文藝春秋

2009年04月19日

[第112話 沖縄] ジュンク堂は潜在需要を掘り起こすか

 豊富な品揃えで人気のジュンク堂書店が那覇に出店する。それも東京、札幌、福岡の各店に次ぐ1500坪の売り場面積。その背景には、今は眠っている沖縄の潜在的な書籍需要があるようだ。開店目前の同店を訪ねた。

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 ジュンク堂は全国で38店舗を展開。東京・池袋本店の2000坪を筆頭に、大都市部では、いずれもその地域で1、2を争う売り場面積を確保し、各分野の専門書を含めた豊富な品揃えで顧客を引きつけている。

 ジュンク堂那覇店が入居するのは、那覇の国際通りの中央部にあるむつみ橋から沖映通りを北に入ったビル。かつてダイナハと呼ばれたダイエー那覇店が入っていた建物で、ダイエー撤退後は、長い間、空き状態だった。

 沖縄の人口は138万人、那覇が31万人。人口増加率は全国の中でも高いとはいえ、はたして1500坪の書店を必要とするほどの市場といえるかどうか、ちょっと心配になる。しかも、沖縄の1人あたり書籍購買率は全国で最低クラス。これでは「1500坪」は宙に浮いてしまうのではないか―。

 ジュンク堂那覇店の森本浩平店長にその疑問をぶつけてみたら、興味深いエピソードを披露してくれた。森本さんによると、最低クラスの購買率の中で、例えば岩波書店の本に関しては九州・沖縄で販売数1位。月刊雑誌「文藝春秋」の人口1人当たりの販売数は、都道府県別で堂々全国1位なのだという。

 沖縄が全国で1位とか最下位とかいう項目はたくさんあるので、今さら驚くことはないのかもしれないが、このエピソードは面白い。一般的な書籍の購買率は低いにもかかわらず特定の本は売れる、というのだ。

 岩波書店や文藝春秋が出すものといえば、「流行」とか「売れ筋」より、独自の価値観に基づいた本、ややカタい本が思い浮かぶ。森本さんはこれを「ふみ込んだ本」と表現する。こうした「ふみ込んだ」本は、爆発的に売れることはあまりないから、売り場の小さな書店では十分に取りそろえることが難しい。

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 書籍や出版をめぐる沖縄の事情でもう一つ興味深いのは、県内の出版業者が150社に上ること。1人でやっているような小さな業者も含めての話ではあるが、これは東京に次いで多い。県内で出版される本は全国のトレンドとはほとんど重ならない独自の内容が多いが、「活字」「出版」が身近な営みであることは、どうやら間違いなさそうだ。郷土誌の出版なども非常に盛ん。

 ジュンク堂那覇店でも、地元で出版されている「沖縄本コーナー」はスペースをたっぷりとっている。さらに、同社の全国ネットワークを活用して、沖縄で出版された本を全国で販売することも視野に入れているという。

 活字をめぐるこうした沖縄の文化が今も健在だとすれば、1500坪のジュンク堂那覇店の豊富な品揃えは、「ふみ込んだ本」を求める沖縄の潜在的なニーズを刺激し、掘り起こす可能性が大いにある、ということになる。

 開店を知らせる同店の新聞広告には「図書館よりもっと図書館」とあった。これまで眠っていた書籍ニーズが呼び覚まされれば、ジュンク堂那覇店は沖縄の新名所の一つになるに違いない。

 4月24日の開店まで1週間弱。既に書棚にはたくさんの本が並べられ、地元採用された新人店員への研修指導が活発に行われていた。

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 ジュンク堂書店那覇店は那覇市牧志1丁目19-29。営業時間は10:00-21:00。1階は文芸書、雑誌、文庫本、実用書、2階は各分野の専門書、3階は芸術、語学、児童書、洋書、コミック。盛りだくさんのオープニングイベントが企画されている。詳細はジュンク堂書店のHPで


bansyold at 00:00|PermalinkTrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Clip to Evernote