民間企業

2008年06月17日

[第61話 沖縄] 集会所を私財で建てた上江洲安盛さん

 地域の集会施設といえば、行政にお願いして補助事業などで建設するケースが多いが、私財を投じてこれを作ってしまった人がいる。うるま市の上江洲安盛さん。生まれ故郷の同市字塩屋の自分の土地に、地域の人々が集えるようにと、平屋建ての「なかゆくい」を建設した。

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 なかゆくいとは「ひと休み」の意。地域のこどもたちが気軽に立ち寄って本を読んだり遊んだり、大人たちが集会などの活動場所として使ってもらえる施設を、生まれ育ったふるさとに建てたいと上江洲さんはかねてから考えていた。

 「人が集まるということが、何かを始める第一歩になると思うんです」と上江洲さん。小さなプロパンガス会社を経営しながら、長期にわたって少しずつ資金を貯めていき、すべて自力で建てた。

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 マイクロソフトのビル・ゲイツが自らの財団を作って活動しているように、公共のために私財を投じる例は欧米にはたくさんあるようだ。日本では大企業がしばしば社会貢献活動をしていることがあるが、市井の一個人が私財を投じて公共施設を建設するというケースは、まだ珍しい部類に入るのではないだろうか。

 上江洲さんと話していると、生まれ育った集落の活性化の役に立ちたいという思いがひしひしと伝わってくる。上江洲さんは多くを語らないが、みんなで行政に陳情として、というお決まりのステップを踏むのではなく、私財を投じることで、いろいろな制約を受けずに自由で効率的にやれる道を選んだということかもしれない。民間企業経営の発想、ともいえそうだ。

 なかゆくい備えつけの図書も、上江洲さんが自分でこつこつ集めた。プロパンガス会社の事務を兼ねたスタッフが午後2時から常駐しているので、だれでも入ることができる。近くの子供たちが宿題をしたり、お年寄りが集まっておしゃべりをしたりしている。

 もっとたくさんの人に利用してほしい、と考えた上江洲さんは、まず民謡教室を定例化した。毎週月曜日の夜、沖縄民謡の愛好家が三線を抱えて集まってくる。次に始めたのは英語教室。これは毎週木曜日の夜に、米軍基地の通訳を講師に招いて実施している。

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 なかゆくいの正面には「共存共栄」の額がかかっている。「それが僕の生き方そのものなんです」。人と人とのかかわりがどんどん薄らいでいく時代だからこそ「ともに繁栄しようじゃないか」の熱いメッセージを込めて、上江洲さんは人が集える場所を作ったのかもしれない。

bansyold at 00:00|PermalinkTrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック