発酵

2010年02月21日

[第157話 食] おいしいスクガラス、はあるのか

 この可愛らしい3尾の魚はスクガラス。島豆腐の上に乗って登場する塩辛の一種だ。ただ、スクガラスを食べて心から感動した、という話はあまり聞かない。本当においしいスクガラス、というのはあるのだろうか。

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 スクガラスは、スクと呼ばれる魚を塩漬けにした塩辛。スクはアミアイゴという和名を持つ魚の幼魚。体調は2、3cm。ちなみに親戚のシモフリアイゴはエーグヮーと呼ばれ、第37話で紹介したように、マース煮にしたら最高においしい。

 さて、このスクガラス。居酒屋では、ハンで押したように島豆腐の上に乗って出てくる。ただ、かなりしょっぱくて、そのためもあってか、うまみはそれほど感じられないものが多い。

 スクの体にある小さな突起が固くて口に障るため、頭の方から尾に向かう形で口に入れるといいのだが、どう食べるにしてもそれで味が変わるわけではない。

 豊見城市にある大城海産物加工所の大城久子社長に話を聞いた。大城海産物加工所は、スクガラスを販売している。

 「おいしいものは、とてもおいしいんですよ」と、大城社長がひと瓶のスクガラスを差し出した。液が濁っていて、白いぶつぶつが出ている。おみやげ屋で見かけるスクガラスのように、透明な汁の中に魚がきれいに並べられているのとはだいぶ違う。

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 だが、一尾をとって口に含んでみて、すぐに分かった。とてもうまい。深ーいうまみがある。

 大城社長の話では、沖縄県内で出回っているスクガラスの多くが、実は海外産。沖縄県内で漁獲量が少ないのと、県産は価格がかなり高くなってしまうためらしい。だが、やはり県産のスクガラスが断然おいしいという。

 この県産スクガラス、食べてみて、確かにうまい。酒盗と呼ばれるかつおの腹ワタの塩辛があるが、それに似た強いうまみ。居酒屋で食べていたスクは一体何だったのだろう、というくらいの大きな違いがある。何がこの違いをもたらすのだろうか。

 スクは本当に小さな幼魚なので、獲れたらすぐに塩をしないと悪くなってしまう。したがって、海外産ならば、そこのウミンチューが塩をすることになる。

 だが、塩をするにはかなりの技術がいる。例えば塩の量。入れ過ぎれば発酵が進まないし、味も塩辛くなりすぎる。混ぜ方も重要。混ぜ方が足りないと塩が均等に行き渡らず、一部が腐敗してしまう。混ぜすぎも、身が傷むからよくない。

 やはり伝統的にスクガラスを仕込み続けてきた沖縄のウミンチューに一日の長があるのかもしれない。

 県産のスクガラスは、漬け汁が濁っているが、これがうまみの元と言ってもいいくらいの存在で、しょっつるやナンプラーのような魚醤にも似た深くて複雑な味わい。確かに、おみやげ店に並ぶスクガラスは、汁がもっと透明だ。一見、きれいなのだが、だから味がない、ということなのかもしれない。「白いつぶは自然のアミノ酸なんですよ」と大城社長。うまいわけだ。

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 このスクガラスなら、島豆腐に限らず、どんなものもおいしくしてくれる。まず試してみたのは、熱いごはん。塩辛が熱いごはんに合うように、スクガラスも熱いごはんに乗せたら、ごはんがすすむこと、すすむこと。こんなにおいしければ、突起もさして気にならない。

 大城社長が教えてくれた一品を、万鐘の厨房で作ってみた。題して、スクガラス入りソーミンチャンプルー。

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 いため油をフライパンの片隅に寄せるようにして、そこにスクガラスを入れ、弱火でゆっくりと揚げるようにいためる。1人分で4、5尾か。きつね色になったら、固めにゆでたそうめんを入れて混ぜる。味をみて、ちょうどよい塩気になるように、スクガラスの漬け汁を少し加えていく。仕上げに、ニラやネギ、シソなどの青味を散らして出来上がり。

 タイ料理で、エビの塩辛を油でいためて香りを立て、かつカドをとる方法があるが、あれと似ている。油の高温で加熱されたスクガラスは実にいい香り。

 そうめんを入れて混ぜると、パリパリになったスクは割れていくので、かわいい姿は消えてしまうが、そうめん全体に最高の味と香りをつけてくれる。油で揚げられることで、問題の突起もパリパリに変化し、口に障ることがなくなる。ソーミンチャンブルーの作り方はこちらを。

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 大城海産物加工所の県産スクガラスは、元の濃さのものと少し薄めたタイプの2種類ある。当然ながら、味が濃い前者が断然お勧め。価格は前者が120g入りびんで700円。味の濃いタイプは同社のHPには掲載されていないので、電話で直接注文を。豊見城市字豊見城130、098-850-1036。

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2008年08月04日

[第69話 食、農] 世界の銘茶を目指す山城紅茶

 うるま市石川の山城地区では、長い間、お茶が栽培されてきた。やまぐすく茶、と呼ばれる無農薬茶。やまぐすく茶の話は別の機会にするとして、今回は、やまぐすく茶で作られる珍しい紅茶を紹介する。「有機、無農薬、手摘み」の紅茶だ。

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 その名も山城紅茶。山城直人さんを中心とする沖縄紅茶農園の30代の青年4人が取り組んでいる。山城直人さんの家は、祖父の代からやまぐすく茶を栽培してきた。茶畑で遊びながら育ったという直人さんは、自分の代ではぜひ紅茶に取り組もうと思っていた。山城の土や気候が紅茶向きだという話をかねてから聞いていたからだった。

 直人さんは静岡県にある国立野菜茶業試験場(現在の独立行政法人農業食品産業技術総合研究機構の野菜茶業研究所)で2年間、研修生としてみっちり学んだ。当時は紅茶専門の先生がいたので、直人さんは紅茶作りの技術を深めることができた。故郷に戻った直人さんは、仲間とともに紅茶を作る機械づくりから始めた。

 発酵していない緑茶や、発酵を途中で止める烏龍茶などの半発酵茶とは違って、紅茶は完全に発酵させたお茶とされる。だが一口に「完全に発酵させた」と言っても、発酵過程の微妙な加減で味や香りは大きく変わる。直人さんらは、1000パターンくらいのさまざまな紅茶を試作したという。

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 そんな中から製品化したのは「コク重視」「職人仕上げ」「あっさりストレート」「スモーキー」の4種類。それぞれに番号がついているが、これは完成した日付をそのまま番号に見立ててつけたという。例えば9月18日に出来上がった「あっさりストレート」は918番。「商品それぞれの誕生日というわけです」と直人さん。冒頭の茶葉はコク重視。


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 有機、無農薬に加え、収穫機械を全く使わない手摘み茶というのも珍しい。「機械だとよけいな部分が入ってしまうので、どうしても雑味が出てしまうんです」と直人さん。ふだんはシルバー人材センターのおばさんらが、せっせと手で茶葉を摘み取っている。この日はたまたま地元の中学生が職場体験で茶摘みに精を出していた。

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 「コク重視」を試飲してみた。香りはあまり強くないが、ボディはしっかりしている。雑味がほとんどなく、すっきりしている。ストレートでそのまま楽しむ紅茶か。強い味を求める人は茶葉を多めに入れるとよさそうだ。

 パッケージには、くまと女の子が描かれている。どうして「くまと女の子」なのか。

 「ヨーロッパの人が見た時に、理解できるものにしたかったからです」。栽培面積は小さいから量産は難しいかもしれないが、質についてはインドやスリランカの銘茶に負けない世界水準を追求する―。この絵にはそんな直人さんたちの決意が込められている。

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 沖縄紅茶農園はうるま市石川伊波1005、098-965-3728。店舗はないが、インターネットで販売している。「山城紅茶」で検索を。50g入りパッケージが1000円から1500円。

bansyold at 00:00|PermalinkTrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック