スクガラス

2013年07月11日

ももと庵のアジアンって?(上)

 ももと庵は沖縄料理なの?、それともアジアンエスニック料理なの? とよく聞かれます。うーん、どっちでもあるといえばそうなんだけど、どっちでもないとも言えるし…。??? いったい何なんでしょう(笑)

 ラフテーのようにほぼピュア沖縄料理と呼べるものももちろんありますが、では、ももと膳の冷しゃぶ+アジアだれ、というのは、何と表現したらいいのか。

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 素材で言うと、沖縄素材を中心に、手に入るものは何でも、です。もちろん「とてもおいしいもの」しか使いません。

 例えば、東南アジア産の魚醤は、運んできても劣化しないですし、ていねいに選べば、しっかり作られていておいしいものがたくさんあるので、ももと庵ではいろいろな味つけに使います。

 沖縄にもスクの塩辛スクガラスがあるように、魚醤特有の塩辛風の味にはそれほど違和感はありません。

 一方、アジアエスニック料理でほとんど不可欠とも言えるレモングラス。例えば、レモングラスが入らないタイのトムヤンクンなんて、ちょっとイメージできないですよね。

 冒頭の写真は、ラオスの市場で見かけたレモングラスですが、根元の部分がしっかり太くなっていて、白ネギのように、その部分をみじん切りにするなどして使います。やはり香りが鮮烈です。

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 このレモングラス、今のところ、ももと庵では使っていません。

 もちろん、沖縄でもレモングラスは育ちます。実際、何度か育ててみたんですが、どうも「ぎりぎり」という感じで、熱帯アジアのようにはなかなか育ってくれないんです。

 これはもっぱら気候の違いによります。沖縄は日本では常夏のイメージが強いですが、冬場は15度前後の日がかなりの期間、続くため、料理に使う根元の部分がしっかり太くなりません。香りもイマイチなので、うーん、どうしたものかな、というところです。


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2012年08月30日

魚醤とスクガラス

 ももと膳の冷しゃぶには、中華だれとアジアだれの2つが添えられています。この写真ではわかりづらいですが、おちょこのような器が2つ並んでいますね、その左がアジアだれ、右が中華だれ。

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 中華だれは、酢醤油のベースに、にんにく+生姜+ねぎの黄金のトリオが加わります。醤油の味とねぎ、生姜、にんにくの風味は、おなじみの味と香りですね。

 もう一つのアジアだれは、魚醤がベース。魚醤はイワシなどを塩漬けにして出てくるエキスを熟成させた液体調味料です。タイのナンプラー、ベトナムのヌクマムと言えば、日本でもよく知られています。

 魚醤にも、一番搾りとか、二番搾りがあって、もちろん最高級は一番搾りなのですが、二番搾りとブレンドすることで、二番搾りも十分おいしく食べることができるようになります。

 ベトナムでもタイでも、イワシを塩で漬け込んだだけの昔ながらの魚醤ばかりでなく、工業的に作られて人工的に味付けされた安価な「魚醤風調味料」も広く出回っていますので、注意して選ばないといけません。

 日本にも秋田の「しょっつる」など、各地に魚醤があります。沖縄には、魚醤と呼ばれる製品はありませんが、よく似たもの、というか、事実上これは魚醤だ、といえるものがあります。

 それはスクガラスを漬けた汁です。最近のスクガラスは観光みやげ用に透明な液に浸かっていますが、あれはほとんどただの塩水で、うまみはありません。本当のスクガラスの汁はうす茶色に濁っていて、見栄えはよくないのですが、魚のエキスですから、うまみの固まり。魚醤そのものです。

2 Sukugarasu somen


 以前、スクガラスの汁でソーメンチャンプルーを作ってみたことがあります。この時は、漬け汁だけでなく、魚本体も使いましたが、実においしかった。

 魚醤はうまみの固まりですが、発酵した独特の臭いがあるので、好き嫌いが分かれることも。ももと庵では、いったん煮切って臭みを飛ばしてから、酢や砂糖と合わせています。にんにく、少量の唐辛子に加え、ニラのみじん切りがいい香りを出してくれます。

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2011年11月27日

乳酸発酵で常温保存される魚

沖縄とアジアの食 第11回 魚の発酵食品(下)

 前回、紹介したどろどろの魚の塩辛パーデークのほかにも、魚の伝統的発酵食品にはいろいろなバリエーションがある。まず、ラオス南部のローカル市場で撮ったこの写真、沖縄県民には既視感があるはず。

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 沖縄のスクガラスを立てて入れたビン。あれに似ている。

 ラオスのこれはパーソムと呼ばれる。パーソムの方がスクガラスより魚がずっと大きい。もう一つ、パーソムがスクガラスと大きく違う点がある。

 スクガラスは非常に塩辛い。塩気だけで言えば、前回紹介した塩辛のパーデークに近い。これに対して、パーソムはかなりの塩気はあるものの、パーデークほどではない。その結果、そのまま焼いてごはんのおかずとして食べられる。

 このパーソム、パーデークほど塩を大量に入れるわけではないのに、液に漬けておけば常温でも1カ月以上もつという。なぜか。

 パーソムには、塩だけではなく、ごはんや炒った米が入っている。それをエサに乳酸菌が増え、乳酸発酵が進む。だから腐らない。そもそも、パーソムを訳せば「酸っぱい魚」。焼いて食べると、しょっぱくて、すっぱい。もちろん、非常にうまい。主食のもち米がいくらでも食べられる。

 次もパーソムなのだが、小魚タイプよりもさらに塩気が少なく、ごはんが多い。上は大きな川魚の切り身を漬け込んだ切り身タイプ。やはり焼いて食べる。パーチャオと呼ばれることもある。下は尾頭付きの一尾タイプ。

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 このように乳酸発酵させることによって、ラオスのような熱い国で、冷蔵冷凍設備がなくても生の魚を腐らせることなく保存できる。30度を超すような気温の下で大量の塩も使わずに常温保存できるというのは、なかなかの技術といえないだろうか。

 同じ原理の保存食品は日本にもある。ナレズシがまさにそれ。日本では琵琶湖のフナずしが有名だ。塩漬けにしたフナにごはんを詰めて乳酸発酵させる。

 ナレズシはアジア各地にある。現物を見たことはないが、タイのある地方では、子供が生まれるとカメ一杯の魚のナレズシを仕込み、その子が、成人するか結婚するかした時に取り出して食べる習慣があると聞いた。

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 乳酸発酵した魚には、こんなものもある。魚をミンチ状にして発酵させたもの。ラオス南部のローカル市場でよく見る。ソーセージのような感じ。おけ一杯に固めて作り、切り分けて売っている。これには米粉が練り込んであって、やはり乳酸発酵を促している。

 発酵魚は、常温保存できるという点だけが長所なのではない。タンパク質がアミノ酸に分解されて、うまさも倍増する。その結果、しょっぱさと、すっぱさと、うまみの三角形がピタリと決まる。写真は一尾タイプを焼いたもの。

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 日本で焼き魚を食べるように箸で切って食べようとしたら、同席したラオスの知人に止められた。多すぎる、という。

 「味が濃いので、モチ米を指で丸めて、それで魚をほぐすようにしながら、少しつければおいしく食べられます。一家4、5人の夕食で、1、2尾焼いたら十分なんです」

 確かに、ピンポン球より一回り小さいくらいに丸めたモチ米にパーソム小さじ1/4くらいでちょうどバランスする感じ。なんと言うか、うま味に深さがあって、同時に鋭さも感じさせる。発酵がもたらす深い味。調味料だけでは、恐らくこんな味にはならない。

 そういうわけで、パーソムは、ごはんやお酒が進む。だが、不思議なことに、多少食べ過ぎても、さほどもたれない。保存性とうまさが増す以外にも、体にいいことが何かあるのかもしれないな、などと思いながら、また一口、食べてしまう。

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2010年02月21日

[第157話 食] おいしいスクガラス、はあるのか

 この可愛らしい3尾の魚はスクガラス。島豆腐の上に乗って登場する塩辛の一種だ。ただ、スクガラスを食べて心から感動した、という話はあまり聞かない。本当においしいスクガラス、というのはあるのだろうか。

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 スクガラスは、スクと呼ばれる魚を塩漬けにした塩辛。スクはアミアイゴという和名を持つ魚の幼魚。体調は2、3cm。ちなみに親戚のシモフリアイゴはエーグヮーと呼ばれ、第37話で紹介したように、マース煮にしたら最高においしい。

 さて、このスクガラス。居酒屋では、ハンで押したように島豆腐の上に乗って出てくる。ただ、かなりしょっぱくて、そのためもあってか、うまみはそれほど感じられないものが多い。

 スクの体にある小さな突起が固くて口に障るため、頭の方から尾に向かう形で口に入れるといいのだが、どう食べるにしてもそれで味が変わるわけではない。

 豊見城市にある大城海産物加工所の大城久子社長に話を聞いた。大城海産物加工所は、スクガラスを販売している。

 「おいしいものは、とてもおいしいんですよ」と、大城社長がひと瓶のスクガラスを差し出した。液が濁っていて、白いぶつぶつが出ている。おみやげ屋で見かけるスクガラスのように、透明な汁の中に魚がきれいに並べられているのとはだいぶ違う。

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 だが、一尾をとって口に含んでみて、すぐに分かった。とてもうまい。深ーいうまみがある。

 大城社長の話では、沖縄県内で出回っているスクガラスの多くが、実は海外産。沖縄県内で漁獲量が少ないのと、県産は価格がかなり高くなってしまうためらしい。だが、やはり県産のスクガラスが断然おいしいという。

 この県産スクガラス、食べてみて、確かにうまい。酒盗と呼ばれるかつおの腹ワタの塩辛があるが、それに似た強いうまみ。居酒屋で食べていたスクは一体何だったのだろう、というくらいの大きな違いがある。何がこの違いをもたらすのだろうか。

 スクは本当に小さな幼魚なので、獲れたらすぐに塩をしないと悪くなってしまう。したがって、海外産ならば、そこのウミンチューが塩をすることになる。

 だが、塩をするにはかなりの技術がいる。例えば塩の量。入れ過ぎれば発酵が進まないし、味も塩辛くなりすぎる。混ぜ方も重要。混ぜ方が足りないと塩が均等に行き渡らず、一部が腐敗してしまう。混ぜすぎも、身が傷むからよくない。

 やはり伝統的にスクガラスを仕込み続けてきた沖縄のウミンチューに一日の長があるのかもしれない。

 県産のスクガラスは、漬け汁が濁っているが、これがうまみの元と言ってもいいくらいの存在で、しょっつるやナンプラーのような魚醤にも似た深くて複雑な味わい。確かに、おみやげ店に並ぶスクガラスは、汁がもっと透明だ。一見、きれいなのだが、だから味がない、ということなのかもしれない。「白いつぶは自然のアミノ酸なんですよ」と大城社長。うまいわけだ。

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 このスクガラスなら、島豆腐に限らず、どんなものもおいしくしてくれる。まず試してみたのは、熱いごはん。塩辛が熱いごはんに合うように、スクガラスも熱いごはんに乗せたら、ごはんがすすむこと、すすむこと。こんなにおいしければ、突起もさして気にならない。

 大城社長が教えてくれた一品を、万鐘の厨房で作ってみた。題して、スクガラス入りソーミンチャンプルー。

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 いため油をフライパンの片隅に寄せるようにして、そこにスクガラスを入れ、弱火でゆっくりと揚げるようにいためる。1人分で4、5尾か。きつね色になったら、固めにゆでたそうめんを入れて混ぜる。味をみて、ちょうどよい塩気になるように、スクガラスの漬け汁を少し加えていく。仕上げに、ニラやネギ、シソなどの青味を散らして出来上がり。

 タイ料理で、エビの塩辛を油でいためて香りを立て、かつカドをとる方法があるが、あれと似ている。油の高温で加熱されたスクガラスは実にいい香り。

 そうめんを入れて混ぜると、パリパリになったスクは割れていくので、かわいい姿は消えてしまうが、そうめん全体に最高の味と香りをつけてくれる。油で揚げられることで、問題の突起もパリパリに変化し、口に障ることがなくなる。ソーミンチャンブルーの作り方はこちらを。

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 大城海産物加工所の県産スクガラスは、元の濃さのものと少し薄めたタイプの2種類ある。当然ながら、味が濃い前者が断然お勧め。価格は前者が120g入りびんで700円。味の濃いタイプは同社のHPには掲載されていないので、電話で直接注文を。豊見城市字豊見城130、098-850-1036。

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