バンコク
2017年08月20日
【感動アジアCafe最終回】ストリートフードとジョナ [8/21放送予定]
FMうるまで毎週月曜夜8時30分に放送している万鐘ももと庵プレゼンツ「感動アジアCafe」。明日8/21(月)はいよいよ最終回。話題はストリートフードです。
路上で山ほど海鮮(ホーチミン)
タイ名物パッタイ店(バンコク)
市場のおやつ屋さんで女子会(プノンペン)
旧市街にあふれる路上店(ハノイ)
最終回は「てぃーあんだーアジアストリートフード」のコーナー名になっているストリートフードについておしゃべりしてみましょう。
夜風に吹かれて食べるストリートフードのおいしいこと、楽しいこと。まさにアジア旅の魅力ですね。
アジアンポップスを紹介する「わくわくアジアンポップミュージック」の最終回は、フィリピンのジョナ・ビレイJona Virayをご紹介。フィリピンを代表する若手の歌姫です。番組ではガラスのハートHeart of Glassをおかけします。
ジョナ・ビレイ
FMうるまは、スマホやパソコンを使えば、どこにいても聴けます。
方法1 ラジオ日本、日本ラジオ、Tunein Radio、myTuner Radio、ListenRadioなど、各種のラジオアプリで「FMうるま」を検索する(Tunein Radioの場合は「fmuruma」と英文字で検索して下さい)
方法2 専用アプリ「FM聴forFMうるま」をダウンロードする。アプリを開くだけで鳴り出すのでカンタン!
路上で山ほど海鮮(ホーチミン)
タイ名物パッタイ店(バンコク)
市場のおやつ屋さんで女子会(プノンペン)
旧市街にあふれる路上店(ハノイ)
最終回は「てぃーあんだーアジアストリートフード」のコーナー名になっているストリートフードについておしゃべりしてみましょう。
夜風に吹かれて食べるストリートフードのおいしいこと、楽しいこと。まさにアジア旅の魅力ですね。
アジアンポップスを紹介する「わくわくアジアンポップミュージック」の最終回は、フィリピンのジョナ・ビレイJona Virayをご紹介。フィリピンを代表する若手の歌姫です。番組ではガラスのハートHeart of Glassをおかけします。
ジョナ・ビレイ
FMうるまは、スマホやパソコンを使えば、どこにいても聴けます。
方法1 ラジオ日本、日本ラジオ、Tunein Radio、myTuner Radio、ListenRadioなど、各種のラジオアプリで「FMうるま」を検索する(Tunein Radioの場合は「fmuruma」と英文字で検索して下さい)
方法2 専用アプリ「FM聴forFMうるま」をダウンロードする。アプリを開くだけで鳴り出すのでカンタン!
2016年12月18日
寒い時はココナツバナナでホッと
寒いですねえ。そこで、冬の温かいアジアンスイーツを2種。まずココナツバナナ。ココナツミルクでバナナをふんわりするまで煮込んだもの。砕いたピーナツがアクセントです。
チェーに使う冷えたココナツミルクの独特のコクも魅力ですが、温かいそれは、なんとも優しい風味になります。牛乳のホットミルクより、明らかにやさしい。
スプーンでひとくちずつ味わっていると、なんだが、ホッとしたような気分になってきますよ。
バナナは加熱すると酸味が少し強調され、ココナツミルクと絶妙のコンビネーションに。バナナを揚げたり、焼いたりするのは、バンコクでもジャカルタでもおなじみの街角おやつ、ですね。
もう1品は、黒ごま汁粉。これは昨年の冬まで出していたもののリバイバルです。根強い人気で、しばしばご指名をいただきます。
黒ごまのみで作った強い味の甘い汁をハノイや香港の人たちは好みますが、食べ慣れない人にはややきついので、ももと庵はこれにさらし餡を少し入れてマイルドにしました。
お楽しみ下さい!
チェーに使う冷えたココナツミルクの独特のコクも魅力ですが、温かいそれは、なんとも優しい風味になります。牛乳のホットミルクより、明らかにやさしい。
スプーンでひとくちずつ味わっていると、なんだが、ホッとしたような気分になってきますよ。
バナナは加熱すると酸味が少し強調され、ココナツミルクと絶妙のコンビネーションに。バナナを揚げたり、焼いたりするのは、バンコクでもジャカルタでもおなじみの街角おやつ、ですね。
もう1品は、黒ごま汁粉。これは昨年の冬まで出していたもののリバイバルです。根強い人気で、しばしばご指名をいただきます。
黒ごまのみで作った強い味の甘い汁をハノイや香港の人たちは好みますが、食べ慣れない人にはややきついので、ももと庵はこれにさらし餡を少し入れてマイルドにしました。
お楽しみ下さい!
2014年11月16日
バンコク、シンガポールにも実は直行便が飛んでいた
前回、那覇空港の新国際線ターミナルをご紹介し、台北、香港経由でアジア各地に行けて便利だが、バンコク、シンガポールまでは直行便が飛んでないことを説明しました。
ところがー。実は、既に飛んでいるんです。それも真夜中に。
乗客を乗せるフライトではないのですが、那覇とアジア各地を結ぶANAの貨物直行便。この沖縄貨物ハブ、2009年に始動して、早くも満5年になりました。
仕組みはこうです。フライトスケジュールを見ていただくのが早いでしょう。ANAのことし夏の資料からお借りしました。
各地からの便が毎日深夜2、3時に那覇に着いて、数時間のうちに行き先別に荷物を積み替え、早朝に出発して、各地に午前8時とか9時とかに着くしくみ。日本を含むアジア各地を前日に出た荷物が、翌日には目的地に届けられるというわけです。
ヤマト運輸とANAが組んで、アジア主要都市への翌日宅配便を始めています。
沖縄はまさに「真夜中のハブ」なんですね。
日本発や日本着の荷はもちろんですが、アジア発アジア着の、日本が絡まない荷もすべていったん那覇に集まってきます。
万鐘オリジナルの南向き地図に、沖縄貨物ハブから各地に飛ぶルートを赤い線で入れてみました。
地図を見るとよく分かるのですが、こうした時間帯でアジア間で荷を動かすことができるハブは、国内では沖縄にしか作れません。例えば成田だと位置が北すぎて、アジア各地と結ぶ時間がかかりすぎてしまうのです。ちなみに航空貨物の大手、FedexやDHLは、アジアのハブを沖縄より少し南の香港、広州あたりに設けています。
5年前、この沖縄貨物ハブ始動の時に、「こりゃあ、スゴいものができた」とちょっと興奮して、ANAにお願いし、特別に現場を見せてもらったことがあります。ご関心のある方は、古いですけどこちらの上下2回の記事ものぞいてみて下さい。
沖縄県はこの貨物ネットワークの活用を促進していて、今月下旬にはアジア各地の食品バイヤーを集める初の沖縄大交易会が開催されます。この貨物ネットワークを利用したスピーディな食品輸送が期待されているわけです。
世界の成長センターであるアジアの経済は今後さらに発展して、ビジネス往来がますます増えるでしょうから、貨物ばかりではなく、旅客の方も、沖縄からもっとあちこちに直行便が飛んでくれたら助かります。
万鐘ももと庵も、沖縄大交易会への出展を予定していますので、また様子をアップしましょうね。
ところがー。実は、既に飛んでいるんです。それも真夜中に。
乗客を乗せるフライトではないのですが、那覇とアジア各地を結ぶANAの貨物直行便。この沖縄貨物ハブ、2009年に始動して、早くも満5年になりました。
仕組みはこうです。フライトスケジュールを見ていただくのが早いでしょう。ANAのことし夏の資料からお借りしました。
各地からの便が毎日深夜2、3時に那覇に着いて、数時間のうちに行き先別に荷物を積み替え、早朝に出発して、各地に午前8時とか9時とかに着くしくみ。日本を含むアジア各地を前日に出た荷物が、翌日には目的地に届けられるというわけです。
ヤマト運輸とANAが組んで、アジア主要都市への翌日宅配便を始めています。
沖縄はまさに「真夜中のハブ」なんですね。
日本発や日本着の荷はもちろんですが、アジア発アジア着の、日本が絡まない荷もすべていったん那覇に集まってきます。
万鐘オリジナルの南向き地図に、沖縄貨物ハブから各地に飛ぶルートを赤い線で入れてみました。
地図を見るとよく分かるのですが、こうした時間帯でアジア間で荷を動かすことができるハブは、国内では沖縄にしか作れません。例えば成田だと位置が北すぎて、アジア各地と結ぶ時間がかかりすぎてしまうのです。ちなみに航空貨物の大手、FedexやDHLは、アジアのハブを沖縄より少し南の香港、広州あたりに設けています。
5年前、この沖縄貨物ハブ始動の時に、「こりゃあ、スゴいものができた」とちょっと興奮して、ANAにお願いし、特別に現場を見せてもらったことがあります。ご関心のある方は、古いですけどこちらの上下2回の記事ものぞいてみて下さい。
沖縄県はこの貨物ネットワークの活用を促進していて、今月下旬にはアジア各地の食品バイヤーを集める初の沖縄大交易会が開催されます。この貨物ネットワークを利用したスピーディな食品輸送が期待されているわけです。
世界の成長センターであるアジアの経済は今後さらに発展して、ビジネス往来がますます増えるでしょうから、貨物ばかりではなく、旅客の方も、沖縄からもっとあちこちに直行便が飛んでくれたら助かります。
万鐘ももと庵も、沖縄大交易会への出展を予定していますので、また様子をアップしましょうね。
2014年11月12日
那覇空港国際線ターミナルをご案内
沖縄の玄関、那覇空港ー。おなじみの国内線ターミナルの隣に、国際線ターミナルがリニューアルオープンしましたので、ご紹介。
那覇空港からは1日3便の台北、1日2、3便の香港、ソウルを中心に、上海、台中などへも直行便が運航しています。台湾、香港などから観光客がたくさん訪れるほか、沖縄から各地へのビジネス客も利用しているようです。
全体に柔らかい印象の国内線ターミナルより、いくぶん直線的な印象のデザイン。航空会社カウンターの上部には沖縄の赤瓦があしらわれるなど、ご当地風があちこちに見られます。
この日は、台湾のチャイナエアラインが「love & hug(愛と抱擁)」と呼ぶスペシャルデザインのジャンボ機がちょうど来ていました。
台北へは1時間半、香港までは2時間半の近さ。アジアは本当に目の前です。
バンコクやシンガポールなど、さらに南の国への直行便はまだありませんが、台北や香港からは世界中に向けたフライトがたくさんあるので、そこで乗り継いで行けます。
例えば、タイのバンコク行きだと、台北経由で行くのが便利です。乗り継ぎの1時間25分を入れても所要時間は6時間50分。羽田や成田を経由すれば、乗り継ぎ時間を含めると11時間以上かかります。
あるいは、インドのムンバイに行くなら香港経由になります。香港の乗り継ぎ2時間を含めても所要時間は11時間25分。これがもし成田回りだと15時間以上かかってしまいます。
北タイの古都チェンマイ、インドネシア第2の都市スラバヤ、ベトナム中部の港湾都市ダナンといった各都市には日本からの直行便はほとんどありませんが、台北と香港からならあります。
バングラデシュのダッカ、カンボジアのプノンペン、ネパールのカトマンズ、ラオスのビエンチャンなどの各首都も、日本からは直接行けませんが、台北・香港からだと直行便が飛んでいるので、意外に便利なんですね。
那覇空港からは1日3便の台北、1日2、3便の香港、ソウルを中心に、上海、台中などへも直行便が運航しています。台湾、香港などから観光客がたくさん訪れるほか、沖縄から各地へのビジネス客も利用しているようです。
全体に柔らかい印象の国内線ターミナルより、いくぶん直線的な印象のデザイン。航空会社カウンターの上部には沖縄の赤瓦があしらわれるなど、ご当地風があちこちに見られます。
この日は、台湾のチャイナエアラインが「love & hug(愛と抱擁)」と呼ぶスペシャルデザインのジャンボ機がちょうど来ていました。
台北へは1時間半、香港までは2時間半の近さ。アジアは本当に目の前です。
バンコクやシンガポールなど、さらに南の国への直行便はまだありませんが、台北や香港からは世界中に向けたフライトがたくさんあるので、そこで乗り継いで行けます。
例えば、タイのバンコク行きだと、台北経由で行くのが便利です。乗り継ぎの1時間25分を入れても所要時間は6時間50分。羽田や成田を経由すれば、乗り継ぎ時間を含めると11時間以上かかります。
あるいは、インドのムンバイに行くなら香港経由になります。香港の乗り継ぎ2時間を含めても所要時間は11時間25分。これがもし成田回りだと15時間以上かかってしまいます。
北タイの古都チェンマイ、インドネシア第2の都市スラバヤ、ベトナム中部の港湾都市ダナンといった各都市には日本からの直行便はほとんどありませんが、台北と香港からならあります。
バングラデシュのダッカ、カンボジアのプノンペン、ネパールのカトマンズ、ラオスのビエンチャンなどの各首都も、日本からは直接行けませんが、台北・香港からだと直行便が飛んでいるので、意外に便利なんですね。
2011年10月09日
肉はいつまでもつか
沖縄とアジアの食 第4回 肉扱いの文化
そろそろアジア麺の話をしようか、と思って、ベトナム・ハノイの旧市街で食べたこのフォーの写真を取り出したら、また肉の話になってしまうことに気づいた。麺好きの方には申し訳ないが、もう1回、肉の話におつきあい下さい。
昨年、富山、福井の焼肉チェーン店で出された生牛肉ユッケが原因の食中毒で、4人が亡った。
肉の取り扱いは難しい。それは必ずしも「取り扱い技術の難度が高い」という意味ではない。肉を取り扱うことが国民的な生活技術、生活文化になっておらず、暗黙の衛生管理基準のようなものがないため、よけい難しくなっているように思える。
南アフリカ共和国の田舎で、結婚披露宴に出席したことがある。披露宴はひたすら屋外でのダンス。次々に大音響の曲がかかり、参加者は体を動かす。新郎新婦も踊りの輪に加わる。その地域では、結婚式があると牛を1頭つぶし、肉を焼いて参列者にふるまう。久しぶりのごちそうに、ダンスの合間に食事をとる参列者たちの表情もほころんで見えた。
しばらくして、会場内の小さな小屋に案内された。そこには牛の頭と内臓が置かれていた。部屋が狭いこともあるだろうが、アンモニアの強い臭いがたちこめていた。屠畜から少し時間が経っているようだった。
南アフリカでは、おかずに牛の内臓の入ったシチューをよく食べる。肉でも魚でも、内臓は栄養豊富で味も濃いごちそう。どの国でも、内臓を捨てるような伝統文化はまず存在しない。
東京でフランス料理のシェフから聞いた話だが、腕っこきのフレンチの料理人は、ありきたりの肉料理ではなく、内臓料理にこそ腕のふるいがいがあると思っているのだそうだ。それほど、フレンチの内臓料理は多彩で、奥が深いということなのだろう。
南ア農村の結婚式で、小屋に置いてあった牛の内臓のアンモニア臭を感じながら、思った。「この人たちは、牛の内臓がどれくらいもつかを、よく知っているー」。めったいにないごちそうである牛の内臓を腐らせて終わるなんてことは、絶対にありえない。
沖縄にも、そういう肉取り扱い技術の文化がある。市場でもスーパーでも、肉が大きな固まりのままで売られている。肉や内臓がどれくらいもつものか、家庭の主婦がだいたい経験的に分かっている。
1960年くらいまでの沖縄の農村では、どの家庭も豚を飼い、自分たちで屠畜もやっていた。1頭丸ごと処理するのだから、南アの牛と同じく、内臓まで含めて、すべての部位の取り扱い方法は「常識」だったに違いない。
日本の本土でも、魚肉の取り扱い方については、文化と呼べる基礎がある。
たとえば、どれくらいの鮮度なら刺身で食べられるかは、どの魚屋やスーパーも自分で判断している。魚を売る方も、そして大方の客も、目のにごり具合や、身の色、香りなどから、その魚の鮮度がいいか悪いか、ある程度は経験的に判断できる。暗黙の衛生管理基準のようなものがあると言ってもいい。
一般に、大きな肉ほど腐りにくい。その意味では、魚の多くは、牛肉や豚肉の大きな固まりよりも腐りやすい。ただ、肉の大きな固まりも、空気や異物に触れる表面は、どんどん悪くなっていく。
焼肉チェーン店での事故の後に「トリミング」という専門用語がニュースで流れた。肉の表面を削ることを言う。そう、大きな固まり肉でも、空気や手が触れる表面は、時間の経過とともに悪くなるから、悪くなった部分を削らなければならない。
肉食の長い地域では、そういうことが文化として受け継がれている。日本でも、例えばサバは腐りやすいからよほど鮮度がよくなければ刺身で食べる人はいない、といった細かさで取り扱いの文化があるように、肉食文化が根付いている地域では、つぶしてから何日目からは肉の表面をこれくらいの厚さで削り落とす方が安全、といったそれなりの生活技術を多くの人が知っている。
日本での事件の後に、韓国の焼肉店のスタッフが、なぜそんなことが起きるのか分からない、と首をかしげている映像をテレビのニュースで見た。肉食文化の長い伝統がある韓国では、日本の鮮魚と同じように、肉の熟成と腐敗について社会の経験の層が厚いのだろう。1990年代半ばに韓国の農村部を回ったことがあるが、裏庭で自分で豚をつぶしている農家がまだあった。
写真はバンコクの市場の肉屋。肉が固まりなのはもちろんだが、冷蔵ではなく、常温で売っている。タイだけではない。東南アジアのほとんどは、精肉を常温で流通させている。それは冷蔵システムが発達していないからではあるのだが、常温となれば、肉扱いの技術はさらに高度なものにならざるをえない。
常温の方が菌の繁殖速度は速いから、リスクもそれだけ大きい。統計をとれば、冷蔵流通が普通になっている日本より食中毒の発生頻度は高いかもしれないが、では食中毒が毎日のように起きているか、と言えば、さすがにそんなことはないだろう。それを支えているのは、細かい政策・制度でも、高度な検査機器でもなく、長い経験を通じて培われてきた普通の人々の肉に関する鮮度感覚にほかならない。
冒頭写真のハノイのフォーの店では、のせる牛肉を、担当の女性が大きな肉の固まりから薄く切り分け、すぐ使っていた。切り分けて、あまり時間をおかずに使うことがノウハウといえる。それなら、新たに表面に出た部分に菌が繁殖しない。
こういう扱い方が分かっているから、常夏の国で、冷蔵庫もなしで、生肉を食べてもめったにあたらない。もし、しばしばあたるようなことがあれば、みなが危険を感じて、星の数ほどあるフォー屋も、生肉のせをやめざるをえなくなってしまうだろう。
もう少し細かく言うなら、フォーの生牛肉の安全については(1)肉の鮮度(2)かけるスープの温度(3)肉の厚さと量―の3つの要素が重要だと思う。
ベトナムは長い肉食文化を持つ地域なので、鮮度の悪い肉を使うことは一般的には考えにくい。数多くの客が訪れる人気店なら、試されずみの客数が多いという意味だけでなく、原材料の回転がよいという意味でも、さらに安心だろう。
万一を考えて、スープによる熱殺菌効果を期待するには、スープが90度、95度といった高温でないといけない。それは注がれるスープの湯気の立ち具合を見ればだいたい分かる。
加えて、肉があまり厚いとスープの温度が肉の中心まで伝わらない。肉の量が多すぎても、冷たい肉がスープの温度を下げてしまう。
適度な厚さと量の肉がのり、湯気がたっぷりと上がる鍋から熱々のスープがかけられて、フォーが出てきたら、肉をスープによくひたしながら少し待ち、肉全体が白濁気味のミディアム状態になってからおもむろに食べる。
日本本土は、特に戦後、肉の大量生産が行われるようになって、肉食が一気に大衆化した。しかし、肉を扱う伝統文化は弱いから、扱い方を知らない人が肉を扱う可能性がどうしても高くなる。特に、高度な判断を求められるユッケのような境界線のところで、社会全体の経験不足が出てしまうように思う。
食のあり方に政府が介入して特定の食べ方を「禁止」したりするのはいかがなものかと思うが、るる述べてきた文脈からすれば、取り扱い方法がよく見えない飲食店が出す生肉については「無理をしないでおく」というのが正解のような気がする。
そろそろアジア麺の話をしようか、と思って、ベトナム・ハノイの旧市街で食べたこのフォーの写真を取り出したら、また肉の話になってしまうことに気づいた。麺好きの方には申し訳ないが、もう1回、肉の話におつきあい下さい。
昨年、富山、福井の焼肉チェーン店で出された生牛肉ユッケが原因の食中毒で、4人が亡った。
肉の取り扱いは難しい。それは必ずしも「取り扱い技術の難度が高い」という意味ではない。肉を取り扱うことが国民的な生活技術、生活文化になっておらず、暗黙の衛生管理基準のようなものがないため、よけい難しくなっているように思える。
南アフリカ共和国の田舎で、結婚披露宴に出席したことがある。披露宴はひたすら屋外でのダンス。次々に大音響の曲がかかり、参加者は体を動かす。新郎新婦も踊りの輪に加わる。その地域では、結婚式があると牛を1頭つぶし、肉を焼いて参列者にふるまう。久しぶりのごちそうに、ダンスの合間に食事をとる参列者たちの表情もほころんで見えた。
しばらくして、会場内の小さな小屋に案内された。そこには牛の頭と内臓が置かれていた。部屋が狭いこともあるだろうが、アンモニアの強い臭いがたちこめていた。屠畜から少し時間が経っているようだった。
南アフリカでは、おかずに牛の内臓の入ったシチューをよく食べる。肉でも魚でも、内臓は栄養豊富で味も濃いごちそう。どの国でも、内臓を捨てるような伝統文化はまず存在しない。
東京でフランス料理のシェフから聞いた話だが、腕っこきのフレンチの料理人は、ありきたりの肉料理ではなく、内臓料理にこそ腕のふるいがいがあると思っているのだそうだ。それほど、フレンチの内臓料理は多彩で、奥が深いということなのだろう。
南ア農村の結婚式で、小屋に置いてあった牛の内臓のアンモニア臭を感じながら、思った。「この人たちは、牛の内臓がどれくらいもつかを、よく知っているー」。めったいにないごちそうである牛の内臓を腐らせて終わるなんてことは、絶対にありえない。
沖縄にも、そういう肉取り扱い技術の文化がある。市場でもスーパーでも、肉が大きな固まりのままで売られている。肉や内臓がどれくらいもつものか、家庭の主婦がだいたい経験的に分かっている。
1960年くらいまでの沖縄の農村では、どの家庭も豚を飼い、自分たちで屠畜もやっていた。1頭丸ごと処理するのだから、南アの牛と同じく、内臓まで含めて、すべての部位の取り扱い方法は「常識」だったに違いない。
日本の本土でも、魚肉の取り扱い方については、文化と呼べる基礎がある。
たとえば、どれくらいの鮮度なら刺身で食べられるかは、どの魚屋やスーパーも自分で判断している。魚を売る方も、そして大方の客も、目のにごり具合や、身の色、香りなどから、その魚の鮮度がいいか悪いか、ある程度は経験的に判断できる。暗黙の衛生管理基準のようなものがあると言ってもいい。
一般に、大きな肉ほど腐りにくい。その意味では、魚の多くは、牛肉や豚肉の大きな固まりよりも腐りやすい。ただ、肉の大きな固まりも、空気や異物に触れる表面は、どんどん悪くなっていく。
焼肉チェーン店での事故の後に「トリミング」という専門用語がニュースで流れた。肉の表面を削ることを言う。そう、大きな固まり肉でも、空気や手が触れる表面は、時間の経過とともに悪くなるから、悪くなった部分を削らなければならない。
肉食の長い地域では、そういうことが文化として受け継がれている。日本でも、例えばサバは腐りやすいからよほど鮮度がよくなければ刺身で食べる人はいない、といった細かさで取り扱いの文化があるように、肉食文化が根付いている地域では、つぶしてから何日目からは肉の表面をこれくらいの厚さで削り落とす方が安全、といったそれなりの生活技術を多くの人が知っている。
日本での事件の後に、韓国の焼肉店のスタッフが、なぜそんなことが起きるのか分からない、と首をかしげている映像をテレビのニュースで見た。肉食文化の長い伝統がある韓国では、日本の鮮魚と同じように、肉の熟成と腐敗について社会の経験の層が厚いのだろう。1990年代半ばに韓国の農村部を回ったことがあるが、裏庭で自分で豚をつぶしている農家がまだあった。
写真はバンコクの市場の肉屋。肉が固まりなのはもちろんだが、冷蔵ではなく、常温で売っている。タイだけではない。東南アジアのほとんどは、精肉を常温で流通させている。それは冷蔵システムが発達していないからではあるのだが、常温となれば、肉扱いの技術はさらに高度なものにならざるをえない。
常温の方が菌の繁殖速度は速いから、リスクもそれだけ大きい。統計をとれば、冷蔵流通が普通になっている日本より食中毒の発生頻度は高いかもしれないが、では食中毒が毎日のように起きているか、と言えば、さすがにそんなことはないだろう。それを支えているのは、細かい政策・制度でも、高度な検査機器でもなく、長い経験を通じて培われてきた普通の人々の肉に関する鮮度感覚にほかならない。
冒頭写真のハノイのフォーの店では、のせる牛肉を、担当の女性が大きな肉の固まりから薄く切り分け、すぐ使っていた。切り分けて、あまり時間をおかずに使うことがノウハウといえる。それなら、新たに表面に出た部分に菌が繁殖しない。
こういう扱い方が分かっているから、常夏の国で、冷蔵庫もなしで、生肉を食べてもめったにあたらない。もし、しばしばあたるようなことがあれば、みなが危険を感じて、星の数ほどあるフォー屋も、生肉のせをやめざるをえなくなってしまうだろう。
もう少し細かく言うなら、フォーの生牛肉の安全については(1)肉の鮮度(2)かけるスープの温度(3)肉の厚さと量―の3つの要素が重要だと思う。
ベトナムは長い肉食文化を持つ地域なので、鮮度の悪い肉を使うことは一般的には考えにくい。数多くの客が訪れる人気店なら、試されずみの客数が多いという意味だけでなく、原材料の回転がよいという意味でも、さらに安心だろう。
万一を考えて、スープによる熱殺菌効果を期待するには、スープが90度、95度といった高温でないといけない。それは注がれるスープの湯気の立ち具合を見ればだいたい分かる。
加えて、肉があまり厚いとスープの温度が肉の中心まで伝わらない。肉の量が多すぎても、冷たい肉がスープの温度を下げてしまう。
適度な厚さと量の肉がのり、湯気がたっぷりと上がる鍋から熱々のスープがかけられて、フォーが出てきたら、肉をスープによくひたしながら少し待ち、肉全体が白濁気味のミディアム状態になってからおもむろに食べる。
日本本土は、特に戦後、肉の大量生産が行われるようになって、肉食が一気に大衆化した。しかし、肉を扱う伝統文化は弱いから、扱い方を知らない人が肉を扱う可能性がどうしても高くなる。特に、高度な判断を求められるユッケのような境界線のところで、社会全体の経験不足が出てしまうように思う。
食のあり方に政府が介入して特定の食べ方を「禁止」したりするのはいかがなものかと思うが、るる述べてきた文脈からすれば、取り扱い方法がよく見えない飲食店が出す生肉については「無理をしないでおく」というのが正解のような気がする。