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2008年06月05日

[第59話 農] 沖縄の農作業に欠かせないヘラ

 畑仕事をスムーズにやれるかどうかは、農具の優劣に大きく左右される。農業に限ったことではないが、すぐれた道具があれば仕事は大いにはかどるというもの。沖縄の農作業に欠かせない農具は「ヘラ」だ。

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 ヘラは片手で持って土をほじったり、草をとるのに使う。高温多湿の沖縄では、農作業の多くが雑草との闘いに費やされる。実際、ちょっと油断するとすぐ草が生い茂って作物が劣勢になるから、まめに除草しなければならない。冬に草が枯れてくれる温帯地域や、同じ熱帯・亜熱帯でも乾季がはっきりしている地域とはこの点が大きく違う。

 その草も、まっすぐ上に伸びる雑草ばかりではない。むしろ地面にはりついているような雑草や、地面をはうツル性の雑草が始末が悪い。こうした雑草の多くは、葉を切るだけでなく、根ごと掘り返してとってしまわないと、またすぐに生えてきて、畑を荒らす。このように雑草を根までとるには、かなりの力がいるから、ヘラのような短くて手元で細かく動かせる農具がどうしても必要になる。

 畑にすわり込んでヘラで除草すれば、立ったままかがんで鍬を使うよりも腰を傷めなくてすむというメリットも。そもそも、有機質の多い柔らかな土を起こすなら立って鍬をふるってでもできるが、沖縄の固い土の中に埋まっている草の根をほじくり出すといった作業を、長い柄の農具でやるのは相当しんどい。

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 文化人類学者は農具や農耕儀礼の分布から、トカラ列島から八重山までの地域にしか見られない独特の農耕文化について論じている。佐々木高明著「南からの日本文化」(2003年、NHKブックス)には、そんな農具や農耕儀礼の分布が示されている。それによると、ヘラもこの地域に固有の農具。呼び名も場所によって「ヒラ」「ピラ」「ビラ」「ヘラ」などと微妙に違う。

 今は、握りまでオール鉄製のヘラが当たり前のように使われているが、かつては握りの部分は木製だった。写真は那覇市の県立博物館に展示されている古いヘラ。

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 地上戦で文字通り灰燼に帰した沖縄―。すべてが焼き尽くされた焦土の沖縄で、まず何よりも求められたのが食べものを作ること、つまり農業だった。その農作業の能率を大きく高めたのが、一体型のオール鉄製ヘラの登場だった、といっても過言ではない。

 戦後、このオール鉄製ヘラをいち早く生産したのが、現在、食品スーパーかねひでなどの関連企業を束ねる金秀グループの創設者、呉屋秀信さんだった。呉屋さんは、時代が最も必要としているものに鋭く着目し、それをすばやく供給して次々に事業を成功させてきたことで知られている。

 機械化が進んで、ヘラの活躍の場は以前ほどではなくなったかもしれないが、それでも沖縄の畑仕事にヘラは欠かせない。ヘラは沖縄県内の金物屋やホームセンター、農協などで売っている。

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