沖縄料理

2014年06月10日

中身汁、始めます

 新メニューの予告を。泣く子も黙る中身汁(なかみじる)。どうだ、まいったかぁ、てなもんです。

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 沖縄県民で中身汁を知らない人はいないでしょう。お祝いの行事などで食される最高の汁もの。豚の腸など徹底的に洗って脂気や臭みを完全にとり、コクのある澄んだ汁に入れて食べるごちそうです。

 一部の沖縄料理店では出していますので、観光客の中にもファンは多いはず。

 豚のだし骨やかつおぶしでとったダシは、それはそれはおいしいです。そこにふわふわの中身がたっぷりと。干ししいたけとこんにゃくがわきを固めます。

 結納や法事などの行事の席に行くと、食事時でない時間帯などは、食事を勧められてもお膳全体にはなかなか手がつかないのですが、不思議と中身汁だけは食べてしまう、という人が多いのではないでしょうか。

 行事食が苦手な子供たちもいますが、中身汁だけは別、という子も多いようです。黙々と中身汁を食べる子供を、おばあが目を細めてながめているー。微笑ましい沖縄の行事の風景ですね。

 おばあがおいしい中身汁を作るについては、実はたいへんな苦労が。

 中身の脂気と臭みを完全にとるには、小麦粉や酢をかけてていねいに何度も洗わねばなりません。これは結構な重労働です。

 そうして手をかけた中身は、臭みも脂気も全くない、まるで精進料理のような上品さ。脂気を生かした関東のもつ煮込みや博多のもつ鍋とは完全に対極にあるもつ料理です。

 ももと庵の中身汁膳は、中身汁好きの方に中身汁をたっぷり楽しんでいただくというコンセプト。大きめの汁どんぶりにたっぷり入れました。

 今週末、6/14(土)からスタートです。どうぞお楽しみに。

 

bansyold at 21:35|PermalinkTrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

2013年07月17日

ももと庵のアジアンって?(下)

 前回は、ももと庵では、おいしいものが手に入る魚醤などは使うけど、沖縄で育てたレモングラスはいまイチなので、まだ使うのをためらっている、と書きました。

 これとは別に、ありふれた沖縄素材をアジア風にして使っているケースもよくあります。

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 例えばニラ。沖縄語ではチリビラと言って、チャンプルーに入れたりしてよく食べますが、ももと庵では生のまま刻んで「ももと膳」のアジアだれに入れています。ニラの香りは薬味としても最高だからです。ニンニクともネギとも違う独特の香り。

 写真は、作りたてのアジアだれの「どアップ」写真。これから数日たって、色が少し落ち着いた頃が全体に味がなじんで、食べ頃です。

 ベトナムの生春巻でも、ニラを数本、生のまま巻いてありますよね。アジアではあんなふうにニラを生でも食べますけど、沖縄ではまずやりません。おそらく本土でも生ニラは食べないんじゃないでしょうか。

 あるいはニンニク。沖縄県民は本当にニンニク好きで、そのあたりはとってもアジアンなんですが、アジア各地のように揚げニンニクにすることは、なぜかありません。

 アジアの揚げニンニクは以前、このブログで紹介しましたが、どこに行っても見かけます。独特の香ばしさがあって、料理を引き立ててくれますので、ももと庵でも、ももと膳の冷しゃぶや豚しゃぶ素麺などに使っています。

 沖縄料理は、本土の料理と比べると、豚肉や島野菜、豆腐、かつおぶしなどがたっぷり使われ、しっかりした素材のうま味を感じさせますが、アジア各地の料理に比べると、味や香りはおとなしいと言えそうです。これに対して、アジア各地の料理は味や香りが鮮烈で、輪郭がくっきりしています。

 沖縄素材を中心に、無理なく手に入るおいしい素材を使い、沖縄を含めたアジア各地の調理技術を駆使して輪郭のくっきりした料理を作るー。

 ももと庵の料理をあえて言葉にするなら、こんな感じになるでしょうか。

 前回記事冒頭の問いへの答にはなっていないかもしれないですが。

bansyold at 09:42|PermalinkTrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

2008年09月21日

[第77話 食、沖縄] 沖縄のかつおぶしに異変

 沖縄のかつおぶしに異変が起きている。まずはこの、スーパーの削り節売り場の写真をご覧いただきたい。

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 売り場の右の方に「枯れ節」の文字が見える。これが異変の正体だ。背景を説明しよう。

 沖縄はかつおぶし大好きの地域。1人あたりの消費量は全国平均の7倍近い。多くの沖縄料理に大量のかつおぶしが使われる。スーパーの削り節売り場がこれだけ大きいのも、業務用でもないのに1袋が500g入りだったりするのも、とにかく沖縄ではかつおぶしをたくさん使うからなのである。

 そのかつおぶしは、本土でよく使われる枯れ節とは違うタイプの、裸節と呼ばれるものだ。

 かつおぶしを加熱し、いぶしながら乾燥させたものが荒節。その表面のタールを削りとったものが裸節。さらにカビつけして熟成させたものが枯れ節と呼ばれる。裸節はかつおの香りが非常に鮮烈。枯れ節になると、香りは落ち着くが、旨味が深まるとされる。

 沖縄は、これまで裸節専門だった。かつおかつおした香りをウチナーンチュは好む。那覇の平和通りなどの市場を歩いていて漂ってくる独特の臭いの主役も、実はこの裸節の強い香りだ。

 だから、スーパーの削り節売り場も、これまでは裸節のものがほとんどだった。それが最近、冒頭の写真のようになったのは、裸節の調達が困難を来しているからにほかならない。

 県内のかつおぶし業者は「質も量も落ちている」と口をそろえる。

 まず、かつおぶしの生産は沖縄県内ではほとんど行われていない。沖縄本島で唯一のかつおぶし生産拠点は北部の本部漁協だが、かつお漁船が既に1隻しかなく、獲れたカツオの多くも生で出荷されるため、豊漁で生出荷できない分を凍結しておいて、時々かつおぶしにするだけだ。

 沖縄で消費されている裸節の主な産地は鹿児島県枕崎市など。裸節に限らず、ここのかつおぶし生産全体がまず減っている。もともと生産量が限られている裸節については、その影響が枯れ節以上に大きく出ているらしい。

 その結果、沖縄では、これまでの入手ルートでうまく調達できなくなったかつおぶし業者が出始めている。こうして、従来はあまり好まれなかった枯れ節を出さざるをえなくなった小売店、スーパーが増えてきたということらしい。

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 一方、独自の仕入れルートを持っている個人商店には、しっかりした裸節がまだ並んでいる。写真は那覇の公設市場前に店を構える松本商店のかつおぶし。水分がよく抜けた品質のよいかつおぶしであることは、削り節を見れば分かる。品質の悪い裸節をこんなに薄く削ることはできない。味も香りも、スーパーの削り節とはだいぶ違う。

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 むろん価格はスーパー品の2倍くらいする。が、スーパーの削り節は、かつおの香りというよりは、いぶし臭さが強列なものがある。松本商店の裸節は、いぶし臭さは弱く、料理に使えば、かつおの鮮烈な香りが広がる。

 それにしても、沖縄料理からかつおぶしをとったら、一体どうなってしまうのか。これまで沖縄の味と考えられていたものの多くが、大きく変わるだろう。

 沖縄から裸節がなくならないようにするためには、かつおぶし生産者がしっかり利益を出せる価格、つまり、かなりの値上げを甘受するしかないのではないか。諸物価値上がりの折、消費者には大変厳しいことにはなるが、それ以外に沖縄料理の味と香りを守る道はなさそうに思える。

 となれば、これまでのように大量に投入することはできなくなるかもしれないが、質のよい裸節ならば、使う量を2、3割減らしても、少なくとも香りはしっかり出せる。味の方は、はらわたをとった煮干しを少し加えて補えばよいのではないか。

 松本商店は那覇市松尾2-9-13、098-863-2889。

bansyold at 00:00|PermalinkTrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック