サツマイモ

2012年09月19日

つる1本から命が始まる不思議

 沖縄はまだまだ夏が続いています。ギラギラの炎天下では、さすがの沖縄の葉野菜たちも元気がありませんが、ウンチェーバー(空芯菜)だけは別。暑い中でも平気で育ちます。

 フィリピンやインドネシアではカンコン、タイならパッブーン、ベトナムだとラウムオン。熱帯アジアのどこに行っても登場します。写真はラオスの市場にドカンと置かれたウンチェー(一番手前)。

1 Unche ichba Laos


 特に水辺付近では、ウンチェーがスルスルと横に伸びている場面に出くわします。ただ、水辺に自生しているものと、栽培品種とは違うのが普通。少なくとも沖縄では違います。

 ウンチェーは、ヒルガオ科サツマイモ属。サツマイモの親戚です。サツマイモって、葉が6、7枚ついたつる1本を土に差すだけで、それが苗になってしまうって、知ってました?

 栄養がぎっしり詰まっている種を植えるなら分かります。ジャガイモやヤムイモはイモの一部を植えますが、イモにはたっぷりデンプンが蓄えられていますから、これも分かります。いずれも「いのちの初動」を担える栄養がたっぷり。

 でも、サツマイモのつるに栄養が詰まっているようには見えません。生まれた瞬間からダイエット、ではないですが、ロクなお弁当も持たされないまま、いのちの初動が始まります。しかし、つるを植えると、なんと、その一部からチョロチョロと根が出てくるんです。不思議としか言いようがありません。

 ウンチェーの場合は、サツマイモと違って最初は種でスタートするのが普通ですが、育ってきたら、成長点のつるの先を20cmくらい切ってまた植えたら、ちゃんと根が伸びてきます。サツマイモの親戚ならでは。ただし、水をたっぷりかけて下さい。

 ウンチェー料理の定番はニンニクいため。これぞ「飽きのこない味」部門の世界チャンピオンではないかと思うくらい、いつ食べても何度食べても、まだ食べられる、また食べたくなるという不思議な料理です。

2 Unche Oki ichiba


 沖縄でも夏の野菜おかずの横綱は、やはりウンチェーいためでしょう。夏になると、こんなにたくさん売られています。写真は、沖縄市のファーマーズマーケット「JAちゃんぷるー市場」。

 夏はこれしか葉野菜がないから、しょうがないねえ、などと言いつつ、つい箸が伸びてしまいます。ごはんのおかずにも、ビールのつまみにもなるんです、これが。

bansyold at 00:00|PermalinkTrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Clip to Evernote

2008年11月08日

[第85話 食] 金城文さんが作る黄金イモのケーキ

 第76話の黄金イモで作られたおいしいケーキを見つけたのでご報告。黄金イモと黒ごまのパウンドケーキ。これはいける。

Aya2 

Aya3


 数字を確認したわけではないが、東京などに比べると、沖縄は「町のケーキ屋さん」が少ないとよく言われる。そんな中で、那覇のど真ん中、パレット久茂地の1階にあるアールカフェでは、自家製ケーキが人気を集めている。パティシエは金城文(あや)さん。

 ふかしただけのイモも甘くてお菓子のようだが、そこからさらに発展させようとすると案外難しい。イモの味と香りをしっかり残そうとすれば、結局、スイートポテト風になってしまう。逆に、イモを練り込んだスポンジやクリームを作ると、紅イモなどで色は生かせても、イモの味や香りはほとんど感じられない。

 イモの味や香りがはっきり分かるけれどスイートポテトではないお菓子―。この線が、出せそうでなかなか出せないのだ。

 「黄金イモと黒ごまのパウンドケーキ」(320円)は、見事にこれを実現した。イモの味はしっかり感じられるけれど、スイートポテトとも全く違う。

 生地の食感は、小麦粉のケーキとスイートポテトのちょうど中間、といった感じ。口に含むと「小麦粉で作られたケーキを食べているな」と思えるが、同時に「ああ、イモを食べていたんだ」という実感もちゃんと持てるから不思議。こういうイモのケーキは、ありそうで、なかなかない。

Aya1


 文さんは横浜のケーキ店などで修業した後、沖縄に戻り、5年前のアールカフェの開店時からパティシエとして活躍している。アールカフェのケーキはすべて彼女の作品。

 黄金イモと黒ごまのパウンドケーキのほかにも、魅力的なケーキがいろいろあるので、ついでにご紹介しよう。例えば、ドラゴンフルーツをあしらった「ワッフルパフェ」(350円)。味の基調は、ワッフルと生クリーム、それにグラスの底にたっぷりと沈むカスタードクリームなのだが、酸味のあまりないドラゴンフルーツが違和感なくそれにからむ。

Aya4


 果肉が赤紫色のドラゴンフルーツは、沖縄でたくさん作られている。色はきれいだが、マンゴーやパッションフルーツのような強い味や香りがないので、ケーキに生かすのは難しそう。金城さんのワッフルパフェは、よく熟したドラゴンフルーツをあえて大ぶりに切ったことで、甘いクリームたちと互角にわたり合えるようにしたところがミソ。

 「マロンのロールケーキ」(350円)もおいしい。徳島産の栗をなめらかなクリームに仕立てた。しっとりしたスポンジのきめの細かさと、なめらかマロンクリームとの呼吸がぴたりと合っている。このスポンジを焼くのに使う卵は、沖縄本島南部の八重瀬町東風平産の特別の卵だそうだ。小さなケーキの中に、文さんの技と選りすぐりの素材が生きている。

Aya5


 アールカフェは那覇市久茂地1-1-1、パレット久茂地の1階。098-867-0771。営業は10:00から20:30。

bansyold at 00:00|PermalinkTrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Clip to Evernote

2008年09月15日

[第76話 農] 黄金色のねっとりイモ

 沖縄で「イモ」といえばサツマイモのこと。江戸時代に沖縄から薩摩に伝えられ、日本本土に広まった。したがって沖縄では、サツマはつけずに、たんにイモという。鮮やかな紫色をした紅芋が主に製菓用に使われて有名になっているが、今回は黄色系のイモを紹介しよう。

Ogonimo1


 その名も黄金イモ。コガネイモではなく、オウゴンイモと読む。沖縄本島中部の東側にある伊計島が主な産地だ。黄色というよりもややオレンジがかった色をしている。

 アメリカなどにもオレンジ色のサツマイモがあるが、あれは甘味がほとんどなく、砂糖を入れて煮ないと食べられない。しっかりした甘味のある黄金イモとは全く違う。一方、オレンジ色のサツマイモは品種改良でカロチンを強化したものが多い。黄金イモもカロチンの含有量が高そうだ。

 ふかして食すと、なんとも不思議な食感。水分が多いせいか、ホクホク感はあまりない。繊維めいたものがほとんどなく、なめらかで、ねっとりしている。歯にまとわりつくほど。まるで初めから裏ごしにかけたお菓子のようだ。

 伊計島の上田清さん、淳子さん夫妻は、葉タバコの裏作としてこの黄金イモを栽培している。農協出荷が主だが、最盛期には自宅でも直売する。平安座、宮城、伊計の各島と沖縄本島とを結ぶ海中道路の「海の駅あやはし」へも出荷する。ここではよく売れるようだ。

Ogonimo5


 自宅の作業場では、選果して箱詰めする作業が進んでいた。写真の箱の「んむ」とは沖縄方言で「イモ」のこと。同島では黄金イモを栽培している農家が十数軒ある。

Ogonimo2

Ogonimo3


 黄金イモのなめらかな食感と鮮やかな色を生かして、加工品づくりに利用しているのが、うるま市与那城屋慶名で「手作り加工所あやかりん」を営む秋広洋子さん。

 秋広さんは、つぶした黄金イモにイモでんぷんと砂糖を加えて、モチにする。イモの味にモチの食感が合わさった素朴なおやつ。海の駅で販売しているが、なかなかの人気商品で、ほとんど毎日にように完売している。でんぷんと混ぜてから薄くスライスして油で揚げた「フチャフチャ」も人気。こちらはうっすらと甘い黄金イモチップだ。

Ogonimo6


 この黄金イモ、伊計島の在来種ではない。10年ほど前、当時の旧与那城町長だった山根勉さんが「なんとか島おこしを図りたい」と、他の地域で見つけたこのイモを種を持ち込んで、生産の振興を図ったのが始まり。今ではすっかり伊計島の特産品として根付いた。

 何が好きかと問われて「サツマイモ」と答える人が、それほど多くはないが、確実にいる。そんなイモファンは黄金イモをお試しいただきたい。生のサツマイモ類は、植物防疫上、本土への出荷が禁じられているので、沖縄で試食を。海の駅あやはしでは、加工品や生イモに加え、シンプルにふかしただけの黄金イモも売られている。

 海の駅あやはしは、うるま市与那城字屋平4番地、098-978-8830。

bansyold at 00:00|PermalinkTrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Clip to Evernote