2012年09月

2012年09月29日

撮影所と化した加工場

 ももと庵で持ち帰りできる万鐘の加工品は、これまでいくつかのメディアに取り上げられました。肉みそが、フジテレビの「麗しのニッポン味覚遺産」に認定されたのもその一つです。

 「麗しのニッポン味覚遺産」は、朝の情報番組「とくダネ!」の人気コーナーでした。その後、「麗しのー」の部分が独立する形でBSフジで放映されるようになり、最近でもまだ時々再放送されているようです。「テレビを見ました」と、ご注文をいただくことがあります。

1 Shikaisya

2 Shohin


 「麗しのニッポン味覚遺産」は、全国の隠れたうまいものを発掘してスポットライトを当てる12、3分のミニドキュメンタリー。これで万鐘の黒糖肉みそが紹介されました。2009年のことです。

 撮影隊は、ディレクター、カメラ、音声の3人で、はるばる東京からやって来ました。12、3分の映像を作るのに、撮影は丸2日かかるんです。肉みその製造工程を、材料の紹介から始め、肉を切る、肉を煮込む、味噌などを合わせる、鍋で練り上げる、という具合に、一工程、一工程、じっくり撮影していきます。

 例えば、初めの材料の紹介のところで、味噌なら味噌をきれいに器に盛りつけて、いろいろな角度から照明をあてて調整しながら、カメラを回します。それを主な材料のすべてについてやるわけです。テレビで何気なくみている数秒の短い映像も、こうやって一つひとつじっくり撮影されているんだということがよく分かりました。

3 Satsuei


 肉みそには、コラーゲン豊富な豚の皮を入れていますが、その紹介の部分では、「皮を入れた鍋をもって、向こうから歩いてきて下さい」とディレクターに言われました。ディレクターのイメージ通りになかなかなりません。

 ディレクターが動作に注文をつけて、再び撮影。

 「じゃ、いきまーす、ハイ」

 その2日間、万鐘の小さな加工場は、すっかり撮影所になっていました。


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2012年09月24日

ウンチェーの必殺アクぬき術

 前回に続いてウンチェーの話をしましょう。きょうは料理教室。きれいなウンチェーいための作り方です。

 ウンチェーのにんにくいためを作ると、全体が黒ずんでしまうことがあります。これを防ぐ方法をベトナムの人から教えてもらいました。

1 Unche Viet


 それは、いためる前に大量の湯でさっとゆがくこと。アクの強いホウレンソウを下ゆですることがありますね。あれと同じことをやるわけです。沖縄では、生のままいためている家が多いんじゃないでしょうか。

 あらかじめゆがけば、その段階で火はだいたい通っているので、いためるのは短時間で切り上げないといけません。油でにんにくをじっくりいためたら、火を強め、ゆでて水切りしたウンチェーをジャッと入れて、軽くかき混ぜ、油を全体になじませればOK、とのこと。

 初めの写真は、ベトナムの食堂で食べた時のもの。たしかに、緑がきれいです。ニンニクごろごろで、いかにもスタミナがつきそう。

 下はラオスで食べたもの。全体の色がややくすんでいるだけでなく、よく見ると黒っぽい汁が出ているのが分かります。こちらは、沖縄と同じように、ゆがかずにそのままいためたのでしょう。

2 Unche Lao


 下ゆで方式のコツは(1)大量の湯で、つまりウンチェーを入れても温度が下がらない状態で、ごく短時間ゆでる(2)湯きりを完全にやる(3)油いためは、高温の油をからめる程度の短時間で終えるーことのようです。

 目からウロコの、必殺アクぬき術でした。

 ただ、普通の家の台所でやる時は、ゆがき用に大きい鍋を使うのがめんどくさい、ということになりそうな気もします。それほどウンチェーバーいためは、夏場はしょっちゅうやる料理なんですね。


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2012年09月19日

つる1本から命が始まる不思議

 沖縄はまだまだ夏が続いています。ギラギラの炎天下では、さすがの沖縄の葉野菜たちも元気がありませんが、ウンチェーバー(空芯菜)だけは別。暑い中でも平気で育ちます。

 フィリピンやインドネシアではカンコン、タイならパッブーン、ベトナムだとラウムオン。熱帯アジアのどこに行っても登場します。写真はラオスの市場にドカンと置かれたウンチェー(一番手前)。

1 Unche ichba Laos


 特に水辺付近では、ウンチェーがスルスルと横に伸びている場面に出くわします。ただ、水辺に自生しているものと、栽培品種とは違うのが普通。少なくとも沖縄では違います。

 ウンチェーは、ヒルガオ科サツマイモ属。サツマイモの親戚です。サツマイモって、葉が6、7枚ついたつる1本を土に差すだけで、それが苗になってしまうって、知ってました?

 栄養がぎっしり詰まっている種を植えるなら分かります。ジャガイモやヤムイモはイモの一部を植えますが、イモにはたっぷりデンプンが蓄えられていますから、これも分かります。いずれも「いのちの初動」を担える栄養がたっぷり。

 でも、サツマイモのつるに栄養が詰まっているようには見えません。生まれた瞬間からダイエット、ではないですが、ロクなお弁当も持たされないまま、いのちの初動が始まります。しかし、つるを植えると、なんと、その一部からチョロチョロと根が出てくるんです。不思議としか言いようがありません。

 ウンチェーの場合は、サツマイモと違って最初は種でスタートするのが普通ですが、育ってきたら、成長点のつるの先を20cmくらい切ってまた植えたら、ちゃんと根が伸びてきます。サツマイモの親戚ならでは。ただし、水をたっぷりかけて下さい。

 ウンチェー料理の定番はニンニクいため。これぞ「飽きのこない味」部門の世界チャンピオンではないかと思うくらい、いつ食べても何度食べても、まだ食べられる、また食べたくなるという不思議な料理です。

2 Unche Oki ichiba


 沖縄でも夏の野菜おかずの横綱は、やはりウンチェーいためでしょう。夏になると、こんなにたくさん売られています。写真は、沖縄市のファーマーズマーケット「JAちゃんぷるー市場」。

 夏はこれしか葉野菜がないから、しょうがないねえ、などと言いつつ、つい箸が伸びてしまいます。ごはんのおかずにも、ビールのつまみにもなるんです、これが。

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2012年09月14日

向笠千恵子さんのトコトン現場主義

 向笠千恵子さんは、「日本の朝ごはん」「日本人が食べたいほんもの」から、最近の「食の街道を行く」まで、食に関する数多くの著書をお持ちのフードジャーナリストです。

 テレビやラジオ番組にもしばしば出演しているほか、農水省の「食アメニティコンテスト」審査会長、「本場の本物」審査専門委員などを歴任。最近では、NHKのラジオ深夜便「大人の旅ガイド」に生出演しています。

 その向笠さんが、万鐘の肉みそを雑誌dancyuのごはん特集で取り上げて下さったことがあります。

1 dancyu


 dancyuは、言わずと知れた食の専門誌で、キャッチフレーズは「食こそエンターテインメント」。毎回、興味深いテーマで特集を組みますが、2008年11月号は「特集 ごはんはもっと旨く炊けます!」でした。

 お米の選び方から炊き方、玄米の新しいメニューなど、ごはんをめぐるさまざまな情報が満載の中で、ごはんと一緒に食べるとおいしい「ごはんの友」も取り上げられました。

 東京・浅草で「レストラン大宮」を経営する大宮勝男シェフと向笠さんの二人が、ごはんの友をいろいろテーブルに並べて試食しながらの対談です。

 明太子の頂点と言われる無添加の明太子や、天然うなぎを白焼きにして煮込んだ天然鰻茶漬といったそうそうたるラインナップの中で、万鐘の肉みそを取り上げていただきました。

 向笠さんは全国の津々浦々を回り、伝統食やほんもののおいしさに出会っては、その魅力を全国の人々に伝えています。小さな生産者にも温かなまなざしを注ぎ、応援して下さいます。

 すごいなあといつも思うのは、徹底した現場主義であること。万鐘のような、本当に小さな現場にまで何度も足を運び、現場を自分の目で見るとともに、生産者の声に耳を傾け、舌で味わいます。これだけたくさんの本を書くのに、いったい全国の何カ所を回ったのでしょうか。

 先日も沖縄そばの取材に来られて、連日、朝4時起きで生産現場を歩いた由。沖縄そばは、豆腐などと同じく、未明から早朝にかけて製造作業し、朝には作り終えています。そんな現場にいくつか足を運んだとのこと。

 写真は、ももと庵から近い海中道路を渡った先の平安座島で伝統行事「サンガチャー」を取材する向笠千恵子さんです。

2 mukasa


 向笠さんの近著「食の街道を行く」は、パリで開催された2011年「グルマン世界料理本大賞」を受賞しました。同大賞は料理本のアカデミー賞と言われます。鯖街道、ぶり街道、昆布の道、砂糖街道、唐辛子の道といったさまざまな食材が運ばれた道を、まさに現場主義で歩きながら、歴史に思いをはせ、歴史を受け継ぐ今の人々の姿を描いています。

 向笠千恵子さんのホームページはこちら。著書はAmazonでも購入できます。


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2012年09月09日

オニオンスープがうまい理由

 前回紹介した揚げニンニクや揚げタマネギは、香ばしさはもちろんですが、うまみもかなりのものです。特に揚げタマネギはすごい。

 例えば、焼いた肉や魚介と香草などをあえたサラダ風の料理はアジア各地にありますが、そこに揚げタマネギが入るとうまみがぐーんと増します。写真は市場で量り売りされている揚げタマネギ(手前)と揚げにんにく(奥)。

1 Agetamanegi


 フレンチレストランで登場するオニオンスープもそうですね。タマネギを長い時間、ひたすら油でいため続けますけど、油の高温にあてられたタマネギはうまみをどんどん増幅・凝縮させていき、あめ色にまで変化したいためタマネギは、スープのうまみのもとになります。

 レストランでは、このいためたタマネギを、肉や骨でとったストックでのばすことで、うまみをさらに倍増させます。が、ストックがなければ、ただのお湯でのばしても、タマネギがとことんいためてあれば、結構おいしいスープができます。それほどいためたタマネギのうまみは強い。油の高温がポイントです。

 揚げタマネギもこれによく似ています。水分を飛ばしながら、油の高温でうまみを増幅、凝縮させている感じです。

 日本ではラーメン屋の中に「揚げネギ」をウリにしているお店がありますね。「焦がしネギ」と言って、キツネ色よりももう少ししっかり揚げて、さらに香りを強く引き出していたりします。ただし、ラーメンの場合は、同じ揚げネギでも、タマネギの甘さを避けて、長ネギを使っているケースが多いみたいです。

 揚げた後の油はもちろんネギ油。ネギのうまみが溶け出している格別の油です。ほとんど、どんな料理にも使えます。

 ご家庭で揚げタマネギを試しに少量作ってみたい、という方。中くらいのタマネギを1個分スライスし、マグカップのような深さのある大きめの陶磁器に入れ、植物油を大さじ3杯くらいかけてよく混ぜ合わせ、電子レンジにかけます。フタはしません。

 いかにも生という感じが残っている最初の数分は500wくらいで、その後は200-300wの低温でゆっくり加熱していきます。油が少ないので、途中で何回かレンジから出して、器の中身をかき混ぜた方がいいですが、いためタマネギのようにずっと鍋につきっきりで混ぜる必要はないので、だいぶ楽です。焦げそうになったら、いったんレンジを止めて、しばらく油の温度を下げてから、また再開します。

 水分が飛んでタマネギのかさが減り、しっかりきつね色になるまでにはかなりの時間がかかかりますので、気長に。レンジから取り出す時は、油が熱いので十分気をつけて下さい。

 油から引き上げて、油切りした揚げタマネギは、汁ものなどに入れるとおいしいです。関西風うす色スープのかけうどんに、たっぷりの青ネギ、針しょうがなどとともに揚げタマネギを入れるだけで、ちょいアジア風のコクのある汁めんになります。豆腐のみそ汁なんかに入れても、ひと味違っておいしいですよ。お試し下さい。

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2012年09月04日

香ばしい揚げニンニク

 ももと膳の冷しゃぶには、きつね色の小さな粒が、頂上付近にパラパラとまかれています。これ、揚げたニンニク。口に含むと、なんともいえない香ばしさが食欲をそそります。

1 mmt ninniku


 沖縄県民は、総じてニンニク大好き。中華食堂ではない泡盛居酒屋に「ニンニク餃子」がメニューとしてよく置かれたりしています。ひとくち頬張ると、ニンニクの味のみ、と言っていいくらいの強烈さ。鶏の丸焼きでも「ガーリックチキン」が人気です。でも、揚げニンニクが使われているのはあまり見かけません。

 ニンニクは、アジアはもちろん、欧米でもアフリカでも中南米でも人気です。21世紀の人類のプラットフォーム的アイテムは、結局、iPhoneとニンニクの2つに集約されるのかもしれません(笑)。

 東南アジアでは、揚げニンニクをよく料理に使います。各地のローカル市場に行くと、半加工ずみ素材みたいなものを売っている店があって、揚げたニンニクとか、揚げたタマネギをビニル袋に入れて並べています。写真はラオスの市場で見かけた揚げニンニク(左)と揚げタマネギ(右)。

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 この揚げニンニクや揚げタマネギ、作るのは意外に大変です。材料の皮をむいて切って揚げるだけなんですが、水分をちゃんと抜くにはかなりの時間がかかります。あわてると焦がしてしまうので、油の温度管理もうまくやらないと。

 しかも、というか、当然というか、出来上がりは、最初の原材料に比べると、ほんのちょっとにしかなりません。あんなに苦労したのに、たったこれっぽっち?! 水分がみんな飛んでしまうので、かさがどうしてもぐっと減るんです。

 そんなことなので、アジアの主婦たちも、自分で作ることもあるけど、面倒な時は市場で買うことになります。

 ベトナム、タイ、ラオスあたりは汁めんをよく食べますが、この揚げニンニクがトッピングされていることも多いです。写真はラオス。なんともいえない香ばしさに脱帽です。

3 Ageninniku3



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