[第36話 食、南] シトギ文化の一翼担うムーチー [第38話 沖縄] 三線片手に歌える民謡広場

2008年01月25日

[第37話 食] 屋良敦さんが教える魚のマース煮

 マースは塩。「マース煮」を直訳すると「塩煮」になる。第23話で紹介したような塩焼きではない。煮るのだ。煮魚といえば、醤油やみりんで甘辛く煮たものが本土では多いようだが、沖縄ではこのマース煮がよく作られる。

 甘辛い煮つけだと、味の主役は甘辛の煮汁で、魚の味はうまみとして煮汁の土台になる。が、マース煮の場合は、塩でデフォルメされた魚の香りと味がストレートに迫ってくるので、「魚を食べている」という実感がわく。同じ煮魚でも、甘辛味とはだいぶ違った味わいだ。

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 沖縄が誇る和食の名人、屋良敦さんに、マース煮の作り方を教えてもらった。まず、マース煮にする魚は白身の魚を使う。沖縄ではエーグワー(アイゴ)をよく使う。高級な魚ではないとされているが、面白いことに、マース煮にした時はこのエーグワーがとてもおいしい。固すぎず、柔らかすぎずのエーグワーの白身の食感が、塩で煮た時に引き立つようだ。

 「魚は新鮮なものを使って下さい」と屋良さん。塩だけで煮るので、生臭ければそれがまともに出てしまうからだ。エーグワーは内蔵の苦みが強いので、すべて取り出して、腹の中をよく洗う。臭みが気になる場合は、さっと熱湯にくぐらせ、いわゆる霜降りにするとよい。

 まず、魚が半分くらいひたる煮汁を作る。ここでは水2カップ、泡盛1カップに塩小さじ1前後を入れた。臭み消しの生姜を加え、煮立てる。魚を入れ、落としぶたをして中火で煮る。濃いめの味にしたければ昆布を敷いてもよいが、昆布なしでも十分おいしい。煮る時間は魚の大きさによるが、長さ25cmぐらいの魚で10分ほど。

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 魚は尾かしらつきが基本で、切り身ではあまりやらない。出来上がったら、塩味の煮汁をつけながら熱いうちに食べる。屋良さんは今回、特別に、魚の周囲にアーサをあしらって、地味な色のエーグワーの皿に彩りを添えてくれた。アーサは色だけでなく、その海の香りがマース煮を引き立てる。煮汁のうまみを味わうのにも、アーサがあると具合がいい。

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 酢じめしか食べ方がないコハダのように、エーグワーもマース煮以外にはおいしい食べ方がないのではないかと思わせる。実際、この魚を焼魚や唐揚げにして食べるという話は聞いたことがない。

 マース煮は、高級魚ミーバイ(ハタ)でももちろんおいしい。ビタロー、アカマチなどでもいける。マース煮を経験したことのない人は、塩だけで煮るなんて、と思うかもしれないが、目からウロコのおいしさであること請け合い。一度お試しを。

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