国際貨物

2009年11月29日

[第145話 沖縄] ANAハブ始動(下)スピードと安心感で追撃

 航空貨物の対象は、スピードの必要な小さいもの。生鮮食品、急ぎの書類、医療品、機械のパーツなどが主な荷になる。機械類について、少し具体例を挙げるならば、モデル寿命が短く陳腐化しやすいデジタルカメラのような製品や、海上輸送の温度差や振動がダメージを与えるような精密部品は、海上輸送より航空輸送がが求められることが多い

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 沖縄貨物ハブの発足にともなって、全日空ではAAX型コンテナを導入した。AAX型コンテナは、片方の角が丸くなっていて、飛行機の機体にぴったり納まるようになっている。写真の左側のコンテナの左右の向きを逆に変えると、機体の丸いカーブと同じ形になるのが分かる。

 AAX型コンテナの下半分はカーボン入りの特殊な透明プラスチックが貼られており、中身が見える。「従来の金属製のコンテナより、これの方が強いんですよ」。全日空貨物本部の宍戸隆部長はプラスチックの部分をドンドンと強い力で叩いた。

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 AAX型の利点は、飛行機の狭い空間を有効に活用するというだけでない。世界の先行企業が使っているため、これを使うことで提携業務がスムーズに進むというメリットもある。

 その先行企業。DHL、Fedex、UPSなどが、アジア地区を含む世界規模で、航空貨物事業を展開している。例えばDHLは2004年に香港をハブに。UPSは2008年に深圳をハブにした。Fedexは2009年、米国外では最大規模の基地を広州に作った。

 全日空は、翌日配達のスピード感と確実に届ける安心感の2つを武器に、沖縄ハブの輸送システムで、これら先行企業に挑む。まずは、速度と正確さを厳しく要求する日系企業の荷をターゲットにする方針。全日空は、アジア各地で日本の新聞を販売している海外新聞普及株式会社を既に買収し、このネットワークを駆使して、日系企業を主なターゲットにしたアジア営業を始めている。

 全日空では、沖縄ハブを3年で黒字にする計画。現在、国内旅客部門の売上が7000億円なのに対し、貨物部門は1000億円ほどにとどまっている。これを旅客部門と同じ7000億にまで持って行こうというのが究極の目標だ。

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 この事業は、アジア全体の経済が成長したことが大前提。アジア経済が大きく浮上し、アジア発、あるいはアジア向けの航空貨物が大幅に増えたから実現した。世界的な景気の足踏み状態の中でも活気を失わない華南経済圏を軸に、アジア地域は一段の経済発展が期待されている。

 先行企業を追撃しながら、日系企業に限らないアジア発着のビッグな需要にどれだけ呼応できるかが、中長期の勝負どころと言えそうだ。

 言うまでもないが、全日空沖縄貨物ハブは、地元沖縄にも大きなインパクトをもたらす。200人の貨物ハブスタッフの地元新規採用だけではない。

 例えば、沖縄貨物ハブを前提とした企業立地。小さくてスピードを必要とするアジア向け輸出品を作るメーカーにとっては、原材料や中間部品の調達に問題がなければ、本土よりも沖縄で製造した方がメリットが大きい。沖縄積み込みなら、貨物ハブシステムの利用は片道運賃ですむし、集荷時刻の締切にも余裕が持てるからだ。日本市場向け輸出品を製造しているアジアのメーカーが、貨物ハブによる輸送メリットを考えて沖縄に製造拠点を移す可能性も考えられる。

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 沖縄がさらに努力しないといけないのは、例えば港湾の整備だ。製品は航空貨物で運ぶが原材料は安価な海運を利用するといった企業にとって、船の便が悪ければ、せっかくの沖縄貨物ハブのメリットも半減してしまう。

 全日空沖縄貨物ハブが、沖縄にとって貴重なインフラであることは間違いない。与えられたインフラをどこまで生かせるか。沖縄の企画力と実行力が問われている。

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2009年11月22日

[第144話 沖縄] ANAハブ始動(上)夜中に積み替え翌日配達

 万鐘本店第48話49話でお伝えした全日空の沖縄貨物ハブがいよいよ動き出した。上海、香港、ソウル、台北、バンコク、羽田、成田、関西の8空港から毎日未明に貨物専用機が那覇に飛来。那覇で2、3時間で積み替えし、早朝には再び8都市に向かう。アジアの荷をすべて沖縄ハブに集結させることによって、どの都市からも「翌日配達」を可能にする日本初のスピード航空貨物輸送システムがスタートした。

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 従来は、例えば羽田から上海へ、直接、便を飛ばしていた。しかし、その方式では、荷が少ない時でもガラガラの飛行機を飛ばさざるをえない。コストさえ回収できないこともあった。

 ハブ方式は、アジア各地のすべての航空貨物を沖縄ハブ1カ所に集める仕組み。例えば上海向けの貨物は、香港からもソウルからも羽田からも成田からも来るから、ガラガラリスクはかなり減る。

 新築された那覇空港貨物ターミナル。全日空が使う貨物上屋は、国際貨物を扱うスペースが2万平米、国内貨物を扱う部分が5000平米ある。国内最大級の航空貨物上屋といっていい。もちろん24時間稼働だ。

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 午前1時半を過ぎると、貨物専用機ボーイング767貨物フレイターがアジア各地から次々に到着し、貨物上屋前のエプロンに整列する。45年間耐用で設計された真新しい貨物上屋内は、荷物の積み替え作業でにわかに慌ただしさを増す。沖縄貨物ハブ発足にあたって、全日空は、国際貨物のハンドリング経験を持つスタッフ140人を全国各地から那覇に転勤させた。加えて、新たに200人を沖縄で地元採用した。

 荷物には、那覇に着いてそのまま外国に運ばれる貨物と、日本国内に輸入される貨物に大きく分かれる。そのまま外国に出て行く荷は、コンテナを開いて中身を積み替えするものと、開けずにコンテナごと飛行機を乗り換えるものとがある。前者は上屋内での作業。後者は上屋内に入れず、飛行機間を移動する。日本国内に輸入される荷は、上屋内で通関や検疫の手続きをする。

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 積み替え作業が終われば、午前3時半から5時半くらいまでの間に、飛行機は8つの都市に向けて次々に飛び立つ。夜が明ける頃には、貨物ターミナルは再び静けさを取り戻す。

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 届け先の各都市に向かう飛行機は、午前9時頃までにはアジア各地に到着し、それぞれの国内輸送網に乗って配達される。こうして、日本を含むアジア各地で集荷された荷物の多くが翌日に届けられる。

 この仕組みを実現するには、ハブになる都市が、他のどの都市からも4時間以内の位置にあることが条件。それより遠くなると、翌日配達が難しくなるからだ。華南経済圏や東南アジアが主舞台になるアジアの航空貨物輸送の場合、すべての関係都市から4時間圏に位置するのは、日本では沖縄しかない。

 アジアの最前線に位置する沖縄のこの地理的メリットをこれまで全面的に活用してきたのは米軍だけだった。しかし、急速な経済発展に伴うアジア経済の浮上によって、それが民間の経済活動でも現実に大きなメリットになってきた。

 8都市でスタートしたこの事業だが、全日空は、近い将来、ベトナムやシンガポール、インドなどにもネットワークを広げる計画。「14路線ほどにできればと考えています」と、この事業を担当している全日空貨物本部の宍戸隆部長は話す。配達できる先が増えれば、荷主にとってはさらに魅力が増す。一カ所ですべて必要な買い物ができてしまうワンストップショッピングに近づくからだ。

 第48話と重複するが、沖縄を中心に4時間圏を示したグーグルの地図を掲げておく。日本のほぼ全域と華南経済圏、ベトナムくらいまで入る。そこからさらに南は、4時間では厳しくなるが、羽田あたりからと比べればはるかに近い。

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 後編は11月29日(日)公開予定です。お楽しみに。

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