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2007年12月17日

[第30話 食] どこまでもユニークな若狭のそば

 那覇の若狭にユニークな沖縄そば屋がある、と聞いて出かけた。その名は「若狭パーラー」。沖縄でパーラーと言えば、浜辺などで、プレハブやコンテナハウスで軽食やかき氷などを売っている店のこと。転じて、海辺ではない場所でも、簡単な建物で軽食を売る店を総称してパーラーと呼ぶ。たいがいのパーラーはそばも置いているが、出来合いの濃縮スープをお湯で薄めたような情けないそばを出すところも多い。さて、どんなものか―。半信半疑で若狭に赴いたら、ありました。

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 一見してそのユニークさが分かる店だった。若狭パーラーは、住宅街にある店主の自宅の一部を店にしている。店の部分が建物のギリギリのところにあり、客のすわるイスはその外側に置かれている。客席が店内にない、という意味では確かにパーラーだが、場所は砂浜ではなく、普通の住宅街なので、客席がまるで道路上にあるような、なんとも妙な構えになる。

 いや、正確に言えば、バーラーにはもともと客席はない。例えば海辺なら、客は、パーラーで買った食べ物を、自分の荷物を置いた場所などに持っていって、そこで食べる。若狭パーラーもそうした「パーラーの原則」に忠実なだけ。イスはサービスで置いているにすぎない。

 だが、驚くのはまだ早かった。行き交う車に背を向けて、豚肉そばを注文したら、こんなそばが登場した。

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 ヨモギの葉がオプションでついてくる店は時々見かける。第3話で紹介した美里そばもそうだった。ところが若狭パーラーでは、オプションではなく、初めからヨモギがたっぷり入っている。これはかなり珍しい。つゆの熱で鮮やかになったヨモギの緑と、立ち上る香りを楽しみながら、めんをすすり、つゆを飲む。

 あれ? 食べ始めて、「ユニーク」がもう一つあることに気づいた。そばの上に乗っている肉。沖縄そばと言えば、三枚肉かソーキ(あばら肉)を柔らかく煮付けたものが乗っていることが多いが、ここでは、赤身肉が乗っている。赤身だとどうしてもぱさぱさしがちだが、ここの肉は不思議なくらいしっとりと煮上がっている。

 赤身肉を入れるそば屋もないわけではないが、これほどつゆによく合う赤身肉の煮付けは、なかなかお目にかからない。これはタダモノではないな―。作り方を尋ねてみると、店主はさすがに口を濁した。かなり手の込んだ作り方をしているらしい。

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 コーレーグスもユニーク。コーレーグスといえば、小さな三角形をした赤い島唐辛子が泡盛に漬け込んである姿を思い浮かべるが、ここでは、それをミキサーにかけてすりつぶした赤いペースト状のものが出てくる。普通のコーレーグスは泡盛の香りとトウガラシの辛さが基本になっているが、すりつぶしたコーレーグスは、唐辛子の香りが前面に出ていて、これはこれでなかなかうまい。ペーストの作り方も尋ねてみたが、これにも店主は口を濁した。

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 沖縄そばは、どんどんおいしくなっていると言われる。後発こだわり店の頑張りに、昔の名店もうかうかしていられない。そばの完成度は上がり、そばジョーグーたちは「理想的なそばの姿」をあれこれ語る。

 だが、若狭パーラーのように、そうした動きから離れたところで、わが道をいく店も健在だ。独自のこだわりの中にバランスのとれたおいしさを感じさせる若狭パーラーのそばは、沖縄そばの理想型が一つではないことを教えてくれる。

 若狭パーラーは那覇市若狭2-14-16。098-861-6492。営業時間は07:30から20:00まで。豚肉そば400円、卵焼そば400円など。

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