小鉢

2008年06月29日

[第63話 食] 沖縄素材を珠玉の和小鉢に

 沖縄には、沖縄料理以外に、フレンチ、イタリアンはもちろん、中華、インド、タイ、フィリピン、南米各国と、さまざまな料理を出す店がひしめいている。そんな中で和食の店も負けてはいない。今回は沖縄素材を珠玉の小鉢に仕立てる那覇市の割烹あらやをご紹介。

 あらやの料理長は屋良敦(やら・あつし)さん。当万鐘本店第37話で魚のマース煮の作り方の手ほどきをしていただいた和の職人だ。屋良さんの手にかかると、沖縄のさまざまな素材が美しい和の一品になる。いちょうの大きなまな板で屋良さんが手際よく小鉢を作っていく姿をカウンターごしに眺めるのも楽しい。

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 まず、ハンダマの梅酢あえ。沖縄の家庭菜園でよく見かけるハンダマ。表が緑、裏が紫の葉で、紫の色素はアントシアニンが豊富だ。和名はスイゼンジナまたはキンジソウ。これをだしで軽く煮びたしにしたものに梅酢を加え、ミョウガとかつおぶしをのせた。

 ハンダマのシャキシャキした歯ごたえを楽しみながら、梅酢で引き出された赤紫色の美しさを目でも味わう一品。味と香りのアクセント役を務めるミョウガは沖縄県産。ミョウガが沖縄県内で生産され始めたのは比較的最近だが、既にすっかり定着した。


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 鶏肝とセロリのからし味噌あえ。セロリも沖縄県内の各地で作られている。文字通り濃厚な味わいの鶏肝と、強い香りのセロリ。特に沖縄の強い日差しの下で育ったセロリは一段と鮮烈な香りがする。

 この強い2つをつないでまとめきれるのは、圧倒的な強さを持つ味噌くらいのものかもしれない。そこにからしが加わることで、肝や味噌のもたつきがちな味がキュッと引き締められる。

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 一転してさわやか系のジャガイモのそうめん。かつらむきにしたジャガイモを細切りにして軽くゆがき、だしで食す。トッピングのミニトマトは色どりだけでなく、酸味とうまみがだしの味に奥行きを与える。この夜のジャガイモは沖縄県産だった。宜野座村をはじめ、ジャガイモを生産している地域は沖縄県内にもかなりある。

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 最後に常連客に人気のカニしんじょ。カニの身を白身の魚のすり身に混ぜてしんじょを作り、湯葉でつつんだ。カニはガサミなどワタリガニの仲間が多く、こうした県産カニが手に入る時はそれで作る。アクセントはもみじおろし。

 「素材をながめていると、アイデアがいろいろ浮かんできます」と屋良さん。あえたり、ゆがいたり、しんじょのように手をかけて準備したり、と手順はさまざまだが、どれも素材の味と香りを生かすという和のセンスにあふれている。

 小鉢ばかりでなく、刺身、焼き物、煮物、天ぷらといった和食の定番の仕上がり具合も見事。お任せで小鉢を3、4つ楽しんでから、おなかの具合と相談しながら、魚を焼いてもらうもよし、野菜の炊き合わせを味わうもよし。

 料理が盛られる皿や鉢、酒器が面白い。沖縄県内で焼かれている陶器を中心に、作家もので固めている。沖縄伝統の壺屋焼ではなく、ニューウェーブの県内作家の作品が多い。もちろん、和の空間にしっくりはまるものばかり。焼き物好きにとっては、器だけでも十分楽しめるだろう。

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 あらやは那覇市松山1-6-17、電話098-860-9004。営業は18:00―24:00。日曜休み。飲んで食べて1人5000ー6000円くらい。

bansyold at 00:00|PermalinkTrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Clip to Evernote