天ぷら

2009年12月06日

[第146話 食] 島野菜を和の天ぷらにしてみた

 沖縄の島野菜はどれも個性派。抗酸化力が強くて体にいいが、香りや苦みといったクセが少しある。それがいいという人もいるが、苦手な人も。そんな島野菜を和風うす衣のサクサク天ぷらにしたら、マイルドになって食べやすいのでは―。万鐘の厨房で実験してみた。写真はフーチバー(ヨモギ)の天ぷら。

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 ヒントになったのは、本土の農村で食べられている山菜の天ぷら。山菜の多くも普通の野菜より強い香りや苦みなどがあるが、天ぷらにすると、それが緩和されるようだ。

 今回、沖縄島野菜は、フーチバーとイーチョバーに登場してもらうことにした。

 フーチバーは、ジューシーやヒージャー(ヤギ)汁に入れて食べる。フーチバージューシー(炊き込みごはん)は万鐘本店第127話で那覇のおきなを紹介した。最近は、沖縄そばにフーチバーを入れて出す店が増えてきた。例えば第3話で紹介した沖縄市の美里そばがそうだし、第30話の那覇の若狭パーラーもそうだ。

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 フーチバーは、生でかじったらよく分かるが、独特の鮮烈な香りと、苦みがかなりある。効能については「よもぎ」で検索すると山のように出てくる。

 さて、天ぷら。衣は粘りが出ないように冷たい水で溶いて、少なめにつけた。油の温度は低め。シソの葉を揚げる時の要領で、中低温で揚げていく。1分ほど揚げ、衣の水分が充分に抜けて揚げ音がシュワシュワ音からピチピチ音に変わったら、緑の色があせないうちに引き上げる。

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 天つゆにつけて食べてみた。いける。ヨモギの香りや苦みはもちろん健在だが、なんとも食べやすい感じに変わっている。カリカリサクサクの衣の食感もいいので、これなら子供でも食べられそう。

 次はイーチョバー(フェンネル)。ごらんのように細い葉だ。沖縄ではボロボロジューシー(おじや)にしたり、ヒラヤチーや沖縄式天ぷらに入れたりする。

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 これを揚げる時は、フーチバーの時よりもさらに油の温度を下げないといけない。葉が細いので、油が熱いと衣の水分が抜ける前に葉が茶色になってしまう。

 衣につけると、筆が墨を吸い込むようにたっぷりついてしまうから、よけいな衣を箸でしごき落とす。低温の油に入れると、パッと葉が開く。そのままじっと衣の水分が抜けるまで30-40秒待って、少し火を強めてすぐ引き上げる。あきれるほど繊細な天ぷらの出来上がり。

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 イーチョバーの生葉はフーチバーほど強烈ではないが、独特のさわやかな香りがある。和風天ぷらにすると、これがいい感じに弱まって、いくらでも食べられる。やはり天つゆによく合う。

 フーチバー、イーチョバーのほかに、ハンダマもおいしい。色もきれい。ハンダマの天ぷらは第135話のクルマエビ天丼の中に入っていた。

 島野菜は、第81話で掲載したような沖式の天ぷらにしてももちろんいいが、沖式天ぷらだと衣が厚いため油の高温が島野菜に直接届かず、クセをマイルドにする作用がいくぶん弱くなるようだ。

 島野菜は、スーパーに売ってるものと、売っていないものがある。フーチバー、ハンダマははよく見かけるが、イーチョバーはほとんど見ない。島野菜は、スーパーよりもむしろ、島バナナの第142話で紹介した農家直販市が一番簡単に手に入る。那覇の公設市場周辺でも売られている。真夏よりも、涼しい今の時期がおいしいので、お試しを。

 クセと言えば、既に全国区になった島野菜ゴーヤーのことを忘れてはいけない。季節はずれではあるが、ゴーヤーも天ぷらにすると苦みがマイルドになって食べやすい。夏になったら、ぜひどうぞ。

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2009年02月12日

[第101話 食] 無垢の粉もん カタハランブー

 第81話で紹介した「沖縄の天ぷら=粉もん」説を裏書きする話題を今回はお届けしよう。カタハランブーのお話。

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 那覇や南部を中心に、正月や結納など、さまざまなお祝いの席で食べられるお菓子の一つがカタハランブー。名前を分解すると、カタハラ+ンブーで「片方」が「重い」。写真で見ての通り、片方だけが膨らんでいて重たい。

 小麦粉を水またはダシ汁で溶き、塩味をつけただけのものなので、甘味はない。生地以外は何も入らない無垢の粉もん。薄い部分はパリパリしていて揚げせんべいのよう、厚い部分は、固めのパンのような味わいだ。もぐもぐ噛んでいると口の中でうまみがじわっと立ち上がってくる。油で揚げられた小麦粉生地は、それだけで素朴なおいしさがある。

 このカタハランブー、どうやって作るのか。那覇・牧志の公設市場近くに店を構えて40年以上になる呉屋天ぷら屋で作るところを見た。この店は、幅1mほどの狭い路地に小さな店を構えているが、この世界では有名店。NHKドラマ「ちゅらさん」の結納シーンで使われたカタハランブーもここが納品した。

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 柔らかい生地を、フライヤーの手前の斜面部分の鍋肌から静かに流していく。生地は水分が多くて柔らかいので、そのままタラーっと流れ落ちていき、先頭部分が油の中に入る。そこが油の高温で揚げられ、重い方になる。鍋肌に残った薄い生地には、すくった油を上からかけて火を通す。形が定まったら、鍋肌からはずし、仕上げに全体を油に入れてよく揚げる。

 生地が流れて油の中に入ったとたん、油の圧力と熱で流下のスピードが鈍り、そこでたまった生地が固まる。その結果、「カタハラ」が「ンブー」になる。生地の濃さや油の温度、流す鍋肌の角度によって、出来具合いがずいぶん違ってきそうだ。

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 「これは誰彼でもできるものではないよ」と早口で話すのは、店主の呉屋カヅ子さん。きれいに作るには技術がいる。生地を寝かす時間なども粘りに影響しそうだ。「今は上等のフライヤーがあるから楽になったけど、昔はシンメー鍋でやってたから」と呉屋さん。シンメー鍋は、大量のものを煮炊きするのに使う大鍋。その鍋肌で生地を流したということだろう。シンメー鍋は、第32話「巨大ヤマイモはこうして食べる」の5枚目の写真がそれ。

 呉屋天ぷら屋は、カタハランブー以外にもサーターアンダギーや、同様にお祝いに使う濃いピンク色のマチカジを作る。おやつの定番、魚天ぷらやイモ天ぷらも。とても小さな店だが、実績は堂々たるもので、県内のホテルからも結婚式用に注文が来る。サーターアンダーギーは本土出荷も多いという。

 中年の女性2人連れが呉屋てんぷら屋でイモ天ぷらを買い求め、そのまま店先で食べ始めた。「お昼を食べなかったから。おいしい」と笑顔。寒気の中で、2つに割った揚げたてのイモ天ぷらから湯気がすーっと立ち上る。「カタハランブーは家でもよく作りますよ。お祝いの席に出して、食べる時にはいくつかに切り分けて食べるんです」と解説しながら、「はい」とイモ天を分けてくれた。

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 既にお気づきの読者もいるだろうが、第81話で紹介した奥武島のテルちゃん鮮魚店が作る「海ぶどうと干しえびの天ぷら」の原型は、カタハランブーではないか。あの天ぷらから、海ぶどうと干しえびを取り除けば、まさにカタハランブー。ただし、あちらのは厚い部分がもっと多く、ンブーなのが必ずしもカタハラではないが。

 呉屋天ぷら屋は、那覇市松尾2-11-8、098-868-8782、ほとんど無休。カタハランブーは1つ130円。1つを1人で食べたら、1食分になるボリュームだ。サーターアンダギーは、普通サイズが50円、直径10cm近い特大は150円。

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 場所は、牧志の公設市場の南側にある「松尾二丁目中央市場」の路地の中だが、数ヶ月後に移転する。現在借りている建物の取り壊しに伴う移転で、今の場所の近くだそうだが、呉屋さん自身もまだ正確な移転先がよく分からないらしい。今の場所もかなり分かりにくいが、移転後は、近くで聞きながら探すしかなさそうだ。

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2008年10月15日

[第81話 食、沖縄] 沖縄の天ぷらは粉もんだった

 粉もん、という言葉が関西にある。発音はコナモン。タコ焼きやお好み焼きのような、小麦粉で作る食べ物全般を指す。

 沖縄の粉もんの代表選手は何だろう。万鐘の答は、天ぷら。湯ぶねから出た時に思いついた新説なので、異論も出そうだが、新説が世間で評価されるには35年くらいかかるもの。まずは、天ぷら粉もん説の決定的証拠をごらんにいれよう。

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 この特大天ぷらは、沖縄本島南部の奥武島(おうじま)にあるテルちゃん鮮魚店の「海ぶとう天ぷら」。プチプチした海藻の海ぶどうと干しえびが入っている。すっかりおなじみになったモズク天ぷらの兄弟分といえそうだ。

 海ぶどう天ぷらにしても、モズク天ぷらにしても、材料とコロモが渾然一体となっているかき揚げタイプ。そこで深刻な問題になるのは、材料とコロモ、いったいどちらがメインなのか、ということだ。

 東京の人は言うだろう。天ぷらのコロモがメインでどうする、コロモがメインのかき揚げがあったら、それは「ケチでまずいかき揚げ」に決まっとる、と。

 沖縄は違う。沖縄の天ぷらにおけるコロモのおいしさは、材料のおいしさと同等か、ヘタをするとそれ以上なのだ。

 現にテルちゃん鮮魚店の海ぶどう天ぷらにしても、材料の海ぶどうや干しえびはオマケみたいなもので、圧倒的な存在感を見せるのはコロモ。というより、これはもはやコロモではなく「小麦粉で作られた生地本体」と言うべきだろう。

 揚げたてを食べると、外側はサクサク、カリカリしていて、中もべたついていない。ほんのり海ぶどうと干しえびの香りがするいわば「揚げお好み焼き」。これを粉もんと言わずして何と言う、ということなのである。

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 かき揚げタイプではなく、中心に確固たる材料が置かれている天ぷらにしても、沖縄の天ぷらは、コロモの存在が非常に大きい。魚天ぷらしかり、イカ天ぷらしかり。沖縄の天ぷらはコロモがあまり薄かったらそれらしくない。

 沖縄の天ぷらは、ごはんのおかずではない。したがって、普通の食堂に行っても、天ぷら定食は存在しない。ではいったい何者かと言うと、本来、天ぷらは行事食の定番のごちそうである。豊かな現代では、それが一皮むけて、日常のおやつになっている。厚いコロモにはしっかり味がついているので、そのまま食べておいしい。

 町には、あちこちに持ち帰り用の天ぷら屋があって、魚天ぷら、イカ天ぷらを両巨頭とし、野菜天ぷらやイモ天ぷらなどが脇をしっかり固めて、おやつシーンの中心的位置を占めている。

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 天ぷら屋は、申し合わせたように黄色っぽい店が多い。つまり、天ぷらは、理屈とか、色気とか、風情とか、体面とか、そういうものをすべて取り払った、身もふたもない世界にデンと存在しているのだ。そのためには、コロモの薄い上品っぽい天ぷらではかえっておかしい。やはり沖縄の天ぷらは、粉もんでないといけない。

 ある日、職場で。だれかが「はーい、天ぷら買ってきたよー。アチコーコー」なんて言いながら、油がちょっとしみた紙袋をポンと置いたら―。メタボが気になる中高年も、ウエストを気にする若い女性も、思わずサッと腰を浮かせて、いい香りのする紙袋の前に踊りながら集まってしまう。おやつの中心には粉もんの天ぷらあり、なのである。

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 テルちゃん鮮魚店は南城市玉城奥武島41、098-948-7920。橋を渡って奥武島に入ったらすぐ左折して100mほど行くと右手にある。天ぷらもおいしいが、店名の通り、鮮魚が本業。小さな店構えながら、刺身が最高のアカジンミーバイからタマン、マクブまで、近海で獲れる新鮮な魚を取り揃えている。夏の間は、奥武島名物、トビイカの一夜干しも人気。

  

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