中国
2013年11月01日
カンプーのそっくりさん
前回は、江戸時代の女性の髪をほうふつとさせるラオス女性の髪のまとめ方について書きました。今回は沖縄女性のヘアスタイルです。
伝統的とされる沖縄女性の髪型は、民謡歌手が今でもやっています。人気のネーネーズに登場してもらいましょう。
長い髪をまとめてくるくると巻いて、ほぼ頂上の部分にポンと乗せたヘアスタイル。こういう髪型にすることを沖縄では「カンプーを結う」と言います。最近はやりの琉装による結婚式でも、花嫁さんはカンプーを結って登場します。
もっとも、これをやるには、かなり長い髪が必要です。実際、ほどいた時に腰のあたりまで長さがないと、うまくカンプーが結えない、と聞きました。
現代の沖縄女性は、腰までの長い髪の持ち主はむしろ少ないので、カンプーを結う人の多くは、人工の髪を自髪の先につけてから結い上げるのだそうです。
さて、次にこの写真。カンプーと似ていますが、沖縄ではありません。
これ、ラオス北部の中国国境に近いところに住む少数民族の女性です。長い髪をまとめてくるくると巻き、頂上付近にポン、というあたり、沖縄のカンプーそっくり。
沖縄ではジーファーと呼ばれるかんざしを差して髪を止めるのですが、こちらも、銀の丸い飾りのついた何かで髪を止めているのが分かります。
ラオス北部の少数民族と沖縄に直接の接点があるとは思えません。腰まであるような長い髪をまとめようとすると似たようなやり方になる、ということなのかもしれませんね。
伝統的とされる沖縄女性の髪型は、民謡歌手が今でもやっています。人気のネーネーズに登場してもらいましょう。
長い髪をまとめてくるくると巻いて、ほぼ頂上の部分にポンと乗せたヘアスタイル。こういう髪型にすることを沖縄では「カンプーを結う」と言います。最近はやりの琉装による結婚式でも、花嫁さんはカンプーを結って登場します。
もっとも、これをやるには、かなり長い髪が必要です。実際、ほどいた時に腰のあたりまで長さがないと、うまくカンプーが結えない、と聞きました。
現代の沖縄女性は、腰までの長い髪の持ち主はむしろ少ないので、カンプーを結う人の多くは、人工の髪を自髪の先につけてから結い上げるのだそうです。
さて、次にこの写真。カンプーと似ていますが、沖縄ではありません。
これ、ラオス北部の中国国境に近いところに住む少数民族の女性です。長い髪をまとめてくるくると巻き、頂上付近にポン、というあたり、沖縄のカンプーそっくり。
沖縄ではジーファーと呼ばれるかんざしを差して髪を止めるのですが、こちらも、銀の丸い飾りのついた何かで髪を止めているのが分かります。
ラオス北部の少数民族と沖縄に直接の接点があるとは思えません。腰まであるような長い髪をまとめようとすると似たようなやり方になる、ということなのかもしれませんね。
2013年03月17日
南向き地図、時々売れてます
ももと庵に来られるお客様の中には、食事の後、おみやげに肉みそを買う方が結構いらっしゃいますが、昨日、岡山から来られたご家族連れは、万鐘オリジナルの南向き地図「アジアの世紀」を買って行かれました。「地図好きなんです!」。そうおっしゃっていました。
この地図、正直なところ、それほど売れるわけではありません。「なんだろう、これ」「なんだかよく分からない」―。やはり「ピンと来ない」というのが一番大きいと思います。
ただ、自宅などに貼ってしばらく見慣れた方からは、「面白い」「アジアが、これまでと全然違って見えてくる」とよく言われます。
「そうでしょ、そうでしょ、そうなんですよお」。作った側からすると、思わずヒザを打ちたくなる嬉しい反応です。
この地図、万鐘の創業10周年記念で制作したオリジナルです。
沖縄は日本の南の玄関。玄関が一番下だと、そのさらに下にはなかなか目が向きません。
一方、時代は確実にアジアの世紀であることを告げています。中国13億、東南アジア6億、さらにそのすぐ西には17億人を擁するインド亜大陸が控えています。
琉球王国時代の14世紀。アジア貿易の船が、南に向けて、那覇の港を出発していました。飛行機でも船でもそうですが、北が上、ということはありません。向かう先が前、です。南向きの地図を見ていると、向かう先が上になるので、船や飛行機が南に向かって進む感じがとってもよく分かるんです。
手作りで都市の位置などに甘さがあるため、あくまで観賞用の地図として眺めていただければ、と思いますが、これまでと全く違ったアジア像をイメージすることができます。オススメですよ。ネットショップでも販売しています。
この地図、正直なところ、それほど売れるわけではありません。「なんだろう、これ」「なんだかよく分からない」―。やはり「ピンと来ない」というのが一番大きいと思います。
ただ、自宅などに貼ってしばらく見慣れた方からは、「面白い」「アジアが、これまでと全然違って見えてくる」とよく言われます。
「そうでしょ、そうでしょ、そうなんですよお」。作った側からすると、思わずヒザを打ちたくなる嬉しい反応です。
この地図、万鐘の創業10周年記念で制作したオリジナルです。
沖縄は日本の南の玄関。玄関が一番下だと、そのさらに下にはなかなか目が向きません。
一方、時代は確実にアジアの世紀であることを告げています。中国13億、東南アジア6億、さらにそのすぐ西には17億人を擁するインド亜大陸が控えています。
琉球王国時代の14世紀。アジア貿易の船が、南に向けて、那覇の港を出発していました。飛行機でも船でもそうですが、北が上、ということはありません。向かう先が前、です。南向きの地図を見ていると、向かう先が上になるので、船や飛行機が南に向かって進む感じがとってもよく分かるんです。
手作りで都市の位置などに甘さがあるため、あくまで観賞用の地図として眺めていただければ、と思いますが、これまでと全く違ったアジア像をイメージすることができます。オススメですよ。ネットショップでも販売しています。
2012年11月03日
勝連城跡から超高級の染付が
前回は、勝連城の正門だった南風原御門側からの上がり方を紹介しました。今度は勝連城の歴史のナゾに少しだけ分け入ってみることにしましょう。
勝連城跡からは、いろいろなものが出土しています。中でもすごいのは、中国の元(げん)の時代の染付(そめつけ)の破片が出たこと。
「な、なにいっ! ゲ、ゲンのソメツケっ!」 その道の方なら驚きのあまり卒倒するくらいのシロモノなのだそうです。
卒倒する前に、染付について少々。染付というのは、鮮やかな紺色の絵が描かれている白い磁器のこと。写真のように、私たちがふだん使っている食器にもたくさんあります。
勝連城跡から出た染付は、こうしたふだん使いの食器とは、ちょっと、いや、だいぶ違います。
勝連城跡から出た染付は、染付という絵付けの技法が始まったとされる中国の元の時代のものなんです。「チンギスハン」「元寇」の元ですね。13世紀から14世紀に中国を支配しました。
元時代の染付は、たんに染付の始まりだからということで珍重されているわけではありません。その後の時代の染付と比べても、精巧で絢爛豪華な模様の大型作品が多く、最高級品としてアジア各地や、遠くイスラム文化圏に輸出されていました。
東京にある戸栗美術館が収蔵品の写真をホームページに載せています。このページの「2.中国陶磁」の「元時代」を開けてみて下さい。この皿の模様のスゴいこと。
この美術館のブログに同じ皿の写真が載っています。模様がよく見えるこちらの写真を拝借しました。素人目にも、まったくため息が出るほどの精巧さです。
元の染付には、海中の魚の絵が描かれた大型の壺など、日本の重要文化財に指定されている作品もあります。
最高級品である元の染付。日本で出土するのは、沖縄のグスク跡からが多く、中でも勝連城跡が圧倒的ということらしいんです。ということは?!?! ?!?!?!
続きは次回に。
勝連城跡からは、いろいろなものが出土しています。中でもすごいのは、中国の元(げん)の時代の染付(そめつけ)の破片が出たこと。
「な、なにいっ! ゲ、ゲンのソメツケっ!」 その道の方なら驚きのあまり卒倒するくらいのシロモノなのだそうです。
卒倒する前に、染付について少々。染付というのは、鮮やかな紺色の絵が描かれている白い磁器のこと。写真のように、私たちがふだん使っている食器にもたくさんあります。
勝連城跡から出た染付は、こうしたふだん使いの食器とは、ちょっと、いや、だいぶ違います。
勝連城跡から出た染付は、染付という絵付けの技法が始まったとされる中国の元の時代のものなんです。「チンギスハン」「元寇」の元ですね。13世紀から14世紀に中国を支配しました。
元時代の染付は、たんに染付の始まりだからということで珍重されているわけではありません。その後の時代の染付と比べても、精巧で絢爛豪華な模様の大型作品が多く、最高級品としてアジア各地や、遠くイスラム文化圏に輸出されていました。
東京にある戸栗美術館が収蔵品の写真をホームページに載せています。このページの「2.中国陶磁」の「元時代」を開けてみて下さい。この皿の模様のスゴいこと。
この美術館のブログに同じ皿の写真が載っています。模様がよく見えるこちらの写真を拝借しました。素人目にも、まったくため息が出るほどの精巧さです。
元の染付には、海中の魚の絵が描かれた大型の壺など、日本の重要文化財に指定されている作品もあります。
最高級品である元の染付。日本で出土するのは、沖縄のグスク跡からが多く、中でも勝連城跡が圧倒的ということらしいんです。ということは?!?! ?!?!?!
続きは次回に。
2011年05月08日
南が上の「アジアが見える地図」近日発売
[お知らせ シリーズ「沖縄を創る人」の更新をさらに1週間延期し、今回は、万鐘オリジナルの南北逆さ地図「アジアの世紀」を紹介します]
理由はよく分からないが、人の目の動きは、上から下に向かうよりも下から上に向かう方が自然、ということなのかもしれない。
写真は、アジアを南北逆さにした万鐘オリジナル地図「アジアの世紀」。見慣れた地図と上下が反対なので最初は戸惑うが、しばらく我慢してながめていると、普通の地図を見る時とは全く違う感覚が得られる。アジア各国がくっきりと存在感を示し、なんとも身近に感じられるのだ。
北が上のアジア地図だと、中国南部から東南アジアにかけての一帯は、視野の左下の方に来る。下の方には細かい神経が届かないからなのか、「いくつかの国がごちゃごちゃある」というイメージになりがち。だから、現地に行ったことのある人を別にすれば、アジア各国の位置や都市名について、案外知らない人が多いのではないだろうか。
南北をひょいと逆さにして、南を上にもってくるだけなのだが、これだけでまるで違うアジア像が浮かび上がるから不思議。最初は見慣れないため違和感が強いが、しばらく見ていると、アジア諸国や各都市が、ひとつひとつ目に入ってくる。
シンガポールって、思ってたより遠い。これがマラッカ海峡か。ミャンマーが意外に大きい。四川省はだいぶ内陸。バングラデシュより東にもインド領があったとは。お茶のアッサムがそこにあるぞー。
次々に発見がある。「アジアが見える」感があって、たまらない。
考えてみれば、地球は丸く、人がその表面を移動する時には「上」も「下」もない。南北逆さ地図で、例えば、琉球王国時代の貿易船の進路をイメージしてみれば、それが実感できる。下の拡大図を下からスクロールしながら、次のルートをたどってみてほしい。
沖縄から出発し、弧を描くようにして台湾の南を経て、中国福建省にたどりつく。さらに大陸の海岸線に沿って南シナ海をベトナム方面に向けて航行する。
その先でタイに行くこともできるし、マレー半島からスマトラ、ジャワを目指すこともできる。
この南進ルート、北が上の地図よりも、逆さ地図の方がずっとラクにたどれる。まるで船に乗って進んでいるような感覚ー。
万鐘本店はかつて、グーグルアースを使って、南北逆さ地図を実験したことがある。その時、多くの読者から「そういう地図はないですか」という問い合わせをいただいた。あれから5年余り。ようやく、オリジナルの南北逆さ地図が完成の運びになった。
全体像は最初の写真の通り。左下に日本本土、その上部に沖縄、その右上方に中国大陸と南シナ海、東南アジア各国が広がる。さらにその右側にはバングラデシュ、インドの半分くらいとスリランカまでが入っている。
アジアは、多くの人口が集中し、高い経済成長を続ける、21世紀の地球の中心舞台。アジアの東端に位置する日本にとって最も重要な地域であることは言うまでもない。アジアへのゲートウェイに位置するわが沖縄にしてみれば、なおさら。
南北逆さ地図「アジアの世紀」は、各国とも国境線と主要都市が入っている。高低差や河川、道路は含まれていない。都市は、人口規模を基本にした。50万人以上の都市の多くが含まれ、30万程度の都市も一部入っている。ただし、クアラルンプールやジャカルタ、東京など、一部の大都市圏は、至近距離に複数の大都市がひしめいているため、周辺都市名の一部はスペースの関係で割愛せざるをえなかった。中国とインドは広大で、都市だけでは位置がよく分からないため、省や州の境界と省州名も入れた。
サイズはB2変形判。発売開始は5月下旬の予定。販売は、この万鐘本店ではなく、物販専門の万鐘YH店になります。発売開始はこの本店でも左側の欄でお知らせします。どうぞお楽しみに。
理由はよく分からないが、人の目の動きは、上から下に向かうよりも下から上に向かう方が自然、ということなのかもしれない。
写真は、アジアを南北逆さにした万鐘オリジナル地図「アジアの世紀」。見慣れた地図と上下が反対なので最初は戸惑うが、しばらく我慢してながめていると、普通の地図を見る時とは全く違う感覚が得られる。アジア各国がくっきりと存在感を示し、なんとも身近に感じられるのだ。
北が上のアジア地図だと、中国南部から東南アジアにかけての一帯は、視野の左下の方に来る。下の方には細かい神経が届かないからなのか、「いくつかの国がごちゃごちゃある」というイメージになりがち。だから、現地に行ったことのある人を別にすれば、アジア各国の位置や都市名について、案外知らない人が多いのではないだろうか。
南北をひょいと逆さにして、南を上にもってくるだけなのだが、これだけでまるで違うアジア像が浮かび上がるから不思議。最初は見慣れないため違和感が強いが、しばらく見ていると、アジア諸国や各都市が、ひとつひとつ目に入ってくる。
シンガポールって、思ってたより遠い。これがマラッカ海峡か。ミャンマーが意外に大きい。四川省はだいぶ内陸。バングラデシュより東にもインド領があったとは。お茶のアッサムがそこにあるぞー。
次々に発見がある。「アジアが見える」感があって、たまらない。
考えてみれば、地球は丸く、人がその表面を移動する時には「上」も「下」もない。南北逆さ地図で、例えば、琉球王国時代の貿易船の進路をイメージしてみれば、それが実感できる。下の拡大図を下からスクロールしながら、次のルートをたどってみてほしい。
沖縄から出発し、弧を描くようにして台湾の南を経て、中国福建省にたどりつく。さらに大陸の海岸線に沿って南シナ海をベトナム方面に向けて航行する。
その先でタイに行くこともできるし、マレー半島からスマトラ、ジャワを目指すこともできる。
この南進ルート、北が上の地図よりも、逆さ地図の方がずっとラクにたどれる。まるで船に乗って進んでいるような感覚ー。
万鐘本店はかつて、グーグルアースを使って、南北逆さ地図を実験したことがある。その時、多くの読者から「そういう地図はないですか」という問い合わせをいただいた。あれから5年余り。ようやく、オリジナルの南北逆さ地図が完成の運びになった。
全体像は最初の写真の通り。左下に日本本土、その上部に沖縄、その右上方に中国大陸と南シナ海、東南アジア各国が広がる。さらにその右側にはバングラデシュ、インドの半分くらいとスリランカまでが入っている。
アジアは、多くの人口が集中し、高い経済成長を続ける、21世紀の地球の中心舞台。アジアの東端に位置する日本にとって最も重要な地域であることは言うまでもない。アジアへのゲートウェイに位置するわが沖縄にしてみれば、なおさら。
南北逆さ地図「アジアの世紀」は、各国とも国境線と主要都市が入っている。高低差や河川、道路は含まれていない。都市は、人口規模を基本にした。50万人以上の都市の多くが含まれ、30万程度の都市も一部入っている。ただし、クアラルンプールやジャカルタ、東京など、一部の大都市圏は、至近距離に複数の大都市がひしめいているため、周辺都市名の一部はスペースの関係で割愛せざるをえなかった。中国とインドは広大で、都市だけでは位置がよく分からないため、省や州の境界と省州名も入れた。
サイズはB2変形判。発売開始は5月下旬の予定。販売は、この万鐘本店ではなく、物販専門の万鐘YH店になります。発売開始はこの本店でも左側の欄でお知らせします。どうぞお楽しみに。
2008年02月06日
[第39話 食] キラキラ光る中国家庭料理の店
「勢いのある飲食店」とはこういう店なんだな、と思わせる那覇の中華料理店「燕郷房 中国家常菜」。読み方は、やんきょうふぁん。料理も、店の雰囲気も、キラキラと光っている。
掲げる旗印は、広東料理でも四川料理でもなく、中国家庭料理。だからおこげ料理から、おなじみの麻婆豆腐、回鍋肉まで、ざまざまな味が楽しめる。
まずは、いためものを3種、紹介しよう。ホタテと季節野菜の塩いため、鶏・ネギ・カシューナッツの塩いため、牛肉セロリのブラックビーンズいため。いずれも、複数の素材と調味料が上手に組み合わされていて、思わず箸がのびてしまう。
ブラックビーンズは豆鼓(ドウチ)のこと。深く発酵した豆味噌のようなもので、うまみの固まり。日本の大徳寺納豆に似た調味料。皿に残った豆鼓のソースをごはんに乗せて食べると、実にうまい。
さてさて、次のおこげが絶品だ。海鮮野菜あんもおいしいが、おこげ自体の作り方が非常に巧み。ヘンに歯に障ることなく、最初から最後までサクサクと軽い。あんと一緒に口の中で心地よくほどけていく。
チャーハンは、じゃこ青ネギチャーハンにした。青ネギが信じられないくらいたっぷり入っていて、香りの基調を作っている。
麺は、アサリ青ネギやきそば。ニンニクの香りをじっくり引き出したところにアサリの強いうまみが加わる。そのスープの味をしみ込ませたタイプのやきそばだ。これも青ネギがたっぷり。
ホールスタッフの動きがいい。ときどき客席に声をかけて客とやりとりするのだが、そのタイミングが心地よい。やりとりの内容も浅すぎず、深すぎず。忙しそうにしているが、出す料理についてのちょっとした質問には、足を止めて、ていねいに答えてくれる。総じて、適当にかまってもらって嬉しく、勝手にのびのびさせてもらって楽しい店、という感じだろうか。
男同士の飲み会はもちろん、女性グループでもいいし、家族連れにも向いている。内装は、造りすぎという感じもしないではないが、この手が好きな人には楽しいだろう。
モノレール美栄橋駅近くで繁盛していたが、手狭だったので拡張移転したばかり。拡張すると味が落ちる店もあるようだが、この店についてはその心配はなさそうだ。現在の店は、同じモノレールの旭橋駅が近い。
那覇市泉崎1-11-3、098-862-0011。年中無休。ランチの営業はない。1品1000円前後。1人3000円分も食べれば、普通の人はおなか一杯になる(酒代を含まない)。
掲げる旗印は、広東料理でも四川料理でもなく、中国家庭料理。だからおこげ料理から、おなじみの麻婆豆腐、回鍋肉まで、ざまざまな味が楽しめる。
まずは、いためものを3種、紹介しよう。ホタテと季節野菜の塩いため、鶏・ネギ・カシューナッツの塩いため、牛肉セロリのブラックビーンズいため。いずれも、複数の素材と調味料が上手に組み合わされていて、思わず箸がのびてしまう。
ブラックビーンズは豆鼓(ドウチ)のこと。深く発酵した豆味噌のようなもので、うまみの固まり。日本の大徳寺納豆に似た調味料。皿に残った豆鼓のソースをごはんに乗せて食べると、実にうまい。
さてさて、次のおこげが絶品だ。海鮮野菜あんもおいしいが、おこげ自体の作り方が非常に巧み。ヘンに歯に障ることなく、最初から最後までサクサクと軽い。あんと一緒に口の中で心地よくほどけていく。
チャーハンは、じゃこ青ネギチャーハンにした。青ネギが信じられないくらいたっぷり入っていて、香りの基調を作っている。
麺は、アサリ青ネギやきそば。ニンニクの香りをじっくり引き出したところにアサリの強いうまみが加わる。そのスープの味をしみ込ませたタイプのやきそばだ。これも青ネギがたっぷり。
ホールスタッフの動きがいい。ときどき客席に声をかけて客とやりとりするのだが、そのタイミングが心地よい。やりとりの内容も浅すぎず、深すぎず。忙しそうにしているが、出す料理についてのちょっとした質問には、足を止めて、ていねいに答えてくれる。総じて、適当にかまってもらって嬉しく、勝手にのびのびさせてもらって楽しい店、という感じだろうか。
男同士の飲み会はもちろん、女性グループでもいいし、家族連れにも向いている。内装は、造りすぎという感じもしないではないが、この手が好きな人には楽しいだろう。
モノレール美栄橋駅近くで繁盛していたが、手狭だったので拡張移転したばかり。拡張すると味が落ちる店もあるようだが、この店についてはその心配はなさそうだ。現在の店は、同じモノレールの旭橋駅が近い。
那覇市泉崎1-11-3、098-862-0011。年中無休。ランチの営業はない。1品1000円前後。1人3000円分も食べれば、普通の人はおなか一杯になる(酒代を含まない)。
2008年01月19日
[第36話 食、南] シトギ文化の一翼担うムーチー
旧暦12月8日はムーチー。ことしの新暦では1月15日にあたる。この日は、家庭でサンニン(月桃)の葉に包んで蒸したムーチーを作って食べるならわしだ。
サンニンの葉には殺菌成分が豊富に含まれている。ムーチー作りの時は、家の消毒を兼ねているんじゃないかと思うくらい、サンニンの強い香りが部屋じゅうに漂う。
ムーチーに漢字をあてる時は「鬼餅」と書く。鬼餅の由来として、鬼になった兄を妹が退治するというすごい民話があるが、そのお話は他のサイトに詳しいので、そちらに譲る。「鬼餅」「ムーチー」で検索すると、たくさん出てくる。
ムーチーは和語の「モチ」に当たるが、本土のモチと沖縄のムーチーには決定的な違いがある。それは本土のモチが、蒸したモチ米を臼と杵でつき上げるのに対し、沖縄のムーチーは、生のモチ米粉に水や砂糖を加えて形を整え、最後に蒸して加熱するという点だ。
ムーチーのように、米粉に水を加えて練ったものをシトギと呼ぶ。もともとは水に浸して柔らかくした生のモチ米を臼でひき、ペースト状にしたものを指した。シトギを加熱すれば、出来上がりはモチのようになるが、歯ごたえは、ついたモチの方が強い。
シトギは、米粉加工品なので、いろいろと姿を変えて展開していく。名著『栽培植物と農耕の起源』『料理の起源』で知られる中尾佐助は、シトギの展開を一つの文化圏と読み解いている。例えば、中国・台湾で米粉から作られる「ビーフン」、フィリピンの米粉蒸しパン「プト」、スリランカの米粉薄焼き「アッパ(ホッパー)」などは、すべてシトギから作られ、一つの文化圏を形成している、というわけだ。
シトギにほかならないムーチーも、こうしたアジアのシトギ文化の一翼を担っているといえそうだ。沖縄にはムーチーをはじめ、小豆を乗せたフチャギや味噌入りのナントゥーといったモチ類があるが、いずれもシトギ。ついたモチは見られない。
日本本土でも加熱しない生シトギが各地で神事に使われてきており、中国南部に発するとみられるシトギ文化の、いわば北限に位置づけられるらしい。
さて、ムーチーの作り方はいたってシンプル。用意するものは、モチ米粉(白玉粉)、水、サンニンの葉。味付け用に、砂糖、黒砂糖、紅芋粉など、好きなものを適宜用意する。
粉と水に砂糖類をよく混ぜ、耳たぶくらいの固さにする。生シトギの状態だ。ピンポン玉2つくらいの分量をとり、楕円形にして、サンニンの葉の中央に乗せる。サンニンの葉を三つ折りにして、真ん中をワラかヒモでゆわえ、葉が開かないようにして、20分ほど蒸せば出来上がり。
子供たちは自分の歳の数だけムーチーをぶら下げておいて、毎日少しずつ食べていく。初めにも書いたように、サンニンの葉には殺菌作用があるので、冬でも15度を切ることが珍しい沖縄でさえ、そのまま置いておいても、1週間くらいはカビが生えない。
サンニンの葉には殺菌成分が豊富に含まれている。ムーチー作りの時は、家の消毒を兼ねているんじゃないかと思うくらい、サンニンの強い香りが部屋じゅうに漂う。
ムーチーに漢字をあてる時は「鬼餅」と書く。鬼餅の由来として、鬼になった兄を妹が退治するというすごい民話があるが、そのお話は他のサイトに詳しいので、そちらに譲る。「鬼餅」「ムーチー」で検索すると、たくさん出てくる。
ムーチーは和語の「モチ」に当たるが、本土のモチと沖縄のムーチーには決定的な違いがある。それは本土のモチが、蒸したモチ米を臼と杵でつき上げるのに対し、沖縄のムーチーは、生のモチ米粉に水や砂糖を加えて形を整え、最後に蒸して加熱するという点だ。
ムーチーのように、米粉に水を加えて練ったものをシトギと呼ぶ。もともとは水に浸して柔らかくした生のモチ米を臼でひき、ペースト状にしたものを指した。シトギを加熱すれば、出来上がりはモチのようになるが、歯ごたえは、ついたモチの方が強い。
シトギは、米粉加工品なので、いろいろと姿を変えて展開していく。名著『栽培植物と農耕の起源』『料理の起源』で知られる中尾佐助は、シトギの展開を一つの文化圏と読み解いている。例えば、中国・台湾で米粉から作られる「ビーフン」、フィリピンの米粉蒸しパン「プト」、スリランカの米粉薄焼き「アッパ(ホッパー)」などは、すべてシトギから作られ、一つの文化圏を形成している、というわけだ。
シトギにほかならないムーチーも、こうしたアジアのシトギ文化の一翼を担っているといえそうだ。沖縄にはムーチーをはじめ、小豆を乗せたフチャギや味噌入りのナントゥーといったモチ類があるが、いずれもシトギ。ついたモチは見られない。
日本本土でも加熱しない生シトギが各地で神事に使われてきており、中国南部に発するとみられるシトギ文化の、いわば北限に位置づけられるらしい。
さて、ムーチーの作り方はいたってシンプル。用意するものは、モチ米粉(白玉粉)、水、サンニンの葉。味付け用に、砂糖、黒砂糖、紅芋粉など、好きなものを適宜用意する。
粉と水に砂糖類をよく混ぜ、耳たぶくらいの固さにする。生シトギの状態だ。ピンポン玉2つくらいの分量をとり、楕円形にして、サンニンの葉の中央に乗せる。サンニンの葉を三つ折りにして、真ん中をワラかヒモでゆわえ、葉が開かないようにして、20分ほど蒸せば出来上がり。
子供たちは自分の歳の数だけムーチーをぶら下げておいて、毎日少しずつ食べていく。初めにも書いたように、サンニンの葉には殺菌作用があるので、冬でも15度を切ることが珍しい沖縄でさえ、そのまま置いておいても、1週間くらいはカビが生えない。