ウンチェーバー

2011年11月06日

想像力と舌を刺激する鍋

沖縄とアジアの食 第8回 熱帯アジアの鍋(上)


 前回のブンのところで触れた鍋料理を、今回と次回で紹介しよう。日本の鍋や韓国のチゲなど、鍋料理は寒いところの食べものというイメージが強いかもしれないが、常夏のアジアの人々は、実はとても鍋が好きだ。

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 よくあるアジア鍋は、肉や魚介類と野菜の組合せ。野菜をどかどか食べる。写真はベトナム中部。肉やエビ、イカなどは先に鍋に入れてある。

 野菜は、クレソン、ウンチェーバー(空芯菜)、ツルムラサキ、カラシナ,シュンギク、バナナのつぼみなどが常連。だいたいは緑の濃い、苦みや香りの強い熱帯系野菜たちだ。火に通すと強い香りや苦みがマイルドになるせいか、いくらでも食べられる。これだけたっぷり濃緑色野菜を食べれば、体にいいこと間違いなし。

 ダシは牛骨や豚骨、鶏ガラベース。味はついているので、そのまま食べられる。魚や肉やエビの味が薄いと感じる場合は、テーブルに置かれた小皿の魚醤をチョンとつけて口に放り込む。

 もちろんブンを忘れてはいけない。この手の寄せ鍋風の鍋にはだいたいブンが登場するようだ。ブンは前回紹介したツルツルの優しい米麺。めいめいの取り皿に少量入れて、鍋材料と一緒にいただく。

 鍋材料は、いろいろ、さまざま。冒頭の肉や海鮮の寄せ鍋風のものばかりではない。シンプルなものを紹介しよう。ベトナム中部で見かけたネギとイカだけの鍋。ダシの味つけも非常にシンプルだ。

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 この鍋は、鍋というよりは、パーティなどでよく目にする銀皿のような形をしている。だが、よく見ると、パーティ銀皿より深さがあるから、やはり鍋料理用なのだろう。厨房で煮込んできたものをそのまま出してもさほど変わらないのかもしれないが、客の目の前でグツグツやれば食欲もそそられる、というもの。

 「ネギが半煮えの時を狙って食べて下さい」。同席の鍋奉行氏がそう教えてくれた。そうか、加熱を止めるタイミングが微妙ならば、やはりテーブルの上で火加減を調整しながら作るのが正解だ。

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 こちらはベトナム北部で出会った小さな淡水魚の鍋。ドジョウによく似ている。店は広大な水田地帯のすぐ前。この魚もおそらく田んぼで獲れるのだろう。ドジョウは田んぼ、と昔から決まっている。

 小骨が多いので、舌先を細かく動かさないといけない。魚と言えばフィレしか食べたことのない最近の日本の子供では太刀打ちできないかもしれない。ダシがよく出ている。

 バナナのつぼみのスライスをたっぷり入れて食べる。もちろん、バジルなどの青い野菜もドカンと。店の奥では、鍋に入れる野菜を少女がていねいにつくろっていた。

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 アジア鍋の複雑な味の組み立ては、想像力と舌を激しく刺激する。複雑さを支える自然の恵みと、それをうまく組み合わせる呆れんばかりの知恵。

 鍋は、材料から完成品までの過程を目の前で見られるから楽しい。

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2008年07月17日

[第66話 農] 盛夏に強いウンチェーバー

 沖縄の野菜はどれも夏の強い陽光にも強いと思われているが、そうでもない。地野菜のハンダマでもニガナでも、盛夏の生育はあまり芳しくない。だが、ウンチェーバーだけは違う。どんなに強い日差しの下でもへこたれることなく伸びていく。

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 葉野菜の産地、豊見城市田頭に行った。多くの葉野菜は白や青のネットをかぶせて日差しを緩和しているが、ウンチェーバー畑だけはそのままだ。

 ウンチェーバーは、エンサイ、ヨウサイ、空芯菜などと呼ばれるが、同じもの。東南アジア各地でもよく食べられる。タイではパッブーン、フィリピンではカンコン。「熱帯のホウレンソウ」と言われるが、ホウレンソウの4倍のカルシウムを含むなど、栄養面でも優れている。

 サツマイモの仲間だが、大きなイモがつくわけではない。葉は、普通のサツマイモの葉よりは長くてとがっている。茎の中が空洞になっているのは、空芯菜の名前の通りだ。

 水気のあるところではどこまでもスルスルとつるが伸びていくのがウンチェーバー本来の姿だが、栽培する際にはあまりつるを伸ばさずに、葉が出て少ししたら刈り取る。その方がやわらかいし、えぐみも少ない。

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 豊見城市田頭でウンチェーバーを作っている比嘉セツ子さんの話では、葉が出ては刈り、を1年に8回くらい繰り返せるという。その後は株を植え替える。

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 沖縄の夏はとにかくウンチェーバー、という事情は、市場を見ればすぐわかる。この時期、スーパーでは野菜売り場の一角にウンチェーだけを山積みにしたコーナーが設けてあったりする。農家の持込み式マーケット、沖縄市のJAちゃんぷるー市場にもウンチェーバーが山のように置かれていた。

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 食べ方は、おなじみのニンニクいためが一番人気。ニンニクを油に入れて弱火でじっくりいため、香りをよく引き出したら、火を強めて、ザクザクと切ったウンチェーバーを入れる。かさがある程度減ったら、塩をし、最後に醤油を少し入れて出来上がり。

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 盛夏の強い日差しをたっぷり浴びて育った沖縄産ウンチェーバー。おそらく抗酸化力満点のはずだが、残念ながら本土への出荷はできない。サツマイモと同じようにイモゾウムシやアリモドキゾウムシがつく可能性があり、植物防疫によって本土への移入が禁じられているため。第54話で紹介したカンダバーと事情は同じだ。

 加熱したものなら問題ないが、葉野菜を加熱してしまうわけにもいかない。というわけで、沖縄産ウンチェーバーは沖縄で味わうしかない。ただ、カンダバーと違って、ウンチェーバーは居酒屋などでも出すところがかなりあるから、旅行者でも食べるチャンスはありそうだ。

bansyold at 23:22|PermalinkTrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック