エンサイ

2008年07月17日

[第66話 農] 盛夏に強いウンチェーバー

 沖縄の野菜はどれも夏の強い陽光にも強いと思われているが、そうでもない。地野菜のハンダマでもニガナでも、盛夏の生育はあまり芳しくない。だが、ウンチェーバーだけは違う。どんなに強い日差しの下でもへこたれることなく伸びていく。

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 葉野菜の産地、豊見城市田頭に行った。多くの葉野菜は白や青のネットをかぶせて日差しを緩和しているが、ウンチェーバー畑だけはそのままだ。

 ウンチェーバーは、エンサイ、ヨウサイ、空芯菜などと呼ばれるが、同じもの。東南アジア各地でもよく食べられる。タイではパッブーン、フィリピンではカンコン。「熱帯のホウレンソウ」と言われるが、ホウレンソウの4倍のカルシウムを含むなど、栄養面でも優れている。

 サツマイモの仲間だが、大きなイモがつくわけではない。葉は、普通のサツマイモの葉よりは長くてとがっている。茎の中が空洞になっているのは、空芯菜の名前の通りだ。

 水気のあるところではどこまでもスルスルとつるが伸びていくのがウンチェーバー本来の姿だが、栽培する際にはあまりつるを伸ばさずに、葉が出て少ししたら刈り取る。その方がやわらかいし、えぐみも少ない。

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 豊見城市田頭でウンチェーバーを作っている比嘉セツ子さんの話では、葉が出ては刈り、を1年に8回くらい繰り返せるという。その後は株を植え替える。

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 沖縄の夏はとにかくウンチェーバー、という事情は、市場を見ればすぐわかる。この時期、スーパーでは野菜売り場の一角にウンチェーだけを山積みにしたコーナーが設けてあったりする。農家の持込み式マーケット、沖縄市のJAちゃんぷるー市場にもウンチェーバーが山のように置かれていた。

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 食べ方は、おなじみのニンニクいためが一番人気。ニンニクを油に入れて弱火でじっくりいため、香りをよく引き出したら、火を強めて、ザクザクと切ったウンチェーバーを入れる。かさがある程度減ったら、塩をし、最後に醤油を少し入れて出来上がり。

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 盛夏の強い日差しをたっぷり浴びて育った沖縄産ウンチェーバー。おそらく抗酸化力満点のはずだが、残念ながら本土への出荷はできない。サツマイモと同じようにイモゾウムシやアリモドキゾウムシがつく可能性があり、植物防疫によって本土への移入が禁じられているため。第54話で紹介したカンダバーと事情は同じだ。

 加熱したものなら問題ないが、葉野菜を加熱してしまうわけにもいかない。というわけで、沖縄産ウンチェーバーは沖縄で味わうしかない。ただ、カンダバーと違って、ウンチェーバーは居酒屋などでも出すところがかなりあるから、旅行者でも食べるチャンスはありそうだ。

bansyold at 23:22|PermalinkTrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック