食
2008年05月18日
[第56話 食] 古酒づくりのための51度原酒泡盛
泡盛は、イモや麦などを混ぜず、米こうじ100%で仕込む。だから、寝かせれば寝かせるほど熟成していく。これが古酒。その古酒を仕込むために作られたのが神村酒造の「守禮 原酒51度」だ。

普通の泡盛は、モロミを蒸留して得られた原酒に水を加えてアルコール度数を調整する。現在、沖縄で生産されている泡盛は30度や25度がほとんど。その結果、多くの古酒もこうした泡盛で仕込まれることになる。
30度や25度の泡盛が作られる背景には、飲みやすさに対する配慮があるが、酒税法も影を落としている。酒税法が定める泡盛の定義はアルコール度数が45度まで。それ以上の度数の泡盛は「泡盛」と表示できないことになっている。
「でも、昔は、酒税法はもちろんなかったですし、アルコール度数を測る機器もなかったわけです。ということは、琉球王朝時代の古酒は、蒸留された原酒をそのまま仕込んでいたのではないか、と考えたわけです」と話すのは、常務の神村盛行さん。明確な記録はないが、あえて水で薄める理由は見当たらない、というわけだ。
発端は、泡盛を百年寝かせて古酒をを作ろうという話だった。百年古酒を仕込むにあたって、それにふさわしい良質の原料泡盛とは何かを考える中から、原酒を薄めずにそのまま仕込むというアイデアが出てきたのである。写真は、神村酒造の構内にさりげなく置かれている往年の酒仕込み用のカメ。

神村さんによると、蒸留工程の前半ではアルコール分の高い原酒がとれ、後半では油分を多く含んだ原酒がとれる。熟成の過程では、後半の油分が大きな働きをする。熟成を経て、これらがバニリンなどの香気成分に変わっていくからだ。
こうして、モロミを蒸留する全工程から得られた原酒100%の泡盛「守禮 原酒51度」が、昨年初めて誕生した。
「100年後においしくなる酒」だから、違いが明らかになるのは孫の代。ずいぶん気の長い話だが、100年かけて泡盛を育てるという発想は、スケールの大きなロマンを感じさせる。
これに応えるロマンチストがたくさんいたということだろうか。昨年「守禮 原酒51度」を発売したところ、3000本限定で出したものが3ヶ月で売り切れたという。時間をかけて泡盛を育てていくという沖縄の酒文化は健在だ。好評に応えて、ことしも2月から、泡盛原酒の発売を始めた。

「守禮 原酒51度」は1升入りで税込み6300円。100年後に思いをはせつつ、自分でも試しに飲んでみたいという人には、360ml入りの小びんがある。これは神村酒造内にあるショップのみの限定販売。ただし、寝かせていない原酒は口にふくんだ時にやや固い感じを受けた。

那覇で明治15年に創業した神村酒造は、いま、うるま市石川の緑豊かな敷地にある。工場見学もできるので、泡盛に関心のある向きにはピッタリの訪問先だろう。
神村酒造はうるま市石川嘉手苅570、電話098-964-7628。

普通の泡盛は、モロミを蒸留して得られた原酒に水を加えてアルコール度数を調整する。現在、沖縄で生産されている泡盛は30度や25度がほとんど。その結果、多くの古酒もこうした泡盛で仕込まれることになる。
30度や25度の泡盛が作られる背景には、飲みやすさに対する配慮があるが、酒税法も影を落としている。酒税法が定める泡盛の定義はアルコール度数が45度まで。それ以上の度数の泡盛は「泡盛」と表示できないことになっている。
「でも、昔は、酒税法はもちろんなかったですし、アルコール度数を測る機器もなかったわけです。ということは、琉球王朝時代の古酒は、蒸留された原酒をそのまま仕込んでいたのではないか、と考えたわけです」と話すのは、常務の神村盛行さん。明確な記録はないが、あえて水で薄める理由は見当たらない、というわけだ。
発端は、泡盛を百年寝かせて古酒をを作ろうという話だった。百年古酒を仕込むにあたって、それにふさわしい良質の原料泡盛とは何かを考える中から、原酒を薄めずにそのまま仕込むというアイデアが出てきたのである。写真は、神村酒造の構内にさりげなく置かれている往年の酒仕込み用のカメ。

神村さんによると、蒸留工程の前半ではアルコール分の高い原酒がとれ、後半では油分を多く含んだ原酒がとれる。熟成の過程では、後半の油分が大きな働きをする。熟成を経て、これらがバニリンなどの香気成分に変わっていくからだ。
こうして、モロミを蒸留する全工程から得られた原酒100%の泡盛「守禮 原酒51度」が、昨年初めて誕生した。
「100年後においしくなる酒」だから、違いが明らかになるのは孫の代。ずいぶん気の長い話だが、100年かけて泡盛を育てるという発想は、スケールの大きなロマンを感じさせる。
これに応えるロマンチストがたくさんいたということだろうか。昨年「守禮 原酒51度」を発売したところ、3000本限定で出したものが3ヶ月で売り切れたという。時間をかけて泡盛を育てていくという沖縄の酒文化は健在だ。好評に応えて、ことしも2月から、泡盛原酒の発売を始めた。

「守禮 原酒51度」は1升入りで税込み6300円。100年後に思いをはせつつ、自分でも試しに飲んでみたいという人には、360ml入りの小びんがある。これは神村酒造内にあるショップのみの限定販売。ただし、寝かせていない原酒は口にふくんだ時にやや固い感じを受けた。

那覇で明治15年に創業した神村酒造は、いま、うるま市石川の緑豊かな敷地にある。工場見学もできるので、泡盛に関心のある向きにはピッタリの訪問先だろう。
神村酒造はうるま市石川嘉手苅570、電話098-964-7628。
2008年03月25日
[第47話 食] 帰郷者が手作りするブラジルおやつ
沖縄はおやつが豊富。サーターアンダーギーやイモ天ぷらのようなおなじみの顔ぶれ以外にも、ターンムパイなど、新しく生み出されて既に市民権を得たおやつがある。ブラジルおやつも、そんな新しいおやつの世界を広げてくれる。今回は、ブラジル帰郷者の仲本隆信さん、まさみさん夫妻が手作りするブラジルおやつをご紹介。

写真はコシンヤ。仲本夫妻の店の名前にもなっている。ジャガイモのコロッケのようだが、日本の肉屋の定番コロッケとは違う。日本のコロッケはジャガイモの中にひき肉や玉ネギがパラパラ散っているが、コシンヤは、肉類があんの形で中心部にまとまって入っているので、普通のコロッケよりもそれらの味がはっきり分かる。
仲本さんのコシンヤは、牛肉、鶏肉、チーズの3種類。衣がむやみに厚くてバリバリに仕上がっていたり、化学調味料で濃い味がついているようなコロッケが多いが、このコシンヤは手づくりのやさしい味。ブラジルのおふくろの味、なのかもしれない。
次は小麦生地で作る3種。左からエスフィーア、パスティス、サルテンヤ。

まずサルテンヤは、パイ生地で鶏肉あんを包んで焼いたもの。生地の合わせ目をひねって模様をつける。肉あんにはパウミットというココナツの若芽をブラジルでは入れるが、沖縄では手に入らないので、仲本さんは代わりにタケノコを使っている。

エスフィーアは、パンのような生地に、牛肉あんが入っている。イタリアンパセリの香りがアクセント。仲本さんはイタリアンパセリを自宅で栽培して、エスフィーアに入れている。

パスティスは中に肉を入れたものだが、その応用ということで、仲本さんは沖縄のターウムを入れたものも作っている。ほんのりと甘く、もっちりしたターウムと、歯ごたえのあるパスティスの生地がいいコンビネーションを見せる。

仲本さんはうるま市に生まれたが、1959年、高校生の時に家族とともにブラジルに渡った。ブラジルはサンパウロ郊外で野菜販売の商売をしていたが、治安が悪化した1986年にまさみさんらと帰国。今から8年前に現在の店コシンヤを始めた。

沖縄は、かつて多くの人々が海を超え、南米各国に渡った。中でもブラジルは現在南米各国にいる沖縄系移民24万人の半分以上の14万人余りが暮らす。仲本さんのような帰郷者もいて、ブラジルと沖縄の草の根のかけはしになっている。
コシンヤは、うるま市田場1557-8、電話973-3074。土日祝休。午前は店舗で作りながら販売し、午後はうるま市役所地下玄関前で移動販売している。
コシンヤとターウムパイ(パスティスの応用)は常備しているが、サルテンヤ、エスフィーアは作らない日もある。欲しい場合は、あらかじめ電話して、いつ作るか尋ねてから行くとよい。

写真はコシンヤ。仲本夫妻の店の名前にもなっている。ジャガイモのコロッケのようだが、日本の肉屋の定番コロッケとは違う。日本のコロッケはジャガイモの中にひき肉や玉ネギがパラパラ散っているが、コシンヤは、肉類があんの形で中心部にまとまって入っているので、普通のコロッケよりもそれらの味がはっきり分かる。
仲本さんのコシンヤは、牛肉、鶏肉、チーズの3種類。衣がむやみに厚くてバリバリに仕上がっていたり、化学調味料で濃い味がついているようなコロッケが多いが、このコシンヤは手づくりのやさしい味。ブラジルのおふくろの味、なのかもしれない。
次は小麦生地で作る3種。左からエスフィーア、パスティス、サルテンヤ。

まずサルテンヤは、パイ生地で鶏肉あんを包んで焼いたもの。生地の合わせ目をひねって模様をつける。肉あんにはパウミットというココナツの若芽をブラジルでは入れるが、沖縄では手に入らないので、仲本さんは代わりにタケノコを使っている。

エスフィーアは、パンのような生地に、牛肉あんが入っている。イタリアンパセリの香りがアクセント。仲本さんはイタリアンパセリを自宅で栽培して、エスフィーアに入れている。

パスティスは中に肉を入れたものだが、その応用ということで、仲本さんは沖縄のターウムを入れたものも作っている。ほんのりと甘く、もっちりしたターウムと、歯ごたえのあるパスティスの生地がいいコンビネーションを見せる。

仲本さんはうるま市に生まれたが、1959年、高校生の時に家族とともにブラジルに渡った。ブラジルはサンパウロ郊外で野菜販売の商売をしていたが、治安が悪化した1986年にまさみさんらと帰国。今から8年前に現在の店コシンヤを始めた。

沖縄は、かつて多くの人々が海を超え、南米各国に渡った。中でもブラジルは現在南米各国にいる沖縄系移民24万人の半分以上の14万人余りが暮らす。仲本さんのような帰郷者もいて、ブラジルと沖縄の草の根のかけはしになっている。
コシンヤは、うるま市田場1557-8、電話973-3074。土日祝休。午前は店舗で作りながら販売し、午後はうるま市役所地下玄関前で移動販売している。
コシンヤとターウムパイ(パスティスの応用)は常備しているが、サルテンヤ、エスフィーアは作らない日もある。欲しい場合は、あらかじめ電話して、いつ作るか尋ねてから行くとよい。
2008年03月13日
[第45話 食] 沖縄そば 麺のひみつ
沖縄そばの麺とは、いったい何者なのだろうか。小麦粉に塩と灰汁やかんすいを入れて練り上げた麺で、その多くは平麺。中華麺のようでもあるが、口当たりが微妙に違う。太めの沖縄そばの場合は、うどんやきしめんに似ていなくもないが、やはり食感が違う。パスタっぽい沖縄そばもあるが、パスタのような素直な歯ごたえではない。

原材料からすれば、中華麺に近い。アルカリである灰汁やかんすいが入って独特のコシが出るあたりはそっくり。だが、沖縄そばは中華麺とは練り方やのし方が違うので、同じコシでもソフトな感じになる。
もう一つ、大きな違いがある。沖縄そばは、中華麺のように茹でたてを食べないこと。沖縄そば専門店のほとんどは、冷たくなった茹で麺を湯で温めてから使う。
「麺というのは、茹でたてよりも、時間が経ってからの方が味が出るんですね」と話すのは、亀浜製麺所代表の亀浜貞夫さん。確かに味はそうなのかもしれないが、時間が経ったら麺はのびてしまうのでは、という声が聞こえてきそう。だが、心配御無用。

沖縄そばは、茹で上げためんに植物油をまぶしてから、風を当てて冷ます。水にさらすことはない。亀浜さんは、冷ます工程で余分な水分を飛ばすことが大切だと語る。これで麺が締まり、めんのコシが保たれる。
こうして得られるコシは、茹でたてのコシとは微妙に違う。「歯が食い込もうとするのを必死で押し戻そうとする麺の弾力」が、茹でたてのコシ。沖縄そばにもそうしたコシはあるが、それに加えて、独特のポクポクした食感が伴う。このポクポク感は、不思議なことに茹でたてでは得られない。

原材料はほとんど中華麺と同じながら、食べて明らかに違いを感じるのは、このポクポク感の有無だ。これぞ沖縄そば、と言ってもいいくらいの個性がそこにある。生麺の沖縄そばをおみやげに買って帰った観光客が、自宅で茹でたての沖縄そばを食べる時に「沖縄で食べたのと、なんか違うなあ」と感じる違和感の正体は、恐らくこれだろう。
だから、自宅で沖縄そばを作る時は、生麺ではなく、ゆで麺を買ってきて、湧かしたお湯に4、5秒つけて油落としと加温をし、どんぶりに入れてつゆをはれば、沖縄そばらしい食感の沖縄そばになる。沖縄そば専門店と同じやり方だ。現に沖縄のスーパーでは、沖縄そばの茹で麺は何種類もあるが、生麺はまず見かけない。
亀浜製麺所の沖縄そばは、細めの平麺。繊細な口当たりで、ポクポク感としっかりしたコシがあり、のどごしもいい。亀浜さんは、大手の麺メーカーがやっていない手作りの工程を大事にしているという。沖縄県内の名だたる沖縄そば専門店が、亀浜麺を採用している。

亀浜麺はスーパーには置かれていないので、県民の多くは亀浜麺を沖縄そば店でしか味わうことができない。亀浜麺を使って自分で沖縄そばを作りたい人は、亀浜さんが先代からのつき合いを大事にしながら商品を卸している小売店が3カ所だけあるので、そこで買える。
・那覇市松山2丁目22−1−1F 若松公設市場内の与那嶺商店 098-868-9132
・那覇市若狭2丁目12−11−1F ストアー上原 098-868-3747
・宜野湾市普天間2丁目13−5 中央ミート普天間店 098-892-5634
亀浜製麺所は豊見城市保栄茂1163-1、電話098-856-7103。

原材料からすれば、中華麺に近い。アルカリである灰汁やかんすいが入って独特のコシが出るあたりはそっくり。だが、沖縄そばは中華麺とは練り方やのし方が違うので、同じコシでもソフトな感じになる。
もう一つ、大きな違いがある。沖縄そばは、中華麺のように茹でたてを食べないこと。沖縄そば専門店のほとんどは、冷たくなった茹で麺を湯で温めてから使う。
「麺というのは、茹でたてよりも、時間が経ってからの方が味が出るんですね」と話すのは、亀浜製麺所代表の亀浜貞夫さん。確かに味はそうなのかもしれないが、時間が経ったら麺はのびてしまうのでは、という声が聞こえてきそう。だが、心配御無用。

沖縄そばは、茹で上げためんに植物油をまぶしてから、風を当てて冷ます。水にさらすことはない。亀浜さんは、冷ます工程で余分な水分を飛ばすことが大切だと語る。これで麺が締まり、めんのコシが保たれる。
こうして得られるコシは、茹でたてのコシとは微妙に違う。「歯が食い込もうとするのを必死で押し戻そうとする麺の弾力」が、茹でたてのコシ。沖縄そばにもそうしたコシはあるが、それに加えて、独特のポクポクした食感が伴う。このポクポク感は、不思議なことに茹でたてでは得られない。

原材料はほとんど中華麺と同じながら、食べて明らかに違いを感じるのは、このポクポク感の有無だ。これぞ沖縄そば、と言ってもいいくらいの個性がそこにある。生麺の沖縄そばをおみやげに買って帰った観光客が、自宅で茹でたての沖縄そばを食べる時に「沖縄で食べたのと、なんか違うなあ」と感じる違和感の正体は、恐らくこれだろう。
だから、自宅で沖縄そばを作る時は、生麺ではなく、ゆで麺を買ってきて、湧かしたお湯に4、5秒つけて油落としと加温をし、どんぶりに入れてつゆをはれば、沖縄そばらしい食感の沖縄そばになる。沖縄そば専門店と同じやり方だ。現に沖縄のスーパーでは、沖縄そばの茹で麺は何種類もあるが、生麺はまず見かけない。
亀浜製麺所の沖縄そばは、細めの平麺。繊細な口当たりで、ポクポク感としっかりしたコシがあり、のどごしもいい。亀浜さんは、大手の麺メーカーがやっていない手作りの工程を大事にしているという。沖縄県内の名だたる沖縄そば専門店が、亀浜麺を採用している。

亀浜麺はスーパーには置かれていないので、県民の多くは亀浜麺を沖縄そば店でしか味わうことができない。亀浜麺を使って自分で沖縄そばを作りたい人は、亀浜さんが先代からのつき合いを大事にしながら商品を卸している小売店が3カ所だけあるので、そこで買える。
・那覇市松山2丁目22−1−1F 若松公設市場内の与那嶺商店 098-868-9132
・那覇市若狭2丁目12−11−1F ストアー上原 098-868-3747
・宜野湾市普天間2丁目13−5 中央ミート普天間店 098-892-5634
亀浜製麺所は豊見城市保栄茂1163-1、電話098-856-7103。
2008年03月01日
[第43話 食] パッションフルーツの100%果汁
パッションフルーツ、といえば、鮮烈な香りが自慢のトロピカルフルーツ。沖縄でも各地で生産されている。そのパッションフルーツ100%ジュースの話題を。

パッションフルーツは、生なら最高の香りが楽しめるが、種の周りの果肉と少量のジュースをちょっと食べるだけなのが、上品というか、はっきり言えばやや物足りない感じが残る。香りがあまりに鮮烈だから、それはそれで満足はするのだが、グイグイっとジュースを飲んでみたいという欲求はかなえられない。生の場合は種ごと食べることになるので、種の食感が苦手、という人もいるだろう。
パッションフルーツのジュースはいろいろ出ている。ただ、その多くがリンゴジュースやブドウジュースなどとのブレンド。味はリンゴやブドウで香りはパッション、という役割分担かもしれない。もちろん、それはそれでうまい。でも、パッションが大好きな人はパッションだけのジュースはないのかな、などと思ったりする。

恩納村の字南恩納。リゾートホテル通りのおひざ元、人口760人ほどのこの集落で、地域おこし協議会の加工部会が、とびきりのパッションフルーツ100%ジュースを3年がかりで開発した。
ジュースといえば、果物の汁を絞っただけ、と思うかもしれないが、絞っただけでは商品にならない。特にパッションフルーツの場合は、果汁を含んだ果肉が少ないから、うまく果汁を絞りとるにも技術がいるし、殺菌などのための加熱処理でも、ひとつ間違えばせっかくの香りがだいなしになったり、のどごしが悪くなったりする。奥が深いのだ。
加工部会長の屋宜ハツ子さんら8人のメンバーは、県の農業改良普及センターや農業研究センターの支援を得ながら、こうした一つひとつの問題をクリアしていった。ただし、まゆ根にしわを寄せてという感じは全くない。「本当に楽しいですよー」と話すハツ子さんの極上の笑顔からは、♪がたくさん飛び出してきた。

パッションフルーツの果汁はかなり強いので、この100%ジュースはそのままではなく、水で3倍に薄めて飲む。価格は300ccで945円。高いと思うかもしれないが、この小さなびんにパッションフルーツ40個分の果汁が入っていることを考えれば、むしろ安いのではないか。
このパッションフルーツジュース、今のところ、恩納村仲泊にある「おんなの駅なかゆくい市場」でしか手に入らない。昨年7月に発売を始め、これまでに1500本売れた。なかなかの人気商品といっていい。

徹底して品質にこだわり、あせって販路拡大に走ることなく、できる範囲で生産する―。ハツ子さんたちは、まさに高品質農産加工品開発の王道を歩んでいるといえそうだ。
おんなの駅なかゆくい市場は、恩納村字仲泊1656-9、電話098-964-1188。営業は10:00から19:00まで。国道58号線をはさんで、ホテル「ルネサンスリゾートオキナワ」の反対側、恩納村博物館の隣り。

パッションフルーツは、生なら最高の香りが楽しめるが、種の周りの果肉と少量のジュースをちょっと食べるだけなのが、上品というか、はっきり言えばやや物足りない感じが残る。香りがあまりに鮮烈だから、それはそれで満足はするのだが、グイグイっとジュースを飲んでみたいという欲求はかなえられない。生の場合は種ごと食べることになるので、種の食感が苦手、という人もいるだろう。
パッションフルーツのジュースはいろいろ出ている。ただ、その多くがリンゴジュースやブドウジュースなどとのブレンド。味はリンゴやブドウで香りはパッション、という役割分担かもしれない。もちろん、それはそれでうまい。でも、パッションが大好きな人はパッションだけのジュースはないのかな、などと思ったりする。

恩納村の字南恩納。リゾートホテル通りのおひざ元、人口760人ほどのこの集落で、地域おこし協議会の加工部会が、とびきりのパッションフルーツ100%ジュースを3年がかりで開発した。
ジュースといえば、果物の汁を絞っただけ、と思うかもしれないが、絞っただけでは商品にならない。特にパッションフルーツの場合は、果汁を含んだ果肉が少ないから、うまく果汁を絞りとるにも技術がいるし、殺菌などのための加熱処理でも、ひとつ間違えばせっかくの香りがだいなしになったり、のどごしが悪くなったりする。奥が深いのだ。
加工部会長の屋宜ハツ子さんら8人のメンバーは、県の農業改良普及センターや農業研究センターの支援を得ながら、こうした一つひとつの問題をクリアしていった。ただし、まゆ根にしわを寄せてという感じは全くない。「本当に楽しいですよー」と話すハツ子さんの極上の笑顔からは、♪がたくさん飛び出してきた。

パッションフルーツの果汁はかなり強いので、この100%ジュースはそのままではなく、水で3倍に薄めて飲む。価格は300ccで945円。高いと思うかもしれないが、この小さなびんにパッションフルーツ40個分の果汁が入っていることを考えれば、むしろ安いのではないか。
このパッションフルーツジュース、今のところ、恩納村仲泊にある「おんなの駅なかゆくい市場」でしか手に入らない。昨年7月に発売を始め、これまでに1500本売れた。なかなかの人気商品といっていい。

徹底して品質にこだわり、あせって販路拡大に走ることなく、できる範囲で生産する―。ハツ子さんたちは、まさに高品質農産加工品開発の王道を歩んでいるといえそうだ。
おんなの駅なかゆくい市場は、恩納村字仲泊1656-9、電話098-964-1188。営業は10:00から19:00まで。国道58号線をはさんで、ホテル「ルネサンスリゾートオキナワ」の反対側、恩納村博物館の隣り。
2008年02月18日
[第41話 食] 林道という名の癒し系居酒屋
やんばるの森を走る大国(おおくに)林道。国頭村字与那から大宜味村字大保までを結ぶ全長35.5kmのこの林道を、そのまま店名にしてしまった名護市内の居酒屋がある。シャッター通りが多い名護の旧市街で頑張っている店の一つだ。


大国林道の店内は、入り口から店内テーブル、カウンターまですべて木造り。それだけで心地よく、癒される。第16話の那覇空港の記事でも書いたように、木は「涼しくて温かい」「高級感があって親しみやすい」という互いに矛盾する特徴が同居している。考えてみれば何とも不思議な素材だ。
店内の分厚い木材はやんばるのリュウキュウマツなど。仲田一也店長らスタッフが手作りで作り上げたという。その仲田店長自身も、ほのぼのした雰囲気を漂わせる癒し系。混み合っている日は忙しそうに店内を飛び回っているが、手があけば、おしゃべりの相手をしてくれる。
入り口から泡盛古酒の入ったカメがずらりと並ぶ。15年ものの古酒もあるが、これはかなり値がはる。そんなすごい古酒でなくても、おいしい酒がいろいろ用意されている。例えば、店の常用酒として出している地元名護の「國華」。1合600円だが、味わい深く、十分に楽しめる。

料理も全般に、エッジの立った鋭い味というよりは、どことなくほのぼのした味わいだ。各種チャンプルーやグルクンの唐揚げなど、沖縄料理の定番がそろっているが、ここでは個性的な料理をいくつか紹介しよう。まず、砂肝のニンニクいため。砂肝のこりこりした食感にニンニクがよくマッチしていて、ビールにも泡盛にも合う。

豚タンのニンニク焼き。牛タンでなく豚タンというところが、豚王国沖縄らしさをよく表している。こちらもニンニク味だが、砂肝と違って味がある豚タン自体がニンニクと互角に勝負する。

三枚肉をじっくり煮込んだラフテー。ここのラフテーは、醤油ではなく、みそ味。豚汁の例を持ち出すまでもないが、豚と味噌は相性がとてもいい。豚三枚肉のコクに味噌のしっかりした味がよく絡んで、おいしい。

パパイヤチャンプルー。沖縄では、熟していない青パパイヤを野菜としてよく食べる。インドでは授乳中の母親に青パパイヤを食べさせるそうだ。青パパイヤには乳がよく出る成分が含まれているらしい。青パパイヤは、調理する際、味がしみるのに少し時間がかかるので、だしを少し入れ、フタをしていため煮にするとよい。大国林道のパパイヤチャンプルーも、味をよく含んでしっとりとおいしく仕上がっている。
模合や同窓グループなどの地元客が多いが、ホテルの食事に飽きた観光客も利用している。大国林道は、沖縄県名護市大東1−14−12、0980-54-5959。日曜定休。


大国林道の店内は、入り口から店内テーブル、カウンターまですべて木造り。それだけで心地よく、癒される。第16話の那覇空港の記事でも書いたように、木は「涼しくて温かい」「高級感があって親しみやすい」という互いに矛盾する特徴が同居している。考えてみれば何とも不思議な素材だ。
店内の分厚い木材はやんばるのリュウキュウマツなど。仲田一也店長らスタッフが手作りで作り上げたという。その仲田店長自身も、ほのぼのした雰囲気を漂わせる癒し系。混み合っている日は忙しそうに店内を飛び回っているが、手があけば、おしゃべりの相手をしてくれる。
入り口から泡盛古酒の入ったカメがずらりと並ぶ。15年ものの古酒もあるが、これはかなり値がはる。そんなすごい古酒でなくても、おいしい酒がいろいろ用意されている。例えば、店の常用酒として出している地元名護の「國華」。1合600円だが、味わい深く、十分に楽しめる。

料理も全般に、エッジの立った鋭い味というよりは、どことなくほのぼのした味わいだ。各種チャンプルーやグルクンの唐揚げなど、沖縄料理の定番がそろっているが、ここでは個性的な料理をいくつか紹介しよう。まず、砂肝のニンニクいため。砂肝のこりこりした食感にニンニクがよくマッチしていて、ビールにも泡盛にも合う。

豚タンのニンニク焼き。牛タンでなく豚タンというところが、豚王国沖縄らしさをよく表している。こちらもニンニク味だが、砂肝と違って味がある豚タン自体がニンニクと互角に勝負する。

三枚肉をじっくり煮込んだラフテー。ここのラフテーは、醤油ではなく、みそ味。豚汁の例を持ち出すまでもないが、豚と味噌は相性がとてもいい。豚三枚肉のコクに味噌のしっかりした味がよく絡んで、おいしい。

パパイヤチャンプルー。沖縄では、熟していない青パパイヤを野菜としてよく食べる。インドでは授乳中の母親に青パパイヤを食べさせるそうだ。青パパイヤには乳がよく出る成分が含まれているらしい。青パパイヤは、調理する際、味がしみるのに少し時間がかかるので、だしを少し入れ、フタをしていため煮にするとよい。大国林道のパパイヤチャンプルーも、味をよく含んでしっとりとおいしく仕上がっている。
模合や同窓グループなどの地元客が多いが、ホテルの食事に飽きた観光客も利用している。大国林道は、沖縄県名護市大東1−14−12、0980-54-5959。日曜定休。
2008年02月06日
[第39話 食] キラキラ光る中国家庭料理の店
「勢いのある飲食店」とはこういう店なんだな、と思わせる那覇の中華料理店「燕郷房 中国家常菜」。読み方は、やんきょうふぁん。料理も、店の雰囲気も、キラキラと光っている。

掲げる旗印は、広東料理でも四川料理でもなく、中国家庭料理。だからおこげ料理から、おなじみの麻婆豆腐、回鍋肉まで、ざまざまな味が楽しめる。
まずは、いためものを3種、紹介しよう。ホタテと季節野菜の塩いため、鶏・ネギ・カシューナッツの塩いため、牛肉セロリのブラックビーンズいため。いずれも、複数の素材と調味料が上手に組み合わされていて、思わず箸がのびてしまう。



ブラックビーンズは豆鼓(ドウチ)のこと。深く発酵した豆味噌のようなもので、うまみの固まり。日本の大徳寺納豆に似た調味料。皿に残った豆鼓のソースをごはんに乗せて食べると、実にうまい。
さてさて、次のおこげが絶品だ。海鮮野菜あんもおいしいが、おこげ自体の作り方が非常に巧み。ヘンに歯に障ることなく、最初から最後までサクサクと軽い。あんと一緒に口の中で心地よくほどけていく。

チャーハンは、じゃこ青ネギチャーハンにした。青ネギが信じられないくらいたっぷり入っていて、香りの基調を作っている。

麺は、アサリ青ネギやきそば。ニンニクの香りをじっくり引き出したところにアサリの強いうまみが加わる。そのスープの味をしみ込ませたタイプのやきそばだ。これも青ネギがたっぷり。

ホールスタッフの動きがいい。ときどき客席に声をかけて客とやりとりするのだが、そのタイミングが心地よい。やりとりの内容も浅すぎず、深すぎず。忙しそうにしているが、出す料理についてのちょっとした質問には、足を止めて、ていねいに答えてくれる。総じて、適当にかまってもらって嬉しく、勝手にのびのびさせてもらって楽しい店、という感じだろうか。
男同士の飲み会はもちろん、女性グループでもいいし、家族連れにも向いている。内装は、造りすぎという感じもしないではないが、この手が好きな人には楽しいだろう。
モノレール美栄橋駅近くで繁盛していたが、手狭だったので拡張移転したばかり。拡張すると味が落ちる店もあるようだが、この店についてはその心配はなさそうだ。現在の店は、同じモノレールの旭橋駅が近い。
那覇市泉崎1-11-3、098-862-0011。年中無休。ランチの営業はない。1品1000円前後。1人3000円分も食べれば、普通の人はおなか一杯になる(酒代を含まない)。

掲げる旗印は、広東料理でも四川料理でもなく、中国家庭料理。だからおこげ料理から、おなじみの麻婆豆腐、回鍋肉まで、ざまざまな味が楽しめる。
まずは、いためものを3種、紹介しよう。ホタテと季節野菜の塩いため、鶏・ネギ・カシューナッツの塩いため、牛肉セロリのブラックビーンズいため。いずれも、複数の素材と調味料が上手に組み合わされていて、思わず箸がのびてしまう。



ブラックビーンズは豆鼓(ドウチ)のこと。深く発酵した豆味噌のようなもので、うまみの固まり。日本の大徳寺納豆に似た調味料。皿に残った豆鼓のソースをごはんに乗せて食べると、実にうまい。
さてさて、次のおこげが絶品だ。海鮮野菜あんもおいしいが、おこげ自体の作り方が非常に巧み。ヘンに歯に障ることなく、最初から最後までサクサクと軽い。あんと一緒に口の中で心地よくほどけていく。

チャーハンは、じゃこ青ネギチャーハンにした。青ネギが信じられないくらいたっぷり入っていて、香りの基調を作っている。

麺は、アサリ青ネギやきそば。ニンニクの香りをじっくり引き出したところにアサリの強いうまみが加わる。そのスープの味をしみ込ませたタイプのやきそばだ。これも青ネギがたっぷり。

ホールスタッフの動きがいい。ときどき客席に声をかけて客とやりとりするのだが、そのタイミングが心地よい。やりとりの内容も浅すぎず、深すぎず。忙しそうにしているが、出す料理についてのちょっとした質問には、足を止めて、ていねいに答えてくれる。総じて、適当にかまってもらって嬉しく、勝手にのびのびさせてもらって楽しい店、という感じだろうか。
男同士の飲み会はもちろん、女性グループでもいいし、家族連れにも向いている。内装は、造りすぎという感じもしないではないが、この手が好きな人には楽しいだろう。
モノレール美栄橋駅近くで繁盛していたが、手狭だったので拡張移転したばかり。拡張すると味が落ちる店もあるようだが、この店についてはその心配はなさそうだ。現在の店は、同じモノレールの旭橋駅が近い。
那覇市泉崎1-11-3、098-862-0011。年中無休。ランチの営業はない。1品1000円前後。1人3000円分も食べれば、普通の人はおなか一杯になる(酒代を含まない)。
2008年01月25日
[第37話 食] 屋良敦さんが教える魚のマース煮
マースは塩。「マース煮」を直訳すると「塩煮」になる。第23話で紹介したような塩焼きではない。煮るのだ。煮魚といえば、醤油やみりんで甘辛く煮たものが本土では多いようだが、沖縄ではこのマース煮がよく作られる。
甘辛い煮つけだと、味の主役は甘辛の煮汁で、魚の味はうまみとして煮汁の土台になる。が、マース煮の場合は、塩でデフォルメされた魚の香りと味がストレートに迫ってくるので、「魚を食べている」という実感がわく。同じ煮魚でも、甘辛味とはだいぶ違った味わいだ。

沖縄が誇る和食の名人、屋良敦さんに、マース煮の作り方を教えてもらった。まず、マース煮にする魚は白身の魚を使う。沖縄ではエーグワー(アイゴ)をよく使う。高級な魚ではないとされているが、面白いことに、マース煮にした時はこのエーグワーがとてもおいしい。固すぎず、柔らかすぎずのエーグワーの白身の食感が、塩で煮た時に引き立つようだ。
「魚は新鮮なものを使って下さい」と屋良さん。塩だけで煮るので、生臭ければそれがまともに出てしまうからだ。エーグワーは内蔵の苦みが強いので、すべて取り出して、腹の中をよく洗う。臭みが気になる場合は、さっと熱湯にくぐらせ、いわゆる霜降りにするとよい。
まず、魚が半分くらいひたる煮汁を作る。ここでは水2カップ、泡盛1カップに塩小さじ1前後を入れた。臭み消しの生姜を加え、煮立てる。魚を入れ、落としぶたをして中火で煮る。濃いめの味にしたければ昆布を敷いてもよいが、昆布なしでも十分おいしい。煮る時間は魚の大きさによるが、長さ25cmぐらいの魚で10分ほど。


魚は尾かしらつきが基本で、切り身ではあまりやらない。出来上がったら、塩味の煮汁をつけながら熱いうちに食べる。屋良さんは今回、特別に、魚の周囲にアーサをあしらって、地味な色のエーグワーの皿に彩りを添えてくれた。アーサは色だけでなく、その海の香りがマース煮を引き立てる。煮汁のうまみを味わうのにも、アーサがあると具合がいい。

酢じめしか食べ方がないコハダのように、エーグワーもマース煮以外にはおいしい食べ方がないのではないかと思わせる。実際、この魚を焼魚や唐揚げにして食べるという話は聞いたことがない。
マース煮は、高級魚ミーバイ(ハタ)でももちろんおいしい。ビタロー、アカマチなどでもいける。マース煮を経験したことのない人は、塩だけで煮るなんて、と思うかもしれないが、目からウロコのおいしさであること請け合い。一度お試しを。
甘辛い煮つけだと、味の主役は甘辛の煮汁で、魚の味はうまみとして煮汁の土台になる。が、マース煮の場合は、塩でデフォルメされた魚の香りと味がストレートに迫ってくるので、「魚を食べている」という実感がわく。同じ煮魚でも、甘辛味とはだいぶ違った味わいだ。

沖縄が誇る和食の名人、屋良敦さんに、マース煮の作り方を教えてもらった。まず、マース煮にする魚は白身の魚を使う。沖縄ではエーグワー(アイゴ)をよく使う。高級な魚ではないとされているが、面白いことに、マース煮にした時はこのエーグワーがとてもおいしい。固すぎず、柔らかすぎずのエーグワーの白身の食感が、塩で煮た時に引き立つようだ。
「魚は新鮮なものを使って下さい」と屋良さん。塩だけで煮るので、生臭ければそれがまともに出てしまうからだ。エーグワーは内蔵の苦みが強いので、すべて取り出して、腹の中をよく洗う。臭みが気になる場合は、さっと熱湯にくぐらせ、いわゆる霜降りにするとよい。
まず、魚が半分くらいひたる煮汁を作る。ここでは水2カップ、泡盛1カップに塩小さじ1前後を入れた。臭み消しの生姜を加え、煮立てる。魚を入れ、落としぶたをして中火で煮る。濃いめの味にしたければ昆布を敷いてもよいが、昆布なしでも十分おいしい。煮る時間は魚の大きさによるが、長さ25cmぐらいの魚で10分ほど。


魚は尾かしらつきが基本で、切り身ではあまりやらない。出来上がったら、塩味の煮汁をつけながら熱いうちに食べる。屋良さんは今回、特別に、魚の周囲にアーサをあしらって、地味な色のエーグワーの皿に彩りを添えてくれた。アーサは色だけでなく、その海の香りがマース煮を引き立てる。煮汁のうまみを味わうのにも、アーサがあると具合がいい。

酢じめしか食べ方がないコハダのように、エーグワーもマース煮以外にはおいしい食べ方がないのではないかと思わせる。実際、この魚を焼魚や唐揚げにして食べるという話は聞いたことがない。
マース煮は、高級魚ミーバイ(ハタ)でももちろんおいしい。ビタロー、アカマチなどでもいける。マース煮を経験したことのない人は、塩だけで煮るなんて、と思うかもしれないが、目からウロコのおいしさであること請け合い。一度お試しを。
2008年01月19日
[第36話 食、南] シトギ文化の一翼担うムーチー
旧暦12月8日はムーチー。ことしの新暦では1月15日にあたる。この日は、家庭でサンニン(月桃)の葉に包んで蒸したムーチーを作って食べるならわしだ。

サンニンの葉には殺菌成分が豊富に含まれている。ムーチー作りの時は、家の消毒を兼ねているんじゃないかと思うくらい、サンニンの強い香りが部屋じゅうに漂う。
ムーチーに漢字をあてる時は「鬼餅」と書く。鬼餅の由来として、鬼になった兄を妹が退治するというすごい民話があるが、そのお話は他のサイトに詳しいので、そちらに譲る。「鬼餅」「ムーチー」で検索すると、たくさん出てくる。
ムーチーは和語の「モチ」に当たるが、本土のモチと沖縄のムーチーには決定的な違いがある。それは本土のモチが、蒸したモチ米を臼と杵でつき上げるのに対し、沖縄のムーチーは、生のモチ米粉に水や砂糖を加えて形を整え、最後に蒸して加熱するという点だ。
ムーチーのように、米粉に水を加えて練ったものをシトギと呼ぶ。もともとは水に浸して柔らかくした生のモチ米を臼でひき、ペースト状にしたものを指した。シトギを加熱すれば、出来上がりはモチのようになるが、歯ごたえは、ついたモチの方が強い。
シトギは、米粉加工品なので、いろいろと姿を変えて展開していく。名著『栽培植物と農耕の起源』『料理の起源』で知られる中尾佐助は、シトギの展開を一つの文化圏と読み解いている。例えば、中国・台湾で米粉から作られる「ビーフン」、フィリピンの米粉蒸しパン「プト」、スリランカの米粉薄焼き「アッパ(ホッパー)」などは、すべてシトギから作られ、一つの文化圏を形成している、というわけだ。
シトギにほかならないムーチーも、こうしたアジアのシトギ文化の一翼を担っているといえそうだ。沖縄にはムーチーをはじめ、小豆を乗せたフチャギや味噌入りのナントゥーといったモチ類があるが、いずれもシトギ。ついたモチは見られない。
日本本土でも加熱しない生シトギが各地で神事に使われてきており、中国南部に発するとみられるシトギ文化の、いわば北限に位置づけられるらしい。
さて、ムーチーの作り方はいたってシンプル。用意するものは、モチ米粉(白玉粉)、水、サンニンの葉。味付け用に、砂糖、黒砂糖、紅芋粉など、好きなものを適宜用意する。


粉と水に砂糖類をよく混ぜ、耳たぶくらいの固さにする。生シトギの状態だ。ピンポン玉2つくらいの分量をとり、楕円形にして、サンニンの葉の中央に乗せる。サンニンの葉を三つ折りにして、真ん中をワラかヒモでゆわえ、葉が開かないようにして、20分ほど蒸せば出来上がり。

子供たちは自分の歳の数だけムーチーをぶら下げておいて、毎日少しずつ食べていく。初めにも書いたように、サンニンの葉には殺菌作用があるので、冬でも15度を切ることが珍しい沖縄でさえ、そのまま置いておいても、1週間くらいはカビが生えない。

サンニンの葉には殺菌成分が豊富に含まれている。ムーチー作りの時は、家の消毒を兼ねているんじゃないかと思うくらい、サンニンの強い香りが部屋じゅうに漂う。
ムーチーに漢字をあてる時は「鬼餅」と書く。鬼餅の由来として、鬼になった兄を妹が退治するというすごい民話があるが、そのお話は他のサイトに詳しいので、そちらに譲る。「鬼餅」「ムーチー」で検索すると、たくさん出てくる。
ムーチーは和語の「モチ」に当たるが、本土のモチと沖縄のムーチーには決定的な違いがある。それは本土のモチが、蒸したモチ米を臼と杵でつき上げるのに対し、沖縄のムーチーは、生のモチ米粉に水や砂糖を加えて形を整え、最後に蒸して加熱するという点だ。
ムーチーのように、米粉に水を加えて練ったものをシトギと呼ぶ。もともとは水に浸して柔らかくした生のモチ米を臼でひき、ペースト状にしたものを指した。シトギを加熱すれば、出来上がりはモチのようになるが、歯ごたえは、ついたモチの方が強い。
シトギは、米粉加工品なので、いろいろと姿を変えて展開していく。名著『栽培植物と農耕の起源』『料理の起源』で知られる中尾佐助は、シトギの展開を一つの文化圏と読み解いている。例えば、中国・台湾で米粉から作られる「ビーフン」、フィリピンの米粉蒸しパン「プト」、スリランカの米粉薄焼き「アッパ(ホッパー)」などは、すべてシトギから作られ、一つの文化圏を形成している、というわけだ。
シトギにほかならないムーチーも、こうしたアジアのシトギ文化の一翼を担っているといえそうだ。沖縄にはムーチーをはじめ、小豆を乗せたフチャギや味噌入りのナントゥーといったモチ類があるが、いずれもシトギ。ついたモチは見られない。
日本本土でも加熱しない生シトギが各地で神事に使われてきており、中国南部に発するとみられるシトギ文化の、いわば北限に位置づけられるらしい。
さて、ムーチーの作り方はいたってシンプル。用意するものは、モチ米粉(白玉粉)、水、サンニンの葉。味付け用に、砂糖、黒砂糖、紅芋粉など、好きなものを適宜用意する。


粉と水に砂糖類をよく混ぜ、耳たぶくらいの固さにする。生シトギの状態だ。ピンポン玉2つくらいの分量をとり、楕円形にして、サンニンの葉の中央に乗せる。サンニンの葉を三つ折りにして、真ん中をワラかヒモでゆわえ、葉が開かないようにして、20分ほど蒸せば出来上がり。

子供たちは自分の歳の数だけムーチーをぶら下げておいて、毎日少しずつ食べていく。初めにも書いたように、サンニンの葉には殺菌作用があるので、冬でも15度を切ることが珍しい沖縄でさえ、そのまま置いておいても、1週間くらいはカビが生えない。
2008年01月07日
[第34話 食] 静かに守る首里の味
琉球料理の正統派、古都・首里の味をひっそりと守っている店を紹介する。ともに首里に生まれ育った富名腰久雄さん、米子さん夫妻が経営する富久屋。「私たち2人の舌で覚えている首里の味をお出ししています」と久雄さんが語る。

まずは、むじぬ汁から(「の」が、琉球語では「ぬ」になる)。「むじ」とは、ターウム(田芋)の茎。本土では、サトイモの茎のズイキが食べられるが、これに近い。むじぬ汁は、むじがみそ汁に入っており、豚の三枚肉があしらってある。祝いごとがあると、首里ではむじぬ汁が作られたという。むじはシャクシャクした独特の歯ごたえがある。
同じみそ仕立ての汁でも、むじぬ汁とは全く違うのが、いなむどぅち。こちらは甘い白みそ仕立てで、豚肉やこんにゃく、かまぼこなどが入っている。汁はいくぶんとろみがあり、コクは十分だが、不思議にしつこさはない。
豚肉に黒ごまをまぶして蒸した、みぬだる。全く脂っぽくない。さっぱりした味付けだが、うまみはしっかり感じられる。

どぅるわかしーぬあぎー。ターウムをつぶして、豚肉、かまぼこなどを加えて練ったのがどぅるわかしーで、それをまるめてあぎー(揚げもの)にしたのがこれ。第6話のままやの料理でも登場した。脇道にそれるが、「あぎー」は、さーたーあんだあぎーの「あぎー」だ(「さーたー」は砂糖=甘い、「あんだ」は油)。

小鉢では、かんぴょういりちー。かんぴょうを昆布やこんにゃくなどといっしょにいため煮にしたもの。かんぴょうにヌヌっと入っていく歯ごたえが楽しい。昆布をいため煮にしたくーぶいりちーはよくあるが、かんぴょうのものは珍しい。

ピーナツで作る地豆豆腐(じーまーみどーふ)はポピュラーな沖縄料理だが、ここの地豆豆腐はべたつかず、切れがよい。
祝膳のイメージで出している、というむじぬ汁定食についてきたごはんは赤飯だった。ただし、もち米ではなく、うるち米を使うのが首里流とのこと。
料理全体の印象は、ヘルシーで繊細な和食のイメージ(もちろん料理の中身は和食とは違うが)に、豚のうまみが加わったという感じだ。豚だしのうまみは随所に使われているが、あくまで上品で、脂っぽさや臭みは一切ない。ていねいに作られたバランスのよいごはんをいただいた満足感が残った。
定食だけでなく、富久屋は泡盛も用意しているから、一杯やりながら、首里の味を楽しむことができる。
富久屋は、首里の龍潭通りから、旧県立博物館の横の細い道を入って間もなくの右側、道から少し奥に引っ込んだところにある。場所は大人の隠れ家風だが、中は木づくりで明るく、家族連れで楽しめる。看板は一応あるが、見えにくいので、分からなければ電話を。常連客が多いようだが、初めての客も、富名腰さんが温かくもてなしてくれる。
那覇市首里当蔵町1-14、098-884-4201。営業時間は昼が11:00-15:00、夜は18:00-23:00。定食は、むじぬ汁定食が1200円、それ以外は1000円。単品は500円前後。ちゃんぷるー類や沖縄そばもある。

まずは、むじぬ汁から(「の」が、琉球語では「ぬ」になる)。「むじ」とは、ターウム(田芋)の茎。本土では、サトイモの茎のズイキが食べられるが、これに近い。むじぬ汁は、むじがみそ汁に入っており、豚の三枚肉があしらってある。祝いごとがあると、首里ではむじぬ汁が作られたという。むじはシャクシャクした独特の歯ごたえがある。
同じみそ仕立ての汁でも、むじぬ汁とは全く違うのが、いなむどぅち。こちらは甘い白みそ仕立てで、豚肉やこんにゃく、かまぼこなどが入っている。汁はいくぶんとろみがあり、コクは十分だが、不思議にしつこさはない。
豚肉に黒ごまをまぶして蒸した、みぬだる。全く脂っぽくない。さっぱりした味付けだが、うまみはしっかり感じられる。

どぅるわかしーぬあぎー。ターウムをつぶして、豚肉、かまぼこなどを加えて練ったのがどぅるわかしーで、それをまるめてあぎー(揚げもの)にしたのがこれ。第6話のままやの料理でも登場した。脇道にそれるが、「あぎー」は、さーたーあんだあぎーの「あぎー」だ(「さーたー」は砂糖=甘い、「あんだ」は油)。

小鉢では、かんぴょういりちー。かんぴょうを昆布やこんにゃくなどといっしょにいため煮にしたもの。かんぴょうにヌヌっと入っていく歯ごたえが楽しい。昆布をいため煮にしたくーぶいりちーはよくあるが、かんぴょうのものは珍しい。

ピーナツで作る地豆豆腐(じーまーみどーふ)はポピュラーな沖縄料理だが、ここの地豆豆腐はべたつかず、切れがよい。
祝膳のイメージで出している、というむじぬ汁定食についてきたごはんは赤飯だった。ただし、もち米ではなく、うるち米を使うのが首里流とのこと。
料理全体の印象は、ヘルシーで繊細な和食のイメージ(もちろん料理の中身は和食とは違うが)に、豚のうまみが加わったという感じだ。豚だしのうまみは随所に使われているが、あくまで上品で、脂っぽさや臭みは一切ない。ていねいに作られたバランスのよいごはんをいただいた満足感が残った。
定食だけでなく、富久屋は泡盛も用意しているから、一杯やりながら、首里の味を楽しむことができる。
富久屋は、首里の龍潭通りから、旧県立博物館の横の細い道を入って間もなくの右側、道から少し奥に引っ込んだところにある。場所は大人の隠れ家風だが、中は木づくりで明るく、家族連れで楽しめる。看板は一応あるが、見えにくいので、分からなければ電話を。常連客が多いようだが、初めての客も、富名腰さんが温かくもてなしてくれる。
那覇市首里当蔵町1-14、098-884-4201。営業時間は昼が11:00-15:00、夜は18:00-23:00。定食は、むじぬ汁定食が1200円、それ以外は1000円。単品は500円前後。ちゃんぷるー類や沖縄そばもある。
2007年12月28日
[第32話 食] 巨大ヤマイモはこうして食べる
第29話でお伝えした「やまんむすーぶ(山芋勝負)」の巨大なヤマイモは、どうやって食べるのか。沖縄の農村部では、ヤマイモは旧正月の伝統的なごちそう。旧正月はまだ先だが、そこは深く考えないことにして、ことしの年の暮れはヤマイモ料理で締めくくることにしよう。
ヤマイモの料理編は、うるま市農漁村生活研究会石川支部の新田文子支部長、山城喜代子さん、山城美佐枝さんにナビゲーターをお願いした。うるま市石川地区(旧石川市)はヤマイモ生産のメッカだ。

ヤマイモ料理の定番中の定番はこれ、ヤマイモイリチャー。作り方の前に、ちょっとだけウンチクを。
沖縄のヤマイモには、中が白いのと紅色のとがある。料理して食べるのは白が普通で、紅色のものは、その鮮やかな色を生かして菓子類を作るのに使われる。紅はイモが大きくなるので、やまんむすーぶ用には紅を植える人が多い。
「ヤマイモは11月から収穫できますが、旧正月の頃に葉が枯れ始め、イモが熟して一番おいしくなるんです」と喜代子さんが解説する。旧正月は新暦では2月ごろに当たることが多く、来年の旧正月は新暦2月7日だ。

さて、ヤマイモイリチャーの作り方、いきましょう。ヤマイモはアクがあるので、まずはアクを抜く。皮をむいたヤマイモを適当な大きさに切り、酢水に3時間ほどさらす。こうすれば、すりおろしてトロロにし、生で食べてもおいしい。
次に、アク抜きしたイモに軽く塩をふってから、蒸す。大きさによるが、2、30分蒸せば柔らかくなる。冷ましてから、食べやすい大きさに切っておく。あまり薄くするとイモらしい食感が失われるので、1cmくらいの厚さに。
豚の塩漬け「スーチカー」をこんがりといためる。脂が出てきたら、ヤマイモを加える。ヤマイモに熱が通ったら、ニラかニンニクの葉を入れ、色よく仕上げる。「(脂が出た時に)おろしニンニクを加えるとおいしいです」と文子さんが補足してくれた。

味付けは塩だけ。スーチカーに塩気があるので、全体がちょうどよくなるように味をみながら塩をふる。スーチカーのコクとヤマイモのかすかな甘味とが一体になると、なんとも言えないおいしさが生まれる。
ヤマイモイリチャーは伝統料理だが、生活改善グループのみなさんが考えた創作料理も紹介しよう。喜代子さん、美佐枝さんのイチ押しは、ヤマイモのはさみ揚げ。これも豚との相性のよさを生かした一品だ。
アク抜きして蒸したヤマイモを5、6mmの厚さに切る。スーチカーは3mmくらいの厚さに。濃厚な味が好きな人はもう少し厚くしてもいい。スライスしたヤマイモ2枚の間にスーチカーをはさみ、周りを海苔で巻く。全体を薄めの天ぷらのころもにつけ、油で揚げる。
「切ると断面がとてもきれいなんですよ」と美佐子さん。ころものサクサク感とイモのねっとり感とのコントラストが楽しい。海苔の味と香りがアクセント。

味噌仕立ての汁に、ダイコン、ニンジン、昆布、豚肉などとともに、ヤマイモをたっぷり入れたヤマイモ汁も、生活改善グループの創作料理。ヤマイモはそのままだと煮くずれしやすいので、あらかじめ油でさっと揚げておく。支部長の文子さんは、全沖縄ヤマイモスーブの日、シンメーと呼ばれる大鍋で作ったヤマイモ汁を来訪者にふるまっていた。

こうして、農村部ではヤマイモ料理がいろいろと楽しまれているが、那覇などの都市部ではほとんど見かけない。ヤマイモがスーパーなどの物流に全く乗っていないからだ。
だが、最近は健康ブームの影響もあってか、ヤマイモの人気が再び出始めているという。文子さんたちのグループでは既に20種類以上のヤマイモ料理を開発ずみ。伝統料理のヤマイモイリチャー以外にも、ヤマイモをおいしく食べる方法はいろいろある。
家庭でも給食でもホテルでもレストランでも、ヤマイモがもっと食べられるようになることを期待したい。
ヤマイモの料理編は、うるま市農漁村生活研究会石川支部の新田文子支部長、山城喜代子さん、山城美佐枝さんにナビゲーターをお願いした。うるま市石川地区(旧石川市)はヤマイモ生産のメッカだ。

ヤマイモ料理の定番中の定番はこれ、ヤマイモイリチャー。作り方の前に、ちょっとだけウンチクを。
沖縄のヤマイモには、中が白いのと紅色のとがある。料理して食べるのは白が普通で、紅色のものは、その鮮やかな色を生かして菓子類を作るのに使われる。紅はイモが大きくなるので、やまんむすーぶ用には紅を植える人が多い。
「ヤマイモは11月から収穫できますが、旧正月の頃に葉が枯れ始め、イモが熟して一番おいしくなるんです」と喜代子さんが解説する。旧正月は新暦では2月ごろに当たることが多く、来年の旧正月は新暦2月7日だ。

さて、ヤマイモイリチャーの作り方、いきましょう。ヤマイモはアクがあるので、まずはアクを抜く。皮をむいたヤマイモを適当な大きさに切り、酢水に3時間ほどさらす。こうすれば、すりおろしてトロロにし、生で食べてもおいしい。
次に、アク抜きしたイモに軽く塩をふってから、蒸す。大きさによるが、2、30分蒸せば柔らかくなる。冷ましてから、食べやすい大きさに切っておく。あまり薄くするとイモらしい食感が失われるので、1cmくらいの厚さに。
豚の塩漬け「スーチカー」をこんがりといためる。脂が出てきたら、ヤマイモを加える。ヤマイモに熱が通ったら、ニラかニンニクの葉を入れ、色よく仕上げる。「(脂が出た時に)おろしニンニクを加えるとおいしいです」と文子さんが補足してくれた。

味付けは塩だけ。スーチカーに塩気があるので、全体がちょうどよくなるように味をみながら塩をふる。スーチカーのコクとヤマイモのかすかな甘味とが一体になると、なんとも言えないおいしさが生まれる。
ヤマイモイリチャーは伝統料理だが、生活改善グループのみなさんが考えた創作料理も紹介しよう。喜代子さん、美佐枝さんのイチ押しは、ヤマイモのはさみ揚げ。これも豚との相性のよさを生かした一品だ。
アク抜きして蒸したヤマイモを5、6mmの厚さに切る。スーチカーは3mmくらいの厚さに。濃厚な味が好きな人はもう少し厚くしてもいい。スライスしたヤマイモ2枚の間にスーチカーをはさみ、周りを海苔で巻く。全体を薄めの天ぷらのころもにつけ、油で揚げる。
「切ると断面がとてもきれいなんですよ」と美佐子さん。ころものサクサク感とイモのねっとり感とのコントラストが楽しい。海苔の味と香りがアクセント。

味噌仕立ての汁に、ダイコン、ニンジン、昆布、豚肉などとともに、ヤマイモをたっぷり入れたヤマイモ汁も、生活改善グループの創作料理。ヤマイモはそのままだと煮くずれしやすいので、あらかじめ油でさっと揚げておく。支部長の文子さんは、全沖縄ヤマイモスーブの日、シンメーと呼ばれる大鍋で作ったヤマイモ汁を来訪者にふるまっていた。

こうして、農村部ではヤマイモ料理がいろいろと楽しまれているが、那覇などの都市部ではほとんど見かけない。ヤマイモがスーパーなどの物流に全く乗っていないからだ。
だが、最近は健康ブームの影響もあってか、ヤマイモの人気が再び出始めているという。文子さんたちのグループでは既に20種類以上のヤマイモ料理を開発ずみ。伝統料理のヤマイモイリチャー以外にも、ヤマイモをおいしく食べる方法はいろいろある。
家庭でも給食でもホテルでもレストランでも、ヤマイモがもっと食べられるようになることを期待したい。






















