枯れ節

2008年09月21日

[第77話 食、沖縄] 沖縄のかつおぶしに異変

 沖縄のかつおぶしに異変が起きている。まずはこの、スーパーの削り節売り場の写真をご覧いただきたい。

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 売り場の右の方に「枯れ節」の文字が見える。これが異変の正体だ。背景を説明しよう。

 沖縄はかつおぶし大好きの地域。1人あたりの消費量は全国平均の7倍近い。多くの沖縄料理に大量のかつおぶしが使われる。スーパーの削り節売り場がこれだけ大きいのも、業務用でもないのに1袋が500g入りだったりするのも、とにかく沖縄ではかつおぶしをたくさん使うからなのである。

 そのかつおぶしは、本土でよく使われる枯れ節とは違うタイプの、裸節と呼ばれるものだ。

 かつおぶしを加熱し、いぶしながら乾燥させたものが荒節。その表面のタールを削りとったものが裸節。さらにカビつけして熟成させたものが枯れ節と呼ばれる。裸節はかつおの香りが非常に鮮烈。枯れ節になると、香りは落ち着くが、旨味が深まるとされる。

 沖縄は、これまで裸節専門だった。かつおかつおした香りをウチナーンチュは好む。那覇の平和通りなどの市場を歩いていて漂ってくる独特の臭いの主役も、実はこの裸節の強い香りだ。

 だから、スーパーの削り節売り場も、これまでは裸節のものがほとんどだった。それが最近、冒頭の写真のようになったのは、裸節の調達が困難を来しているからにほかならない。

 県内のかつおぶし業者は「質も量も落ちている」と口をそろえる。

 まず、かつおぶしの生産は沖縄県内ではほとんど行われていない。沖縄本島で唯一のかつおぶし生産拠点は北部の本部漁協だが、かつお漁船が既に1隻しかなく、獲れたカツオの多くも生で出荷されるため、豊漁で生出荷できない分を凍結しておいて、時々かつおぶしにするだけだ。

 沖縄で消費されている裸節の主な産地は鹿児島県枕崎市など。裸節に限らず、ここのかつおぶし生産全体がまず減っている。もともと生産量が限られている裸節については、その影響が枯れ節以上に大きく出ているらしい。

 その結果、沖縄では、これまでの入手ルートでうまく調達できなくなったかつおぶし業者が出始めている。こうして、従来はあまり好まれなかった枯れ節を出さざるをえなくなった小売店、スーパーが増えてきたということらしい。

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 一方、独自の仕入れルートを持っている個人商店には、しっかりした裸節がまだ並んでいる。写真は那覇の公設市場前に店を構える松本商店のかつおぶし。水分がよく抜けた品質のよいかつおぶしであることは、削り節を見れば分かる。品質の悪い裸節をこんなに薄く削ることはできない。味も香りも、スーパーの削り節とはだいぶ違う。

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 むろん価格はスーパー品の2倍くらいする。が、スーパーの削り節は、かつおの香りというよりは、いぶし臭さが強列なものがある。松本商店の裸節は、いぶし臭さは弱く、料理に使えば、かつおの鮮烈な香りが広がる。

 それにしても、沖縄料理からかつおぶしをとったら、一体どうなってしまうのか。これまで沖縄の味と考えられていたものの多くが、大きく変わるだろう。

 沖縄から裸節がなくならないようにするためには、かつおぶし生産者がしっかり利益を出せる価格、つまり、かなりの値上げを甘受するしかないのではないか。諸物価値上がりの折、消費者には大変厳しいことにはなるが、それ以外に沖縄料理の味と香りを守る道はなさそうに思える。

 となれば、これまでのように大量に投入することはできなくなるかもしれないが、質のよい裸節ならば、使う量を2、3割減らしても、少なくとも香りはしっかり出せる。味の方は、はらわたをとった煮干しを少し加えて補えばよいのではないか。

 松本商店は那覇市松尾2-9-13、098-863-2889。

bansyold at 00:00|PermalinkTrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック