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2007年10月07日

[第18話 農] 微生物より有機物、金城夫妻の土づくり

 名護市でハウス野菜を生産している金城利信さん、美代子さん夫妻は、土づくりにこだわって、高品質のゴーヤーやインゲンを栽培している。「土づくり」はよく聞く言葉だが、実際には何をするのか。その前に、まずは土づくりの結果をお見せしよう。

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 金城さんの畑では、長さ70cmほどの鉄筋が片手でスーッと入っていく。とてもトラクターで耕せる深さではない。この土の柔らかさは驚異的と言っていい。もとはガチガチの赤土だった。その当時、もし鉄筋を突き立てていたら、おそらく3cmも入らなかったはずだ。

 土づくりとは―。落ち葉などで作った堆肥とともに、鶏糞や豚糞、油かすといった栄養価の高い有機物を入れ続けると、何年か栽培を続けるうちに土の生物的・化学的バランスが徐々に整い、土が柔らかくなり、作物の収量が上がるとともに病気にも強くなる―。このあたりが模範解答だろう。

 だが、高温の熱帯・亜熱帯では、土壌微生物の活動が非常に活発なので、教科書通り、1反(0.1ha)に2tくらいの有機物を入れたのではとても追いつかない。利信さんが「本土に研修に行ったんだが、あまり参考にならなかった」と述懐するのは、温帯の土づくりは亜熱帯の沖縄では通用しないからだ。

 金城さんの土づくりの極意は、有機物を大量投入すること。剪定チップと呼ばれる木のチップをはじめ、伐採木、雑草、コーヒーの絞りかすなど、手に入るあらゆる有機物を1、2年寝かせてから、畑に入れる。都市汚泥や牛糞といった栄養価の高い素材ももちろん混ぜる。こうした有機物を1反に年間10tも入れるのだ。下の写真は新しい剪定チップ。2年経った頃には黒ずんできて、かさもぐっと減る。

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 「最近は微生物のことが強調されるけど、微生物の餌になる有機物をまずたくさん入れなければどうにもならん」と利信さん。少々の堆肥を入れても、あっという間に分解されて消えてしまうのが亜熱帯の赤土なのだ。

 野菜づくりは、初めは美代子さんが一人でやっていた。美代子さんの栽培管理の腕はたいへんなもの。ゴーヤーでは総理大臣賞に輝いたこともある。建設業を辞めた利信さんが本格的に戦列に加わって、二人の土づくりは一層進んだ。

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 金城さん夫妻は、売っている微生物資材は全く使っていない。大量の有機物が入れば、それをエサにして自然の微生物が増え、土をほろほろに柔らかくしてくれるからだ。

 微生物資材より有機物の大量投入―。亜熱帯の土づくりの基本である。


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