琉球石灰岩

2009年06月14日

[第121話 沖縄] 高級で親しみやすい琉球石灰岩

 落ち着いた象牙色の地に、サンゴなどが作り出す複雑な自然の模様―。琉球石灰岩は、伝統的石積みなどはもちろん、近代的ビルにもマッチする自然建材。今回はその琉球石灰岩の話題を。

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 琉球石灰岩については、第16話の那覇空港の記事で取り上げた。「高級感」と「親しみやすさ」という、一見矛盾する2つの性格が同居する自然素材の代表格。

 南城市にある株式会社武村石材建設で、琉球石灰岩の石材を製造する現場を見せてもらった。琉球石灰岩は沖縄各地にあるが、採掘権の問題などから、現在は主に糸満市で採掘されているとのこと。

 原石を板状の石材に切るのは、専用のダイヤモンドソー。ダイヤモンドを埋め込んだ刃が高速回転し、長さ1mほどの原石を4、5分で「スライス」する。水をかけて摩擦熱を冷やしながら切っていく。

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 こうして切られた板状の石材は、建物の外壁や内壁に貼られる。壁材はそれほど力はかからないので、厚さ3センチもあれば足りるが、敷石などに使う場合は割れやすいのでもっと厚いものを使う。

 表面仕上げは数種類ある。ダイヤ刃の丸ノコで切った平らな切り肌が基本。その孔を埋めてさらにつるつるに磨き上げた本磨き、逆に、細かいでこぼこをわざとつけたビシャンなど。

 表面の状態によって、光と陰がかもし出す石の表情が大きく変わる。表面がなめらかになるほど高級感が増し、逆に、でこぼこが大きいほど素朴さ、親しみやすさが増すと考えてよさそうだ。

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 琉球石灰岩は、有孔虫やサンゴの作り出す多数の孔(あな)が空いているため表面温度が上がりにくいという機能を持つ。炎天下に、例えば大理石や御影石を置いたら触れないくらいに熱くなるが、琉球石灰岩は多数の孔を通じて熱を逃がすため、それほど熱くならない。

 これが役に立つのは、日差しの強い沖縄ばかりではない。というのも、ヒートアイランド現象などによって、熱をどう逃がすか、遮るかは各地で大きな課題になっているからだ。

 琉球石灰岩のたくさんの孔を利用したのが地下ダム。地下に埋まっている琉球石灰岩層は、その無数の孔に大量の地下水を保っている。いわば、水を含んだ巨大なスポンジ。

 この性質を利用して、琉球石灰岩層の一部に止水壁を設け、層の中の水をせき止めて流出を抑え、それを農業用水として利用しようとするのが地下ダムだ。糸満や宮古島などでは既に完成、今は与勝半島で工事が進んでいる。

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 石材の話に戻ろう。写真は那覇市の国際通りにある飲食店。この店は琉球料理店で、琉球石灰岩をほぼ全面に貼っているが、貼り方によっては和食店やイタリアンレストランなどの演出にも使えるだろう。

 コンクリートの場合、コケやカビによる経年変化は素材を汚くするだけだが、琉球石灰岩の場合は、むしろ面白みが増す。屋外に使われている琉球石灰岩の中には次第に一部が黒ずんできて、建設当初とは違った趣きに。写真は首里の金城ダムの堤体の上部。

 近くで見ると汚れにしか見えなくても、離れて見ると「風合い」になる。もとの複雑な模様が黒ずむことでデフォルメされるからだろう。もとの模様がないコンクリートではこうはいかない。

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 もっとも、近代的なビルに貼られた琉球石灰岩壁材の場合は、あまり黒ずんでくると、ビルのその他の直線的な素材のタッチとかけ離れてしまう。これを防ぐためには、ケイ素樹脂などを含むコーディング剤を使う。例えば、那覇空港の場合は、琉球石灰岩にそうしたコーティングを施し、もとのアイボリー色を長く保つようにしている。

 ところで、有名な大理石、トラバーチンは、イタリアやスペインなどで産出するが、沖縄でも採掘される。沖縄産トラバーチンは、琉球石灰岩が熱変成したもの。高級感あふれる建材として国会議事堂などにも使われているという。ただ、最近は採掘量が減り、あまり流通していないらしい。

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 写真は、ホテルJALシティ那覇に使われている沖縄産トラバーチン。穏やかな縞模様が特徴だ。さすがに大理石ともなると、同じ自然素材であっても、高級感がぐぐっと前面に出てくるところが面白い。

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2007年09月27日

[第16話 沖縄] 涼しくて温かい那覇空港

 那覇空港の年間乗客数は約1300万人で、羽田、大阪、新千歳、福岡に次ぐ全国5位。中部や関西を上回る人が出入りするそのスケールからすれば、既に「地方空港」のイメージではない。平成11年に供用開始された空港ビルも立派な建物だ。

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 造りは大きいし、確かに立派なのだが、例えば比較的新しくオープンした羽田の第二ターミナルや新神戸空港よりも、なぜか疲れない。居心地がいいのだ。何が違うのだろう―。

 この那覇空港を設計したのは株式会社安井建築設計事務所(大阪市)の塚本高義さんを中心とするチーム。塚本さんは7年間、沖縄に住み込んで那覇空港を造り上げた。「毎日、沖縄の人たちと酒を飲み交わしながら、沖縄の心、風土風習についてご教授いただき、少しは『沖縄通』になった気分です」。今も月1回は沖縄を訪れて、フォローアップを続けている。

 那覇空港を改めて歩き回ってみたら、居心地のよさの理由が少し分かってきた。

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 メインビルの真ん中は吹き抜けになっていて、正面の窓からは、飛行機の発着とその向こうにサンゴの青い海が見える。最高のロケーションといっていいが、その吹き抜けの中央部分「ウエルカムホール」が全部、木のフローリングなのだ。これが何とも言えない温かみと面白みを醸し出している。

 このウエルカムホールは全体的に曲線で囲まれていて、直線の多い空港ビルを柔らかい印象にしている。窓側から見ると、3階、4階の部分がヨーロッパの劇場の観客席のようにも見える。

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 各ゲートから出口までの間にある動く歩道の壁面には、琉球石灰岩がふんだんに使われている。ここだけではない。空港を歩き回ってみると、空港内外のあちこちに琉球石灰岩が使われていることが分かった。たとえ一部であっても、ポイントポイントにこうした自然素材が使われていると、建物全体の印象が大きく変わる。下の写真では、搭乗口部分の下方に琉球石灰岩が見える。

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 フローリングの木、琉球石灰岩―。人間の体はそうした自然素材に素直に反応する。木も石灰岩も、色といい、質感といい、「涼しくて温かい」「高級だけど親しみやすい」という、正反対の2つの方向を同時に演出できてしまうのが最大のミソだ。これこそが自然素材のすごさではないだろうか。コンクリートやビニルタイルではこうはいかない。

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 もう一つ、空港というステージを歩いている人間の違いもあるかもしれない。那覇空港を歩く人の多くはリラックスモード。たとえ仕事で沖縄に来る人も、飛行機の扉が開いてモワーっとした亜熱帯の空気を浴びた瞬間、細胞の緊張がほどける。そうした人々自身が、空港全体の「ゆるり」とした柔らかさを生み出すのに一役買っているように思えてならない。

 

 


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