沖縄そば

2015年06月15日

ゆでたての沖縄そば、がありえない理由

 新メニューの豚しゃぶ混ぜ混ぜ沖縄そば、スタートしたばかりですが、オーダーされる方、多いです。暑いので、体が、こういう「ややコッテリ系」を求めるのかも。

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 ももと庵メニューで沖縄そばを扱うのは初めてですが、それにしても、沖縄そばというのは、世にも不思議な、珍しい麺と言えます。

 だいたい、ゆでたてじゃなくて、しばらく経ってからがうまい、なんて麺、ないでしょう。うどん、素麺、パスタ、中華麺。どれをとっても、ゆでたてがうまいに決まっています。

 ところがー。ゆでたての沖縄そばというのは、ないんです。「釜揚げ沖縄そば」というのをやろうとしても、そんなものはありえない。

 実際、沖縄そば専門店で使われる麺も、ゆでられてから、少なくとも半日以上は経っています。数日寝かせてから使う、という人もいるほど。

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 食感を比べてみましょう。

 コシの強いうどんやパスタだと、歯が食い込むのを麺が阻もうとしますよね。歯と麺のせめぎ合いが続いて、最後は歯が勝って麺に突入し、その瞬間に切れます。グーーッと押して、せめぎ合って、いきなりプツン。

 沖縄そばの場合、噛むと、麺はちょっと抵抗するものの、おおむね、やすやすと歯の侵入を許します。その後、歯が麺生地の中をぬぬーっと通過してプツリ。

 沖縄そばの、ぬぬーっ、プツリ、の独特の歯ごたえを生み出しているのが、「ゆでた後の工程」です。

 沖縄そばは、生麺をゆで上げた後、熱いうちに植物油をからめます。同時に、ファンで横から強い風を送って、余分な水分を飛ばすとともに、麺を冷やしながら締めていきます。冷やすのに水は一切使いません。

 この工程をやると、外側1、2ミリはそれほどコシがないけど、その内側にはしっかりコシがある、みたいな状態になります。人あたりはいいけど芯は強い。そんな感じでしょうか。

 ゆでたては、まだ沖縄そばじゃない、んですね。

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2015年06月13日

混ぜ混ぜ沖縄そば、始めます

 やけにいい天気が続くなあと思っていたら、突然、梅雨明けしてしまった沖縄。文字通り、夏本番です。

 そんな暑い夏にピッタリの新メニュー「豚しゃぶ混ぜ混ぜ沖縄そば」を、きょうから始めます。

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 これ、最初は「豚しゃぶ冷麺」くらいの名前にしようかと考えていたのですが、試作して食べてみて、分かりました。よく混ぜて食べるとうまい、んです。ならば、ネーミングもそこを強調しなければ、ですね。

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 豚しゃぶも、野菜も、沖縄そばも、みんな一緒によーく混ぜ混ぜして、お召し上がり下さい。

 今回の目玉は、特製の混ぜそばダレです。黒酢、コチュジャンをベースに、練りゴマも効かせて、コクを出しました。

 この濃厚で力強いタレが、噛みごたえのある沖縄そばに絡むと、最高の組み合わせになるんです。

 ぜひぜひお試し下さい。ももと庵、開店は11:00です。

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2013年12月04日

豚鍋まつり始めました

 お知らせ続きですが、きょうは、ももと庵ではなく、万鐘ネットショップです。「あったか豚鍋まつり」を始めましたよ。関連商品がすべて10%引きです。

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 寒い時には鍋が一番!

 豚鍋は万鐘の造語で、豚しゃぶと豚肉だんごを一つの鍋で楽しんでいただこうという趣向です。

 豚鍋セットはA、Bとも、豚しゃぶと肉だんご、それに出し昆布と酢醤油たれがついています。豚鍋そばセットA、Bは、豚しゃぶ、肉だんご、出し昆布、酢醤油たれのほかに、鍋のシメ用の沖縄そばがついています。

 白菜、もやし、玉ねぎ、長ねぎなどお好みの野菜や、豆腐、したらき、キノコなどをご用意いただければ、いずれも最高の豚鍋が楽しめますよ。

 食べ終わった後のおつゆは豚のうまみいっぱい。鍋のシメにごはんで雑炊にするもよし、豚鍋そばセットの沖縄そばを入れるもよし。

 豚しゃぶだけたっぷり食べたい、肉だんごはいらない、という方のために、豚しゃぶ5パック入りも10%引きにしました(ただし、こちらは出し昆布や酢醤油たれはついていません)。

 豚鍋セットA(3人前)   通常価格3460円 → 3110円
 豚鍋セットB(5人前)   通常価格5200円 → 4680円
 豚鍋そばセットA(2人前) 通常価格2460円 → 2210円
 豚鍋そばセットB(3人前) 通常価格3800円 → 3420円
 豚しゃぶ5(3-5人前)   通常価格3300円 → 2980円


 あったか豚鍋で寒い師走を乗り切りましょう。

 期間は12月23日までですが、40セット限定です。

 商品は冷凍でお届けします。冷凍庫で1カ月もちます。

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2012年12月08日

とるものもとりあえず豚鍋

 寒いですね。沖縄は朝晩でも15度前後ありますが、沖縄としては立派に寒いです。九州は鹿児島でも5度、来週の東京は2度!だそうですよ。みなさんのところはいかがですか。 

 寒い時は、とるものもとりあえず、なべ。豚しゃぶと肉だんごを一緒に楽しむ万鐘の豚鍋をご案内します。ちょうど万鐘ネットショップで「豚鍋まつり」を始めたところです。

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 肉だんごを沈めておき、まずは豚しゃぶを食べます。お好みの野菜や豆腐もたっぷりと。そのうちに肉だんごがあたたまるという寸法です。

 豚しゃぶは、沖縄伝統のスーチカー技術に学んだ、泣く子も黙る微塩熟成三枚肉の薄切り。

 肉がねっとりとして透明感があるのは、肉が微塩熟成中にタラコ、イクラ状態になったから。普通の生肉とはひと味違うコクをお楽しみ下さい。

 鍋のしめは雑炊もいいですが、沖縄そばでやるのもまたよし。沖縄そば派の方には、豚鍋そばセットを用意していますよ。

 12/22(土)まで、4種類の豚鍋セットが全品1割引になる「豚鍋まつり」を開催中です。この機会にお試し下さいね。70セット限定ですので、お早めに。

 豚鍋セット、豚鍋そばセットはいずれも冷凍でお届けします。冷凍状態で出荷から1カ月もちます。だし昆布と酢醤油だれがついています。詳しくはこちらで。


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2011年10月16日

ヒラヒラ感がたまらない

沖縄とアジアの食 第5回 フォー

 前回はフォーの写真を出しておきながら、肉の話に終始してしまった。今回から麺の話に移る。そのフォーからいこう。

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 ハノイの旧ハンザ市場の近く。旧市街は、いかにもごちゃごちゃした下町ふぜいが魅力だ。各店舗は間口が狭いからか、通りにまで品を出して売っているので、どことなく屋台店舗風の趣きになる。米粉の菓子、果物、麺類、豆腐、鶏。何でもある。その合間を天秤棒や自転車に野菜などを載せた商人が行き交う。

 食品関係の店に混じって、飲食店もいろいろある。店舗内だけでは狭いので、歩道上にもどんどん展開して、プラスチックのイスを並べる。子供用にしか見えない低くて小さなイス。人々はそこに腰掛けて、麺類やベトナム風の濃いコーヒーをゆっくりと楽しむ。

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 食料品店、飲食店、天秤棒。一つひとつが小さなピースで、街全体がジグソーパズルのように見えてくる。街路樹がどこも適度に張り出して木陰を作っているから、常夏の国ではあっても、意外に涼しい。

 その中に、ひときわ、人の出入りが激しいフォー屋があった。間口1.2mほど。見ていると、次々に客が声をかけ、注文が入る。かなりの人気店らしい。「限定××食、売り切れじまい」といった趣きだ。

 女性3人で切り盛りしている。1人が外でトッピング用の牛肉をせっせと薄切りにしている。前回書いたように、切った後はあまり間を置かずに使うのが衛生管理上のノウハウ。別の1人が奥で麺をどんぶりに入れ、もう1人が具や調味料を入れて熱いスープを注ぎ、客に出す。見事な連携プレー。

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 生牛肉のフォーを注文した。念のため、化学調味料は少しにしてね、と言ったら、分かってるわよぉ、と言わんばかりのはじけるような笑顔で応じてくれた。若いベトナム人に聞いたが、ひと頃は化学調味料全盛で、何にでも大量に入れていたが、最近は敬遠する人もいるらしい。

 麺。ひたすら薄く仕上げてられていて、スープと一体になったヒラヒラした感触がたまらない。スルスル、スルスル、いくらでも入ってしまう。コシめいたものは全くない。コシが欲しいとも思わない。

 麺のコシは、スルスルとすすり上げて口に入れた後、噛んだ時に得られる食感。フォーを食べていて思うのは、薄さとヒラヒラした独特の食感が口いっぱいに広がり、そのボリュームでそれなりの噛み応えがあれば十分、ということ。スープと完全に一体化した麺に、歯を押し戻すようなコシがあったら、かえって邪魔になる。

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 日本では、麺といえば小麦の麺が中心なので、グルテンの生成によるコシが命ということになっている。沖縄でも、沖縄そばは独特のコシで、その話は以前、万鐘本店で書いたが、ともかくコシがなくては話にならない。パスタもそう。芯が残るくらいのゆで加減がいい、とされる。

 フォーの食感は、そうしたコシとは対極にある。が、噛み応えがないわけではない。

 フォーの原材料になるベトナムの長粒種のコメは、粘りのないアミロースでんぷんの含有量が日本米より多い。

 日本の短粒米の品種改良は、粘りの強いアミロペクチンでんぷんの含有量を上げ、粘りを高めることに力が注がれてきた。電気炊飯器も、コンピューター制御で複雑な火加減を実現しているが、その目指すところは、粘りのあるごはんを炊き上げることに尽きる。かくして、いまの日本の食卓に出てくるごはんは、ものすごく粘りが強い。昭和の時代のアミロースが多い米の食感がどんなものだったか、大方の日本人は忘れているのではないか。

 フォーのソフトな歯ごたえは、まさにアミロース中心の食感。粘りはほとんどなく、歯にまとわりつくことがない。実にさらり、としている。透明なスープとの相性抜群の「さらり麺」だ。

 この場合、薄さが命だろう。アミロース中心の麺が太かったり、厚かったりしたら、歯を押し戻す力がない中に歯がだらしなく埋没していくような中途半端な感じになり、もたつくに違いない。薄ければ、歯がスっと入ったとたんに切れて、心地よい。

 この店、これまで食べたどのフォー屋よりうまかった。

 ラッキーなことに1時間後、再び近くを通った。よし、失礼してもう1杯食べようか、と思ってのぞいたら、店はもう閉まっていた。


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2010年03月29日

[第162話 食、南] 風で麺を締める

 第45話で紹介した沖縄そばづくりについて再び。今回は、製造工程の写真を中心にみてみよう。沖縄そばは生麺のまま流通しているのではなく「ゆで麺」で売られているが、それでもかなりのコシがある。ゆでて時間が経っても「のびない」のは、なぜだろうか。

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 沖縄県内では、沖縄そばの生麺は売られていない。少なくとも沖縄県民が普通に買い物をする小売店やスーパーにはない。沖縄そばは必ずゆで麺で売られている。名うての沖縄そば専門店も、ほぼ例外なくゆで麺を使う。

 東京のスーパーでも、うどんや中華麺のゆで麺が売られているが、コシ、歯ごたえという意味では、やはり生麺のゆでたてには一歩ひけをとる。これと対照的に、ゆでてだいぶ時間が経った沖縄そばのゆで麺には立派なコシがある。どうしたらあの独特のコシが持続するのだろうか。

 沖縄そばの製造工程を、豊見城市の亀浜製麺所で見せてもらった。こねた生地をのして細く切る。こね方、のし方も出来上がりのコシの強さに大きな影響を与えるが、今回はそこの話はパスして、ゆでた後、どうするかに焦点を絞ろう。

 亀浜製麺所では、鍋から引き上げた麺を作業台にさーっと広げて、扇風機の強風を当てながら、手早く植物油をふりかける。風であら熱をとりながら、同時に、油が全体に均一に回るように、麺をほぐしていく。ひたすら素早く、手早く。まさに職人芸というべき手作業だ。

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 ほぐされ、あら熱がとれた麺は、機械にかけられた形で、さらに扇風機の風にさらされ、完全に冷やされる。冷却は風で。そうめんを冷やすように水にさらすことはしない。このようにして作られた沖縄そばは、ゆでた後の処理で形成されたコシが4、5日は持続する。

 主役は風だ。風で冷やしながら、蒸気をどんどん飛ばしていくことで、水気を切る。この過程で麺が締まっていき、コシが出る。油は、ほぐしている間に麺同士がくっつかないようにするため。一定の水分を飛ばした後は、逆に麺の水分を守って、表面が乾かないようにする。

 こうしてゆでた後に脱水冷却処理された沖縄そばは、時間が経過するにつれて熟成が進み、ゆでたてのコシとは微妙に違う独特の噛み応えが出てくる。第45話で「ポクポクした感じ」と説明したが、まさにこれこそが沖縄そばにしかない独特の食感なのだ。

 話は変わる。汁麺の麺にはコシが必須と考えている人が日本には多いかもしれないが、コシのない汁麺もいろいろある。その多くは、沖縄そばと同じく、ゆで麺。

 例えばベトナム北部でよく食べられるフォー(写真上)は、ひらひらした米の麺で、コシらしきものは全く感じられないが、うまい。同じくベトナムでフォーよりもポピュラーな存在であるブン(写真下)も、米麺のゆで麺で、コシらしいコシはないが、いろいろな汁に入れるとやはりおいしい。

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 そもそも麺にしてコシが出るのは小麦のグルテンがあるから。米粉にはそういう成分はほとんどないから、コシは初めから期待できない。しかし、フォーやブンを食べていてつくづく思うのは、麺の厚さや幅、舌ざわり、水分の含有量といったコシ以外の要素が全体の食感に大きな影響を与えているということ。米麺では、コシがほとんどなくても、十分おいしく感じられる。

 日本では米の消費拡大のために米粉の活用が叫ばれているが、米麺でコシを出そうとするのはあまり意味がなさそうだ。それよりも、コシ以外の要素を研究し尽くして、汁によく合う米粉の麺を作り出そうとする方が前向きというもの。先輩格のおいしい米粉の汁麺は、インドシナ各国やタイに山ほどある。

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2009年12月20日

[第148話 食] 手打ち風の麺に透明で深い汁

 万鐘の沖縄そば遍歴もだいぶ数を重ねてきたが、県内にはまだまだ魅力的なそば屋がある。そばじょーぐーとしては、まったく手を休めるゆとりもない。今回は、食べ応え十分の昔風そばと透明感あふれる汁とが見事なコンビネーションをみせる那覇のきくやをご紹介。

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 きくやは那覇の小禄の住宅街にあって、外見は普通の家のよう。中に入ると、店主の照屋健一さんとスタッフが人なつこい笑顔で迎えてくれる。開店から5年。このところ、そばじょーぐー達の間でウワサになることが多い注目店の一つだ。

 きくやのそばの特徴は、まずはその麺。凹凸のある手打ち風の麺は、食べ応え十分。小さな製麺所に特別注文して作ってもらっている。つるつるののどごしを楽しむ細麺とは全く違うタイプ。これまで万鐘本店で紹介した沖縄そば店は、どちらかといえば、厚さが均一の細麺、平麺の店が多かったかもしれない。第3話の美里そば然り、第122話のなかどまい然り。

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 手打ち風という意味では、きくやの麺は、第108話で紹介した浦添のてだこそばの麺に似ている。が、きくやの麺はてだこそばの麺ほど固くないし、太さも太め。「昔風の沖縄そば」と形容した理由はそこにある。こうした厚めの麺は、口の中でゆっくりとモグモグしながら味わう。やんばるのそば店でよく出てくる麺に近い。

 汁。ここまで透明感があるのにここまで深いコクのある汁、というのは、なかなかない。手打ち風のボコボコ感のある麺の強さに負けないようにするには、こってりタイプの強い汁にする手もあるが、きくやの汁はあくまで透明だ。透明なのに深いコクがあるから、この麺と最高のコンビネーションをみせる。雑味がないのにとことん深い九州のアゴだしを思い出す。

 肉の煮方は、柔らかめで麺によくなじむが、ぎりぎりの歯ごたえはちゃんと残してある。しかも、三枚肉のスライスはよくある沖縄そばの三枚肉より大ぶりで厚めに切ってあるので、食べ応え十分。麺の食べ応えとよくマッチする。

 というわけで、どんぶりの中は見事な昔風沖縄そばの世界。正確に言えば、リッチな昔風、である。それだけでも十分に楽しめるが、きくやがおいしいのは、どんぶりの中だけではない。周りの「おまけ」もおいしい。

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 その筆頭格が小皿にのったジージキ(地漬け)。大根のジージキは、沖縄では塩を使わず、砂糖や黒糖と酢で漬けることが多いので、バランスが悪いと妙に酸っぱかったり、甘すぎたりする。きくやのジージキは、ひたすらさわやか。調味料の加減と漬け具合が絶妙なのだ。うっちん入りなのは、黄色の色をつけるためだけではなく、うっちんならではの渋みで全体をやんわり引き締める効果もありそう。

 失礼とは思ったが、そばのヒミツをうかがう前にジージキのヒミツを尋ねたら、照屋さんは言った。「いや、これは80のおばあが漬けているもので、どうやって作っているかは私も知らないんですよ」。うーむ、おばあの手作りか。これはもはや商品ではない。ただただ、ありがたい食べものと言うほかない。

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 食後に出てくる黒糖ぜんざいの小鉢もなかなか。こっくり甘いぜんざいは、そばで塩味になっている口の中をまるーくしてくれる。沖縄のぜんざいについては第73話でお伝えした。

 最後に、きくやのすべてをおいしくしているもう一つのことを。店のみなさんの人なつこい雰囲気がそれだ。照屋さんはじめ、スタッフがみなニコニコしていて自然体。気さくに話しかけてくれるので、とても気持ちよく食事ができる。

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 きくやは場所がちょっと分かりづらい。ツタヤ小禄店の裏手にあるのだが、うまく見つからなければ電話を。沖縄県那覇市田原1-6-2、098-857-0565。木曜定休。

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2009年09月06日

[第133話 食] 汁の味を変えられる八重そば

 名護の沖縄そば店で。左の男性は「いただきます」と箸を入れたところ。ゆっくりと箸を動かし、麺と汁をなじませる。穏やかな笑みの中に、おいしいものをいただく喜びがにじむ。

 さて、右の人は? 食後のお茶か。いやいや、この人もこれから沖縄そばを食べるところ。そのために、沖縄そばのどんぶりに自分で汁を注いでいるのだ―。

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 名護市の旧市街の飲食店街にある八重そばは、いつも地元のファンでいっぱい。ソーキそばでも三枚肉そばでも、注文すると、麺、肉、ネギだけが入ったどんぶりと、やかんに入ったアチコーコーの汁とが出される。右の男性が持っているやかんがそれ。八重そばでは、めんと汁が別々に出てくるのだ。

 まず、やかんの汁をおもむろにどんぶりの中に自分で注ぐ。汁は驚くほどにごりがなく、透明感にあふれている。これほど透明な沖縄そばの汁も珍しい。豚骨ベースだが、静かにていねいに煮出してあるから、豚臭さは一切なし。

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 肉とめんを食べていくうちに、肉の煮汁が全体の汁に溶けていき、汁の味がだんだん丸みを帯びてくる。その変化を楽しみながら、めんを7割方食べ、汁も少し飲んだ状態が下の写真。最初の汁に比べて色がだいぶ変わっているのが分かる。その甘味を増した汁に、やかんの新しい汁を注ぎ足す。

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 新しい汁を注ぎ足すと、汁全体が最初の塩の効いたやや厳しい感じの味に戻る。特に、最後をそれで終わると、いくぶんダレ気味の舌が引き締まる感じで心地よい。やかんに新しい汁が用意されていると、このような味の「戻し」ができる。

 第122話で紹介した恩納村の「なかどまい」の汁も八重そばの汁によく似ているが、八重そばの汁はなかどまいよりもさらに一段と透明で、あっさりしている。

 もの足りないと感じる向きもあるかもしれないが、いったん甘味を帯びた汁に注ぎ足して元の緊張感を蘇らせるには、この透明感、あっさり感が重要そうだ。あまりコテコテの汁だと、こういう戻しの効果は鈍くなるのではないか。

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 八重そばのめんは、名護らしい平麺。幅は1cm弱でそれほど厚くない。強いコシは感じられないが、昔ながらの沖縄そばの麺は、それほどコシが強くない。むしろ、やや柔らかめの麺の方がトラディショナル。八重そばのめんもまさにそれだ。

 平麺でも厚ぼったくないので、ヒラヒラと曲がり、汁がよくからむ。平麺を食べる時にはいつも思うが、すすり上げて口に含み、もぐもぐと噛み始めた時、平麺は口の中で独特のボリューム感を感じさせてくれる。

 八重そば創業者の八重子おばあは、息子に店を任せ、ふだんはデイケアに行っているが、デイケアが休みの時には店にすわってお客さんとゆんたく(おしゃべり)している。

 八重そばは名護市城1-9-3、0980-52-3286。11時〜(売り切れ次第終了)、火曜定休。

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