ジャポニカ米

2009年01月01日

[第94話 食、農] 沖縄産の米で作る泡盛

 謹賀新年。ことしの万鐘本店は、沖縄産の米で作られた泡盛、で幕を開ける。

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 沖縄産の米の泡盛―。特に珍しいことではないように聞こえるかもしれないが、泡盛は、タイ産のインディカ米で作られるもの。沖縄産のジャポニカ米で作られた泡盛というのは、つい最近まで存在しなかった。

 瑞穂酒造作の、その名も「島米」。どこまでも透明なデザインは、2008年の日本デザインコミッティー企画展「デザイン物産展ニッポン」の出品作品に選ばれた。

 「島米」の話に入る前に、ちょっとだけ泡盛のおさらいを。泡盛は焼酎の仲間で、いずれも麹(こうじ)で発酵させたもろみを蒸留して作るのだが、そのもろみの中身が泡盛と焼酎とでは大きく違う。

 焼酎は、米や麦に麹菌を繁殖させて作る「麹(こうじ)」に、水のほか、イモやソバなどを加えて発酵させたもろみを蒸留して作る。この原料の風味で「イモ焼酎」になったり「ソバ焼酎」になったりする。

 これに対して泡盛は、米麹に水を加えるだけでもろみを仕込む。イモもソバも、何も入れない。米麹と水のみ。「全麹(ぜんこうじ)仕込み」と呼ばれるのはそのためだ。当然、もろみの中の麹の率は高くなる。全麹ゆえの酵素の強い働きがあるから熟成古酒になるとも言われる(下の写真は瑞穂酒造の古酒がめ)。そして全麹だからこそ、泡盛の風味は麹にする米の種類に大きく左右される。米の果たす役割はものすごく大きい。

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 琉球王国時代の15世紀初めにシャム(現在のタイ)から伝わった蒸留酒が泡盛の原点と言われる。それ以後の400年間、泡盛の原料にどんな米が使われてきたか、詳細は分からないが、少なくとも大正時代以降の泡盛はタイ米を輸入して製造されてきた。

 こうした長年の慣習を変えたのが、今回の瑞穂酒造の「島米」。開発担当の村田亮さんによると、従来と違う風味の泡盛を作ろうという模索の中で、米の種類をタイのインディカ米から沖縄産のジャポニカ米に変えてみた。米が大きく変わったおかげで、泡盛らしさを残しつつも、風味のかなり違ったものができた。一言で言えば、まろやかで上品な甘味が特徴だ。

 この取り組み、瑞穂酒造単独の企画ではない。沖縄県内の販売を主に担うコープおきなわ、全国販売を担当する沖縄県物産公社、デザインを受け持つthink-ofに瑞穂酒造を加えた四者でブランド構築チームを設け、商品を開発していった。昨年からは南島酒販も加わり、全国販売がさらに強化されつつある。

 ジャポニカ米はいろいろな品種の米を試した結果、沖縄本島の金武町伊芸地区で生産されている「ちゅらひかり」を使うことになった(下の写真)。沖縄産の米は、タイ米の4倍の価格。その結果、製品の島米も720mlで2480円に。古酒でない新酒泡盛としてはかなり高い。

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 生産農家に米を安くしてもらおうとはあえてしなかった。「だれかが笑ってだれかが泣くのではなく、みんながウインウインになる(勝者になる)ようにと考えました」と村田さん。

 その根底には、米が普通の価格で売れなければ米の作付け面積は増えない、という冷静な認識があった。沖縄産の米で作る泡盛の生産量が増えてくると、現在の沖縄の米の生産量では足りなくなるかもしれないのだ。

 さらに大きな話がある。

 開発の過程では、ちゅらひかり以外の品種の米でもいろいろ実験した。その結果、味や香りのバリエーションの非常に大きい、さまざまな泡盛が出来たという。消費者の受け入れ状態を見ながらではあるが、個性あふれる多様な泡盛を商品化できたら、という夢をチームは抱く。例えば現在のマイルドな「島米」とは正反対の、クセの強い泡盛。これも実験レベルでは既にできることが分かっている。

 問題は原料米だ。沖縄産の米は全県で年3000トンしかない。そのほとんどはひとめぼれかちゅらひかり。それ以外の米で泡盛を作ろうとしても肝心の米が作られていない。つまり、この夢を実現するには、米作りの段取りから始めなければならない。村田さんは「かなりのロングスパンで考えています」と話す。

 通常の商品企画の枠を超えたスケールの大きな構想といえそうだ。

 沖縄産の米を使う際に、製造技術の面で一番大きな問題になったのは、麹を作る際の蒸し工程。ジャポニカ米はタイ米に比べて粘りが強いため、蒸し器にくっついてしまうのだ。かつても、ジャポニカ米で泡盛を作ろうと試みた人はいたが、いずれもこの問題がクリアできず、あきらめていたらしい。

 村田さんらは、硬質なタイ米よりも蒸す時間を短くするなどして、ジャポニカ米の最適の蒸し時間、蒸し加減を見い出していき、最終的にべたつきの問題を解決した。その結果、丸くて大きな「立派な麹」(村田さん)ができた。

 沖縄産の米を使った泡盛製造の試みは、もう1カ所、崎山酒造廠も手がけている。こちらは2008年が初生産。崎山酒造廠は、ちゅらひかりが栽培されている金武町伊芸にある。まさに地産地消を地でいく取り組みといえる。

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 商品名は米の品種名ちゅらひかりからそのままとって「美らひかり」とした。淡いピンク色のスリムなびんに入っている。

 崎山酒造廠の美らひかりは酵母に日本酒の吟醸酒用の吟香酵母を使用している。そのためか、吟醸香とまではいえないが、ふわっと華やかな香りが立つ。こちらは25度で500ml入り2480円。

 「島米」は沖縄県内ではコープおきなわの各店舗、全国では、沖縄県物産公社が展開する「わしたショップ」で買える。わしたショップはオンラインショップもある。「美らひかり」は琉球ジャスコ各店舗で販売中。「島米」の開発秘話は島米ブログに詳しい。

bansyold at 00:00|PermalinkTrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Clip to Evernote