沖縄そば

2009年06月21日

[第122話 食] 教科書に載せたい沖縄そば

 万鐘本店では、これまでに沖縄そば店をいくつか取り上げてきたが、どちらかと言えば個性派の店が多かった(第3話第30話第82話第108話)。今回は、これらとは対照的に、オーソドックスの極み、とも言うべき恩納村の「なかどまい」をご紹介。インパクトは強いが、何杯食べても飽きがこない。

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 なかどまいは、同じ場所で経営者が何回か変わってきたが、現在の店は當山忍さんが1年半前に始めたばかり。當山さんはもともと大のそば好き。あちこちの店を食べ歩きながら「自分で最もおいしいと思うそば、昔、食べておいしかったそばを作ろうと模索しました」と話す。

 まず汁は、豚骨とかつおだしをブレンドした汁。よくあるかつお主体の汁ではなく、豚骨がベースだ。深いコクがあるが、すっきりしていて、臭みや雑味はない。

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 汁の味つけは塩が主体でシンプルそのものだが、なにしろダシのコクが深いから、そばにからんで充分にうまみを発揮する。豚骨ベースのなせるわざ。言うまでもにないが、なかどまいの場合、豚骨は、弱火で、たぎらせることなく長時間じっくりと煮る。

 麺は、細麺と中太麺の中間くらいの太さ。少し縮れているので汁がよくからむ。小麦特有の、空気を少し含んだような優しい弾力のある麺。もちもち感を高める場合はでんぷんの配合を増やすが、ここの麺は小麦主体。

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 これは、ちょうどギョウザの皮が2種類あるのと似ている。1つはスーパーに置かれている薄手のもちもち感が強いタイプの皮。もう一つは、中華料理店で出てくる自家製ギョウザ皮。こちらは厚くて、わずかに空気を含んだような、ややパン生地っぽい食感がある。

 沖縄そばで言えば、昔風の沖縄そばには後者のタイプの麺が多い。なかどまいの麺もこれ。やんばる方面では、この手の麺を出す店が多いが、なかどまいの麺はよくあるやんばるの太麺よりは細く、スルスルと口に入っていく。

 三枚肉やソーキの煮方もオーソドックス。沖縄そばの具として最適の柔らかさといえそう。甘さのない汁とのコンビネーションが最高になるような甘さに、味付けをピタリと決めている。食べ始めは、シンプル塩味のアチコーコー汁と甘辛味の肉がきれいなコントラストをみせるが、食べ進むうちに肉の味が汁に移り、汁が少しずつ甘さを含むようになっていく。その変化が楽しい。ソーキはしっとり煮上がっており、三枚肉の脂落としは完璧だ。

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 汁、めん、肉。どれをとってもていねいな仕事の結果で、それぞれ並々ならぬ力があるが、まったく出しゃばらない。全体が絶妙のバランスを保ちながら、何食わぬ顔でググッと迫ってくる。まさにオーソドックスの極み―。

 沖縄そばビギナーに「沖縄そばって、こんな感じです」と勧めたいのはもちろんだが、あちこちを食べ歩いている沖縄そばジョーグーのみなさんにもぜひ試していただきたい。

 教科書に載せたい沖縄そば、という形容はどうかな、と。

 なかどまいは恩納村字仲泊754-3、098-965-7222。仲泊小学校の隣り。日曜定休。営業は11:00から16:00。

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2009年03月26日

[第108話 食] てだこそばの噛みごたえある麺

 浦添にはおいしい沖縄そば店が多いような気がする。万鐘本店でも第82話で高江洲そばを紹介した。今回は、同じ浦添市のてだこそば。個性的な自家製麺が魅力の店だ。

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 人気のある沖縄そばの麺にはいくつかのタイプがある。一つは、のどごしのよい細めん。亀浜製麺所が作る麺がその代表だろう。細くて薄いがコシがあり、汁によくからむ。なめらかで、スルスルと口に入っていく。「宮古そば」と呼ばれる麺がこのタイプ。こうした麺の作り方と亀浜製麺所の話は第45話で紹介した。

 これと正反対なのが「やんばるそば」と呼ばれる太い麺。手打ち風で凸凹しており、ちょっとごつごつした食感で、噛みごたえがある。確かに北部のそばの有名店はこのタイプの麺を出す店が多い。大東そばも同系統。

 てだこそばの麺は、なめらか細めんでないことは確か。噛みごたえ十分という意味で、やんばる手打ちそばの系統といえそうだ。しかし―。

 よくあるやんばる手打ちそばの場合は、太いうえに太さにかなりの凸凹があるので、細めんのようにスルスルと吸い上げるのは難しい。というより、やんばる手打ちそばは太くてボリュームがあるので、ひと箸で持ち上げた全量を1回では口に納めきれない。短い長さで噛み切ってはモグモグして飲み下し、またすぐに噛み切ってはモグモグして飲み下し、といった具合に、断続的に食べ進むことになる。

 てだこそばの麺は、やんばる手打ちそば風の凸凹のある固めの麺ではありながら、太さをその半分くらいに抑えているので、スルスルと食べることができるのだ。何気なく食べ始めると、細めんなのかなと思うほどの口あたり。しかし麺が舌に触れ、奥歯で噛む段になると、それが細めんでないことはすぐに分かる。

 てだこそばの麺は、あまりスルスルと一気にたくさん口に入れてしまわない方がいい。適量入れては、モグモグとよく噛んで、その歯ごたえをじっくり楽しむのが正解だろう。

 細めんの沖縄そばは、熱い汁に入れて時間が経つとどうしてもコシが弱くなってしまうが、てだこそばの麺は、相当に熱い汁に浸っていても長時間にわたって噛みごたえが持続する。

 汁や具も、この麺が生きるように工夫されている。代表メニューの、三枚肉がのった沖縄そば。汁は白濁した豚骨スープで、麺によくからむ。強い麺なので、それに負けないだけの強さをもった汁にしてある。三枚肉の煮方も同様。とろけるまで柔らかくしてしまうと麺と釣り合わなくなるからだろう、柔らかいけれどもある程度の歯ごたえを残していて、うまい。

 てだこそばのソーキそばには軟骨ソーキがのっている。軟骨ソーキは、普通のあばら肉のソーキとは違うが、要は、普通のソーキの骨の部分を軟骨に置き換えたものを思い浮かべればいい。軟骨にとろり感が出るまでじっくり煮たものは、軟骨の部分も含めてすべて食べられる。てだこそばの軟骨もとろりとしていておいしい。とろり軟骨と白濁スープとの相性のよさは、高江洲そばの巻でも指摘した。

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 タコス風の豆腐そばといった変わりそばメニューもいろいろあるが、まずは、三枚肉のせ沖縄そばとソーキそばをお試しあれ。麺の噛みごたえを求める向きには最高のそば。好みに合わせて、麺を柔らかめにゆでてもらうこともできる。

 てだこそばは浦添市仲間1-2-2 コーポ西原101、098-875-5952、月曜休。

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2009年01月31日

[第99話 食] 午前2時に仕込み始めるてびち

 那覇港ターミナルビル向かいの嶺吉食堂。煮つけ定食が名物のこの有名店をなぜあえて取り上げるのか。それは、明日また食べたくなるてびち(豚足)の素晴らしさを伝えたいから、に尽きる。

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 この盛りを見て「量で勝負の店」と勘違いする向きもあるかもしれない。確かに量はたっぷりだが、手間ひまかけてていねいに作られた煮つけの染み入るような味をぜひ堪能していただきたい。

 店の雰囲気は、町の食堂そのもの。飾らない店内は、どこか昭和っぽい味わいがある。煮つけ定食の素朴なたたずまいも、まったく気取りがない。

 登場した煮つけ定食のボリュームとてびちの固まりを初めて目の当たりにした時は、「これは胃薬が必要になるかも」と半ば本気で思った。

 煮つけと言っても、本土で作られる甘辛味の煮つけより薄味で、塩分も少ない。しかしダシはしっかり効いていて、そのうまみが大根や豆腐によく染み込んでいる。沖縄は塩分の摂取量が少ないといわれるが、この煮つけを食べればその理由が分かるはず。「素材のうまみとだしで食べる味」が沖縄料理の真髄であることが実感される。

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 主役のてびち。余分な脂が見事なまでにきれいに抜けている。とろーりフルフルの皮はもちろんだが、赤身の肉がまたうまい。かなり煮込んであるのに、しっとりジューシー。てびちで赤身の部分をこれだけおいしく作るのは簡単ではない。

 てびちをどーんとのせたてびちそばも人気メニュー。そばと同じくらいのボリュームのてびちがのっていて圧倒される。好きな人は、骨を吸って、中心部の髄のところを楽しむ。

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 那覇中心部の港の真ん前という場所柄かもしれないが、客は、作業服姿の人とネクタイ姿の人が半々といった感じで、若い女性もちらほら見える。

 食べている最中はもちろん大いに満足したが、食べ終わって30分ほどしてから、このてびち煮つけの本当のすごさが分かった。

 「あー、食ったー」という満腹感はしっかり持続するのに、決してもたれない。あれほど味くーたーのてびちをたっぷり食べたのに、あきれるほど胃がさわやかで、すっきりしている。「きょう腹いっぱい食べて、なおかつ明日また食べたくなるてびち」というのは、沖縄広しといえども、そうはない。もちろん胃薬など全く不要。

 2007年9月12日付の万鐘本店12話で、食べた後に動けなくなるてんこ盛りのノセノセ400円弁当の話を書いたが、あれの正反対だ。

 てびちはじっくりと時間をかけてていねいに脂を落とし、そのうまみを野菜や豆腐に染み込ませている。聞けば、嶺吉食堂の主人は、昼食用に出す煮つけを、なんと午前2時に仕込み始めるのだという。

 これだけ手間ひまかけて、しかも圧倒的な大盛りで、煮つけ定食もてびちそばも750円。昨年亡くなったニュースキャスターの筑紫哲也さんも通ったらしい。

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 嶺吉食堂は那覇市西1-24-2、098-868-5404。フェリーの発着が多い安謝の那覇新港ではなく、西町の那覇港ターミナルの正面。午前10時から営業し、売り切れじまい。日曜休。

 体調不良で最近までしばらく休業していたが、このほど再開し、ファンをほっとさせた。体をいたわって、少しでも長く続けてほしい店だ。

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2008年10月21日

[第82話 食] 見事なバランスの塩味豚だしそば

 10月17日の沖縄そばの日にちなんだ話題は、浦添市にある高江洲そばでいこう。ゆし豆腐がのった豆腐そばが名物で、淡白なゆし豆腐と透明な豚だしスープが実によく合う。その仲をとりもつのが、とろりとするまで煮込んだ軟骨ソーキだ。キーワードは塩味。

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 高江洲そばは地元の人々がたくさん訪れる人気店。昼時ともなれば、多少の行列は覚悟しなければならない。行列嫌いの沖縄県民も、高江洲そばの前では、おとなしく順番を待っている。待たされている人に対する店員の応対はていねいで気持ちよい。

 豆腐そばを注文すると、小さめのどんぶりにたっぷり盛りつけられたそばが登場した。めんは平めんで、それほど強いコシはなく、素直な食感。縮れているので、スープがよく絡んでおいしい。

 そのスープは、豚だしが軸。こっくりと深みがあるが、ドロッとしたような豚骨スープではない。透明でさらさら。深いコクを感じるのは、静かに煮込んでとった豚だしに、昆布だしやかつおだしが合わさっているからか。

 このスープにゆし豆腐がのると何が起きるか。ちょっとドキドキする。豆腐は自己主張があまり強くないので、豚だしスープに入れたら負けてしまうのではないか―。

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 さにあらず。塩味豚だしスープの中で豆腐の味がかえって強調されている。うまい。これは豆腐の底力もあるが、塩味スープが豆腐によくマッチするように上手に作られていることが大きい。

 第3話で紹介した美里そばにもゆし豆腐がのっていて、あれもすばらしくおいしい。美里そばのスープは醤油やかつおの風味もきいていて、それが豆腐の淡白な味とコントラストを見せながら、豆腐をうまく浮かび上がらせていた。高江洲そばはスープが塩味で、ほとんど目立たず、完全にわき役として豆腐を下からひき立てている。

 次は肉。多くの沖縄そば店では、具の肉の味付けはしょうゆと砂糖の甘辛味だが、ここのはなんと塩味。肉は軟骨ソーキで、軟骨がトロリとするまでじっくり煮込んである。この塩味軟骨ソーキが、また不思議なほど、ゆし豆腐と合う。しょうゆ味でなく塩味であることと、豆腐に近いくらいに柔らかな食感であることが決め手とみた。これまた実にうまい。

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 高江洲そばを食べると「バランス」という言葉を思い出す。軟骨ソーキにしても、ゆし豆腐にしても、スープにしても、平めんにしても、一つひとつは、びっくりするような感じではない。肩の力が抜けた、なんとも温和なたたずまい。なのに、それらが一つのどんぶりに納まって、一杯の豆腐そばになったとたんに、何やら妙においしい世界が立ち上がる。作り手の中に「この味」というイメージがしっかりあるからだろう。

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 お母さんが豚骨をじっくり煮込んで作る手づくりそばのイメージ。コシの強い麺や、カツオの強い香りを期待する人には向かないかもしれないが、透明な豚だしのうまみとそれに絡むそばや具のバランスを堪能するには最適だろう。

 むしろ、こういうそばこそが、家庭で作られてきた沖縄そばの味なのではないかと思える。豚だしというと、豚骨ラーメンの白濁スープを思い浮かべる人も多いかもしれないが、沖縄の豚だしは透明でサラサラが普通。高江洲そばのスープはまさにこれだ。

 とはいえ、このそばの味の深さは、マネしようとしても簡単にはできそうにない。スープ、肉、そして何よりもどんぶり全体が持つこのインパクトと見事なバランスは、やはり長い間、毎日、神経を研ぎすませて沖縄そばを作り続けてきたプロだからできること。とことん優しいけれど、人を行列に並ばせるだけの強い力が、どんぶりの中にあふれている。

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 高江洲そばは浦添市伊祖3-36-22、098-878-4201。日曜休。場所はパイプライン通りの伊祖付近なのだが、パイプラインから少し西に入った住宅街の中にあるので、分かりにくい。パイプラインを那覇から宜野湾向けに走って伊祖に入ったら、左手に「高江洲そば駐車場」と書かれたビル1階のゲタばき駐車場が見える。その手前を左折して20mほど坂を登り、右折すると店がある。駐車場は周囲の数カ所に分かれている。

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2008年03月13日

[第45話 食] 沖縄そば 麺のひみつ

 沖縄そばの麺とは、いったい何者なのだろうか。小麦粉に塩と灰汁やかんすいを入れて練り上げた麺で、その多くは平麺。中華麺のようでもあるが、口当たりが微妙に違う。太めの沖縄そばの場合は、うどんやきしめんに似ていなくもないが、やはり食感が違う。パスタっぽい沖縄そばもあるが、パスタのような素直な歯ごたえではない。

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 原材料からすれば、中華麺に近い。アルカリである灰汁やかんすいが入って独特のコシが出るあたりはそっくり。だが、沖縄そばは中華麺とは練り方やのし方が違うので、同じコシでもソフトな感じになる。

 もう一つ、大きな違いがある。沖縄そばは、中華麺のように茹でたてを食べないこと。沖縄そば専門店のほとんどは、冷たくなった茹で麺を湯で温めてから使う。

 「麺というのは、茹でたてよりも、時間が経ってからの方が味が出るんですね」と話すのは、亀浜製麺所代表の亀浜貞夫さん。確かに味はそうなのかもしれないが、時間が経ったら麺はのびてしまうのでは、という声が聞こえてきそう。だが、心配御無用。

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 沖縄そばは、茹で上げためんに植物油をまぶしてから、風を当てて冷ます。水にさらすことはない。亀浜さんは、冷ます工程で余分な水分を飛ばすことが大切だと語る。これで麺が締まり、めんのコシが保たれる。
 
 こうして得られるコシは、茹でたてのコシとは微妙に違う。「歯が食い込もうとするのを必死で押し戻そうとする麺の弾力」が、茹でたてのコシ。沖縄そばにもそうしたコシはあるが、それに加えて、独特のポクポクした食感が伴う。このポクポク感は、不思議なことに茹でたてでは得られない。

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 原材料はほとんど中華麺と同じながら、食べて明らかに違いを感じるのは、このポクポク感の有無だ。これぞ沖縄そば、と言ってもいいくらいの個性がそこにある。生麺の沖縄そばをおみやげに買って帰った観光客が、自宅で茹でたての沖縄そばを食べる時に「沖縄で食べたのと、なんか違うなあ」と感じる違和感の正体は、恐らくこれだろう。

 だから、自宅で沖縄そばを作る時は、生麺ではなく、ゆで麺を買ってきて、湧かしたお湯に4、5秒つけて油落としと加温をし、どんぶりに入れてつゆをはれば、沖縄そばらしい食感の沖縄そばになる。沖縄そば専門店と同じやり方だ。現に沖縄のスーパーでは、沖縄そばの茹で麺は何種類もあるが、生麺はまず見かけない。

 亀浜製麺所の沖縄そばは、細めの平麺。繊細な口当たりで、ポクポク感としっかりしたコシがあり、のどごしもいい。亀浜さんは、大手の麺メーカーがやっていない手作りの工程を大事にしているという。沖縄県内の名だたる沖縄そば専門店が、亀浜麺を採用している。

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 亀浜麺はスーパーには置かれていないので、県民の多くは亀浜麺を沖縄そば店でしか味わうことができない。亀浜麺を使って自分で沖縄そばを作りたい人は、亀浜さんが先代からのつき合いを大事にしながら商品を卸している小売店が3カ所だけあるので、そこで買える。

・那覇市松山2丁目22−1−1F 若松公設市場内の与那嶺商店 098-868-9132
・那覇市若狭2丁目12−11−1F ストアー上原 098-868-3747
・宜野湾市普天間2丁目13−5 中央ミート普天間店 098-892-5634

 亀浜製麺所は豊見城市保栄茂1163-1、電話098-856-7103。

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2007年12月17日

[第30話 食] どこまでもユニークな若狭のそば

 那覇の若狭にユニークな沖縄そば屋がある、と聞いて出かけた。その名は「若狭パーラー」。沖縄でパーラーと言えば、浜辺などで、プレハブやコンテナハウスで軽食やかき氷などを売っている店のこと。転じて、海辺ではない場所でも、簡単な建物で軽食を売る店を総称してパーラーと呼ぶ。たいがいのパーラーはそばも置いているが、出来合いの濃縮スープをお湯で薄めたような情けないそばを出すところも多い。さて、どんなものか―。半信半疑で若狭に赴いたら、ありました。

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 一見してそのユニークさが分かる店だった。若狭パーラーは、住宅街にある店主の自宅の一部を店にしている。店の部分が建物のギリギリのところにあり、客のすわるイスはその外側に置かれている。客席が店内にない、という意味では確かにパーラーだが、場所は砂浜ではなく、普通の住宅街なので、客席がまるで道路上にあるような、なんとも妙な構えになる。

 いや、正確に言えば、バーラーにはもともと客席はない。例えば海辺なら、客は、パーラーで買った食べ物を、自分の荷物を置いた場所などに持っていって、そこで食べる。若狭パーラーもそうした「パーラーの原則」に忠実なだけ。イスはサービスで置いているにすぎない。

 だが、驚くのはまだ早かった。行き交う車に背を向けて、豚肉そばを注文したら、こんなそばが登場した。

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 ヨモギの葉がオプションでついてくる店は時々見かける。第3話で紹介した美里そばもそうだった。ところが若狭パーラーでは、オプションではなく、初めからヨモギがたっぷり入っている。これはかなり珍しい。つゆの熱で鮮やかになったヨモギの緑と、立ち上る香りを楽しみながら、めんをすすり、つゆを飲む。

 あれ? 食べ始めて、「ユニーク」がもう一つあることに気づいた。そばの上に乗っている肉。沖縄そばと言えば、三枚肉かソーキ(あばら肉)を柔らかく煮付けたものが乗っていることが多いが、ここでは、赤身肉が乗っている。赤身だとどうしてもぱさぱさしがちだが、ここの肉は不思議なくらいしっとりと煮上がっている。

 赤身肉を入れるそば屋もないわけではないが、これほどつゆによく合う赤身肉の煮付けは、なかなかお目にかからない。これはタダモノではないな―。作り方を尋ねてみると、店主はさすがに口を濁した。かなり手の込んだ作り方をしているらしい。

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 コーレーグスもユニーク。コーレーグスといえば、小さな三角形をした赤い島唐辛子が泡盛に漬け込んである姿を思い浮かべるが、ここでは、それをミキサーにかけてすりつぶした赤いペースト状のものが出てくる。普通のコーレーグスは泡盛の香りとトウガラシの辛さが基本になっているが、すりつぶしたコーレーグスは、唐辛子の香りが前面に出ていて、これはこれでなかなかうまい。ペーストの作り方も尋ねてみたが、これにも店主は口を濁した。

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 沖縄そばは、どんどんおいしくなっていると言われる。後発こだわり店の頑張りに、昔の名店もうかうかしていられない。そばの完成度は上がり、そばジョーグーたちは「理想的なそばの姿」をあれこれ語る。

 だが、若狭パーラーのように、そうした動きから離れたところで、わが道をいく店も健在だ。独自のこだわりの中にバランスのとれたおいしさを感じさせる若狭パーラーのそばは、沖縄そばの理想型が一つではないことを教えてくれる。

 若狭パーラーは那覇市若狭2-14-16。098-861-6492。営業時間は07:30から20:00まで。豚肉そば400円、卵焼そば400円など。

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2007年08月01日

[第3話 食] 繊細で優しい美里そば

 万鐘が自信をもってお勧めする隠れた名店のトップバッターは、沖縄市の美里そば。雑誌の沖縄そば特集などにはほとんど載っていないが、その味のよさでファンがじわじわ増えているようだ。

 シンプルで飾り気のない店構え。手入れの行き届いた清潔な店内は、店主の照屋エリ子さんの心遣いが感じられる。

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 メニューは、三枚肉の煮付けをのせた沖縄そば、ソーキの煮付けが入るソーキそばの定番2種に加え、軟骨ソーキをねっとりするまで煮込んだ軟骨ソーキ入りの軟骨そばがある。さらには店名を冠した美里そば。これが一番人気とのことなので、早速注文。

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 大ぶりのどんぶりに、三枚肉の煮付け、軟骨ソーキの煮付け、ゆし豆腐とねぎが載ったそばが登場した。ヨモギの葉が別添えでついている。汁が熱いうちにヨモギを入れて、しんなりさせながら、その香りを楽しむ。コーレーグスをかけると泡盛のいい香りが加わった。

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 まずゆし豆腐を一口。ゆし豆腐がそばの汁とこんなに相性がいいとは―。そばは細めで、のどごし最高だが、しっかりとコシがある。汁とよく絡んでうまい。中盤に入ると、めんが汁を吸って少し柔らかくなるが、これが汁とさらによく絡む。

 三枚肉の煮付け。そばにのせる三枚肉は、柔らかく煮てある方がそばや汁と一体になってうまいのだが、煮すぎると味も香りもなくなってしまう。美里そばの三枚肉は、ギリギリの柔らかさまで煮込んである。軟骨ソーキは、ゼリーのようにねっとりしていて、おいしい。

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 この汁は不思議な味だ。豚骨をじっくり煮込んでいるとのことだが、臭みは全くない。ほんのりと甘味を感じる、何とも優しい味だ。繊細な細めんとの相性がいい。コクは確かにあるのに、しつこさが全くないので、最後まで飲んでしまった。

 泡盛残波のCMでおなじみの民謡歌手げんちゃんこと前川守賢さん、ネーネーズをサポートしてきたミュージシャン嘉手苅聡さんも常連らしい。県道75号線、琉球銀行コザ十字路支店の駐車場のすぐそば。沖縄市美里744-1。電話098-937-4196。


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