[第2話 沖縄] ぶれない安売り、丸中商会

2007年07月27日

[第1話 食] モウイ―沖縄芝居の名わき役 

 沖縄の夏といえば、ゴーヤーからマンゴーまで、旬の味覚のオールスターが勢ぞろいする。そんな中で、地味ながらも渋い光を放っているのが、モウイだ。

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 モウイは、赤ウリとも呼ばれる。長めのきゅうりを4、5本束ねたくらいの大きさ。赤茶色の皮をむくと、中から水気たっぷりの白い果肉が顔を出す。

Moui2

 ゴーヤーのような苦みがあるわけではないし、ナーベラー(ヘチマ)のような独特の甘味があるわけでもない。クセがない、何とも素直な味だ。

 最大の売りは、歯応えである。よく冷やしておくと、口に入れた時、心地よいパリパリ感が、暑さで減退気味の食欲を刺激してくれる。

 皮をむいて縦半分に割り、中心部の種をさじでかき出す。3mmほどの厚さにスライスして、かるく塩をふり、10分ほど置くと水が出てくる。その水をよく切って、醤油と酢半々で作った酢醤油を適量かける。そのまま冷蔵庫で2時間、よく冷やせば出来上がり。

Moui3

 モウイは、沖縄県内ですら、農産物流通の主流からははずれている。市場流通するのは7、8月の短い期間のみだが、この時期でさえ置いていないスーパーがあるほどだ。

 品種改良も出荷品質管理もほとんどされていないのだろう、形はふぞろいだし、大きさもまちまち。水分が多くて重たい割には、あまりにふだん着の存在すぎて、スイカやメロンのように付加価値をつけるのが難しく、その分、商業的なメリットが少ないのではないだろうか。

 万鐘のあるうるま市のような農村部を抱える地域では、畑の隅に自家用に植えている人が少なくない。栽培管理の手間はほとんどかからないから、植えておけば自然にできる。お金を払って買う野菜、のイメージではない。市場流通からはずれてしまった、のではなく、もともと市場流通に本格的に乗っていないというべきだろう。

 ゴーヤーがもはや国民的大スターだとすれば、モウイは、さしずめ沖縄芝居の名わき役といったところか。だが、このモウイ、毎年7月になると、沖縄の各地にちらほらと元気な姿を見せ、パリパリした歯ごたえ一本の名演技で観客を大いにうならせるのである。

bansyold at 22:17│TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック  

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