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2008年05月12日

[第55話 沖縄] 赤瓦の景観が美しい分譲住宅

 赤瓦に真っ白いしっくい。沖縄の伝統家屋は、南国の青い空によく映える。かつてはそんな家並みが作り出す景観がさぞ美しかったに違いない。最近の建物は同系色の素材を使うこともなく、統一感のある景観は見られない。と思っていたら、景観づくりを意識した先駆例があった。

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 豊見城市渡橋名にある「エコシティとはしな」。沖縄県住宅供給公社が、戸建て分譲住宅として整備・販売したいくつかの地域の一つだ。

 エコシティとはしなの住宅総数は140戸。これだけの数がまとまって意匠をそろえると、それなりの統一景観になる。統一されている意匠は外壁の白と屋根の赤瓦。住宅のデザインは17種類あり、多様でバラバラの印象だが、かえってそれが町並みのリアリティを醸し出しているといえそうだ。
 
 むろん、エコシティとはしなは、住民の総意で景観づくりをしたケースではなく、公社のイニシアチブによる分譲で、言ってみれば「上からの景観づくり」。が、とにもかくにも、統一景観を実際に作り出しているので、百聞は一見にしかずの宣伝効果は確実にあるだろう。

 各戸の屋根に置かれているのは「重ね瓦」と呼ばれる平らな瓦が多い。伝統的な丸みのある本瓦が、雄雌を交互に組み合わせて排水機能を持たせているのとは違って、重ね瓦はただ貼付けてあるだけで、特に機能性はない。デザインのための瓦、といってよい。重ね瓦の場合、しっくいは使わない。

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 住宅供給公社はエコシティとはしなを分譲する際に、建築協定を購買者と結び、事実上の規制の網をかけている。購買者は先々、改装などをするにしても、この協定を守らなければならない。例えば、家は2階建まで。後退距離と呼ばれる家の壁から隣りの敷地との境界までの距離は1.5m以上。これらが地域全体のゆったり感や景観を演出する。屋根と外壁の色については「地域全体の調和を図るよう努めるものとする」という一項が協定にある。

 エコシティの名の通り、景観づくりだけでなく、植栽を工夫したり、透水性の高い敷石を採用するなど、環境との共生をキーコンセプトにしている。車とどう共存するかも考えられていて、ハンプと呼ばれる地面の盛り上がりをところどころに設けて事実上の速度制限をかけ、子供やお年寄りが安心して歩ける空間を作っている。

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 エコシティとはしなと似た環境共生型の分譲住宅があるのは、南風原町宮平、西原町池田、北谷町美浜の3カ所。これらは平成元年から徐々に建てられてきた。既に、戸建て住宅の提供事業から住宅供給公社が手を引いたため、公社による同じような分譲住宅はこれ以上増えることはない。これからの沖縄の景観づくりは、民間デベロッパーの動きと、既存の集落での地元民による景観統一の努力に焦点が移る。

 とはいえ、地域全体に規制をかけることができるのは行政と、それを支える住民意識だけ。今後、徐々に返還が進んでいく米軍用地の再開発を計画する際にも、こうした規制の仕方がますます重要になってくるだろう。規制効果がほとんど見られず、目を覆いたくなるような乱開発が繰り広げられている那覇新都心の轍を踏まないためにも。

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