2008年01月25日

[第37話 食] 屋良敦さんが教える魚のマース煮

 マースは塩。「マース煮」を直訳すると「塩煮」になる。第23話で紹介したような塩焼きではない。煮るのだ。煮魚といえば、醤油やみりんで甘辛く煮たものが本土では多いようだが、沖縄ではこのマース煮がよく作られる。

 甘辛い煮つけだと、味の主役は甘辛の煮汁で、魚の味はうまみとして煮汁の土台になる。が、マース煮の場合は、塩でデフォルメされた魚の香りと味がストレートに迫ってくるので、「魚を食べている」という実感がわく。同じ煮魚でも、甘辛味とはだいぶ違った味わいだ。

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 沖縄が誇る和食の名人、屋良敦さんに、マース煮の作り方を教えてもらった。まず、マース煮にする魚は白身の魚を使う。沖縄ではエーグワー(アイゴ)をよく使う。高級な魚ではないとされているが、面白いことに、マース煮にした時はこのエーグワーがとてもおいしい。固すぎず、柔らかすぎずのエーグワーの白身の食感が、塩で煮た時に引き立つようだ。

 「魚は新鮮なものを使って下さい」と屋良さん。塩だけで煮るので、生臭ければそれがまともに出てしまうからだ。エーグワーは内蔵の苦みが強いので、すべて取り出して、腹の中をよく洗う。臭みが気になる場合は、さっと熱湯にくぐらせ、いわゆる霜降りにするとよい。

 まず、魚が半分くらいひたる煮汁を作る。ここでは水2カップ、泡盛1カップに塩小さじ1前後を入れた。臭み消しの生姜を加え、煮立てる。魚を入れ、落としぶたをして中火で煮る。濃いめの味にしたければ昆布を敷いてもよいが、昆布なしでも十分おいしい。煮る時間は魚の大きさによるが、長さ25cmぐらいの魚で10分ほど。

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 魚は尾かしらつきが基本で、切り身ではあまりやらない。出来上がったら、塩味の煮汁をつけながら熱いうちに食べる。屋良さんは今回、特別に、魚の周囲にアーサをあしらって、地味な色のエーグワーの皿に彩りを添えてくれた。アーサは色だけでなく、その海の香りがマース煮を引き立てる。煮汁のうまみを味わうのにも、アーサがあると具合がいい。

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 酢じめしか食べ方がないコハダのように、エーグワーもマース煮以外にはおいしい食べ方がないのではないかと思わせる。実際、この魚を焼魚や唐揚げにして食べるという話は聞いたことがない。

 マース煮は、高級魚ミーバイ(ハタ)でももちろんおいしい。ビタロー、アカマチなどでもいける。マース煮を経験したことのない人は、塩だけで煮るなんて、と思うかもしれないが、目からウロコのおいしさであること請け合い。一度お試しを。

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2007年08月28日

[第9話 沖縄] 宮城島の絶壁で作るぬちまーす

 沖縄はもはや「塩の産地」といっていいほど、数多くの銘柄塩が生産されている。その中でも1kg4000円の価格で他を大きく引き離しているのが「ぬちまーす」だ。

 ぬちまーすは、創業者の高安正勝さんが発明した常温瞬間空中結晶製塩法で海水から作られる。釜で煮詰める方式だと、マンガン、亜鉛、鉄などの微量ミネラル成分が最後まで水の方に残り、塩に取り込むのが難しい。高安さんの方式では約50度の空中に海水を噴霧する。ほぼ瞬間的に水分が蒸発し、できた塩がまるで雪のように床や壁に積もっていく。こうして、微量ミネラルをしっかり含んだ塩ができる、というわけだ。

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 ぬち、とは沖縄語で「いのち」、まーす、は「塩」を意味する。「微量ミネラルを含んだ塩は命の源。高い、と言う人もいるが、それだけの価値のあるものだと思っています」と高安さんは胸を張る。

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 10年前の創業以来、うるま市の一角にビニルハウスを建て、その中の高温を利用して製塩してきたが、このほど、沖縄本島東海岸にある宮城島の絶壁の上に新工場を建設した。付近の海は汚れが少なく、新工場では、足元から原料の海水を汲み上げられる。

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 新工場を高安さんは「ぬちうなー」と命名した。うなー、は「御庭」。いのちをはぐくむ特別の場、だ。高安さんは、工場を一般にも見学してもらえるようにした。製塩室の中には入れないが、内部に降り積もる「海の雪」を窓から見ることができる。

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 ぬちまーすを使った梅干しなどの加工品が買えるショップとレストランも備えた。見学者は、ビデオを見て塩について勉強したり、高安さん自身の話を聞ける日もある。

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 周囲はサトウキビ畑と絶景の青い海がどこまでも広がる。ほかには何もない。強い日差しの下で、まるで時が止まったような島の時空間を感じることができる。

 宮城島は、海中道路と橋で沖縄本島と陸続きになっているので、車で行ける。うるま市中心部から約30分。うるま市与那城宮城2768。098-983-1111。年中無休。工場見学は9:00〜17:30。レストランは11:30〜17:30。

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