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2008年01月07日

[第34話 食] 静かに守る首里の味

 琉球料理の正統派、古都・首里の味をひっそりと守っている店を紹介する。ともに首里に生まれ育った富名腰久雄さん、米子さん夫妻が経営する富久屋。「私たち2人の舌で覚えている首里の味をお出ししています」と久雄さんが語る。

Fukuya1

 まずは、むじぬ汁から(「の」が、琉球語では「ぬ」になる)。「むじ」とは、ターウム(田芋)の茎。本土では、サトイモの茎のズイキが食べられるが、これに近い。むじぬ汁は、むじがみそ汁に入っており、豚の三枚肉があしらってある。祝いごとがあると、首里ではむじぬ汁が作られたという。むじはシャクシャクした独特の歯ごたえがある。

 同じみそ仕立ての汁でも、むじぬ汁とは全く違うのが、いなむどぅち。こちらは甘い白みそ仕立てで、豚肉やこんにゃく、かまぼこなどが入っている。汁はいくぶんとろみがあり、コクは十分だが、不思議にしつこさはない。

 豚肉に黒ごまをまぶして蒸した、みぬだる。全く脂っぽくない。さっぱりした味付けだが、うまみはしっかり感じられる。

Fukuya2

 どぅるわかしーぬあぎー。ターウムをつぶして、豚肉、かまぼこなどを加えて練ったのがどぅるわかしーで、それをまるめてあぎー(揚げもの)にしたのがこれ。第6話のままやの料理でも登場した。脇道にそれるが、「あぎー」は、さーたーあんだあぎーの「あぎー」だ(「さーたー」は砂糖=甘い、「あんだ」は油)。

Fukuya3

 小鉢では、かんぴょういりちー。かんぴょうを昆布やこんにゃくなどといっしょにいため煮にしたもの。かんぴょうにヌヌっと入っていく歯ごたえが楽しい。昆布をいため煮にしたくーぶいりちーはよくあるが、かんぴょうのものは珍しい。

Fukuya4

 ピーナツで作る地豆豆腐(じーまーみどーふ)はポピュラーな沖縄料理だが、ここの地豆豆腐はべたつかず、切れがよい。

 祝膳のイメージで出している、というむじぬ汁定食についてきたごはんは赤飯だった。ただし、もち米ではなく、うるち米を使うのが首里流とのこと。

 料理全体の印象は、ヘルシーで繊細な和食のイメージ(もちろん料理の中身は和食とは違うが)に、豚のうまみが加わったという感じだ。豚だしのうまみは随所に使われているが、あくまで上品で、脂っぽさや臭みは一切ない。ていねいに作られたバランスのよいごはんをいただいた満足感が残った。

 定食だけでなく、富久屋は泡盛も用意しているから、一杯やりながら、首里の味を楽しむことができる。

 富久屋は、首里の龍潭通りから、旧県立博物館の横の細い道を入って間もなくの右側、道から少し奥に引っ込んだところにある。場所は大人の隠れ家風だが、中は木づくりで明るく、家族連れで楽しめる。看板は一応あるが、見えにくいので、分からなければ電話を。常連客が多いようだが、初めての客も、富名腰さんが温かくもてなしてくれる。

 那覇市首里当蔵町1-14、098-884-4201。営業時間は昼が11:00-15:00、夜は18:00-23:00。定食は、むじぬ汁定食が1200円、それ以外は1000円。単品は500円前後。ちゃんぷるー類や沖縄そばもある。

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