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2012年01月15日

1ミクロンの精度で金型づくり

沖縄を創る人 第30回
 大垣精工(株)沖縄工場長 大森正末さん(上)


 「これを作っているんです」。大垣精工沖縄工場の大森正末工場長が指さした製品は、びっしりと微細な穴が空いた、見るからに硬質な金属の固まりだった。穴のエッジの鋭さは、この金属の固まりがどれほど精巧に作られたものかをよく物語っている。精度1ミクロン、つまり1000分の1ミリほどの誤差しか許されない。

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 金型(かながた)。自動車やパソコンなどの金属部品、プラスチック部品などを作るための型のこと。大森さんが見せてくれたのは、自動車のマフラーに入っている触媒を作るためのハニカム金型と呼ばれるものだ。この金型から生産される触媒は、自動車や二輪車などが排出する有害な一酸化炭素や窒化酸化物などを浄化し、きれいな空気にする。

 大森さんの工場が作っているのは、触媒それ自体ではなく、触媒を作るための金型だ。金型を発注したユーザーが、精巧な金型からセラミックの素材を押し出して触媒を作っていく。ハニカムというのは、蜂の巣のような六角形の小さな形状が空いている構造で、四角よりも触媒が作用する面が増えて効率が高まる。

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 金型はミクロンの精度が要求されるから、削るにしても、穴を開けるにしても、旋盤やボール盤を手で動かすような方法では作れない。金型の多くはNC(数値制御)で加工する。つまり、機械の動きを座標軸に落とし込んで数値化して機械を動かすのだ。ものづくりと言うと、文字通り、手で何かを作り出すイメージがあるが、高い精度が求められる金型の製造現場はNC加工にならざるをえない。

 加工の際にはいろいろな要素が入り込んでくるから、どういう時に何が起きるか、まさに現場を熟知した技術者がそうした経験をすべてプログラムに織り込んで加減していかねばならない。そこには経験に裏打ちされた熟練と、繊細で緻密な感覚が要求される。

 データだけあればプログラムはできそうに思えるが、さにあらず。日本人ならではの精巧なものづくりを象徴する産業として金型産業がしばしばマスコミに登場する背景には、金型製造特有のこうした特性がある。

 「金型産業は人を育てる必要があります。アジア諸国から研修生をたくさん受け入れてきましたが、彼らはどんどん会社を移る。金型を作る会社の立場からすると、せっかく人を育ててもすぐにどこかに行ってしまうのでは困るわけです」と大森さん。

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 大垣精工は金型製造の大手で、上田勝弘社長は日本金型工業会会長として全国591社をリードする存在だ。その大垣精工がなぜ沖縄に進出したのだろうか。大森さんが言う。

 「まずリスク分散です」

 岐阜の本社で長らく操業してきた同社は、リスク分散のため、まず長崎に工場を作り、次いで昨年1月、沖縄に工場を作った。地震などの天災や原発災害が決して言葉だけのものではないことは、昨年3月以降、ほとんどすべての日本人が自覚したところだ。

 「例えば、うちのハードディスクのサスペンション部品は、日本で2社、世界で4社しか製造技術を持たない超精密部品です」

 もし製造拠点が1カ所に集中していて、そこが災害でやられたら、その影響ははかり知れない。東北のものづくり拠点の被災が、世界の自動車産業を停滞させたことは記憶に新しい。沖縄は地震が比較的少ないのがリスク分散上の魅力になっている。

 加えて、沖縄の温暖な自然環境が金型づくりに向いている面も見逃せない。

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 「材料金属の安定的な加工には摂氏22度が最適です。本土では寒い時期には2度、3度になるので、22度にするにはかなりの暖房費がかかります。沖縄は寒くても13度とか14度でしょう」

 「夏も、本土だったら38度になったりしますが、沖縄は33度くらいにしかなりません」

 加工をする部屋は「恒温室」と呼ばれ、室温が22度プラスマイナス1度に保たれている。沖縄なら、それほどコストをかけずに「22度」を周年実現できるというわけだ。

 続きは1/22(日)に。


bansyold at 00:00|PermalinkTrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Clip to Evernote