三月菓子

2009年03月08日

[第105話 食] じーまーみ粉入りの三月菓子

 3月3日は、潮干狩りなどをしながら浜で遊ぶ「浜下り(ハマウリ)」の光景が沖縄各地で見られる。浜下りに持っていくのが三月菓子。今回はその三月菓子と浜下りにまつわる民話の話題をお届けしよう。ただし、この「3月3日」は旧暦。ことしの新暦では3月29日が旧3月3日にあたるので、実際はまだ少し先だが、「伝統行事に臨む予習」ということで。

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 三月菓子は、サーターアンダギーを四角くした感じの揚げ菓子。サンガツガシではなくサンガチグヮーシが沖式発音。各家庭で作られるが、専門店もある。個性的な三月菓子で知られるのが豊見城市の「とよみテンプラ店」。固定ファンをがっちりつかんでいる。

 店主の米須富子さんによると、三月菓子の生地は、小麦粉、卵、砂糖がベースになるところはサーターアンダギーと同じだが、水分が違う。サーターアンダギーの生地は柔らかいので、手に油をつけてそっと丸めないと、べたべたした生地が手にくっついてしまう。

 これに対して三月菓子の生地は水分が少なく、平らにのして包丁で四角く切って形を作る。「生地の水気は、その日の湿気などによって加減しますよ」と米須さん。サーターアンダギーと同様に、三月菓子にもふくらし粉が少し入るが、水気が少ない分だけ揚げあがりはしっかりと固くなる。

 米須さんの三月菓子づくり歴は長い。かつては大規模に生産し、大手のスーパーに納めていたこともあるという。今はほとんど1人で、毎朝4時から手づくりし、自分の店頭で販売する。その個性的な味を知るたくさんのファンが買っていく。

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 米須さんの三月菓子がよくある三月菓子と違うのは、生地にじーまーみ(ピーナツ)の粉が練り込んであること。その結果、味と香りが濃厚になる。「うちの三月菓子を食べ慣れた方がよそのを食べると、少しモノ足りないような感じを受けるみたい」と米須さんは言う。

 確かに濃厚だ。口に含むとじーまーみの香りが鼻をくすぐり、しっかりと固い生地をかむと、タンパク質豊富な豆特有の濃厚な味が広がっていく。きな粉の豊かな味わいにも似ている。じーまーみもダイズも、栄養たっぷりの豆だからだろう。

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 豆は、要するに種(たね)なので、植物が芽を出す際、つまり生命が再生する時に必要な栄養がすべて入っている。だから、とにかく栄養豊富。ちょっと大げさに言えば、人類は古今東西、そんな豆から高い栄養を得ることで生き延びてきた。世界各地の伝統食の基本形はどれもハンで押したように「穀類+豆」だ。

 豆を粉にひくのは、今の日本ではきな粉くらいかもしれないが、例えば、豆食大国インドでは、豆の粉を練った生地を丸めて揚げたものを煮込んでベジタリアンカレーを作ったりする。

 浜下りは「女性の休日」「潮干狩り」。のどかなイメージが定着しているが、もともとは浜辺の白砂で身を清める意味があったという。その起こりになったとも言われる民話は、ある姫が、美男に化けた蛇の汚れを浜の白砂で落としたというもの。全国の民話を集めた「スーちゃんの妖怪通信」に、読谷村に伝わるこの口承民話が採録されているので、ジャンプして一読を。ストーリーもだが、言葉づかいが最高に面白い。

 もう一つ、スーちゃんの妖怪通信には、この話にそっくりの鳥取に伝わる民話というのも載っているので、ぜひ読み比べていただきたい。あきれるほどよく似ていて、ちょっとびっくりする。なぜ鳥取と沖縄なのか全く分からないが、古い時代には、鳥取と沖縄の間に、人やモノがひんぱんに行き来する航路があったのかもしれない。

 とよみテンプラ店は、豊見城市字高安605-1、098-850-7787。

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