チーズ

2008年08月22日

[第72話 食、農] ヤギ乳チーズの濃厚なうまみ

 万鐘本店第14話で、おいしいヤギの刺身を紹介したように、沖縄にはヤギ食の文化がある。日本のヤギの半数以上は沖縄にいるという。今回は、沖縄ヤギ文化の、いわば応用編。ヤギ乳で作った味わい深いチーズのお話である。

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 このチーズの名は「ピンザブラン」。作っているのは、中城村の株式会社はごろも牧場。創業者の新城将秀さんが、数少ない文献を頼りに何年もの試行錯誤の末、ようやく作り上げた逸品だ。1個100gのピンザブランが、ヤギ1頭の乳から2個しか作れない。

 新城さんの出身地、宮古島ではヤギのことをピンザと呼ぶ。ブランはフランス語で「白」。ピンザブランとは「白カビタイプのヤギ乳チーズ」を意味する新城さんの造語だ。

 世界的にはフランスがヤギ乳チーズの一大産地。フランスではヤギ乳チーズはシェーブルと総称される。スペイン、ポルトガル、イギリス、ギリシャ、ノルウェーなど、欧州各地でヤギ乳チーズが作られている。

 はごろも牧場には、ザーネン、ヌビアン、トッケンブルグ、アルバインの4種類のヤギがいる。いずれも乳用種で、ニュージーランドから導入した。特にヌビアンとトッケンブルグは珍しく、「日本でこれを持っている牧場はここだけではないかと思います」と新城さんは話す。沖縄の在来のヤギは肉用なので、恒常的に乳を搾ることはできない。

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 牧場は海のすぐそば。間伐材を組んで作られた畜舎は清潔感にあふれ、ミネラル豊富な島風を浴びながら、ヤギが静かに草を食べていた。全体で120―130頭ほど。

 新城さんの話では、ヤギ乳は牛乳に比べて脂肪球が小さいため、チーズにする際の乳を固める凝乳工程が難しいという。その一方で、脂肪球が小さいことによって、消化がよくなったり、呈味性が高まったりするというよさがある。

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 さて、その白カビタイプのヤギチーズ。口に含むと、心地よい熟成香が鼻に抜け、噛むにつれて深くて鋭いうまみが口じゅうに広がっていく。これだけの深い味ながら、化学調味料のような嫌味は全くない。まさに乳質のよさと発酵菌の力のなせるわざだ。

 このチーズに近いのは、同じく白カビタイプのカマンベールチーズだろうが、カマンベールは牛乳チーズ。ピンザブランがカマンベールよりもやや鋭利な味がするのは、酸味のあるヤギ乳チーズならではと言えるだろう。

 ただし、ピンザブランの酸味を酸味として意識するのは前半まで。酸味は、やがて広がり出て来る強いうまみに巻き込まれ、後半は濃厚なうまみの世界一色になる。

 ヤギ乳には独特の香りがあるが、これも意識されるのは主に前半。後半になると、やはり強い旨味の力がヤギ香を飲み込んでしまうようだ。口じゅうに豊潤なうまみが広がると、ワインがほしくなる。

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 このピンザブラン、仕込みから2、3週間の熟成で出荷されるが、1週間ほど追加熟成させるとさらに濃厚な味わいになる。中がとろりとクリーミーになり、歯ごたえのある外側の白カビ部分とのコントラストが楽しめる。

 「ただし、熟成が過度に進むとアンモニア臭が出てきますので、追熟は冷蔵庫でプラス2週間ほどにとどめて下さい」と新城さん。

 はごろも牧場は中城村北上原985-1、098-895-5119。商品はインターネットで買える。「はごろも牧場」で検索を。ピンザブラン1つ100gが1500円(送料別)。ただし、少量生産なので、品切れになることもある。ヤギ乳やヤギ乳ヨーグルトも販売している。

bansyold at 00:00|PermalinkTrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック