ホテル

2009年10月04日

[第137話 農] ホテルが買い付ける山田金曜朝市

 一般の農協出荷でも、ファーマーズマーケットでもない、新しいタイプの農産物直販市が本島北部で産声を上げた。売り手は農家。買い手はホテルと飲食店。新しい農産物流通のモデルになりそうな、B-to-Bの直販市を訪れた。

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 名護市の中心部から少し入った山あいにある山田公民館。毎週金曜日の朝、農家が自慢の農産物を次々と運び込む。ほどなくして、買い付けるホテルや飲食店の人々がバンなどに乗ってやってくる。山田金曜朝市の始まりだ。

 毎回、近くの農家20軒ほどが出品する。ホテル側はそうそうたる顔ぶれ。沖縄のホテルで売上ナンバーワンのかりゆしホテルズ、高級ホテルの代表格ブセナテラスビーチリゾート、長期滞在用の居室が充実しているカヌチャベイホテル&ヴィラズなど、北部の大手ホテルや飲食店がずらり。

 北部のホテルや飲食店のシェフたちが集まる「やんばる料理研究会」がこの朝市を実現したホテル側の母体。地元食材にこだわり、地元食材の活用方法を研究してきた。農家側は、万鐘本店第18話で紹介した土づくりを実践し、総理大臣賞を受賞したゴーヤー農家金城美代子さんを中心とする腕っこきの生産者たち。

 この日は小松菜、トウガン、白いゴーヤー、ショウガ、オクラ、ナスなどが、所狭しと並べられていた。

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 この朝市、農家にとって魅力なのは、自ら値をつけたうえで、まとまった量が売れること。

 従来の農協出荷の場合、量は出せるが、サイズや形などの規格が非常に厳しいうえに、黙ってセリ値を受け入れるしかない。この朝市では、相場を基準にしつつも、原則として農家は自分で値をつけられる。セリではなく、個別の相対取引。この違いは大きい。農家が農産物の作り手としてだけでなく、売り手として一人前になれるのだ。

 ファーマーズマーケットはB品も出せるし、値も自分でつけられる。だが、ファーマーズマーケーットは一般消費者が相手だから、ビニル袋1つが単位。まとまった量を売るのはなかなか難しい。山田金曜朝市では、ホテルが相手だから、箱単位で量がはける。

 この朝市に自ら足を運ぶ沖縄かりゆしビーチリゾート・オーシャンスパの常務取締役総支配人玉城智司さんは「うちは1日1000人のお客様が泊ります。そのうち9割が朝食を、6割が夕食を召し上がります」と説明する。このように買い手の胃袋が大きいからこそ、農家は実のある商売ができる。

 朝市での買い付けでまだ量が足りないホテルは、出品農家と個別に話をつけてさらに農家の畑で追加で買い付けすることも珍しくない。

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 ホテル側にもメリットは大いにある。やはり自らこの市を訪れるブセナテラスの総料理長新垣敏光さんは「ここで仕入れた野菜は日もちが違いますね」と言いながら、買い付けた野菜をせっせとバンに載せていた。ここで販売される農産物の品質のよさはもちろんだが、間に流通業者が入れば、1日、2日はよけいにかかるということだろう。

 価格面でも間の業者の取り分がなくなるから有利。厳しい経済状況の中で、ホテルも、食材調達を業者任せにしてのほほんとしてはいられない。責任者自らこの朝市に足を運び、品定めをして、いいものを少しでも安く仕入れようとしている。

 「農家も、ここでは、お客さんの要望を直接聞くことができます」と金城美代子さん。農協出荷の場合は、お客さんの声が農家に直接届くことはめったにない。

 朝市の事務処理は簡素そのもの。農家は納品書兼請求書を自分で切り、ホテルはその金額を翌週現金で支払う。ホテルは支払い金額が明確になるから、よけいな現金を持ち歩く必要がない。専従の事務スタッフは必要ないし、場所は公民館で無料だから、売り手と買い手の「間」の部分には全くコストがかからない。

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 「そのうち、ホテルのお客様をここに連れて来ようと思っているんですよ」と楽しそうに話すのはかりゆしの玉城智司さん。ここで農家から直接買い入れたとびきり新鮮な地元食材で今夜のあなたのディナーをお作りします、というわけだ。確かに、どんなうたい文句よりもこの朝市を見せる方が説得力があるだろう。

 場所は山あいの公民館の前庭。立派な建物や派手な看板があるわけではないが、売り手と買い手が互いの必要から向き合い、コミュニケーションしながら作り上げる「市」の原点がここにはある。いわゆる観光施設にあきたベテラン観光客には恰好の見学先になるかもしれない。

 山田金曜朝市は、毎週金曜日朝8時半に始まり、約1時間で終了する。場所は、名護市字田井等909、山田公民館。

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2009年05月13日

[第116話 沖縄] 浜比嘉島「大人の」リゾート

 沖縄本島東海岸に浮かぶ浜比嘉島(はまひがじま)。平安座島から橋がかかるこの小さな島の東端に、とびきりの大人向けリゾートホテルがある。地元出身のスタッフとリピーター客、コンセプトによく合った内外装が作り出す静かな癒しの時空間をご紹介。

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 ホテル浜比嘉島リゾート。20年以上前からあるホテルだが、昨年4月にリニューアルした。外装には要所要所に琉球石灰岩をあしらって、高級感と親しみやすさという、正反対の効果を同時に実現。自然素材が持つこの不思議な力については、第16話の那覇空港の話でも取り上げた。次の写真の上は、琉球石灰岩が貼られた正面階段。

 小さなところにも自然の素材が上手に使われている。例えば客室の場所を伝える廊下の掲示は、ガラスに文字を乗せて、そのバックに木製の板を入れた。各室前の室番号は、10cm四方の琉球ガラスの板に文字が乗せてある。

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 内装は、アジアンリゾート風味の昭和モダン、とでも言おうか。白とこげ茶、ベージュを基調に、ところどころに赤っぽいハイライトをあしらったアジアンリゾート風の色調を使いながら、こげ茶で装飾性の少ない直線的な家具類を置くことで昭和モダン風の味わいを出している。

 だから、曲線の多いヨーロピアンとも、東南アジアのコテコテのアジアンリゾートとも一線を画す。一言で言えば、控えめ、抑えめの華やかさ、豪華さ。第7話で紹介した万国津梁館と共通するデザインコンセプトかもしれない。もちろん、浜比嘉島リゾートも、例えばシャワールームの感じに見られるように、リゾートらしい豪華さはちゃんと備えている。

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 「大人の―」とは、そんな控えめのリゾート感覚を心地よく受け止めるのが、ある程度の人生経験を持つ年齢層に多いはずだから。若者は、どちらかと言えば、もっと冒険的で刺激的で、作り込んだ面白さにひかれるだろう。

 支配人の中野優子さんによると、地域の自然や社会にとけ込むリゾート、というのが、このホテルのコンセプトの一つ。リゾート開発には、地域と関係ない施設をドカンと作るアプローチもあり、沖縄ではリゾートの主舞台である西海岸にそうした施設が多い。だが、このホテルは違う。

 例えば、浜比嘉島リゾートは、24、5人のスタッフの大半が地元出身。中野さん自身も、海中道路を渡ったうるま市与那城屋慶名の出身で、配膳スタッフから始めて、ずっとこのホテルで勤めてきた。リニューアル後に支配人に昇格したという文字通りの生え抜きだ。そんなスタッフが醸し出す等身大の雰囲気のよさが分かるには、多少の人生経験がいるかもしれない。

 西海岸のリゾートホテルは大型や高層の建物が普通で、観光バスでやってくる数多くの団体客が宿泊する。これに対して、浜比嘉島リゾートの顧客の中心は、個人のリピーター客。「お子さんが3歳の頃から毎年いらっしゃるご家族がありまして、その子がことし小学3年生になったんですよ。スタッフとも顔なじみです」。中野さんが目を輝かせて楽しそうに語る。

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 北谷や恩納村などの西海岸がサンセットから夜ふけまで若者が遊ぶところとするならば、東の浜比嘉島リゾートは早起きの大人たちがサンライズで朝の光とすがすがしい空気を楽しむ場所といえるかもしれない。事実、中野さんの話では、夜10時ともなれば客室の多くは静かになるという。部屋の多くが東向きのオーシャンビューになっているので、朝、宿泊客はカーテンを開けて、青い海の上に昇る朝日を楽しむ。

 うれしいのは、宿泊料も抑えめなこと。西海岸のリゾートより安い。しかも3連泊以上するとさらに2割引きになる(ハイシーズンを除く)。部屋の広さはスタンダードルームが24平米。

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 最後になったが、海の青さは、橋がかかったとはいえ、やはり島なので格別だ。写真は浜比嘉島側から見た平安座の漁港だが、浜比嘉島の周囲の海も同じくエメラルドグリーン。ガラスを溶かしたような、透明感あふれる海の色は、何度見ても飽きない。

 ホテル浜比嘉島リゾートは、うるま市勝連比嘉202、098-977-8088。HPはこちら

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2008年01月13日

[第35話 沖縄] 沖縄宿の裏技 ウィークリーマンション

 敬老の日や体育の日を月曜日にしたために連休が増え、遠出しやすくなった。そのせいか、連休前後に「那覇のホテルがとれないで困っている」という話を旅行者からよく聞く。そんな時に那覇で快適に泊る裏技をご紹介。

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 多少をお金がかかっても休日気分を、という人には向かないかもしれないが、ビジネスがらみで来る人、プライバシーが守れて安心して泊れれば十分という人なら、ウィークリーマンションをお勧めする。那覇周辺はウィークリーマンションが増えてきたが、その草分け的存在が、県庁近くの泉崎にあるハーバービューマンションだ。

 受付の砂川康成さんによると、ここは週貸しで始めたが、1泊、2泊の短期滞在ニーズにも応えられるようにと、ホテルとしての営業許可も取得した。もちろんホテルではないので、ホテル仕様のフルサービスは受けられない。例えば、ホテルのような立派なロビーやフロントはないし、朝食を食べるところもない。

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 だが、室内には炊飯器やオーブントースター、電子レンジ、ガスコンロなどがあって、鍋類も用意されているから、自炊するのは問題ない。本格的に作らなくても、近くにコンビニやスーパーがあるから、ちょっと温めれば食べられるものを買ってきて、簡単にすませることができる。

 この調理機能をフル活用する手もある。料理好きの家族、グループなら、那覇・牧志の公設市場などで新鮮な魚や肉、島野菜を買ってきて、部屋でワイワイ調理しながら食べれば、好みのアレンジの沖縄料理がお値打ちに楽しめる(調味料類は自分で用意すること)。こういう場所を利用して、沖縄での生鮮食品の買い物と料理を主目的にした旅を企画するのも一興だろう。下の写真は、牧志公設市場1階で売られている色とりどりの魚たち。ちなみに、一番手前が最高級魚のアカジンミーバイ。高いが、刺身で食べたら脱帽のうまさだ。

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 入居時には新しいシーツが敷かれている。滞在中はベッドメーキングが標準サービスになっていないが、あらかじめ希望しておけば1回1000円でやってくれる。4、5日滞在するなら途中で1回やってもらえばいい。

 シングルで17平米、ツインで28平米あるから、よくあるビジネスホテルより広め。シングルで1泊5450円、ツイン2人で1泊7480円。リゾートっぽい雰囲気にこだわらず、こざっぱりした室内で泊れれば十分、という人にはピッタリだ。国際通りや那覇バスターミナルにも近くて便利。ただし、レンタカーを利用する場合、駐車できる台数は限られている。

 1週間以上滞在するなら、天久新都心にもウィークリーマンションがいくつかあるので、そこも同じように利用できる。ハーバービューマンションは那覇市泉崎2-101-3、098-855-8111。ホームページ http://www.okinawa-weekly.com/ からも予約可能。

bansyold at 00:00|PermalinkTrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Clip to Evernote