おしゃれ
2010年01月10日
[第151話 沖縄] おしゃれなコンクリ家
沖縄の住宅といえば、時間が経過してくたびれた感じの鉄筋コンクリート造りが圧倒的に多い。特に農村部はそう。そんな中で「おしゃれな家」をうたったフルパッケージのコンクリート住宅が沖縄市の建設会社から売り出された。沖縄の景観づくりの一助にもなりそうな新しい動きをお伝えしよう。
沖縄の民家と言えば、赤瓦の木造家屋をイメージする向きが多いかもしれないが、それは昔の話。いま、実際に住宅地の景観を作り出しているのは、いささかくたびれた感じの鉄筋コンクリート造の「コンクリ家(やー)」群だ。沖縄の民家はほとんどこれ、と言っても過言ではない。
戦後、台風に強く、安価な家として、コンクリ家は沖縄県民の強い支持を得た。ただ、貧しい時代だったこともあり、意匠は二の次のコンクリ家が次々と建てられた。時が経ち、強い日差しと風雨にさらされるコンクリ壁面は、黒いカビやコケ類で汚れがさらに増した。
「みてくれ」という突き放した言い方があるように、外見はオマケのようにとらえられがちだが、まち全体の景観を決めるのは実はその外見。家の外見がくたびれていれば、くたびれた景観にしかならない。その意味で、外見にこだわったパッケージ住宅は、施主が満足するだけでなく、美しい景観づくりに貢献する。
沖縄でいま、美しい景観づくりがクローズアップされていることは、万鐘本店第143話でお伝えした通り。先駆的な例として第55話では色調を統一した分譲住宅のケースを紹介した。
「おしゃれな家」をキャッチフレーズにしたフルパッケージ住宅は、株式会社丸山建設が売り出した「アジアン」。その名の通り、アジアンリゾートのイメージを採用している。
万鐘本店第7話で紹介した万国津梁館や第116話の浜比嘉島ビーチリゾートの意匠はいずれも「控えめのアジアン」だったが、丸山建設のアジアンもそれらと似ている。キャッチフレーズは「シンプルモダン+アジアンテイスト」。
「僕が個人的にシンプルなデザインが好きということもあるかもしれませんが」とプロデューサー役の金城悟・丸山建設社長は笑う。アジアンは、建築家赤嶺しげたか氏と丸山建設とのコラボレーションで生み出された。
壁はうっすらクリーム色や緑色を帯びた白が基調。アクセントに濃い茶色の木材を使う。例えば窓枠や玄関の柱などに濃い茶色で塗装された木材が使われ、控えめのアジアン風味を醸し出す。デッキテラスも同じ色調。これは沖縄で「雨端(あまはじ)」と呼ばれる内外一体になった接客の場の役割を果たしている。
外壁などにもっと木をたくさん使えば、さらにアジアン風味は増すだろうが、強い陽光と海風が注ぐ沖縄では、外にさらされた木部の傷みが激しい。美観を維持しようとすれば、メンテナンスの手間と経費がかさむ。建て主の10年後、15年後の負担を視野に入れて、初めから木部の使用を抑え気味にしているわけだ。
意匠にこだわった住宅は高いというイメージがあるが、このアジアンは、逆に、価格を抑える工夫がなされている。例えばー
一般に、沖縄の住宅設計は、高温多湿の気候をふまえ、床を高くすることで地面からの湿気を防ごうとする。しかし、床が高くなれば、その分、天井が上がり、結果的に、壁も高くなる。例えば、壁が30cm高くなれば、その分の材料費がかさみ、建設コストがよけいにかかることになる。
アジアンは、床を高くしない。床の下には遮水シートを貼って、湿気が上がってくるのを防止する。こうすれば、壁を低くすることができ、その分の原材料費をかけずにすむ。
アジアンは「高くない」というだけでなく、建設費が初めから明示されているのが特徴。「坪45万円」などとうたいながら、実際はあれやこれやの装備や設備名目で追加料金をとる業者がいる中で、アジアンは「明朗会計」で売る。
明朗会計の仕組みはこうだ。まず「標準仕様」が決められている。例えば、装備群は、カウンター付食器棚、洗面化粧台、システムキッチン、レンジフード、照明器具、カーテン、テレビアンテナ、デッキテラス(15.2平米まで)などがつく。給水は厨房、浴室、洗面所、トイレ、洗濯機前、外部2カ所の計7カ所。仕上げについては、ホール・廊下の床は木質フロア材、壁は石膏ボード下地クロス貼、といった具合だ。そして、この標準仕様に基づいた価格が、面積ごとの一覧表の形で明示される。
例えば、30.25坪なら坪58万3018円、35.09坪では坪55万7740円。この金額には、消費税、設計料、防蟻工事費から、標準仕様の装備・設備代まですべて含まれている。施主は、そこから不要なものを引き算して価格を下げていく仕組み。確かにこの方式なら、たし算の果てに価格が膨らんで予算オーバー、というようなことはなさそうだ(金額はいずれも平成21年3月28日現在)。
設計は完全な自由設計。あらかじめ決められたいくつかのプランから選ぶ方式ではなく、施主が好きな間取りを作っていく。
ところで、景観というものはなかなか難しい。現在の沖縄の住宅地のように、まるで統一感がないのも美しくないが、さりとて、色彩や形の規制をやりすぎると、わざとらしくなり、町がまるで映画のセットのようになってしまう。基準は必要だが、それにはある程度の「幅」をもたせないといけない。
沖縄のまち並みの基本的な色調は、第55話で紹介した例に見られるように、あるいは現在、那覇市が首里の景観づくりでやっているように「白かクリーム色の壁面に、屋根は赤がわら色の赤」でいいと思うが、そこには多少の「幅」があった方がいい。
アジアンの「白にこげ茶」の色彩は、赤瓦の赤をアクセントにする沖縄の伝統的な色彩の中に入っても、ちょうどよい「幅」になりそうな気がする。アジアンデザインのふるさと、東南アジア各地では、沖縄と同様の赤土を焼いた赤瓦がしばしば使われている。アジアンデザインと赤瓦色の相性がいいことは、いわば実証ずみなのだ。
丸山建設は、沖縄市登川2671-1、098-938-2458。
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沖縄の民家と言えば、赤瓦の木造家屋をイメージする向きが多いかもしれないが、それは昔の話。いま、実際に住宅地の景観を作り出しているのは、いささかくたびれた感じの鉄筋コンクリート造の「コンクリ家(やー)」群だ。沖縄の民家はほとんどこれ、と言っても過言ではない。
戦後、台風に強く、安価な家として、コンクリ家は沖縄県民の強い支持を得た。ただ、貧しい時代だったこともあり、意匠は二の次のコンクリ家が次々と建てられた。時が経ち、強い日差しと風雨にさらされるコンクリ壁面は、黒いカビやコケ類で汚れがさらに増した。
「みてくれ」という突き放した言い方があるように、外見はオマケのようにとらえられがちだが、まち全体の景観を決めるのは実はその外見。家の外見がくたびれていれば、くたびれた景観にしかならない。その意味で、外見にこだわったパッケージ住宅は、施主が満足するだけでなく、美しい景観づくりに貢献する。
沖縄でいま、美しい景観づくりがクローズアップされていることは、万鐘本店第143話でお伝えした通り。先駆的な例として第55話では色調を統一した分譲住宅のケースを紹介した。
「おしゃれな家」をキャッチフレーズにしたフルパッケージ住宅は、株式会社丸山建設が売り出した「アジアン」。その名の通り、アジアンリゾートのイメージを採用している。
万鐘本店第7話で紹介した万国津梁館や第116話の浜比嘉島ビーチリゾートの意匠はいずれも「控えめのアジアン」だったが、丸山建設のアジアンもそれらと似ている。キャッチフレーズは「シンプルモダン+アジアンテイスト」。
「僕が個人的にシンプルなデザインが好きということもあるかもしれませんが」とプロデューサー役の金城悟・丸山建設社長は笑う。アジアンは、建築家赤嶺しげたか氏と丸山建設とのコラボレーションで生み出された。
壁はうっすらクリーム色や緑色を帯びた白が基調。アクセントに濃い茶色の木材を使う。例えば窓枠や玄関の柱などに濃い茶色で塗装された木材が使われ、控えめのアジアン風味を醸し出す。デッキテラスも同じ色調。これは沖縄で「雨端(あまはじ)」と呼ばれる内外一体になった接客の場の役割を果たしている。
外壁などにもっと木をたくさん使えば、さらにアジアン風味は増すだろうが、強い陽光と海風が注ぐ沖縄では、外にさらされた木部の傷みが激しい。美観を維持しようとすれば、メンテナンスの手間と経費がかさむ。建て主の10年後、15年後の負担を視野に入れて、初めから木部の使用を抑え気味にしているわけだ。
意匠にこだわった住宅は高いというイメージがあるが、このアジアンは、逆に、価格を抑える工夫がなされている。例えばー
一般に、沖縄の住宅設計は、高温多湿の気候をふまえ、床を高くすることで地面からの湿気を防ごうとする。しかし、床が高くなれば、その分、天井が上がり、結果的に、壁も高くなる。例えば、壁が30cm高くなれば、その分の材料費がかさみ、建設コストがよけいにかかることになる。
アジアンは、床を高くしない。床の下には遮水シートを貼って、湿気が上がってくるのを防止する。こうすれば、壁を低くすることができ、その分の原材料費をかけずにすむ。
アジアンは「高くない」というだけでなく、建設費が初めから明示されているのが特徴。「坪45万円」などとうたいながら、実際はあれやこれやの装備や設備名目で追加料金をとる業者がいる中で、アジアンは「明朗会計」で売る。
明朗会計の仕組みはこうだ。まず「標準仕様」が決められている。例えば、装備群は、カウンター付食器棚、洗面化粧台、システムキッチン、レンジフード、照明器具、カーテン、テレビアンテナ、デッキテラス(15.2平米まで)などがつく。給水は厨房、浴室、洗面所、トイレ、洗濯機前、外部2カ所の計7カ所。仕上げについては、ホール・廊下の床は木質フロア材、壁は石膏ボード下地クロス貼、といった具合だ。そして、この標準仕様に基づいた価格が、面積ごとの一覧表の形で明示される。
例えば、30.25坪なら坪58万3018円、35.09坪では坪55万7740円。この金額には、消費税、設計料、防蟻工事費から、標準仕様の装備・設備代まですべて含まれている。施主は、そこから不要なものを引き算して価格を下げていく仕組み。確かにこの方式なら、たし算の果てに価格が膨らんで予算オーバー、というようなことはなさそうだ(金額はいずれも平成21年3月28日現在)。
設計は完全な自由設計。あらかじめ決められたいくつかのプランから選ぶ方式ではなく、施主が好きな間取りを作っていく。
ところで、景観というものはなかなか難しい。現在の沖縄の住宅地のように、まるで統一感がないのも美しくないが、さりとて、色彩や形の規制をやりすぎると、わざとらしくなり、町がまるで映画のセットのようになってしまう。基準は必要だが、それにはある程度の「幅」をもたせないといけない。
沖縄のまち並みの基本的な色調は、第55話で紹介した例に見られるように、あるいは現在、那覇市が首里の景観づくりでやっているように「白かクリーム色の壁面に、屋根は赤がわら色の赤」でいいと思うが、そこには多少の「幅」があった方がいい。
アジアンの「白にこげ茶」の色彩は、赤瓦の赤をアクセントにする沖縄の伝統的な色彩の中に入っても、ちょうどよい「幅」になりそうな気がする。アジアンデザインのふるさと、東南アジア各地では、沖縄と同様の赤土を焼いた赤瓦がしばしば使われている。アジアンデザインと赤瓦色の相性がいいことは、いわば実証ずみなのだ。
丸山建設は、沖縄市登川2671-1、098-938-2458。
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