煮つけ

2010年02月14日

[第156話 農] ずんぐりむっくり島ダイコン

 島ダイコン。しまーは、ご覧のように、ずんぐりむっくり。横にスパっと切るのに苦労する。よほど大きい包丁でないと一発では切れない。横に切った面に対して側面は角度がついているので、皮をむくのもなかなかたいへんだ。

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 でも、この島ダイコンを作り続けている人がいるということは、買う人がいるから。そう、この島ダイコン、実がつんでいて、煮込むと、きめ細かく柔らかくなる。煮付けやおでんに最適なのだ。

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 島ダイコンの皮は分厚い。品種によっては、煮込んだら皮に埋まっている固い繊維が残って、その部分は食べられないほど。

 その内側にあれほどおいしい部分があるというのは、何かとても大切なものを固い皮がしっかり守っているようにも見える。この固い皮、実は大きな役割を果たしているのかもしれない。

 島ダイコンの産地として知られる中城村の北浜集落を訪ねた。北浜と隣の南浜、和宇慶は、いずれもジャーガルと呼ばれる粘土で、昔から島ダイコンがよく生育したという。

 冒頭の写真の島ダイコンは糸満のJAうまんちゅ市場で撮ったもので、南部産。北浜の島ダイコンは、さらにずんぐりむっくりしている。もう一歩で桜島ダイコン、といったふぜいだ。

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 北浜で島ダイコンを作っているある農家は「昔は旧盆すぎから植え始めて最後は旧正月まで穫れたけど、最近は気温が高くて、すぐトウ立ちしてしまう。温暖化かね」と首をかしげた。

 そのトウ立ち。よくある青首ダイコンは茎が上に伸びていくが、島ダイコンのそれはむしろ横に広がっていく感じで、こんもりとした形を作る。かれんな白い花が咲く。花が終わればサヤの中には来年の種がみっちりと。

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 スーパーで売られている野菜のほとんどは、雑種第一代(F1)だけに現われる優良な成績を期待する「F1品種」になっているため、農家は種を自家採取できない。子世代は成績がガクンと落ちる。結局、農家は、親株を維持している種会社から永遠に種を買い続ける必要がある。

 島ダイコンはそういうF1ではないから、昔ながらの種の自家採取ができる。島ダイコン畑に残されてトウ立ちしている株は、来年の種を採るための繁殖用。白い花を楽しめるのは、繁殖用を残す必要があるからなのだ。

 ところでこの島ダイコン、例によって沖縄県内のスーパーには売っていない。流通業者やお店が扱いにくい形だからだろう。島ダイコンに限らず、野菜の品種は流通や販売の都合で決められている部分がかなりある。しかし、世界各地の青果の売られ方を見ると、ここまで細かく規格を揃えたがるのは日本くらいのものではないだろうか。

 島ダイコンを買うなら、ファーマーズマーケットや道の駅で。糸満市のJAうまんちゅ市場、沖縄市のJAちゃんぷるー市場、南城市の軽便駅かりゆし市、名護市許田の道の駅などでゲットできる可能性が高い。それぞれの住所は第142話の島バナナの記事の末尾をごらん下さい。

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2009年01月31日

[第99話 食] 午前2時に仕込み始めるてびち

 那覇港ターミナルビル向かいの嶺吉食堂。煮つけ定食が名物のこの有名店をなぜあえて取り上げるのか。それは、明日また食べたくなるてびち(豚足)の素晴らしさを伝えたいから、に尽きる。

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 この盛りを見て「量で勝負の店」と勘違いする向きもあるかもしれない。確かに量はたっぷりだが、手間ひまかけてていねいに作られた煮つけの染み入るような味をぜひ堪能していただきたい。

 店の雰囲気は、町の食堂そのもの。飾らない店内は、どこか昭和っぽい味わいがある。煮つけ定食の素朴なたたずまいも、まったく気取りがない。

 登場した煮つけ定食のボリュームとてびちの固まりを初めて目の当たりにした時は、「これは胃薬が必要になるかも」と半ば本気で思った。

 煮つけと言っても、本土で作られる甘辛味の煮つけより薄味で、塩分も少ない。しかしダシはしっかり効いていて、そのうまみが大根や豆腐によく染み込んでいる。沖縄は塩分の摂取量が少ないといわれるが、この煮つけを食べればその理由が分かるはず。「素材のうまみとだしで食べる味」が沖縄料理の真髄であることが実感される。

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 主役のてびち。余分な脂が見事なまでにきれいに抜けている。とろーりフルフルの皮はもちろんだが、赤身の肉がまたうまい。かなり煮込んであるのに、しっとりジューシー。てびちで赤身の部分をこれだけおいしく作るのは簡単ではない。

 てびちをどーんとのせたてびちそばも人気メニュー。そばと同じくらいのボリュームのてびちがのっていて圧倒される。好きな人は、骨を吸って、中心部の髄のところを楽しむ。

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 那覇中心部の港の真ん前という場所柄かもしれないが、客は、作業服姿の人とネクタイ姿の人が半々といった感じで、若い女性もちらほら見える。

 食べている最中はもちろん大いに満足したが、食べ終わって30分ほどしてから、このてびち煮つけの本当のすごさが分かった。

 「あー、食ったー」という満腹感はしっかり持続するのに、決してもたれない。あれほど味くーたーのてびちをたっぷり食べたのに、あきれるほど胃がさわやかで、すっきりしている。「きょう腹いっぱい食べて、なおかつ明日また食べたくなるてびち」というのは、沖縄広しといえども、そうはない。もちろん胃薬など全く不要。

 2007年9月12日付の万鐘本店12話で、食べた後に動けなくなるてんこ盛りのノセノセ400円弁当の話を書いたが、あれの正反対だ。

 てびちはじっくりと時間をかけてていねいに脂を落とし、そのうまみを野菜や豆腐に染み込ませている。聞けば、嶺吉食堂の主人は、昼食用に出す煮つけを、なんと午前2時に仕込み始めるのだという。

 これだけ手間ひまかけて、しかも圧倒的な大盛りで、煮つけ定食もてびちそばも750円。昨年亡くなったニュースキャスターの筑紫哲也さんも通ったらしい。

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 嶺吉食堂は那覇市西1-24-2、098-868-5404。フェリーの発着が多い安謝の那覇新港ではなく、西町の那覇港ターミナルの正面。午前10時から営業し、売り切れじまい。日曜休。

 体調不良で最近までしばらく休業していたが、このほど再開し、ファンをほっとさせた。体をいたわって、少しでも長く続けてほしい店だ。

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