刺身

2009年11月01日

[第141話 食] 深い深ーいシャコガイの味わい

 濃厚な貝の味が好き、という人に、万鐘が絶対の自信をもってお勧めするのがシャコガイ。これからの涼しい季節が旬で、それはそれは深い味わいに、会話がしばし止まってしまう。シャコガイを目的に沖縄への旅を企画する人もいるほど。

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 シャコガイは、南太平洋やインド洋など、熱帯、亜熱帯のの珊瑚礁に生息している二枚貝。沖縄ではほぼ全域にいる。殻の合わせ目の部分が波の形をしている。

 最も大きいオオジャコは直径が2mを超すものもあり、世界最大の二枚貝。沖縄近海にはもういないが、昔はいたらしく、今でも貝殻が上がることがある。

 そのオオジャコには、人食い貝の異名が。実際に人が食べられたという情報はないようで、あくまで想像上の話。とはいえ、シャコガイに限らず、貝のはさむ力はとても強いから、大きさが2mもある貝に本当に人がはさまったらさぞかしひどいことになるだろうなあ、とつい想像してしまう。

 すっかり物騒な話になったが、食用にするものは、オオジャコよりもずっとずっと小さいサイズのもの。特に、てのひらに乗るサイズのヒメジャコが味がよいとされる。

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 ヒメジャコは、成長するにしたがって岩の中に徐々に潜り込んで大きくなっていく。最終的には、貝殻はすべて岩の中に埋まった形で、殻の合わせ目だけが岩の上部で少し開いた状態になる。

 潜り込むのは、岩の上に大木が育つのと似た仕組み。木が根から酸を出しながら岩を少しずつ溶かしては養分を吸収して育つように、ヒメジャコも自分で岩を溶かす物質を少しずつ分泌しては岩に潜っていく。

 岩に潜っているヒメジャコを獲るには、コツがある。合わせ目の両端の部分の岩をハンマーで砕き、そこにバールのようなものを突っ込んで、テコをきかせて貝を岩から取り出すのだ。シャコガイを専門に獲るウミンチュ(漁師)がいる。

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 乱獲による減少が心配されており、各漁協は禁漁期間を設けて生産管理を実施している。それでも追いつかないので、今は稚貝を育てて海に戻す養殖が、沖縄県水産海洋研究センターなどによって推進されている。

 シャコガイは比較的短時間のうちに味が落ちるので、収穫したてを素早く食べる方がいい。冒頭の写真と下の写真は万鐘本店第63話で紹介した和食のあらやで出てきたシャコガイ。わさびはもちろんいけるが、シークワサーなどのかんきつをかけて食べるのもお勧め。

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 貝柱はさっぱりしているが、身の味はひたすら深い。赤貝やミルガイなどより、ずーっと深い。東京からのお客さんに出したら、「んー、これは・・・・」と言ったまま、黙り込んでしまった。貝の好きな人にはこたえられない味だろう。泡盛によく合う。寿司ネタとしても最高。

 シャコガイを買いたい場合は、那覇・泊の「泊いゆまち」に行けば、だいたいどこかの店にある。貝の取り扱いに慣れていない人は、身のはずし方をお店で教えてもらおう。居酒屋や割烹などは、ある日とない日があるので、事前に電話で確認を。

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2009年01月13日

[第96話 食、農] セーイカ漁、ピークへ

 前回に続き、海の幸の話題を。ことしのセーイカの水揚げがいよいよ増えてきた。あの、ねっとりしたうま味の固まりは、数ある沖縄の冬の味覚の中でもかなり上位にランクされるだろう。

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 セーイカは沖縄の言い方で、標準語はソデイカ。体長は1メートル前後、10kgほどになる巨大なイカだ。沖縄で水揚げされる水産物のトップはマグロ類だが、その次がこのセーイカ。その9割は本土に出荷され、料亭などに回るという。既に沖縄の特産品といってよい。写真は糸満市のキンシロ鮮魚。

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 「セーイカは昔から獲ってはいたんですが、今のように本格的な漁が始まったのは10年ほど前のことなんですよ」と話すのは沖縄市漁協の池田博組合長。

 池田さんの話では、セーイカはそれまでも獲られていたが、北陸地方の漁法が沖縄に伝えられ、漁が本格化し、漁獲量が急速に増えていった。セーイカはその北陸など本土各地でも上がるが、サイズが沖縄の海で上がるものよりだいぶ小さいという。セーイカがどこで育ってどこに移動していくのか、そうした生態はまだナゾの部分が多いとのこと。

 セーイカは水深450m前後の海に生息している。釣る際には疑似餌でおびきよせる。いったん食いついたら自動リールで上げればいい。格闘したり、餌だけもっていかれるようなことはあまりなく、比較的手堅い漁だという。ただ、沖縄本島から70―80km離れた海での漁になるので、一度漁に出たら1週間くらいは出っぱなし。その間に海が荒れると大変だ。12月、1月は大東島近海で釣っている船が多い。

 釣り上げたセーイカは船上で頭と足、いわゆるゲソの部分をはずして氷詰めにして鮮度を保つ。ゲソはゲソで商品になるが、本体ほどの価格にはならないので、本体とは別の袋に分けて保存する。

 その本体部分は仲卸業者の手で解体される。糸満市のキンシロ鮮魚で、解体作業を見た。厚い身を手際よく切り、皮をていねいにむいて、いわゆるサクの状態にしていく。身の厚さは3cm前後だが、中には4cm近いものも。「水揚げは1月末から2月頃がピークです」と作業していた比嘉靖さんが解説してくれた。

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 セーイカの食べ方は、やはり刺身で。生姜醤油をつけて食す。あまり厚く切るよりは、3mmほどの厚さに切った方が口当たりがよい。口の中をイカ味でいっぱいにしたい向きは、2、3枚まとめて口に入れるとよい。歯にまとわりつくようなねっとり感の中からうまみが立ち上がり、それが口いっぱいに広がっていく。加熱する料理もあるが、加熱すればねっとり感はどうしても失われる。

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 冷凍してもほとんど味は落ちないので、サクのまま冷凍保存しておくと重宝する。冬場はどこの鮮魚店やスーパーでも置いているが、那覇漁港の泊いゆまちや、沖縄市漁協隣の直営店パヤオなどに行けば、サク状にカットされたものが冷凍でストックされている。1本が4、5人分で600―700円といったところ。

 泊いゆまちは那覇市港1-1、098-868-1096。パヤオは沖縄市泡瀬1-11-34、098-938-5811。

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2007年09月18日

[第14話 食] うまみがじわじわ、ヤギ刺身

 沖縄ではヤギを食べる。が、ヤギ肉がふだんのおかずになることはあまりない。棟上げなどの祝いの際に、自分や知り合いが飼っているヤギを1頭つぶして大勢で食べるというのが昔ながらの食べ方。特別の食べ物なのだ。

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 スーパーの肉売場でも売っていない。少し気軽にヤギを食べようと思えば、ヤギ料理の店に行くしかない。写真は、那覇市東町に店を構えて43年になる「山海」のヤギ刺身。この店は質のよいヤギを出すことで知られる。

 ヤギの肉は、豚肉や鶏肉のように大量に流通しているわけではなく、ヤギ肉専門業者が取り扱っている。いいヤギ肉を出したい店は、この業者とのパイプを大切にして、質のいい肉を仕入れなければならない。「ヤギ料理」の看板を掲げていても、肉汁が出きってしまったような輸入冷凍肉を出す店も多い。

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 ヤギ刺身には、皮のない柔らかい部位(写真上)と皮付きの部位(写真下)の2つが用いられる。ヤギ肉には乳臭いような独特の香りがあるが、皮なしの方はそれがマイルドで食べやすい。生姜をたっぷり入れた酢醤油で食べる。皮つきの部位はヤギの香りがしっかりあって、それがまたいい。噛んでいるとうまみがじわじわ出てくる。泡盛とよく合う。下に敷かれている緑色の葉はフーチバー(ヨモギ)。これには強い香りと苦みがあり、好きな人はヤギといっしょに食べる。

 ヤギは世界中で食べられていて、牛肉や豚肉などと同様に、さまざまな調理法がある。ところが、沖縄のヤギ料理は、なぜか刺身とヤギ汁の2種類しかない。そのヤギ汁も、肉や内臓をぶつ切りにしてコトコト煮ただけの素朴なもの。味つけもしない。店でヤギ汁を頼むと、別皿で塩をもってくる。豚肉料理の調理技術が複雑で多彩なのと対照的だ。

 山海は、いぶし銀のような店。個人の住宅のような造りで、実際、かつては奥の方に学習机が置いてあったりした。ヤギが看板料理だが、店名の通り「山の幸、海の幸」をうたっており、魚のマース煮(塩煮)、ミーバイ汁(ハタの汁)、イカ墨汁、ゴーヤーチャンプルーなどもおいしい。故高円宮もお忍びで通った。


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 那覇市東町19-12、電話098-863-5199。人気のヤギ刺身(1000円)は早い時間に売り切れることがあるので、予約しておいた方が無難。


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