塩辛

2011年11月20日

クサうまの親分、魚の塩辛

沖縄とアジアの食 第10回 魚の発酵食品(上)

 今回はアジアの「クサうま味」の話をつづってみたい。まずはこの写真から。

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 ラオスの名物料理、唐辛子の効いた青パパイヤのサラダ「タムマクフーン」。青パパイヤのサラダと言えば、タイ料理の「ソムタム」が有名だが、ラオスや東北タイで食べられているこのタムマクフーンがいわば本家。

 このタムマクフーンには、本家ならではの「こだわり」がある。バンコクや日本のタイ料理店で出てくるソムタムは、魚醤ナンプラーで味付けされているものが多いが、タムマクフーンは、魚の塩辛「パーデーク」を使う。東北タイなら「パーラ」。この魚の塩辛こそ、アジア「クサうま味」の親分のような存在だ。

 パーデークはクサくてうまい。だから、ナンプラー味のすっきりソムタムよりも、パーデークを使うタムマクフーンの方が、味わい複雑で、奥深い。ラオスではもち米を主食に食べるが、タムマクフーンだけで立派にそのおかずになる。

 青パパイヤは酵素パパインの働きで減量効果があると日本でも一時話題になった。不思議なことに、完熟の果物パパイヤになるとこの酵素はぐっと減ってしまうので、減量を期待する向きは青パパイヤを食べなければいけないらしい。

 青パパイヤは沖縄でもよく食べる。万鐘本店でかつて紹介したように、沖縄では火を通してイリチャーで食べる。インドでは煮込み料理によく入れるらしい。東南アジアではタムマクフーンのように生で登場することが多いように思う。

 ラオスの食堂やごはん系屋台では、やや縦長のすり鉢とすりこぎで突き混ぜながら、タムマクフーンをよく作っている。食事時になると、「トントン、トントン」と、青パパイヤを叩く音が聞こえてくる。青パパイヤは繊維が密で固いので、すりこぎで叩きながら、同時に調味料を染み込ませていく。その結果、固い青パパイヤが短時間でしなしなになる。

 次の写真の右下のあたりに、トマト、唐辛子などとともに、茶色のパーデークのとろみを帯びた液が大さじ1杯ほど入れられているのが見える。これに青パパイヤを加えて、トントンと突きながら混ぜていく。

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 ラオスで普通に食べられているタムマクフーンは、かなり辛い。激辛へっちゃらの人以外は、唐辛子をわずかにしてもらうように頼んだ方がいいかもしれない。

 さてさて、味付けに使われている魚の塩辛パーデークが、今回の本題だった。ラオスではどの町にもローカル市場があり、プラスチックの桶に入ったどろどろのパーデークが量り売りされている。

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 魚が発酵して身が溶けた状態。いかにも臭そうに見える。いや、実際、十分クサい。ただ、この臭いには、なんとも言えない懐かしさがある。眠っている記憶が呼び覚まされるような臭い。日本人におなじみの魚の干物やイカの塩辛と同種の香りの強烈バージョンだ。

 その臭いが鼻に抜けた瞬間、うまみが口の中にバーッと広がる。魚の干物や塩辛などが好きな人にはたまらない味のはず。

 ラオスは内陸国なので、川魚を使ってパーデークを作る。魚をよく洗ってぶつ切りにし、塩を混ぜながらかめに漬け込む。塩の量は、魚の1/3くらいというレシピが多い。塩に加えて、どのレシピにもヌカやモミ殻を入れるとある。

 日本ではモミ殻と言えば文字通り殻だけだが、ラオスでは精米の方法が日本と違うため、モミ殻にヌカや小さな砕米が混ざっている。農村ではこれを鶏や豚の餌にする。つまり炭水化物やヌカ栄養が混ざったモミ殻、というものがあるのだ。

 パーデークづくりの現場を見たわけではないが、使われる「モミ殻」もこれではないかと想像する。ヌカにはいろいろな菌がついているので、それがスターターになり、同時に砕米の炭水化物が発酵菌のエネルギー源として使われる、というわけだ。

 漬け込み期間は1年以上。6カ月くらいから食べられるが、長く漬けた方がうまくなるという。

 アジアのクサうま、と言えば、タイの「ガピ」もそうだし、ベトナムの「マムネム」もそう。この手の発酵クサうま食品は、料理に使われるだけでなく、つけダレとして小皿に入ってテーブルにもよく出てくる。複雑な香りと深い味わいをぜひお楽しみいただきたい。

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2010年02月21日

[第157話 食] おいしいスクガラス、はあるのか

 この可愛らしい3尾の魚はスクガラス。島豆腐の上に乗って登場する塩辛の一種だ。ただ、スクガラスを食べて心から感動した、という話はあまり聞かない。本当においしいスクガラス、というのはあるのだろうか。

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 スクガラスは、スクと呼ばれる魚を塩漬けにした塩辛。スクはアミアイゴという和名を持つ魚の幼魚。体調は2、3cm。ちなみに親戚のシモフリアイゴはエーグヮーと呼ばれ、第37話で紹介したように、マース煮にしたら最高においしい。

 さて、このスクガラス。居酒屋では、ハンで押したように島豆腐の上に乗って出てくる。ただ、かなりしょっぱくて、そのためもあってか、うまみはそれほど感じられないものが多い。

 スクの体にある小さな突起が固くて口に障るため、頭の方から尾に向かう形で口に入れるといいのだが、どう食べるにしてもそれで味が変わるわけではない。

 豊見城市にある大城海産物加工所の大城久子社長に話を聞いた。大城海産物加工所は、スクガラスを販売している。

 「おいしいものは、とてもおいしいんですよ」と、大城社長がひと瓶のスクガラスを差し出した。液が濁っていて、白いぶつぶつが出ている。おみやげ屋で見かけるスクガラスのように、透明な汁の中に魚がきれいに並べられているのとはだいぶ違う。

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 だが、一尾をとって口に含んでみて、すぐに分かった。とてもうまい。深ーいうまみがある。

 大城社長の話では、沖縄県内で出回っているスクガラスの多くが、実は海外産。沖縄県内で漁獲量が少ないのと、県産は価格がかなり高くなってしまうためらしい。だが、やはり県産のスクガラスが断然おいしいという。

 この県産スクガラス、食べてみて、確かにうまい。酒盗と呼ばれるかつおの腹ワタの塩辛があるが、それに似た強いうまみ。居酒屋で食べていたスクは一体何だったのだろう、というくらいの大きな違いがある。何がこの違いをもたらすのだろうか。

 スクは本当に小さな幼魚なので、獲れたらすぐに塩をしないと悪くなってしまう。したがって、海外産ならば、そこのウミンチューが塩をすることになる。

 だが、塩をするにはかなりの技術がいる。例えば塩の量。入れ過ぎれば発酵が進まないし、味も塩辛くなりすぎる。混ぜ方も重要。混ぜ方が足りないと塩が均等に行き渡らず、一部が腐敗してしまう。混ぜすぎも、身が傷むからよくない。

 やはり伝統的にスクガラスを仕込み続けてきた沖縄のウミンチューに一日の長があるのかもしれない。

 県産のスクガラスは、漬け汁が濁っているが、これがうまみの元と言ってもいいくらいの存在で、しょっつるやナンプラーのような魚醤にも似た深くて複雑な味わい。確かに、おみやげ店に並ぶスクガラスは、汁がもっと透明だ。一見、きれいなのだが、だから味がない、ということなのかもしれない。「白いつぶは自然のアミノ酸なんですよ」と大城社長。うまいわけだ。

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 このスクガラスなら、島豆腐に限らず、どんなものもおいしくしてくれる。まず試してみたのは、熱いごはん。塩辛が熱いごはんに合うように、スクガラスも熱いごはんに乗せたら、ごはんがすすむこと、すすむこと。こんなにおいしければ、突起もさして気にならない。

 大城社長が教えてくれた一品を、万鐘の厨房で作ってみた。題して、スクガラス入りソーミンチャンプルー。

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 いため油をフライパンの片隅に寄せるようにして、そこにスクガラスを入れ、弱火でゆっくりと揚げるようにいためる。1人分で4、5尾か。きつね色になったら、固めにゆでたそうめんを入れて混ぜる。味をみて、ちょうどよい塩気になるように、スクガラスの漬け汁を少し加えていく。仕上げに、ニラやネギ、シソなどの青味を散らして出来上がり。

 タイ料理で、エビの塩辛を油でいためて香りを立て、かつカドをとる方法があるが、あれと似ている。油の高温で加熱されたスクガラスは実にいい香り。

 そうめんを入れて混ぜると、パリパリになったスクは割れていくので、かわいい姿は消えてしまうが、そうめん全体に最高の味と香りをつけてくれる。油で揚げられることで、問題の突起もパリパリに変化し、口に障ることがなくなる。ソーミンチャンブルーの作り方はこちらを。

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 大城海産物加工所の県産スクガラスは、元の濃さのものと少し薄めたタイプの2種類ある。当然ながら、味が濃い前者が断然お勧め。価格は前者が120g入りびんで700円。味の濃いタイプは同社のHPには掲載されていないので、電話で直接注文を。豊見城市字豊見城130、098-850-1036。

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