民は、価格が手頃でだれもが読むような売れ筋に飛びつくというより、それぞれが多様で個性的な選択をしている、という解釈が成り立つかもしれない。

 そうした多様なニーズに応えているのがジュンク堂の品揃えの豊富さといえそうだ。売場面積が1500坪というのはもちろん圧倒的なスペースだが、ジュンク堂の場合は、そのスペースが普通の書店の何倍にもなるという。

 というのも、普通の書店は平台が多いが、ジュンク堂はほとんどが縦型の書架。足下までびっしり本が並べられている。

 「ジュンク堂は図書館と同じなんです」

 言われてみれば、店内の風景は図書館によく似ている。

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 出店の場所も、あえて一等地ではなく、少し奥まった場所を選ぶのがジュンク堂の流儀という。存在を知ってくれさえすれば、顧客は目的意識をもって来るから、必ずしも一等地でなくても構わない。それよりも、地代が安い方が売場面積を確保でき、生命線である品揃えを充実させることができる。

 那覇店は、かつてダイナハ(後にダイエー)が入居していたビルに出店した。国際通りから少し入った場所だ。

 「ダイナハがあった場所です、と言えば、那覇の人はたいてい知っています。このビルに出店したのは、その意味で大正解でした」

 沖縄の他の書店との競合はどうだろう。

 「他店さんのほとんどは売上を大きく減らしたとは聞いていませんので、うちの売上は沖縄の潜在需要を掘り起こしたとみています」

 簡単に言えば、他の書店になかった本がジュンク堂には置かれており、それらがよく売れている、ということだろう。

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 沖縄県民が、必ずしも売れ筋でない本を含めた多様なニーズを示すのはなぜだろうか。

 森本さんは、本に対する沖縄県民の親しみの深さは、沖縄の出版文化の広がりに現れているとみる。沖縄には出版社が50社ほどある。個人で出版する人も多い。

 「本を読む文化が沖縄にはもともとしっかりあった、ということだと思います」

 こうした順調な業績に森本さんはさぞ大満足かと思いきや、違った。

 「品揃えはまだまだなんですよ」

 その意味は次回3/11(日)に。


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