沖縄県情報産業振興課

2011年02月20日

受話器の向こうに伝わる温かみ

沖縄を創る人 第8回
 SGシステム沖縄コンタクトセンター主任 野原真弓さん(下)


 説明している内容が顧客にどうしても理解してもらえないことがある。若いオペレーターの中には「何度話しても伝わらない」と弱音を吐いたり、「もっと詳しい担当者に代わって」と言われて落ち込む人もいる。そんな時、野原真弓さんは、同じ言葉を繰り返すのではなく言い方を変えてみて、と助言している。

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 「ダブルクリック、ではなく、マウスの右側のボタンを、2回、カチカチと押していただけますか、という感じですね」

 質問の数で言えば、アプリケーションの使い方に関する初歩的な質問の方が多いというが、一方で、システムに詳しい顧客もいる。そんなテクニカルな質問にも回答できるとなれば、スタッフはシステムに関する基礎知識や経験がある人たちなのではないか、と想像していたが、見事にはずれた。

 「そういう人はほとんどいないんです」

 野原さんの職場のスタッフの9割は女性で、平均年齢は31歳。野原さんが続ける。

 「実は私自身も、パソコンは一応使えるという程度で、特に詳しくありませんでした。でも、それがかえって強み、というか」

 どういう言い方をしたら、詳しくない自分が分かるように、相手によく伝わるかー。自分が知らないだけに、困っている顧客の目線に立つことができる、というわけだ。

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 それにしても、複数の専用アプリケーションの細かいノウハウやトラブルが理解できて、それをどんなレベルの相手にも十分に説明できるようになるには相当の苦労がありそうだ。そんな対策のひとつが事例集。

 これまで尋ねられた具体例を蓄積しておき、質問が出たら、類似の事例を参照できる仕組みだ。キーワード検索ができるので、質問を受けながら、手元のパソコンで事例集の中から近いケースをスピーディーに探して、回答に役立てる。事例の総数は1000くらいになるという。

 事例集だけでなく、これまでの経験のつみ重ねから、顧客対応の方法なども自前の教材で研修する。新人でも1ヶ月ほど研修したら、電話をとり始める。3カ月から半年すれば、複数の送り状発行システムの基本が分かり、顧客からの質問に答えられるようになっていく。

 沖縄県のHP資料によると、県内にコールセンターを設置している企業は平成22年1月1日現在で57社、1万3536人が働いている。日本IBM、シティバンク、オリックス、ヤマダ電機、ソフトバンクテレコム、メニコンなどといったおなじみの企業名が並んでいる。10年前の平成12年には15社、2808人だったから、右肩上がりで伸びてきたことは間違いない。

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 進出企業にしてみると、東京などに比べて人件費が安いという魅力があるのは確かだろう。しかし、どうもそれだけではなさそうだ。沖縄がコールセンターに向いている、という話はしばしば耳にする。

 どこがいいのでしょうか、と野原さんに尋ねたら、こんな答が返ってきた。

 「温かみがある、という評価をいただくことがありますね」

 見知らぬ人と電話で気持ちよくやりとりするのは、顔が見えないだけに難しい。実際、顧客の求めに応えようと努力するよりも、マニュアル通りの紋切り型の受け答えに終始するコールセンターにぶつかって閉口した経験を持つ人も多いのではないだろうか。

 そんな中で、受話器に向こうに「温かみ」が自然に伝わるならば、それは大きな強みになるはず。

 その「温かみ」と表裏一体なのかもしれないが、「のんびりした県民性」が顧客をいらだたせることもある、と野原さんは冷静にみている。「時間の感覚を持つことは電話オペレーターに必要な要素」―。野原さんは、社員教育でそのことを強調しているという。


[野原真弓さんとつながる] 野原さんの職場は、佐川急便の送り状作成アプリケーションのユーザーだけが利用するコールセンターなので、ユーザー以外の人がコンタクトすることはあまりないだろう。とりあえず、文中に出てくる佐川急便の送り状発行システムに関心がある方はこちらを。沖縄全体のコールセンターの現状については、沖縄県の観光商工部情報産業振興課のHPが詳しい。進出企業向け支援策の解説のほかに、実際に進出した企業数などの実績情報も。「情報通信産業立地ガイド」のP3−4には、コールセンタ−を含む情報関連進出企業の県内マップが載っている。

bansyold at 00:00|PermalinkTrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック