ベトナム

2013年09月18日

おいしいアジアを楽しむ

 ももと庵の初イベント「おいしいアジアへようこそ」の第1回を、きょうのお昼時に開催しました。

 ふだんのももと庵メニューとは違うアジア料理を楽しみながら、その素材や背景をスライドで見ていただく企画です。地元の常連客を中心に、那覇方面から来られた方、さらには、飛び入りの観光客も。

Oishii_Asia


 お出ししたのは、ラオス風の豚肉香りあえ、ベトナム風鋳込み揚げ豆腐、フィリピン風の魚の酢じめなど。

 ベトナムやラオス、タイの市場で売られている野菜をひとつひとつ見ていくと、7、8割は沖縄で作られている野菜と重なることなどをスライドでお見せしました。

 逆に、沖縄では既に忘れ去られているがアジアでは広く食べられている野菜の例として、スベリヒユ、勝連かいわいでは方言でニンブトカーと呼ばれていた野菜のスライドを映したところ、参加者の女性から「そういえば、昔、食べました」との反応が。便秘にいいので、便秘気味の時には特に食べさせられた記憶がある、とのことでした。

 沖縄ではチャンプルー料理のように、肉や野菜をいためた料理が多いのですが、アジアでは、肉や魚は加熱し、野菜は生のままあえる料理も盛んです、と紹介しました。

 例えば、きょうお出ししたラオス風の豚肉香りあえには、玉ねぎ、にんにく、生姜はもちろん生で入れますし、ニラ、からし菜も生であえてあります。生ですと、やはり香りが鮮烈になります。

 幸い、きょうのアジア料理は参加者のみなさんの口に合ったようで、ほぼ完食していただきました。

 当初は定休日の毎週水曜日の昼時を利用して、と考えていたのですが、平日の昼間では行きようがないとのご意見があったので、日程を次のように少し変えました(チラシと違ってきますので、ご注意下さい)

 第2回 9/25(水)12:00-13:30
 第3回 10/4(金)18:30-20:00

 第2回、第3回は席がまだ空いていますので、ぜひどうぞ。おいしいアジア料理数品とアジア料理の背景を知る100枚のスライドをお楽しみ下さい。098-923-0725まで、ご予約を。


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2013年06月29日

Vポップのデュエットが面白い

 アジア実力派ボーカリストのシリーズ、今回の話題はV-popのデュエット。ベトナムではデュエットに意外な人気があるみたいです。

Vt Minh Tyuet Bang Kieu

Vt Cam Ly Dan Truong


 冒頭の上の写真は、Vポップデュエットの名コンビと言われるミン・トュエットMinh Tuyetとバン・キエウBang Kieu。共演映像をYou Tubeでご覧下さい。曲はシン・ロイ・アインXin Loi Anh(ごめんなさい)。

 恋人のもとを「ごめんなさい」と言いながら離れていこうとする女と、ひたすら愛を語る男を、2人がなりきって演じています。ステージでの2人は、まるで映画の1シーンを演じているかのよう。この濃いめのステージ演出がベトナム流です。



 最後のあたりでミン・トュエットのほほに涙がひとすじ流れているのに気づかれましたか。

 ミン・トュエットはホーチミン市出身の36歳。6人きょうだいの末っ子で、姉2人も有名な歌手です。一方、バン・キエウはハノイ生まれの39歳。2人ともつやと張りのある高めの声で、声質が似ているせいか、見事なハーモニーを聞かせてくれます。

 2人はデュエットアルバムも出しています。You Tubeに出ているデュエット曲でこのシン・ロイ・アインの再生回数は約200万回、それ以外に100万回を超す曲があり、コンビの人気ぶりがうかがえます。

 もちろん2人ともソロの歌手で、ふだんはそれそれで活動していますし、別の相手とデュエットすることもあります。

Map Vt2

 (万鐘の南向き地図からベトナム関連部分)

 ミン・トュエットの姉、カム・リーCam Lyと、ダン・チュオンDan Truongもデュエットで人気です(冒頭の下の写真)。

 カム・リーは43歳。主に南部ベトナムの民謡調の歌を歌ってきました。ダン・チュオンはホーチミン市出身の36歳。普通のポップスから民謡調まで何でもこなします。

 次の曲はベトナム南部の伝統音楽っぽい味わいを強く残したポップス、チム・チャン・モッ・コイChim trang mo coi。世界有数の米どころ、メコンデルタの稲穂がゆれる風景をイメージさせるゆったりとしたメロディです。メコンデルタではお米が1年に3回もとれるんですよ。

 この旋律。欧米の音楽を当たり前に聞いている耳には、音の上がり下がり、特にダン・チュオンのパートが、予想を裏切る音階の進行になっていて、スリリングです。

 聞き慣れないと「音をはずしているんじゃないか」と一瞬、思ってドキドキしてしまいますが、そんなことは全くありません。何度か聞いて慣れてくると、独特の旋律が耳に残り、ちょっとクセになります。



 この曲も複数のビデオがYou Tubeにアップされていますが、主なものの再生回数を足してみると230万回を超えます。


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2013年01月30日

おかずとごはんがデュエット

 アジア米ばなしの締めくくりに、ごはんの食べ方の話をしたいと思います。

VietGohan


 日本の場合は、炊いたごはんにみそ汁、主菜、副菜、というのが、「正しいごはん」のイメージですね。アジアの多くでも、炊いたごはんは同じですが、それ以外のお皿構成というか、食べ方がやや違います。

 韓国では、ごはん、おつゆとメインのおかずのほかに、キムチなどの小皿がたくさん出てきます。韓国料理店で、例えばメニューに「テンジャンチゲ」とあるので、それを注文すると、主役のテンジャンチゲ、つまり実だくさんのみそ汁のほかに、いろいろな種類のキムチが3、4つ、それに、野菜を煮たものとか、ゆでで味付けしたナムル類などが軽く3、4つは出てきます。

 当然ながら、すごい皿数になります。家庭のごはんもそんな感じのようです。韓国北部から南部まで、農村の家庭でごはんをいただいたことがありますが、いずれの場合も、机に並べきれないほどの皿数で驚きました。客人をもてなす意味もあったはずですが、ふだんでもそれなりの皿数になると聞きました。

 東南アジアは、また違います。皿数はそれほど多くはありません。でも、おかずがいっぱい、という感じは、韓国に負けていません。白いごはんは同じ。スープも好きな国が多いようですが、日本のように、個々のお椀によそられるのではなく、大鉢に入れられて、各自取り分ける式が多いです。

 面白いと思ったのは、ベトナム。ごはんもおかずもスープも大皿、大鉢に入ってきます。個人用に置かれるのはごはん茶碗1個だけ。取り皿も汁碗もなく、茶碗1つですべてを兼用するんです。

 まずごはんをよそって、好きなおかずをご飯の上にとって食べます。スープはどうするかと言えば、多くの場合、1杯目のごはんを食べ終わった時に、同じ茶碗にとります。

 スープを食べ終わると、再び同じ茶碗に2杯目のごはん。ごはんを2杯で終わる人は、ごはんが半分くらいになったところで、スープを注ぎ、スープごはんで締めくくることも珍しくありません。

 冒頭の写真は、ベトナム中部で昼ご飯を食べた時のもの。手前の魚の煮付けに、揚げた豆腐の煮付け、漬け物、それに野菜たっぷりのスープでした。向こうの方で、唯一の各自用食器であるご飯茶碗にごはんをよそっています。

 ベトナムでは、若い女性でもごはんをもりもり食べます。日本では、体重を気にしてか、おかずは食べるけど、ごはんはピンポン玉くらいしか食べないという若い女性が増えているという話もありますが、ベトナムでは、華奢な若い女性が、当たり前のようにごはんをお代わりしていました。

 アジアの長粒米は、粘りの弱いアミロースでんぷんが多く、日本の米よりもサラッとしています(ただし、韓国は日本と同じ短粒米です)。たくさん食べても胃にもたれません。ということは、おそらくダイエットにも貢献するんじゃないでしょうか。

 アジアの食事は、おかずたっぷり。白いごはんはあくまでサラリとしていて出しゃばらず、豊富なおかずと一体になってきれいなデュエットを奏でる役割を見事に演じています。
 

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2013年01月12日

米粉文化が日本にない理由

 アジアの米は、ごはん以外にもいろいろ加工されます。その代表格が麺。米麺については、ベトナムの麺を例に、去年、このブログで取り上げました。

 フォーは薄さが身上のベトナム北部のヒラヒラ平麺。牛肉をのせた温かい汁麺が定番です。ブンは細くて柔らかく、断面が丸い麺。たれをかけて汁なし麺で食べたり、鍋で鍋材料と一緒に食べたりします。フーティウは細いけれどもややコシがあって断面が四角い麺。クメール人がもたらしたと言われる南部の麺で、温かい汁麺で食べることが多いようです。

 タイだと、センミー、センレック、センヤイのトリオ。屋台の麺屋ではこの3つの中から好きな麺を選ぶことになります。センミーは相当細く、センレックはフォーくらいの平麺。センヤイはさらに幅が広がって、麺というより、ひらひらのパスタみたいな感じです。写真はセンヤイ。

Sen yai


 センヤイはパスタみたい、と書きましたが、こんなのもあります。ベトナムの市場で見かけたまさにパスタ。中央左の白と黄色のもの、奥のマカロニのようなものは、すべて米の加工品です。女性が手にしているパッケージに英語でマカロニと書かれていますね。

RiceMacaroni3


RiceMacaroni1


 ところで、東南アジアでこれだけ米麺が発達したのに、東北アジアの米どころである日本には、沖縄を含めて、米の麺はほとんどありません。麺といえば、うどんでもそうめんでもみな小麦。どうしてこれほど違いが大きいのでしょうか。

 ひとつ、こういう説があります。

 アジアのインディカ米は細長いので、精米の際に砕米がたくさん出ます。これに対して、日本で食べられている丸い米の場合は、割れにくい。ヌカは出ますが、砕米がたくさん出るようなことはありません。これがインディカ米の場合はそうはいかず、どうしても砕米が多くなり、それを利用した米粉文化が自然に発達した、というわけです。

 目の前に砕米がたくさん出れば、それを利用しようとして、砕米をさらに細かくした米粉文化が自然に発達したのかもしれませんね。


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2012年08月30日

魚醤とスクガラス

 ももと膳の冷しゃぶには、中華だれとアジアだれの2つが添えられています。この写真ではわかりづらいですが、おちょこのような器が2つ並んでいますね、その左がアジアだれ、右が中華だれ。

1 Mmtzen Tare


 中華だれは、酢醤油のベースに、にんにく+生姜+ねぎの黄金のトリオが加わります。醤油の味とねぎ、生姜、にんにくの風味は、おなじみの味と香りですね。

 もう一つのアジアだれは、魚醤がベース。魚醤はイワシなどを塩漬けにして出てくるエキスを熟成させた液体調味料です。タイのナンプラー、ベトナムのヌクマムと言えば、日本でもよく知られています。

 魚醤にも、一番搾りとか、二番搾りがあって、もちろん最高級は一番搾りなのですが、二番搾りとブレンドすることで、二番搾りも十分おいしく食べることができるようになります。

 ベトナムでもタイでも、イワシを塩で漬け込んだだけの昔ながらの魚醤ばかりでなく、工業的に作られて人工的に味付けされた安価な「魚醤風調味料」も広く出回っていますので、注意して選ばないといけません。

 日本にも秋田の「しょっつる」など、各地に魚醤があります。沖縄には、魚醤と呼ばれる製品はありませんが、よく似たもの、というか、事実上これは魚醤だ、といえるものがあります。

 それはスクガラスを漬けた汁です。最近のスクガラスは観光みやげ用に透明な液に浸かっていますが、あれはほとんどただの塩水で、うまみはありません。本当のスクガラスの汁はうす茶色に濁っていて、見栄えはよくないのですが、魚のエキスですから、うまみの固まり。魚醤そのものです。

2 Sukugarasu somen


 以前、スクガラスの汁でソーメンチャンプルーを作ってみたことがあります。この時は、漬け汁だけでなく、魚本体も使いましたが、実においしかった。

 魚醤はうまみの固まりですが、発酵した独特の臭いがあるので、好き嫌いが分かれることも。ももと庵では、いったん煮切って臭みを飛ばしてから、酢や砂糖と合わせています。にんにく、少量の唐辛子に加え、ニラのみじん切りがいい香りを出してくれます。

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2011年11月13日

鍋の底知れぬバリエーション

沖縄とアジアの食 第9回 熱帯アジアの鍋(下)


 日本では鍋料理の鍋は、すきやきの鉄鍋などを除いて、土鍋が多い。土鍋はいかにも温かそう。アジアではほとんどステンレス製やアルミ製だった。ベトナム鍋も、タイすきの鍋も。ラオスの鍋もそうだった。

 暑い中では、涼しげな金属鍋が似合うかもしれない。前回の冒頭写真のようなタイプが普通だが、こんなのもある。

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 カウボーイハットのつばのように、翼が広がっていて、そこに材料を並べる。肉、レバー、エビ、イカ、それに各種野菜。食べたい材料を、適宜、中に入れていく。ブンなど、ここに乗りきらない材料は別皿で控えている。

 次は、前回のイカネギ鍋で出てきたパーティー銀皿風の鍋が再び登場する。この鍋は材料が相当変わっていて、イモのような甘くないバナナと肉、それにたっぷりの野菜。これらをどろどろの汁に入れて煮る。

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 これが意外にうまかった。絶妙のバランス。汁にはウッチン(ターメリック)が使われている。こうした複雑な味がどこからひねり出されてくるのか。ちょっと想像力が追いつかない。

 しかも、この鍋は、穀物系として、ブンではなく、なんとなんとフランスパンをめいめいの取り皿に入れ、鍋材料をお迎えする。はあ? フランスパン? と思ったが、パンの焼けた部分の味に、鍋の汁のうまみがピタリと寄り添って、うまい。こんな味の組み立て、一体どうやって思いつくのか。

 変わった形の鍋、という意味ではこちらを紹介しないわけにはいかない。タイではムーカタ、ラオスではシンダードと呼ばれている鍋料理。写真はラオス北部。

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 ジンギスカン鍋とよく似た真ん中の盛り上がった部分にラードを乗せて脂を溶かしてから、主に豚肉を焼いて、焼肉として食べる。一方、下の溝の部分にはダシがはられていて、そこにエビや野菜、キノコ、はるさめなどを入れて楽しむ。ダシに味はついているが、ピーナツ味噌、ライム、唐辛子、刻みニンニクなどを足す。

 「首都のビエンチャンでは、10年くらい前から見かけるようになりましたね。上で焼いた肉の肉汁が下に入って、汁がうまくなるみたいです」とラオスの知人。ただし、食べ放題の安い店だと、汁は顆粒コンソメだったりする。

 これが「何でもあり」のこだわりのない欲張り鍋の代表格なら、その正反対の鍋もある。ベトナム中部で遭遇したストイックな鍋。

 鍋はありふれた形だが、中身がすごい。すごい、といっても、材料は2つだけ。地鶏のぶつ切りとゴーヤーの葉。地鶏の強いダシに、ゴーヤーの苦い葉をどかどか入れて、もりもり食べる。

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 ほとんど薬膳の世界とも言うべきストイックな鍋だが、これがまたうまい。当然ながら、苦い。ゴーヤー葉の強烈な苦さが、地鶏の強い旨味に抱きかかえられて、うまい。デトックスになりそうな、そんなありがたい鍋だった。

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 この店は高床式の東屋。地鶏料理の専門店なのだという。

 アジア鍋は、底知れぬバリエーションを見せてくれる。その盛り上がりぶりは、とどまるところを知らない。

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2011年11月06日

想像力と舌を刺激する鍋

沖縄とアジアの食 第8回 熱帯アジアの鍋(上)


 前回のブンのところで触れた鍋料理を、今回と次回で紹介しよう。日本の鍋や韓国のチゲなど、鍋料理は寒いところの食べものというイメージが強いかもしれないが、常夏のアジアの人々は、実はとても鍋が好きだ。

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 よくあるアジア鍋は、肉や魚介類と野菜の組合せ。野菜をどかどか食べる。写真はベトナム中部。肉やエビ、イカなどは先に鍋に入れてある。

 野菜は、クレソン、ウンチェーバー(空芯菜)、ツルムラサキ、カラシナ,シュンギク、バナナのつぼみなどが常連。だいたいは緑の濃い、苦みや香りの強い熱帯系野菜たちだ。火に通すと強い香りや苦みがマイルドになるせいか、いくらでも食べられる。これだけたっぷり濃緑色野菜を食べれば、体にいいこと間違いなし。

 ダシは牛骨や豚骨、鶏ガラベース。味はついているので、そのまま食べられる。魚や肉やエビの味が薄いと感じる場合は、テーブルに置かれた小皿の魚醤をチョンとつけて口に放り込む。

 もちろんブンを忘れてはいけない。この手の寄せ鍋風の鍋にはだいたいブンが登場するようだ。ブンは前回紹介したツルツルの優しい米麺。めいめいの取り皿に少量入れて、鍋材料と一緒にいただく。

 鍋材料は、いろいろ、さまざま。冒頭の肉や海鮮の寄せ鍋風のものばかりではない。シンプルなものを紹介しよう。ベトナム中部で見かけたネギとイカだけの鍋。ダシの味つけも非常にシンプルだ。

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 この鍋は、鍋というよりは、パーティなどでよく目にする銀皿のような形をしている。だが、よく見ると、パーティ銀皿より深さがあるから、やはり鍋料理用なのだろう。厨房で煮込んできたものをそのまま出してもさほど変わらないのかもしれないが、客の目の前でグツグツやれば食欲もそそられる、というもの。

 「ネギが半煮えの時を狙って食べて下さい」。同席の鍋奉行氏がそう教えてくれた。そうか、加熱を止めるタイミングが微妙ならば、やはりテーブルの上で火加減を調整しながら作るのが正解だ。

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 こちらはベトナム北部で出会った小さな淡水魚の鍋。ドジョウによく似ている。店は広大な水田地帯のすぐ前。この魚もおそらく田んぼで獲れるのだろう。ドジョウは田んぼ、と昔から決まっている。

 小骨が多いので、舌先を細かく動かさないといけない。魚と言えばフィレしか食べたことのない最近の日本の子供では太刀打ちできないかもしれない。ダシがよく出ている。

 バナナのつぼみのスライスをたっぷり入れて食べる。もちろん、バジルなどの青い野菜もドカンと。店の奥では、鍋に入れる野菜を少女がていねいにつくろっていた。

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 アジア鍋の複雑な味の組み立ては、想像力と舌を激しく刺激する。複雑さを支える自然の恵みと、それをうまく組み合わせる呆れんばかりの知恵。

 鍋は、材料から完成品までの過程を目の前で見られるから楽しい。

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2011年10月30日

麺のオールラウンドプレーヤー

沖縄とアジアの食 第7回 ブン

 ベトナム麺といえば、ブンの話をしないわけにはいかない。ツルツルした優しい食感が特徴の丸い米麺。日本の素麺より少し太い。食感はかなり違う。

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 ベトナムにはいろいろな麺があるが、その中でもブンは、最もたくさん消費されているのではないかと思う。市場の麺専門店には中央付近にドンと置かれているし、食べるシーンも多彩だ。前々回と前回で書いたフーティウやフォーは、日本のラーメンのようなどんぶり入り汁麺として食べられるのが普通。ブンは、汁麺ももちろんあるが、別の形で出くわすことが多い。

 例えば、茶碗にブンを入れて、ちょっとおかずをのせ、まるでごはんのように食べる。あるいは、ハノイ料理で有名なブンチャーは、肉だんごなどが入ったつけ汁にブンをひたして食べる。ブンは、麺のオールラウンドプレーヤーなのだ。

 そうそう、ブンは、鍋料理にもしばしば沿えられて登場する。これは目からウロコの素晴らしい食べ方なので、ちょっと詳しく説明しよう。

 ベトナムの人々は大の鍋好き。常夏の国ながら、氷の入ったビールを片手に、海鮮や肉、そしてたっぷりの青野菜が入ったいろいろな種類の鍋をつつく。日本では、鍋は冬場の料理ということになっているが、ベトナムで鍋を食べると、そうした固定観念がいとも簡単に崩れてしまう。30度を超す蒸し暑さの中でも、文句なしに鍋はうまい。

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 ブンは、そんな鍋の必需品。鍋の材料がグツグツ煮えてきた頃合いを見はからって、鍋の横で皿に盛られて待機しているブンを、めいめいの取り皿に少量とる。それから食べたい鍋材料を入れ、スープを注ぐ。つまり、取り皿のスープの中に、肉や魚や野菜といった鍋材料に混じって、少量のブンがいつもあるのだ。

 いただきますー。鍋材料と一緒にブンを口に入れる。これがうまい。おかずだけを食べるよりも、おかずをごはんと一緒に口に入れた方がおいしく感じることがあるが、あれと似ているかもしれない。鍋材料だけでももちろんうまいが、そこにブンの優しい食感が加わると、妙においしく感じられるのだ。

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 ブンは、コシがまるでない。コシのない米麺としては前々回のフォーが代表選手だが、ブンのコシのなさもフォーに負けていない。それで十分うまいのは、鍋もののスープとの相性がいいからかも。フォーのような薄い平麺ではないが、スープと一体化するという意味では、ブンはフォーにひけをとらない。水分の多さも、スープとの一体感に大いに貢献している。水分が多く、粘りがないので、炭水化物特有の「重たさ」がない。

 自分でブンを作っている、という市場のおばさんに聞いた話では、ブンは、米を水にひたして柔らかくしたものをひいてシトギにし、それを穴の開いた容器から、沸騰させた湯に落として作るという。

 市場では、ゆでられた状態の大量のブンが売られている。麺同士がくっつきそうだが、意外に簡単に離れる。

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 ツルツルした優しい口当たりは、フォーと同じく、アミロース主体の長粒米がもたらす「さらり感」のなせるわざ。この、さらり感はあまり自己主張しない。鍋の取り皿の中で、鍋材料たちに主役の座を譲りながら控えめな脇役を果たすのにうってつけだ。だが、鍋を何度か食べていると、脇役ながら、鍋を食べる時にはどうしてもこのブンが欲しくなるから不思議。

 丸麺と言えば、もう一つ、印象的なベトナム麺を。バインカン。ブンほど量が食べられているわけではないと思うが、ホーチミン市ではこれを売りにしている店をときどき見かけた。南部一帯でよく食べられているとも聞いた。ブンよりずっと太く、日本のうどんくらいある。タピオカが多めに入っているのが最大の特徴で、タピオカ独特の粘りと透明感がある。

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 前々回のフォーで「薄さが命」と書いた。バインカンを食べると、アミロース中心の米麺が太くなった時に出てくるはずの歯触りの「もたつき」を、粘りの強いタピオカを多めに配合することでうまく回避していることがよく分かる。さらに、汁にとろみをつけて、麺の食感に一歩近づけながら、麺から汁が滑り落ちにくいようにして一体感を高めている。なんとも巧み。

 ベトナムのそんな知恵は食文化のあちこちに垣間見える。うまいものを追求するベトナムの情熱には、脱帽するしかない。

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