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2011年07月03日

沖縄の農業は「いける」

沖縄を創る人 第25回
 沖縄百姓の会代表 上地聴さん(下)


 上地聴さん率いる「沖縄百姓の会」が取り扱う品目は、農薬も化学肥料も使う農法、いわゆる慣行農法で作る野菜もあるし、減農薬・減化学肥料で作るものもある。

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 例えば「198円」の価格を崩さずに、量を売っていくタイプの商品は、化学肥料の力によって、単位面積当たり収量を、あるレベル以上確保することがポイントになる。

 逆に、農薬や化学肥料を減らすことで収量を落としても、一定の価格を確保できるタイプの農産物も手がける。例えばイオンの「グリーンアイ」ブランドがそう。沖縄百姓の会は、沖縄県内のイオン各店のグリーンアイ商品生産を請け負っている。安全安心を担保する農業生産工程管理(GAP)を導入した会員農家も35軒ある。

 減農薬・減化学肥料をさらに進めて有機野菜を作る可能性はどうだろうか。

 日本の有機認証は3年以上の土地履歴がないと得られない。気候や市場の変化によっては、3年間のうちに、化学肥料や農薬を使わざるをえないことが起きうる。病気に弱い園芸作物は特にそう。めまぐるしく変わる気候や市場の変動の激しさと、「絶対的な3年間」とは相容れないことがしばしばある。

 有機野菜の市場性に関心は大いに持ちつつも、生産現場を知り尽くしている上地さんは少し慎重だ。無理をして背伸びをすれば、デリケートな農家経営はたちまち破綻するからだ。慎重に、慎重に、上地さんは有機野菜の可能性を探っている。

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 百姓の会は、新しい作物を常に模索してきた。そうした新規導入作物については、生産・出荷が軌道に乗るまで、上地さん自身が自分の畑で実験することが多い。今も新たな品目をいくつか仕込んでいる。

 研究開発を経て、自社ブランドとして本格出荷までこぎ着けた作目の代表格がエダマメ。沖縄なら、4、5月に本土に出荷できる。そろそろビールが飲みたくなるという季節に、他府県の産地に先んじて、タイミングよく食卓に提供できる。

 ことしから本格出荷する予定だったが、折悪しく台風2号が来襲。最後の仕上げ段階まできていた畑の多くがやられてしまった。会員農家のエダマメ畑を回りながら、上地さんが、台風にやられた若いさやを手にとってつぶやいた。「実が入るかな。・・・厳しいな」

 エダマメを出荷するための百姓の会専用袋をちょうど作ったところだった。

 「10万枚がパーです。また来年使えばいいんですけど」

 自然現象の台風に文句を言ってみても始まらないが、「さあ今から」という出ばなをくじかれてはさすがにまいるな。上地さんは多くを語らないが、そんな表情をしてみせた。かなりの損害額に上ることは間違いない。

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 沖縄百姓の会が年商6億を実現できたのは、マーケットのニーズにまじめに応えてきたからにほかならない。「タイミングよく提供する」のも本土向けばかりではない。

 会員の中に、朝どりレタスを出している農家がいる。毎朝収穫したものをその日のうちに県内のイオンに送る。1日、2日経過したものに比べると、鮮度が全く違う。そのことをよく知っている固定ファンのお客さんが楽しみにしているという。

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 台風でやられたエダマメ畑を歩きながら、上地さんは言った。

 「沖縄の農業はいけると思っています」

 自らを鼓舞するための言葉かと思ったが、全く違った。

 「沖縄野菜は、本土の冬場に重宝するんです」

 最初から最後までとことんマーケットに向き合う中で培われた確かな手応え。マーケットが「欲しい」と言ってくるものをまじめに作れば、必ず売れる。上地さんはそう実感している。

[上地聴さんとつながる] 沖縄百姓の会はホームページは作っていない。百姓の会が導入した農業生産工程管理(GAP)についての沖縄タイムスの記事がある。GAPそのものについては農林水産省の解説が詳しい。

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