泡盛

2017年05月07日

【感動アジアCafe】アジア米酒とニニ [5/8放送予定]

 FMうるまで毎週月曜夜8時30分に放送している万鐘ももと庵プレゼンツ「感動アジアCafe」。明日5/8(月)は、アジアの米酒のお話です。

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  ラオス北部で出会った米酒(コップは醤油のオマケ)


 泡盛がタイ米で作られるのは、遠い昔、南方から製法が伝わったから。その原型になるアジアの米酒についておしゃべりします。

 最高の作り手によって作られたアジアの米酒は、最高の味。

 でも、泡盛のスペシャルな香りはアジア米酒の上を行きます。泡盛のスーパーぶりについてもお話しします。

 ももと庵メニューでも泡盛をたくさん使っています。例えば、これ↓

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  ももと庵のアジアンハンバーグ


 アジアンポップスを紹介する「わくわくアジアンポップミュージック」のコーナーは、ミャンマーのニニ・キンゾNi Ni Khin Zawを紹介します。ミャンマー文字だと「နီနီခင်ဇော်」。なんともかわいい文字ですね。Myaw Lint Chat Ta Son Ta YarとMyaw Lint Selの2曲をお送りします。

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  ニニ・キンゾ


 FMうるまは、スマホやパソコンを使えば、どこにいても聴けます。

 方法1 ラジオ日本、日本ラジオ、Tunein Radio、myTuner Radio、ListenRadioなど、各種のラジオアプリで「FMうるま」を検索する(Tunein Radioの場合は「fmuruma」と英文字で検索して下さい)

 方法2 専用アプリ「FM聴forFMうるま」をダウンロードする。アプリを開くだけで鳴り出すのでカンタン!

 どうぞお楽しみに。

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2013年09月14日

泡盛独特の風味のヒミツ

 1回飛んでしまいましたが、泡盛とアジア米酒のお話の後編です。原料が長粒種のコメであること、イモなどの副原料を一切入れずに米麹100%の全麹で醸すこと。こうしたアジア米酒と泡盛の共通点を、前編では書きました。今回は、違いの方を書いてみます。

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 この写真、ひょっとすると本邦初公開、かも。ラオス南部の市場に置かれていたものです。これがアジア米酒を作る時に使う種菌なんだそうです。

 菌の種類は分かりませんが、文献には、アジア米酒はクモノスカビなどの菌で発酵させるとありましたので、その仲間かなと想像しています。おそらく、米粉のダンゴに菌を繁殖させてから乾かしたものではないでしょうか。

 一方、泡盛の場合は、黒麹(くろこうじ)菌という、その名の通り、黒い菌糸を出すコウジカビを使います。泡盛の仕込みの様子はしばらく前のこのブログ記事で書きましたので、そちらをどうぞ。

 こうしたカビを使うのは、カビがいろいろな酵素を出して、原材料のデンプンやタンパク質を分解してくれるから。

 コウジカビはすぐれもので、相手がデンプンならデンプン分解酵素を出し、相手がタンパク質ならタンパク質分解酵素を出すんです。相手を選ぶとは、ずいぶん高度な能力ですね。

 クモノスカビはコウジカビとは違いますので、正確に言えばアジア米酒を「全麹(ぜんこうじ)仕込み」と呼ぶのはおかしいのですが、この記事では、イモなどの副原料なしで、麹のような、菌を米に繁殖させたものだけで醸す、という意味で使っています。

 さてさて、泡盛とアジア酒に話を戻せば、原材料や製造方法がよく似ていても、使う菌が違うので、生成される香気成分・旨味成分が異なり、その結果、でき上がる酒の風味が違ってきます。

 クモノスカビで醸されるアジア米酒は、もちろん特有の風味はありますが、総じてあまりクセのないすんなりした味わい。泡盛の黒麹菌が作り出す風味に比べると、おとなしい感じがします。

 これに対して、泡盛の味と香りは個性的。好き嫌いが分かれるかもしれません。

 が、例えば、ももと庵メニューでも、泡盛をアイスクリームと合わせた時の複雑玄妙な味わいやハンバーグソースの陰影を感じさせる深み、豚重タレの甘くないのに深い旨味などは、やはり泡盛でないと出せないように思います。

 というわけで、ももと庵の厨房では、沖縄特産の泡盛、大活躍しております。

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2013年09月06日

泡盛とアジア酒は "全麹" 兄弟

 先日、泡盛アイスの話をしました。泡盛つながりで、東南アジアにいる泡盛の兄弟たちのことを2回に分けて書いてみます。

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 沖縄の泡盛は、昔からタイの長粒米で作られます。今もそう。

 かつて琉球王国のアジア貿易が盛んだったころー。行き来がひんぱんだったシャム、つまり現在のタイとの交易の中で、泡盛の原型といえるタイの酒がもたらされたり、その製法が伝えられたりしたのではないか、と想像されています。

 というのも、現在も、タイをはじめ、東南アジア各地では、泡盛によく似た酒が作られているからです。

 いずれも原料は、泡盛と同じ長粒種のコメ。タイ、ベトナムを筆頭に、東南アジア各国は世界有数の米どころです。ことしの1月にアジア米について6回シリーズでお伝えしましたね

 東南アジアでは、そのコメに菌を繁殖させて麹状のものにし、それに水を加えて発酵させ、液状のもろみを作ります。冒頭の写真がそれ。ベトナムの農村で見たものです。

 これを蒸留すると、無色透明の酒ができます。下の写真はもろみを蒸留しているところです。

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 手前と向こうに同じ大きさの鍋が置かれていますね。そこにもろみを入れ、火にかけ、蒸発してくるアルコールを含んだ蒸気をパイプで、真ん中のドラム缶に送り込みます。

 ドラム缶には水が張ってあり、パイプはその中を通るうちに冷やされ、気体が液体に変わります。パイプの出口に容器を置いて、ポタポタとしたたり落ちてくる酒を集める、という仕組み。

 ごらんになって分かるように、まさに家内工業。もっぱら奥さんの仕事です。

 現地の人によると、作る人によって味がだいぶ違ってくるので、どこの地域でも腕自慢の女性が何人かはいて、その人が作る米酒は人気なんだとのこと。

 これはおいしいよ、と言って勧められた米酒は、よい風味があって、確かにおいしかったです。

 ラベルもパッケージもなしで、空いたペットボトルなどの空き容器に入れられ、ローカルに売られています。

 こうしたアジアの米酒も沖縄の泡盛も、九州などで作られる焼酎とは大きな違いがあります。

 焼酎は、米麹に、麦を入れたり、サツマイモを入れたりしますが、アジアの米酒も沖縄の泡盛も、米麹と水のみ。これ以外に、副原料を一切入れない「全麹(ぜんこうじ)」仕込みなんです。

 全麹というのは、とてもぜいたく。発酵のもとである米麹を大量に入れれば、酒のうまみや香りの成分がたっぷり生成されるからです。

 だから泡盛は、時間が経過すると、発酵によって潤沢に作られた成分の熟成が進み、古酒になって風味が増します。麹以外の副原料をたくさん入れて作った焼酎の場合、そうはならないようです。

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2013年08月19日

泡盛アイス、うまいのなんの

 ももと庵でお出ししているこの泡盛アイスクリーム、まだ、ブログで取り上げていませんでした。シンプルなバニラアイスに、極上の泡盛をたっぷりかけたもの。これがうまいんです。

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 泡盛の味と香りがアイスクリームにこれほど合うとは。アイスクリームにリキュール類をかけますね、あれの泡盛版です。

 どんな泡盛でも、泡盛であれば、アイスにかけるとそれなりにおいしいですが、ももと庵では、スペシャル泡盛の筆頭格「松藤の粗濾過(あらろか)44度」を使っています。

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 粗濾過というのは、松藤ブランドの泡盛を作っている崎山酒造厰のネーミング。

 崎山和章社長によると、泡盛は、溶け込んでいるさまざまな物質を、温度を下げることによって析出させ、それを取り除くことで濾過するのですが、粗濾過44度は、その濾過を最小限にとどめているんだそうです。

 この「溶け込んでいる物質」こそが、泡盛の味と香りを作り出しています。それらがたくさん残っていると、泡盛らしい濃い味と香りに。濾過すればするほど、ソフトでマイルドになりますが、泡盛らしさはどうしても弱まります。

 つまり粗濾過44度は、泡盛らしさ満点の泡盛、というわけ。これがバニラアイスにたっぷりかけてありますから、うまいのなんの。

 泡盛は、数多くのカクテルが提案されています。泡盛の独特の香りがカクテルの甘さに陰影を与えるんでしょうか。泡盛アイスクリームがおいしいのも、同じ理由かもしれません。

 ただ、なにせ44度の原液がたっぷりかかっていますので、かなり強いです。運転の方やお子さんにはご遠慮いただいています。運転フリーの大人の方、ぜひぜひお試しあれ。


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2013年06月08日

豚重物語3―白ねぎと泡盛で甘くないタレ

 豚重物語の最終回です。

 炭火でしっかり焼いた肉の香りと味を主役に、ごはんものを作りたい、とは考えたものの、しゃぶしゃぶ肉でもダメ、固まりでもダメ。なかなかうまくいきません。

 その時、一番最初のステーキのイメージを思い出しました。そうか、ステーキでは厚すぎてごはんとは絡まないけど、焼く時はそれでいいんじゃない? つまり、大きな固まりをいぶすのではなく、ステーキサイズの肉を普通に焼いてから冷まして、極薄にスライスするー。

 固まりのようにスライスしやすくないですが、重ねてスライスすれば何とかなりそうです。

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 やってみたら、うまくいきました。焼かれた肉と脂がほどよくごはんに絡んで、紛うことなき炭火焼豚ごはんになっています。もはやベーコン丼ではありません。

 炭火焼きする際の火の入れ方をぎりぎりの線にとどめることで、炭火焼の香りをたっぷり含んだ柔らかく、ジューシーな豚重ができました。

 タレは? これは甘辛味ではもちろんダメなので、砂糖やみりんに頼らず、もっとストイックに組み立てることにしました。もちろん化学調味料は一切使いません。

 ベースは醤油。これに、肉の旨味をわきから引き立ててくれる自然な甘味を期待して、白ねぎをたっぷり入れました。

 次に泡盛。泡盛は、特に醤油と合わせると、独特の深い旨味が出ます。料理酒としての泡盛の実力はかなりのもの。もっと語られていいと思います。

 隠し味に黒砂糖をちょっとだけ、甘さを感じない程度に入れました。黒砂糖には、甘み以外に、渋みなど複雑な味があるので、それにも期待しました。

 結果は上々。豚肉のうまみとごはんの甘味をうまくつないでくれる「甘くないタレ」になりました。

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 先々週のこと。梅雨入りしてあいにくの天気の中、9人のグループが来られ、全員、豚重をご注文。実は豚重好きの常連さんが、本土からのお客様を引き連れて、のご来店でした。

 「沖縄に来たらこれを食べてもらわなくては、ということでお連れしたんですよ」。たいへん嬉しい一言でした。

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2013年03月22日

泡盛香るパウンドケーキ

 ももと庵でティータイムにパウンドケーキを始めましたよ。

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 ももと庵の甘味は、夏のパッションプリンや冬の黒ごま汁粉などが好評ですが、「お茶と一緒に食べられるスイーツが欲しい」という声にお応えしたのが、このパウンドケーキです。

 ももと庵のパウンドケーキは、「砂糖、小麦粉、バター、卵がそれぞれ1パウンドずつ入るからパウンドケーキ」というパウンドケーキの鉄則をほぼ忠実に守った、クラシックな味。

 泡盛に漬け込んだレーズンを入れました。泡盛には独特の香りがあって、漬け込んだドライフルーツが深ーい味になります。

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 ふくらし粉は入れていません。バターを空気の含まれたクリーム状にすることで、ごく抑えめのふんわり感を出すにとどめました。パウンドケーキ本来の「しっとり、しっかり」の食感です。

 午後2時からのティータイムメニューでお出ししています。コーヒーまたは紅茶とセットで450円。ぜひお試し下さい。


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2013年03月01日

ドミかトマトか、それが問題だ

 ジューシーで柔らかいハンバーグが焼き上がりましたが、ソースをどうするか。これも深刻な、重大な問題です。なぜなら、ソースの味でハンバーグ全体の味が決まってしまうからです。

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 ハンバーグソースの定番の一つは、ドミグラスソースまたはそれをベースにしたもの。本格的なドミグラスソースは、牛ダシをベースに、牛肉や牛骨、野菜類を加えて、長時間煮込んで作るもので、家庭で簡単にできるようなものではありません。

 ですから、家でドミグラスソースのハンバーグソースを作ろうとすれば、缶入りドミグラスソースを買ってくることになります。ドミグラスソースは、さすがにうまみが凝縮されていますので、ハンバーグ全体をおいしくしてくれます。

 ただ、買ってくるドミグラスソースは、みな同じ味なので、それをハンバーグにかけると、どこで食べても同じ「あの味」になってしまう、といううらみがあります。「わが家の味」「自分の味」を見つけたい人にとっては面白くないかも。

 ドミグラスと並ぶハンバーグソースの定番は、トマトケチャップまたはそれをベースにしたものでしょう。トマトケチャップには、ドミグラスソースのような凝縮されたうまみはありませんが、フレッシュ感があるので、肉と一緒に口に入れると相性がいいんです。

 トマトケチャップの酸味も、ハンバーグ全体の味を立体的にします。トマトケチャップと普通のソースを混ぜるという人も多いですね。

 逆に、トマトケチャップやソースの一つの難点は、その酸味や甘みを「強すぎる」と感じる人がいること。ケチャップよりドミグラスソースの方が好き、と言う人の中には、ケチャップの酸っぱさや甘さが苦手、という人もかなりいそうです。

 トマトの酸味やフレッシュ感を生かしながら、甘味や酸味を少し減らしたい時は、トマトケチャップに、生のトマトやトマトピューレーなど、味のマイルドなトマト材料を混ぜればOKです。旨味にもの足りなさを感じたら、醤油を少し入れるのもお勧め。ごはんによく合うソースになりますよ。

 その作り方。トマトケチャップ、トマトピューレー、生トマト、醤油、ソースなどを好みの配合で混ぜます。ハンバーグを加熱した際に出てきた肉汁を加えるのを忘れないようにしましょう。

 その材料を、最初に焼き目をつけるのに使ったフライパンに入れます。さらに大さじ4、5杯の水を加えて加熱し、フライパン表面にこびりついているきつね色の部分を溶かしながら少し煮詰めれば完成です。

 ももと庵のハンバーグソースはトマトべ―ス。これに醤油や泡盛、にんにくなどが入ります。泡盛は、旨味のほかにかすかな苦みもあり、入れたとたん、全体の味が複雑になります。泡盛は、もちろん飲めば最高の酒ですが、料理酒としても相当のディキヤー(すぐれもの)です。

 以上でニッポンのハンバーグが完成しました。ちょっと大変でしたけど、結構、おいしくできたんじゃないですか?

 あ。 つけ合わせのことを忘れてた。次回はつけ合わせの話をしましょう。


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2011年12月04日

消えた日本のクサうま

沖縄とアジアの食 第12回 発酵の複雑な香り


 前々回、ラオスの魚の塩辛調味料「パーデーク」を中心に、アジアのクサうま調味料を紹介した。写真はタイのローカル市場で量り売りされているえびみそ「ガピ」。これもアジアのクサうまの代表選手だ。そういえば、昭和の頃は、日本でもこんな風にみそを山盛りにし、量り売りしていた。

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 沖縄を含む日本には、今や「クサうま」と呼べるような発酵調味料、発酵食品はほとんどない。みそでも醤油でも泡盛でも、明らかにクサいと感じるものは、くさやなどごく一部を除いてめったに見かけない。

 日本でも1960年代くらいまでは、味噌を手造りしている家が農村部にたくさんあった。そんなみそでみそ汁を作ると、今のみそにはない複雑な香りが家じゅうに漂った。この香りは大いに食欲をそそる芳香だったと記憶している。

 複雑な香りは、雑菌と総称される菌が作る化学物質の香り。家庭でみそを作っていた頃は、こうじこそ買ってきた麹菌で作るにしても、仕込みの過程でさまざまな雑菌が混入し、そこに独自の香りが生まれた。

 みそでも醤油でも酒でも、メーカーは共同であるいは独自に、優良菌の開発を進めた。マーケットリサーチの結果、消費者の多くが複雑な強い香りを好まない、という結果が出たためか、純粋培養された優良菌は、香りの面では「控えめな」菌が中心になった。

 製造設備の菌管理技術も向上したため、純粋培養した菌以外の菌が入り込む余地があまりなくなった。こうして、日本の発酵食品から複雑な香りがなくなり、「クサうま」は姿を消した。

 1970年代までは、沖縄の泡盛も、まだ香りが相当強かった。味噌や日本酒と同様に、泡盛でも、その後、菌の開発と製造現場の菌管理技術が進み、その結果、複雑な香りは弱まっていった。いま製造されている泡盛は、離島の製品など、一部に比較的香りが強い銘柄があるものの、往時の強い香りを放つものはほとんどなくなった。

 写真はラオス北部の農村で作られた米の蒸留酒ラオラオ。酒造所ではなく、家内工業で小規模に作られているため、びんもラベルもない。手近にある空き容器に入れて売られる。写真のラオラオは、独自の方法で、何かの草を最後に入れて色とかすかな香りをつけているそうなので、わずかに緑色を帯びている。

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 ラオラオは、麹菌の種類が泡盛とは違うから味わいはおのずと異なるが、米麹の全麹で作られる蒸留酒という意味では、泡盛とよく似ている。同様の酒はベトナムの農村でも手造りされているのをあちこちで見た。

 香りはー。強い香りではないが、やはり、今、日本で作られている焼酎や泡盛に比べると、複雑な風味がある。

 話は変わって、漬け物。これも日本では香りを減らす方向で技術が進んだ。漬け物の場合は、酒やみそと違い、菌を添加して製造するわけではない。自然の乳酸菌で発酵させるのが普通なので、菌を純粋培養して香りを弱めるというわけにはいかない。

 では、どうするかというと、2つの方法があるらしい。一つは、発酵それ自体をさせない短時間仕上げの「浅漬けタイプ」を作ること。味は発酵ではなく、調味液が担う。いま一つは、いったん発酵させるものの、その発酵液を抜き取り、さらに、別に作った調味液を改めて吸収させるという「味ぬき味つけタイプ」にすること。

 いずれにしても、うまみと香りを作り出す発酵の機能をほとんど否定してしまう結果になっている。もちろん、昔ながらの手作り品は、そうではないが。

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 漬け物はアジアでも盛ん。写真はベトナムの食堂で出てきた漬け物。高菜のような葉野菜をさっとゆがいてから塩水に入れ、そのまま常温で数日漬けておくと、漬け物になる。色がやや黄色味を帯びてきたら食べられる。それほど強い香りがあるとも思えないが、日本では、この香りは通らないのかな、と思いながら、白いごはんと一緒にかっ込んだ。乳酸発酵で酸味が出ていて、うまい。

 みそでも泡盛でも漬け物でも、香りが弱くなれば、「マイルドな」風味になり、万人受けするようになる。ただ、それも度が過ぎると、そもそもの個性が消えてしまう。

 ウニの独特の味は、強い苦みを持ったアミノ酸「メチオニン」が含まれていることによって実現している。メチオニンがもし入ってなかったら、ウニは、イクラのような味になってしまうという。イクラの味はウニよりクセがないが、もしウニがイクラの味と同じだったら、面白くないだろう。

 クサうま発酵食品の複雑な香りを除去しすぎたら、ウニをイクラに近づけてしまうようなことになるのではないか。

 確かに、かつての複雑な香りが強い泡盛のままでは、今日のように、ニューヨークのバーで珍重される酒にはならなかったかもしれない。味噌も、昔の香りのままでは、例えばオーストラリアの料理本に当たり前のように登場する調味料にはならなかっただろう。しかしー。

 自社話で恐縮だが、万鐘の黒糖肉みそは、親しみやすい味の追求と同時に、味噌や泡盛といった発酵食品の中にある渋み、苦み、あるいは味噌や黒糖が少し焦げた時に初めて生まれる独特の香りなどを前面に出すようにしている。

 その黒糖肉みそが、フジTVの「とくダネ!」で取り上げられた際に、スタジオで試食した高木美保さんがこうコメントした。

 「甘いだけじゃなく. . . 大人の味に仕上がっていますねー」

 作り手の日頃の工夫を正面から評価していただいた気がして、ありがたかった。その「大人の味」こそ、発酵の深い味や、渋み、苦み、焦げた香りなのだ。

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